ブランケット
非日常的な日常
カラオケの堅い床に正座をして那智さんの足の間に収まる。
ズボンのファスナーを下ろそうとして
「あ、そうだ、やろうとしてたことがあったんだ。りん子、立って」
「はい?」
訳もわからず、その場に立ち上がる。
「少し下がって」
言われた通りに下がる。
脱いであったスーツの上着をバサッと広げ、さっきわたしが正座をしていた床に広げた。
なんだろう?
「ここに頭を置いて横向きに寝て」
はい、寝転がるのですね。
狭い部屋の狭い空間に、スーツを下に敷いて頭と肩辺りをうずめて横になる。
スーツのブランケット。
この体勢、たぶん踏まれるんだ。
横になったあたりで気がついた。
胸の前に両腕を収めてぼんやりと那智さんの足元を眺めた。
足が動き頬骨に。
堅い。
あ、そうだよね。
ホテルの部屋で踏まれることはあるけれど、そのときは靴は履いていないから、ついその感触を想像していたのだ。
ここはカラオケボックス。
土足だ。
靴のまま踏まれている。
革靴の堅くて平らな感触に、それをグリッと押し付ける力に、幸福に堕ちていく。
さっきまでずっと外を歩き、トイレにだって入っているはずだ。
その靴の底で頬をこめかみを踏まれる。
痛いくらいに強く。
あああ、嬉しい。
幸せ、幸せ、幸せ。
那智さんの手によって落とされる幸せ。
靴のまま踏まれて喜んで腰をくねらすおかしい自分に自己愛。
そしてブランケットの幸福。
顔の向きを変えたい、靴底を舐めたい。
うう、でも、それを実行できるほどには理性は飛んでくれていなかった。
もっとと思う自分もいて、少し残念。
それでも、スーツの上着のブランケットに包まれながら堕ちる幸福を味わっていた。
「なぜ、敷いてくださいました?」
「だって、服が汚れたらいけないだろ?」
不思議な人だ。
自分の手でわたしを汚すことは厭わないのに、他のもので汚れることは避けてくれる。
被虐と加虐の世界では、こんな甘いブランケットは邪道かもしれない。
でも、わたしはこれが嬉しい、これをしてくれる那智さんが好きだ。
大切にされながら酷いこと。
このバランスを取ってくれていることが、傷つく性癖を持っているわたしを傷つけることなく満たしてくれるのだ。
いつか、ブランケットを敷いてくれない日が来るかもしれない。
でも、わたしはわかっている、それは『敢えて』そうしているのだということ。
わたしを蔑んでいるのではなく、蔑む行為を互いに楽しんでいるのだということ。
ブランケットの温かさを教えてくれているからいつかそのまま床に寝る日が来ても、それはただの快感になる。
<関連エントリー>
『傷つく性癖』
『漫画喫茶にて』すでにブランケットなしで踏まれていました^^;
『一般常識』「俺で汚すのはいいけど、他はダメ」の一例^^
カラオケの堅い床に正座をして那智さんの足の間に収まる。
ズボンのファスナーを下ろそうとして
「あ、そうだ、やろうとしてたことがあったんだ。りん子、立って」
「はい?」
訳もわからず、その場に立ち上がる。
「少し下がって」
言われた通りに下がる。
脱いであったスーツの上着をバサッと広げ、さっきわたしが正座をしていた床に広げた。
なんだろう?
「ここに頭を置いて横向きに寝て」
はい、寝転がるのですね。
狭い部屋の狭い空間に、スーツを下に敷いて頭と肩辺りをうずめて横になる。
スーツのブランケット。
この体勢、たぶん踏まれるんだ。
横になったあたりで気がついた。
胸の前に両腕を収めてぼんやりと那智さんの足元を眺めた。
足が動き頬骨に。
堅い。
あ、そうだよね。
ホテルの部屋で踏まれることはあるけれど、そのときは靴は履いていないから、ついその感触を想像していたのだ。
ここはカラオケボックス。
土足だ。
靴のまま踏まれている。
革靴の堅くて平らな感触に、それをグリッと押し付ける力に、幸福に堕ちていく。
さっきまでずっと外を歩き、トイレにだって入っているはずだ。
その靴の底で頬をこめかみを踏まれる。
痛いくらいに強く。
あああ、嬉しい。
幸せ、幸せ、幸せ。
那智さんの手によって落とされる幸せ。
靴のまま踏まれて喜んで腰をくねらすおかしい自分に自己愛。
そしてブランケットの幸福。
顔の向きを変えたい、靴底を舐めたい。
うう、でも、それを実行できるほどには理性は飛んでくれていなかった。
もっとと思う自分もいて、少し残念。
それでも、スーツの上着のブランケットに包まれながら堕ちる幸福を味わっていた。
「なぜ、敷いてくださいました?」
「だって、服が汚れたらいけないだろ?」
不思議な人だ。
自分の手でわたしを汚すことは厭わないのに、他のもので汚れることは避けてくれる。
被虐と加虐の世界では、こんな甘いブランケットは邪道かもしれない。
でも、わたしはこれが嬉しい、これをしてくれる那智さんが好きだ。
大切にされながら酷いこと。
このバランスを取ってくれていることが、傷つく性癖を持っているわたしを傷つけることなく満たしてくれるのだ。
いつか、ブランケットを敷いてくれない日が来るかもしれない。
でも、わたしはわかっている、それは『敢えて』そうしているのだということ。
わたしを蔑んでいるのではなく、蔑む行為を互いに楽しんでいるのだということ。
ブランケットの温かさを教えてくれているからいつかそのまま床に寝る日が来ても、それはただの快感になる。
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