はじめてのこと
独り言
同じようなことを何度も言っているようで大変申し訳ないのですが、このところ私はとても忙しい。
といっても、世の中には朝から深夜までの労働を余儀なくされたり、分刻みのスケジュールをこなしたりともっと忙しい人はたくさんいることもわかっているので、贅沢を言っていることも自覚しているのですが。
だから、パソコンに向かってうとうとしてしまったとしても、「ちょっと疲れているのね」くらいのこと。
どちらかと言えば、何もない日に飢えているといった感じなのです。(だから、贅沢ってわかってます!)
「今日なにしよう~。」みたいな日がないとダメみたい。(体の疲労もないわけじゃないけど)
それで今日私は那智さんのお誘いをはじめて断ったのです。
今週もう一日会える日があるかもしれないから、多少の余裕もあるんですが。
それでも、平日の仕事を増やす前、月から金まで五日間毎日お仕事場に会いに行った記録を持つ私が、はじめて断ったのです!!
もちろんすんなりと受け入れられましたが、はじめてのことで那智さんもちょっと驚いたみたいです。
「断れてしまった自分」に私自身を驚き、不安になる。
「那智さん大好き、大好き」って、見えない尻尾をブンブン振っている私が、恐らくお互いにとって居心地の良い関係なはず。
一度断ったくらいで、何も変わらないでしょうけど、かつて「潮が引くように」付き合っていた男性に冷めていった記憶を思い出して、こんなことで不安になる。
でも、じゃあ引かないように努力して、どうなるものでもないから、自分の心を静観するしかないのです。
会えるはずだった時間に那智さんから電話が来て、いつものようにお話ししていて、沸き上がる気持ちに安堵する。
「那智さん大好き、那智さんに会いたい」
休息できる余裕でそう思えるのかもしれないけど、いつものテンションが嬉しい。
「那智さん、いまから会いましょうか?!」ニコニコしながら提案すると
「ふざけるな(「ふ」と「ざ」の間に「っ」が入る感じでお読みください)!!!」
はい、おっしゃるとおりです。
そして、いまよい気分でパソコンに向かっています。
今日は断った。
それでも「那智さん大好き」は変わらなくて嬉しい、だから、更新しよう♪
週末はおとなしくてごめんなさい。
それでも見に来てくれる人はいる。
嬉しくて、持続できる。
那智さんと付き合って数年経つけど、相変わらずの「大好き」テンションは変わらない。
こちらもずっと持続です。
「旅行」の続き、もう少しお待ちください。
同じようなことを何度も言っているようで大変申し訳ないのですが、このところ私はとても忙しい。
といっても、世の中には朝から深夜までの労働を余儀なくされたり、分刻みのスケジュールをこなしたりともっと忙しい人はたくさんいることもわかっているので、贅沢を言っていることも自覚しているのですが。
だから、パソコンに向かってうとうとしてしまったとしても、「ちょっと疲れているのね」くらいのこと。
どちらかと言えば、何もない日に飢えているといった感じなのです。(だから、贅沢ってわかってます!)
「今日なにしよう~。」みたいな日がないとダメみたい。(体の疲労もないわけじゃないけど)
それで今日私は那智さんのお誘いをはじめて断ったのです。
今週もう一日会える日があるかもしれないから、多少の余裕もあるんですが。
それでも、平日の仕事を増やす前、月から金まで五日間毎日お仕事場に会いに行った記録を持つ私が、はじめて断ったのです!!
もちろんすんなりと受け入れられましたが、はじめてのことで那智さんもちょっと驚いたみたいです。
「断れてしまった自分」に私自身を驚き、不安になる。
「那智さん大好き、大好き」って、見えない尻尾をブンブン振っている私が、恐らくお互いにとって居心地の良い関係なはず。
一度断ったくらいで、何も変わらないでしょうけど、かつて「潮が引くように」付き合っていた男性に冷めていった記憶を思い出して、こんなことで不安になる。
でも、じゃあ引かないように努力して、どうなるものでもないから、自分の心を静観するしかないのです。
会えるはずだった時間に那智さんから電話が来て、いつものようにお話ししていて、沸き上がる気持ちに安堵する。
「那智さん大好き、那智さんに会いたい」
休息できる余裕でそう思えるのかもしれないけど、いつものテンションが嬉しい。
「那智さん、いまから会いましょうか?!」ニコニコしながら提案すると
「ふざけるな(「ふ」と「ざ」の間に「っ」が入る感じでお読みください)!!!」
はい、おっしゃるとおりです。
そして、いまよい気分でパソコンに向かっています。
今日は断った。
それでも「那智さん大好き」は変わらなくて嬉しい、だから、更新しよう♪
週末はおとなしくてごめんなさい。
それでも見に来てくれる人はいる。
嬉しくて、持続できる。
那智さんと付き合って数年経つけど、相変わらずの「大好き」テンションは変わらない。
こちらもずっと持続です。
「旅行」の続き、もう少しお待ちください。
旅行2
独特な幸福感
ホテルに到着して夕飯までの数時間。
お茶を煎れたり景色を眺めたりしてのんびり過ごす・・・そんな時間はほとんどない(笑)
一休みしてすぐに鞭で打たれる(「非日常的な日常」の「知らないこと」に書いてあります)
痛みに耐えて、ぐったりしている私。
「誰も来ないうちにお風呂に入った方がいいじゃない?」という那智さんの提案で我に返る。
そうそう、私の体は行きの縄と鞭の痕で、悲惨なことになっているんだった。
一緒にチェックインした年配女性の団体に裸で会いたくはない。
急いでお風呂に向かう。
ロビーのラウンジで待ち合わせることにして別れる。
幸い先客はいないようだ。
体を流して湯船につかる。
全面ガラス張りで、目の前に絶景が広がる。
ちょうど陽が沈みかけているころで、雲も山肌もすべてがオレンジ色に包まれている。
こんなにも種類があるのかと思えるくらいに、オレンジ色がいろんなオレンジ色に刻々と変化していく様子はため息が出るほど美しい。
湯船につかる時に、鞭の傷で皮膚がしみたことさえ忘れてしまいそうだ。
がやがやと人の気配がしてきた。
先程の女性の団体が入ってきたのだ。
もう、全部洗ってある私は長い時間背中をさらさずにすむことに安堵して、さあどのタイミングで上がろうかと思案する。
どちらにしても、一瞬は肌を見せないといけないのだ。
様子を伺っている間に、こそこそしていることがバカらしくなってきてしまった。
そんなに人の体に注目はしないだろう。
もし、見られたとしてもかまうもんか、これは愛されている証拠なのだ。
「不快な思いをさせたら、ごめんなさい」と思いつつ私は普通にお風呂を出る。
思いの外、早く上がることになってしまった。
ホテルのサービスでシャンパンを一杯ご馳走してくれるそうなので、いただいてラウンジで那智さんを待つ。
窓際の木でできたカウンターに腰掛けて、那智さんを待つ。
外はずいぶんと暮れてきて、オレンジ色は濃紺へ変わってしまった。
かすかに残る明るさが山の輪郭を縁取るだけだ。
窓ガラスには、濡れた髪をアップにした浴衣姿の幸せそうな私がいる。
幸せな時間は、はじまると終わりに向けて進む悲しい時間にもなる。
一瞬感傷に浸りそうになるけど、お風呂上がりのシャンパンの美味しさが、それを甘い痛みにとどめてくれる。
楽しい時間はこれからも続く。
シャンパンの泡のように、ひとつが消えてもまた生まれる。
那智さんは私のなくならないシャンパンだ。
ずっとずっと幸せの供給をしてくれる。
どんどん暗くなっていく景色を見ていても不安じゃない、那智さんがもうすぐ来てくれる。
(って、随分長風呂で、かなり待たされました 笑)
一旦戻って、夕食に向かうのだけど、ここでもただではすましてくれない。
股縄をして夕飯だ。
10mもある麻縄を下腹部だけに巻き付けるから、至るところがぐるぐる巻きで厚ぼったくなっている。
特に後ろ。
Tバックといおうか、ふんどしといおうか、お尻に一本通った縄ははじめに立てに2、3本その後それを包むように螺旋状にぐるぐると。
多少浴衣のお尻が不自然に膨らんではいるが、なんとか人目には耐えられる。
困ったのは座るときだ。
座るといろんなところが痛くなってしまう。
お尻のぐるぐる巻きが尾てい骨に当たるし、その他も引きつれるし。
唯一、ある角度に座ると痛さが軽減されることがわかって、私はずっとその角度でお食事。
創作懐石のようなお食事は、若い板前さん1人で用意して、給仕まで努めている。
独創的な料理が並び、日本酒と共に舌鼓を打つ。
複雑な味に「これは何が入っている」なんて当てながら食べるのはとても楽しい。
そんな中、私は箸を落としてしまったのだ。
さすがに拾って使うわけにはいかない。
見回すと、その板前さんは離れた席に配膳している最中だ。
頃合いを見計らって声を掛けるけど、残念ながら気付いてもらえなかった。
しばらく様子をみていると、ふと那智さんが立ち上がって板前さんのところにお箸をもらいにいってくれた。
なぜかしら、こんなことさえ嬉しい。
ずっと私は男性に対して、こういう役目を引き受けてきた。
動いてもらうことに申し訳なさを感じてしまうからだ。
だから、こんなことが嬉しい。
そして、感謝の気持ちだけで、「申し訳ない」と必要以上に卑下することのない気分が、更に嬉しい。
こんなことで、涙が出てきてしまう。
お酒のせいかな。
それとも、股縄が思った以上に苦痛だったからかしら。
涙が出ることが不思議で、泣けることが幸福で、涙の訳を探るのはやめにして、泣き笑いしながらお箸を受け取る。
ホテルに到着して夕飯までの数時間。
お茶を煎れたり景色を眺めたりしてのんびり過ごす・・・そんな時間はほとんどない(笑)
一休みしてすぐに鞭で打たれる(「非日常的な日常」の「知らないこと」に書いてあります)
痛みに耐えて、ぐったりしている私。
「誰も来ないうちにお風呂に入った方がいいじゃない?」という那智さんの提案で我に返る。
そうそう、私の体は行きの縄と鞭の痕で、悲惨なことになっているんだった。
一緒にチェックインした年配女性の団体に裸で会いたくはない。
急いでお風呂に向かう。
ロビーのラウンジで待ち合わせることにして別れる。
幸い先客はいないようだ。
体を流して湯船につかる。
全面ガラス張りで、目の前に絶景が広がる。
ちょうど陽が沈みかけているころで、雲も山肌もすべてがオレンジ色に包まれている。
こんなにも種類があるのかと思えるくらいに、オレンジ色がいろんなオレンジ色に刻々と変化していく様子はため息が出るほど美しい。
湯船につかる時に、鞭の傷で皮膚がしみたことさえ忘れてしまいそうだ。
がやがやと人の気配がしてきた。
先程の女性の団体が入ってきたのだ。
もう、全部洗ってある私は長い時間背中をさらさずにすむことに安堵して、さあどのタイミングで上がろうかと思案する。
どちらにしても、一瞬は肌を見せないといけないのだ。
様子を伺っている間に、こそこそしていることがバカらしくなってきてしまった。
そんなに人の体に注目はしないだろう。
もし、見られたとしてもかまうもんか、これは愛されている証拠なのだ。
「不快な思いをさせたら、ごめんなさい」と思いつつ私は普通にお風呂を出る。
思いの外、早く上がることになってしまった。
ホテルのサービスでシャンパンを一杯ご馳走してくれるそうなので、いただいてラウンジで那智さんを待つ。
窓際の木でできたカウンターに腰掛けて、那智さんを待つ。
外はずいぶんと暮れてきて、オレンジ色は濃紺へ変わってしまった。
かすかに残る明るさが山の輪郭を縁取るだけだ。
窓ガラスには、濡れた髪をアップにした浴衣姿の幸せそうな私がいる。
幸せな時間は、はじまると終わりに向けて進む悲しい時間にもなる。
一瞬感傷に浸りそうになるけど、お風呂上がりのシャンパンの美味しさが、それを甘い痛みにとどめてくれる。
楽しい時間はこれからも続く。
シャンパンの泡のように、ひとつが消えてもまた生まれる。
那智さんは私のなくならないシャンパンだ。
ずっとずっと幸せの供給をしてくれる。
どんどん暗くなっていく景色を見ていても不安じゃない、那智さんがもうすぐ来てくれる。
(って、随分長風呂で、かなり待たされました 笑)
一旦戻って、夕食に向かうのだけど、ここでもただではすましてくれない。
股縄をして夕飯だ。
10mもある麻縄を下腹部だけに巻き付けるから、至るところがぐるぐる巻きで厚ぼったくなっている。
特に後ろ。
Tバックといおうか、ふんどしといおうか、お尻に一本通った縄ははじめに立てに2、3本その後それを包むように螺旋状にぐるぐると。
多少浴衣のお尻が不自然に膨らんではいるが、なんとか人目には耐えられる。
困ったのは座るときだ。
座るといろんなところが痛くなってしまう。
お尻のぐるぐる巻きが尾てい骨に当たるし、その他も引きつれるし。
唯一、ある角度に座ると痛さが軽減されることがわかって、私はずっとその角度でお食事。
創作懐石のようなお食事は、若い板前さん1人で用意して、給仕まで努めている。
独創的な料理が並び、日本酒と共に舌鼓を打つ。
複雑な味に「これは何が入っている」なんて当てながら食べるのはとても楽しい。
そんな中、私は箸を落としてしまったのだ。
さすがに拾って使うわけにはいかない。
見回すと、その板前さんは離れた席に配膳している最中だ。
頃合いを見計らって声を掛けるけど、残念ながら気付いてもらえなかった。
しばらく様子をみていると、ふと那智さんが立ち上がって板前さんのところにお箸をもらいにいってくれた。
なぜかしら、こんなことさえ嬉しい。
ずっと私は男性に対して、こういう役目を引き受けてきた。
動いてもらうことに申し訳なさを感じてしまうからだ。
だから、こんなことが嬉しい。
そして、感謝の気持ちだけで、「申し訳ない」と必要以上に卑下することのない気分が、更に嬉しい。
こんなことで、涙が出てきてしまう。
お酒のせいかな。
それとも、股縄が思った以上に苦痛だったからかしら。
涙が出ることが不思議で、泣けることが幸福で、涙の訳を探るのはやめにして、泣き笑いしながらお箸を受け取る。
旅行3
独特な幸福感
旅行のお話もそろそろおしまいにしようかと思います。
最後は「帰り道」。
もっと過激なことをご想像されていたかたがいらっしゃったら、ごめんなさい。
気持ちハートフルにまとめさせていただきました。(充分過激!?そんなことないですよね・・)
本当は「野外露出未遂」や「こたつの上の排泄ショー」など、過激になりそうなこともあるんですが、それは内緒にします(また、いつかって書くと、書くまで那智さんに許してもらえないから「内緒」で♪ちょっと学習)
そのホテルは山の上にあるから、送迎バスに乗らないと帰れない。
チェックアウトを澄ませて、バスの時間までまだ随分ある。
ロビーの横のラウンジが待合室のようになっていて、続々とチェックアウトした人が入ってくる。
お散歩を終えて、私たちもそのラウンジで待つことにする。
この1時間ほどをどう過ごそうか、2人でいる時間が刻々と減っていくのだ。
それをお互いわかっているけど口にしないで、いかにこの時間を楽しくするか、暗黙の了解だ。
残ったウイスキーを飲んでしまおうと、バックから取り出す那智さん。
ラウンジ内にアルコールの匂いが立ちこめる。
午前中から何やっているとまわりに思われはしないか、すぐ人目を気にする私。
勧められて、一回は首を横に振る。
人目と、ウイスキーが苦手なことと、行きのバスで少し車酔いをしてしまった私は帰りも心配。
いろんな理由で首を振るけど、「一緒に飲んだ方が楽しいよ。」と那智さんはまた勧める。
暗黙の了解だ。
私も一緒に楽しむんだ。
那智さんの企画に乗っかって楽しむんだ。
ほんの少し飲んだだけで、もう良い気分。
なんでもないことが、おかしくて楽しくて、くすくす笑う。
やっぱり乗っかって正解。
ホテルを後にするまでの、ともすれば間延びしそうな1時間を、楽しい時間にしてくれた。
それでもまだ、バスの発車時間まで20分くらいはあるから、私は念のため、ホテルの人に酔い止めをもらいにフロントに行ってみる。
すぐには見当たらないようで、親切なスタッフは事務所の中に入って探してくれている。
那智さんが外に出て眺めの良いベンチに腰掛け煙草を吸っているのが見える。
ああ、私も早くあそこに行きたい。
隣に座って、景色をまぶたに焼き付けたい。
「楽しかったですね~。」なんて言いながら、ちょっといちゃいちゃしたい。
でも、なかなかスタッフは戻ってきてくれない。
せっかくの親切を無駄にするわけにはいかないし、私も不安だから、我慢してフロントで待つ。
やっと見つけてくれて、いただいた酔い止めは「顆粒」のものだった。
が~ん。
子供みたいで恥ずかしいのですが、私は粉薬が飲めないのです。
厳しい!!
でも、飲まないわけにはいかない、百歩譲って「顆粒」だから、なんとかなるだろう。
売店に移動して、喫茶コーナーでお水をもらって、悪戦苦闘おえってなりながらもなんとか喉に流し込む。
その売店からは、那智さんの姿が見えない。
急いで外に出ると、もうバスが到着してみんな中に乗り込んでいるところだった。
まだ出発時間まで数分残っているはずなのに!!
よく考えてみれば、出発時間は出発する時間だ。
その前に到着して乗り込む作業時間を考えれば、早く来ることは当然だった。
いちゃいちゃしたかったのです~。
名残惜しむ時間を過ごしたかったのです~。
バカな私。
駆け寄って、那智さんに「遅い」と頭を小突かれて、「お話ししたかったの~。」と半べそで地団駄を踏む30代後半♪
とても残念だけど、こんなことで半べそになる自分に驚き呆れ、幸せになる。
行きと違い、帰りの特急電車は空いていた。
那智さんは面白がって、一番後ろに移動して、そこで私を抱こうとする。
帰りはジーンズにしたからなかなか上手くいかずに、結局諦めて指定席に戻る。
暗黙の了解だ。
この時間を楽しくしよう。
かなり無理に「淋しい」気持ちを押し込めて、私は痛々しいくらい穏やかに笑う。
ふと那智さんの手が私の頭に伸び修さんの太股に頭を乗せる。
白髪を抜くのだ。
他の人は知らないけど、私は多少白髪がある。
加齢だけじゃないと思う。
表面ははそれほど目立たなくてもかき分けるとけっこうあるみたいだ。
黒髪だから、なおのこと気になるようで、時々那智さんは白髪を抜く。
これは、那智さんが私に対して「是が非でも」って状態になる唯一のこと。
お仕事場に遊びに行っても、普段は素っ気ないくらい別れ際はあっさりされるのに、白髪を抜いているときだけは「お願い!!もう少しいて!!」って感じになるのだ。
それはそれは、夢中になってくれる。
私に夢中になってくれることは嬉しいのだが、それが始まると、もうそれ以外なにもなしになってしまってちょっと淋しい。
帰りの電車でそれをはじめたのだ。
「嫌だ、それに夢中になって、この貴重な時間を過ごしたくない」
案の定、全然おしまいになる気配がない。
それでも、髪を触られていることは気持ち良くてうっとりしはじめる。
ここで、気が付いた。
これが那智さんの「暗黙の了解」なんだ。
いま那智さんは指先から、私に幸福を注いでくれているんだ。
そう気付いたら、これはもう幸せ以外の何ものでもない。
会話はなくなった。
私は静かに目を瞑り、電車の揺れと、那智さんの体温に身を任せてこの大切な時を味わい尽くす。
どうか、永遠に下車駅に到着しないでほしい。
このままずっと揺られていたい。
そんな願いは叶うはずもなく、電車は駅に到着する。
別々のホームに向かう。
言葉少なに、でも、一生懸命笑ってさようならをする。
充分幸せだったのだ。
私たちは帰ってやらなきゃいけないことがある。
在来線に乗り換えて、幸い座れてメールを打ち始めると、ここで涙が溢れてくる。
ここは電車の中だ。
必死に堪えるけれど止まらない。
「今頃泣いています。幸せな旅行でした。永遠に電車が止まらなければいいななんて思ってしまいました。」
「りん子のことだけ考えて抜きました。お互い同じ気持ちだね。」
タオルで顔を押さえるけれど、それでも我慢できなくてしゃくり上げて泣いてしまう。
楽しい旅行を台無しにしてはいけない。
でも、一緒にいる時間が長いと離れるのがつらい。
あまり「不倫の悲劇」みたいにしたくないけど、やっぱりちょっとつらい。
きっと那智さんも同じだ。
だけど那智さんはしっかり立っているはずだ。
気持ちを切り替えて、また、明日を迎えよう。
私たちと私たちを取り巻く人々が、明日も良い日にを迎えられますように、祈りながら。
旅行のお話もそろそろおしまいにしようかと思います。
最後は「帰り道」。
もっと過激なことをご想像されていたかたがいらっしゃったら、ごめんなさい。
気持ちハートフルにまとめさせていただきました。(充分過激!?そんなことないですよね・・)
本当は「野外露出未遂」や「こたつの上の排泄ショー」など、過激になりそうなこともあるんですが、それは内緒にします(また、いつかって書くと、書くまで那智さんに許してもらえないから「内緒」で♪ちょっと学習)
そのホテルは山の上にあるから、送迎バスに乗らないと帰れない。
チェックアウトを澄ませて、バスの時間までまだ随分ある。
ロビーの横のラウンジが待合室のようになっていて、続々とチェックアウトした人が入ってくる。
お散歩を終えて、私たちもそのラウンジで待つことにする。
この1時間ほどをどう過ごそうか、2人でいる時間が刻々と減っていくのだ。
それをお互いわかっているけど口にしないで、いかにこの時間を楽しくするか、暗黙の了解だ。
残ったウイスキーを飲んでしまおうと、バックから取り出す那智さん。
ラウンジ内にアルコールの匂いが立ちこめる。
午前中から何やっているとまわりに思われはしないか、すぐ人目を気にする私。
勧められて、一回は首を横に振る。
人目と、ウイスキーが苦手なことと、行きのバスで少し車酔いをしてしまった私は帰りも心配。
いろんな理由で首を振るけど、「一緒に飲んだ方が楽しいよ。」と那智さんはまた勧める。
暗黙の了解だ。
私も一緒に楽しむんだ。
那智さんの企画に乗っかって楽しむんだ。
ほんの少し飲んだだけで、もう良い気分。
なんでもないことが、おかしくて楽しくて、くすくす笑う。
やっぱり乗っかって正解。
ホテルを後にするまでの、ともすれば間延びしそうな1時間を、楽しい時間にしてくれた。
それでもまだ、バスの発車時間まで20分くらいはあるから、私は念のため、ホテルの人に酔い止めをもらいにフロントに行ってみる。
すぐには見当たらないようで、親切なスタッフは事務所の中に入って探してくれている。
那智さんが外に出て眺めの良いベンチに腰掛け煙草を吸っているのが見える。
ああ、私も早くあそこに行きたい。
隣に座って、景色をまぶたに焼き付けたい。
「楽しかったですね~。」なんて言いながら、ちょっといちゃいちゃしたい。
でも、なかなかスタッフは戻ってきてくれない。
せっかくの親切を無駄にするわけにはいかないし、私も不安だから、我慢してフロントで待つ。
やっと見つけてくれて、いただいた酔い止めは「顆粒」のものだった。
が~ん。
子供みたいで恥ずかしいのですが、私は粉薬が飲めないのです。
厳しい!!
でも、飲まないわけにはいかない、百歩譲って「顆粒」だから、なんとかなるだろう。
売店に移動して、喫茶コーナーでお水をもらって、悪戦苦闘おえってなりながらもなんとか喉に流し込む。
その売店からは、那智さんの姿が見えない。
急いで外に出ると、もうバスが到着してみんな中に乗り込んでいるところだった。
まだ出発時間まで数分残っているはずなのに!!
よく考えてみれば、出発時間は出発する時間だ。
その前に到着して乗り込む作業時間を考えれば、早く来ることは当然だった。
いちゃいちゃしたかったのです~。
名残惜しむ時間を過ごしたかったのです~。
バカな私。
駆け寄って、那智さんに「遅い」と頭を小突かれて、「お話ししたかったの~。」と半べそで地団駄を踏む30代後半♪
とても残念だけど、こんなことで半べそになる自分に驚き呆れ、幸せになる。
行きと違い、帰りの特急電車は空いていた。
那智さんは面白がって、一番後ろに移動して、そこで私を抱こうとする。
帰りはジーンズにしたからなかなか上手くいかずに、結局諦めて指定席に戻る。
暗黙の了解だ。
この時間を楽しくしよう。
かなり無理に「淋しい」気持ちを押し込めて、私は痛々しいくらい穏やかに笑う。
ふと那智さんの手が私の頭に伸び修さんの太股に頭を乗せる。
白髪を抜くのだ。
他の人は知らないけど、私は多少白髪がある。
加齢だけじゃないと思う。
表面ははそれほど目立たなくてもかき分けるとけっこうあるみたいだ。
黒髪だから、なおのこと気になるようで、時々那智さんは白髪を抜く。
これは、那智さんが私に対して「是が非でも」って状態になる唯一のこと。
お仕事場に遊びに行っても、普段は素っ気ないくらい別れ際はあっさりされるのに、白髪を抜いているときだけは「お願い!!もう少しいて!!」って感じになるのだ。
それはそれは、夢中になってくれる。
私に夢中になってくれることは嬉しいのだが、それが始まると、もうそれ以外なにもなしになってしまってちょっと淋しい。
帰りの電車でそれをはじめたのだ。
「嫌だ、それに夢中になって、この貴重な時間を過ごしたくない」
案の定、全然おしまいになる気配がない。
それでも、髪を触られていることは気持ち良くてうっとりしはじめる。
ここで、気が付いた。
これが那智さんの「暗黙の了解」なんだ。
いま那智さんは指先から、私に幸福を注いでくれているんだ。
そう気付いたら、これはもう幸せ以外の何ものでもない。
会話はなくなった。
私は静かに目を瞑り、電車の揺れと、那智さんの体温に身を任せてこの大切な時を味わい尽くす。
どうか、永遠に下車駅に到着しないでほしい。
このままずっと揺られていたい。
そんな願いは叶うはずもなく、電車は駅に到着する。
別々のホームに向かう。
言葉少なに、でも、一生懸命笑ってさようならをする。
充分幸せだったのだ。
私たちは帰ってやらなきゃいけないことがある。
在来線に乗り換えて、幸い座れてメールを打ち始めると、ここで涙が溢れてくる。
ここは電車の中だ。
必死に堪えるけれど止まらない。
「今頃泣いています。幸せな旅行でした。永遠に電車が止まらなければいいななんて思ってしまいました。」
「りん子のことだけ考えて抜きました。お互い同じ気持ちだね。」
タオルで顔を押さえるけれど、それでも我慢できなくてしゃくり上げて泣いてしまう。
楽しい旅行を台無しにしてはいけない。
でも、一緒にいる時間が長いと離れるのがつらい。
あまり「不倫の悲劇」みたいにしたくないけど、やっぱりちょっとつらい。
きっと那智さんも同じだ。
だけど那智さんはしっかり立っているはずだ。
気持ちを切り替えて、また、明日を迎えよう。
私たちと私たちを取り巻く人々が、明日も良い日にを迎えられますように、祈りながら。
お父さん1
惹かれ合う理由
那智さんに出会う前、私は時々こんな想像をしていた。
それは病院だったり、葬儀場だったり、とにかく私の父が亡くなっている場面だ。
私は父の亡骸に向かって「お父さん、私ね、一度で良いからお父さんに『おねえちゃんよりもりん子の方がかわいい』って、言ってほしかったんだよ。」と静かに訴えるのだ。
生きていても叶わないことだけど、亡くなってしまっては完全に不可能になってしまった願いを絶望しながら口にするのだ。
ちょっと悲劇のヒロインを気取る想像で、いつか実際に味わうであろう絶望感を、静かな諦めに変えられるように予行練習していたのだ。
父との関係は相変わらずだった。
おねえちゃんかわいい。
成人して華やかな仕事をする私に鼻高々な気持ちを持ってくれてはいたようだ。
ただ、そのころ近所の人が私を「きれいなお嬢さんね」と誉めてくれると、父は「おねえちゃんの方がかわいい」と首を傾げたり、幼い頃「絵が上手い」と数少ない父が誉めてくれたことを成人した頃には「絵が上手いのはおねえちゃん」と都合良く記憶が塗り替えられていたりと、表面上は苦笑いしてしまうようなことは続いていた。(良いイメージだけで固められた姉も悲劇ですよね)
そんな中で、僅かではあるが父との関係(私の構え方かな)が良くなることが起きた。
それは、私の出産だ。
父は私の産んだ子を、それはそれは可愛がったのだ。
おそらく姉に対するのと同じように、父の脳みそに「なお(仮名)は可愛くて良い子」というイメージが固められたのだ。(実際良い子ですよ♪)
「なおは、かわいいな~。いい顔している。将来は大物になるぞ♪」
鼻の下を伸ばして嬉しそうに子供を眺める父を見て、その子を産んだ私さえ誉められているように錯覚させて、ほんの少し癒されていたのだ。
「それにしても、誰に似たんだろうな~。おまえじゃないよな。鳶が鷹を産んだな♪」
誉めた最後の締めくくりは必ずこの言葉。
ねえねえ、お父さん、最後の一言が余計ですよ!!
ちょっとくらい良い気分でいさせてよ!!
私は、父らしいな~と他人事で苦笑いするしかなかった。
それでも、子供を通してでも誉められるのは、何もないよりはまし。
出産当初、私は実家のすぐ近所に住んでいたから毎日のように実家に行った。
ただ、その頃はまだ実家は商売をしていたから、あまり長居はしなかったが、日中二人っきりになりがちな子育てだが、実家の存在はとてもありがたかった。
子供を誉められることで、多少は癒されたつもりでいたけど、思った以上に求めているものが深いと感じてしまうことがあった。
その日もいつものように実家に行き、お昼ご飯をご馳走になって、母とおしゃべりをしていた。
おしゃべりが盛り上がってきたところで父が「おまえはうるせぇな~。もう帰れ~。」と言ったのだ。
その一言で、私は叱られた子犬のように意気消沈して、そそくさと自宅へ帰る支度をするのだった。
家に帰っても、沈んだ気持ちは収まらず、私は姉に電話をかける。
依存しているのはわかっているけど、我慢できない、おねえちゃん聞いて。
「お父さんに、こんなふうに言われた。」
話しはじめたら、涙が出て止まらない。
姉は慰めてくれる「お父さん、いつもそういう言い方するじゃない。私だって遊びに行くと『もう帰れ~』って言われるよ。あれはお父さん特有の愛情表現なんだよ。深い意味なんてないよ。お父さんの性格わかってるでしょ!!」
確かに、その通りだ、こんなことでしゃくり上げるほど泣いてしまう妹を電話越しで慰める姉はさぞかし困惑しているだろう。
そういうとき、受け取る側の土台がしっかりしていないと、上手に愛情を受け取れないことを感じるのだ。
そして、その土台は「子供を誉めてもらう」くらいでは固められないみたいだ。
多少は良くなったけど、これを完全に解決させることは困難なことだと、あらためて思う。
そんなときに、不謹慎だが「父の死んだとき」を想像して心構えをしておくのだ。
那智さんには、このあと2、3年で出会う。
いろんな旅をして、那智さんに出会って私の土台を固めてくれる。
偶然かもしれないが、不思議なことにその変化に父がはじめに気付いたのだ。
(「惹かれ合う理由」の「尊敬」から「毛布」あたりを読んでいただければ、嬉しいです)
那智さんに「見返りを期待せず、お父さんに自然に接する」と教えられたことは、思いの外私の心を軽くした。
自分でも実感できるくらい父に対して楽な気持ちでいられるようになっていった。
那智さんがいる」と思って接すると楽だ。
魔法じゃないから、すっきりきれいとはいかないかもしれないけど、本当に楽になった。
私が新しく司会の仕事をはじめようとした時、主人や母に実務面でお世話になるのだから、きちんと「挑戦したい」思い伝え、お願いをした。
そのとき母が「難しいと思うけど、やってごらん。そういえば前にお父さんが『りん子は最近明るくなったな』って言っていたけど、やりたいことを見つけたから、そう感じたのかな?」と言ったのだ。
私は決して暗くない、きっと明るいと思われているほうだ。
だから、母としては「お父さん、またとんちんかんなこと言ってる」くらいに捉えていたようだ。
父の私に対するイメージが「明るくない」だったのが、いつものように父の勝手なスイッチが入って根拠なく「りん子は明るくなった」にキャラ変更しただけなのかもしれない。(それが当たり前なくらい、浮世離れした人なのです)
でも、タイムリーなキャラ変更は、私はいまのまま自然にいればいいんだという、安定した気持ちにさせてくれたのだった。
那智さんに出会う前、私は時々こんな想像をしていた。
それは病院だったり、葬儀場だったり、とにかく私の父が亡くなっている場面だ。
私は父の亡骸に向かって「お父さん、私ね、一度で良いからお父さんに『おねえちゃんよりもりん子の方がかわいい』って、言ってほしかったんだよ。」と静かに訴えるのだ。
生きていても叶わないことだけど、亡くなってしまっては完全に不可能になってしまった願いを絶望しながら口にするのだ。
ちょっと悲劇のヒロインを気取る想像で、いつか実際に味わうであろう絶望感を、静かな諦めに変えられるように予行練習していたのだ。
父との関係は相変わらずだった。
おねえちゃんかわいい。
成人して華やかな仕事をする私に鼻高々な気持ちを持ってくれてはいたようだ。
ただ、そのころ近所の人が私を「きれいなお嬢さんね」と誉めてくれると、父は「おねえちゃんの方がかわいい」と首を傾げたり、幼い頃「絵が上手い」と数少ない父が誉めてくれたことを成人した頃には「絵が上手いのはおねえちゃん」と都合良く記憶が塗り替えられていたりと、表面上は苦笑いしてしまうようなことは続いていた。(良いイメージだけで固められた姉も悲劇ですよね)
そんな中で、僅かではあるが父との関係(私の構え方かな)が良くなることが起きた。
それは、私の出産だ。
父は私の産んだ子を、それはそれは可愛がったのだ。
おそらく姉に対するのと同じように、父の脳みそに「なお(仮名)は可愛くて良い子」というイメージが固められたのだ。(実際良い子ですよ♪)
「なおは、かわいいな~。いい顔している。将来は大物になるぞ♪」
鼻の下を伸ばして嬉しそうに子供を眺める父を見て、その子を産んだ私さえ誉められているように錯覚させて、ほんの少し癒されていたのだ。
「それにしても、誰に似たんだろうな~。おまえじゃないよな。鳶が鷹を産んだな♪」
誉めた最後の締めくくりは必ずこの言葉。
ねえねえ、お父さん、最後の一言が余計ですよ!!
ちょっとくらい良い気分でいさせてよ!!
私は、父らしいな~と他人事で苦笑いするしかなかった。
それでも、子供を通してでも誉められるのは、何もないよりはまし。
出産当初、私は実家のすぐ近所に住んでいたから毎日のように実家に行った。
ただ、その頃はまだ実家は商売をしていたから、あまり長居はしなかったが、日中二人っきりになりがちな子育てだが、実家の存在はとてもありがたかった。
子供を誉められることで、多少は癒されたつもりでいたけど、思った以上に求めているものが深いと感じてしまうことがあった。
その日もいつものように実家に行き、お昼ご飯をご馳走になって、母とおしゃべりをしていた。
おしゃべりが盛り上がってきたところで父が「おまえはうるせぇな~。もう帰れ~。」と言ったのだ。
その一言で、私は叱られた子犬のように意気消沈して、そそくさと自宅へ帰る支度をするのだった。
家に帰っても、沈んだ気持ちは収まらず、私は姉に電話をかける。
依存しているのはわかっているけど、我慢できない、おねえちゃん聞いて。
「お父さんに、こんなふうに言われた。」
話しはじめたら、涙が出て止まらない。
姉は慰めてくれる「お父さん、いつもそういう言い方するじゃない。私だって遊びに行くと『もう帰れ~』って言われるよ。あれはお父さん特有の愛情表現なんだよ。深い意味なんてないよ。お父さんの性格わかってるでしょ!!」
確かに、その通りだ、こんなことでしゃくり上げるほど泣いてしまう妹を電話越しで慰める姉はさぞかし困惑しているだろう。
そういうとき、受け取る側の土台がしっかりしていないと、上手に愛情を受け取れないことを感じるのだ。
そして、その土台は「子供を誉めてもらう」くらいでは固められないみたいだ。
多少は良くなったけど、これを完全に解決させることは困難なことだと、あらためて思う。
そんなときに、不謹慎だが「父の死んだとき」を想像して心構えをしておくのだ。
那智さんには、このあと2、3年で出会う。
いろんな旅をして、那智さんに出会って私の土台を固めてくれる。
偶然かもしれないが、不思議なことにその変化に父がはじめに気付いたのだ。
(「惹かれ合う理由」の「尊敬」から「毛布」あたりを読んでいただければ、嬉しいです)
那智さんに「見返りを期待せず、お父さんに自然に接する」と教えられたことは、思いの外私の心を軽くした。
自分でも実感できるくらい父に対して楽な気持ちでいられるようになっていった。
那智さんがいる」と思って接すると楽だ。
魔法じゃないから、すっきりきれいとはいかないかもしれないけど、本当に楽になった。
私が新しく司会の仕事をはじめようとした時、主人や母に実務面でお世話になるのだから、きちんと「挑戦したい」思い伝え、お願いをした。
そのとき母が「難しいと思うけど、やってごらん。そういえば前にお父さんが『りん子は最近明るくなったな』って言っていたけど、やりたいことを見つけたから、そう感じたのかな?」と言ったのだ。
私は決して暗くない、きっと明るいと思われているほうだ。
だから、母としては「お父さん、またとんちんかんなこと言ってる」くらいに捉えていたようだ。
父の私に対するイメージが「明るくない」だったのが、いつものように父の勝手なスイッチが入って根拠なく「りん子は明るくなった」にキャラ変更しただけなのかもしれない。(それが当たり前なくらい、浮世離れした人なのです)
でも、タイムリーなキャラ変更は、私はいまのまま自然にいればいいんだという、安定した気持ちにさせてくれたのだった。
お父さん2
惹かれ合う理由
「お父さん、癌かもしれない。」
母からの電話を受け取ったのは、子供のお友達親子数組と遊びに来ていた児童館だった。
「明日、検査をするから旅行には行かれない。」
実は、翌日母と姉と私で温泉旅行に行く予定だったのだ。
母が行きたいと言い出した旅行、滅多に自分の希望を口にすることのない母がめずらしく言い出した旅行。
しかし、子供のような父1人で検査に行かせるわけにはいかない。
なんだか、神様のいたずらが過ぎる気がして舌打ちをしたい気分だ。
このところずっと父の食欲が落ちていた。
もともとお酒の大好きな人で、食事よりお酒ばっかりだったけど、それにしても少なくなっていたようだ。
少し前、子供の学校の行事があって、待ち合わせた校門に父が来る姿を遠くから見つけて「なんだか、年取ってしまったな~」と、胸がチクリと痛んでいたので、そのころから体調に表れていたのかもしれない。
痛いことや恐いことが苦手な父だ。
病院なんて大嫌い。
その父が自ら懇意にしている町医に行くほど、不調が深刻だったのだろう。
その町医者が触診するだけで解るほど、胃にできた塊は異変を知らせていた。
父の性格を知っている医師は父には適当なことを言って、あとから母を呼び出して、おそらく癌であること、紹介状を書くから明日すぐに総合病院に検査に行くことを告げた。
そして、母から連絡が来たのだ。
姉と相談して、私たちも旅行はキャンセルする。
そのころ平日に仕事をしていなかった私は、その総合病院が近いこともあり一緒に検査に付きそうことにする。
そこではじめて那智さんにメールを送る。
「その病院でいいのか再検討して。セカンドオピニオンの準備をしたほいが良い。」
即座に返信が来る。
那智さんらしくて、思わず微笑んでしまう。
自分の足でしっかりと生きている人には、ともすればおせっかいになりそうな、こんなメールを送る那智さん。
でも、それが私には嬉しいのだ。
翌日、検査をして、やはりかなり大きな癌が父の胃に巣くっていることがわかって、すぐ入院、翌週には手術ということになった。
悪いところを取って繋げれば、いずれはお酒も飲めるし食べられるようになる、取らなければ胃の下の部分に癌がつまって食べられなくなり餓死する、ということなるのだ。
取ってすっきりしよう、柔らかい物を食べて、お酒が飲めるようになろう。
私たちは、お酒の大好きな父に、もう一度自由を味わってほしくて、父には告知せずに手術に承諾した。
この時はまだ、いろんなものと対峙しなければならないことを、私たち家族は知る由もなかった。
これから先のことは、医師や看護士の言ったことを私の脳みそを通して文章にしたり、家族が聞いたことを咀嚼し直して書きますから、医学的な信憑性はありません。
そして、病院や医療に携わる方々を批判しているものでもありません。
あくまでも、私が見て感じた出来事です。不適切な内容があってもお許しください。
更に、性癖でも「心の歪み」でもない種類の重い話です。
好みがあるでしょうから、お好みに合わなかった方ごめんなさい。
しばらく父の話をさせていただきますね。
これで「惹かれ合う理由」は、一応の完結です。
「お父さん、癌かもしれない。」
母からの電話を受け取ったのは、子供のお友達親子数組と遊びに来ていた児童館だった。
「明日、検査をするから旅行には行かれない。」
実は、翌日母と姉と私で温泉旅行に行く予定だったのだ。
母が行きたいと言い出した旅行、滅多に自分の希望を口にすることのない母がめずらしく言い出した旅行。
しかし、子供のような父1人で検査に行かせるわけにはいかない。
なんだか、神様のいたずらが過ぎる気がして舌打ちをしたい気分だ。
このところずっと父の食欲が落ちていた。
もともとお酒の大好きな人で、食事よりお酒ばっかりだったけど、それにしても少なくなっていたようだ。
少し前、子供の学校の行事があって、待ち合わせた校門に父が来る姿を遠くから見つけて「なんだか、年取ってしまったな~」と、胸がチクリと痛んでいたので、そのころから体調に表れていたのかもしれない。
痛いことや恐いことが苦手な父だ。
病院なんて大嫌い。
その父が自ら懇意にしている町医に行くほど、不調が深刻だったのだろう。
その町医者が触診するだけで解るほど、胃にできた塊は異変を知らせていた。
父の性格を知っている医師は父には適当なことを言って、あとから母を呼び出して、おそらく癌であること、紹介状を書くから明日すぐに総合病院に検査に行くことを告げた。
そして、母から連絡が来たのだ。
姉と相談して、私たちも旅行はキャンセルする。
そのころ平日に仕事をしていなかった私は、その総合病院が近いこともあり一緒に検査に付きそうことにする。
そこではじめて那智さんにメールを送る。
「その病院でいいのか再検討して。セカンドオピニオンの準備をしたほいが良い。」
即座に返信が来る。
那智さんらしくて、思わず微笑んでしまう。
自分の足でしっかりと生きている人には、ともすればおせっかいになりそうな、こんなメールを送る那智さん。
でも、それが私には嬉しいのだ。
翌日、検査をして、やはりかなり大きな癌が父の胃に巣くっていることがわかって、すぐ入院、翌週には手術ということになった。
悪いところを取って繋げれば、いずれはお酒も飲めるし食べられるようになる、取らなければ胃の下の部分に癌がつまって食べられなくなり餓死する、ということなるのだ。
取ってすっきりしよう、柔らかい物を食べて、お酒が飲めるようになろう。
私たちは、お酒の大好きな父に、もう一度自由を味わってほしくて、父には告知せずに手術に承諾した。
この時はまだ、いろんなものと対峙しなければならないことを、私たち家族は知る由もなかった。
これから先のことは、医師や看護士の言ったことを私の脳みそを通して文章にしたり、家族が聞いたことを咀嚼し直して書きますから、医学的な信憑性はありません。
そして、病院や医療に携わる方々を批判しているものでもありません。
あくまでも、私が見て感じた出来事です。不適切な内容があってもお許しください。
更に、性癖でも「心の歪み」でもない種類の重い話です。
好みがあるでしょうから、お好みに合わなかった方ごめんなさい。
しばらく父の話をさせていただきますね。
これで「惹かれ合う理由」は、一応の完結です。