危機管理能力
独特な幸福感
あるとき妙な言いがかりをつけて那智さんにキレてしまったことがある。
『○○させるって言っておいて、してくれない!!』って。
その○○というのは、いま考えても『ひょえ〜〜〜』ということなので、本当はしてくれなくて正解なんだけど。
そのときのわたしのバイオリズムやあれこれで、キレてしまった。
でも、それはバイオリズムだけが原因じゃないんだ。
那智さんは、させるときは有無を言わさずさせるけど、大概はそうじゃない。
『する?』『させよっかな〜』というように話題を振り、そのときのわたしの反応を楽しんで、それで賽を振ることが多い。
その気ままな状態が好きなのです。
だから、事前に『○○する!』と宣言することは少ないの。
『○○する?』とか『○○したらどうする?』というような投げかけになることが多いのです。
それが、いつと限定されていない漠然としたお話ならば『きゃっきゃ』と楽しむのだけど、例えば次回のデートの計画や、今日のこのあとの行動について会話してるときなどは、わたしの脳みその中が一気に忙しくなるのです。
そのキレてしまったときも、那智さんとしては『○○する?』という程度の振りだったのでしょうけど、これから数分後に起こるかもしれない話題だったので、わたしとしては『たられば』で楽しむなんて可愛らしいレベルの思考回路にななれなかったのです。
もし、そうなったら、ああして、こうして、こうやって危険を避けて、それでも那智さんに少しでも不細工に映らないようにするには…、などなど、脳みそフル回転で危機管理能力を発揮して、いろんな敵と闘うのです(笑)
それで最悪の中の最良を自分でシミュレーションしてファイティングポーズで待つ訳です。
でも、それがたまたま那智さんの気まぐれでしなかったりしたときに、ほとんどはホッとするのですが、そのときはなんだか危機管理損のような(ほんとはしたかった!?)気分でつっかかってしまったのだ。
『させるって言っておいて、してくれない!!』
命令されたら困るくせに、文句をいう変なM女(笑)
そんなわたしに那智さんは。
「するとはっきり言ってないよ?それに、今日しなくてもいつかする、それにいつも話題が出たこと は、その通りにはしないだろ!?言ったことよりも、ちょっと酷いことするだろ。だからね、りん子はしてくれないってがっかりすることないの。この次するとき は、もうちょっと酷いことにしてあげるから。」
と、言ってなぐさてくれる。
ん?なに?なんか、なぐさめられてる!?…『してあげる』って…!?
なんだか変な構図?
そう、那智さんは、話題に出したことを実行するときには、その通りになしない。
それより少し酷くするのだ。
だから、『してくれない!!』なんて文句いう必要ないのだ。
おまけ付きでそれ以上の酷いことになるのだから。
言ったことよりも少し酷いことをする、それをずっと身を以て体験しているから、わたしの危機管理能力はどんどん発展してしまう。
今日はこの危機管理能力のお話。(ここまでが前振り!!)
那智さんと遠出するときがあった。
この日の服装は新調したワンピース。
丈の短いAラインと大きな飾りボタンが、ちょっとバービーちゃんを連想させる^^;
いい年してバービーなんだけど、いま流行のレギンズを合わせれば、大人の可愛らしいにもなるので、思い切って着てしまおう!!
特急電車の発車時刻までまだ一時間もあるから、駅構内にあるコーヒーショップでお喋りを楽しむ。
遠出のわくわくも加わって、あっという間の楽しい時間だった。
このワンピースを着ると決まったときから、どこからレギンスは脱ぐことになっていた。
生活圏内から遠く離れるからミニで生足、特急電車で那智さんも遊べるし^^;
そろそろ発車時間も近付いてきたころ、那智さんがふたつの選択肢をくれた。
ひとつは電車のトイレで脱ぐ。
席を立ったときと、トイレから戻って来たときと、服装が変化してることを周りの人が気付いて『?』と思うかもしれないというリスク。
もうひとつは、電車に乗る前、トイレかどこかで脱いで、超ミニ生足姿で駅構内を闊歩する。
まあ、短いスカートの女性なんて履いて捨てるほどいるけれど、この姿に変わる理由を思い描いて自意識過剰のりん子は、充分恥ずかしい。
これを、那智さんがこう聞いてきたの。
「りん子、どうする?電車で脱ぐ?それともここで脱いでいく?」
ここで脱いでいく?
ここで…?
ここで!?
電車のリスクはすぐ理解できた。
でも、『ここで』に対して、わたしの危機管理能力が作動したの。
ここで?
コーヒーショップの、このカウンターで!?
えっと、周りの人…、新聞読んでる、携帯に没頭してる、若い子2人が手鏡持ってメイクしてる…。
一瞬立って、レギンス下ろすの…!?無理!!
ここって言った、ここって、ここよね?トイレとかじゃなくて!?
一瞬のうちに一所懸命に考えて、出た言葉が。
「ここで、ですか!?」(床に向かって指を指す)
「わはは、ここなわけないでしょ!!トイレのつもりだったよ。俺、そこまで考えてないよ〜!!りん子、ここで脱ぎたいの!?」
違うんです!!危機管理能力のせいなのです!!!
また、先日も。
『同性の目』で書いた透け服の話で、まだ微妙な透け具合がいいという話題になる前の、透けシミュレーションで盛り上がっているときのこと。
「あの服、そんなに透けたっけ?」
「はい、ペチコート付けないと下着がはっきりわかります。」
「そうかぁ、じゃあ、今度のデートのとき、着てみる?」
「ええ!?お昼の○○でですか!!!」
そこでわたしの危機管理能力が、またフル回転する。
ペチコートなしであれを着たら、透けてしまうことは避けられない…。
どう足掻いても恥ずかしいことには変わりないのだから、だとしたら、どうすれば視線を跳ね返すことができる!?
ちょっとでも『素敵』にするには、どの下着が透ければまし?
同系色?生地が少ないほうがセクシー?いや、それは恥ずかしすぎる…。
どんな下着が、いいの!!!!(ああ、なんて無駄な抵抗^^;でも、このときはけっこう真剣)
頭の中はぐるぐる。
真剣に考えて、那智さんに質問。
「下着、着けますよね!?」
「はははは、りん子、下着着けたくないの!?俺、そんなこと思ってもなかったよ!!」
「いえ、そういうつもりは全然ないです。」
「りん子は、いつも俺と想像の上を行くな〜。」
違う!
違う!!
違います!!!
那智さんに『酷いこと』の小石を投げられると、わたしの湖面には波紋が広がるのです。
それはいままでの経験上、幾重にも幾重にも広がるのです。
そして、わたしは、いくつもできた波紋の輪の一番遠いところを想定して、危険回避に努めるのです。
で、どうやら、わたしは、その一番酷いことをもとに言葉を発してしまうらしいのです。
その結果。
「俺より上を行く」、と言われてしまうのです。
「りん子、ありがとう、俺の想像の輪を広げてくれて」、なんて言われてしまうのです。
長年培った危機管理能力がそうさせるのだけど、那智さんには『酷いことしてほしい』に見えてしまうらしいのです。
違うのにーと思いながら。
ひとつ上行く(らしい)わたしに、さらにいつものようにちょっと酷いこと上乗せさせて。
気が付けば、当初より2段階酷いことをされるわたしなのでした(当社比)。
あるとき妙な言いがかりをつけて那智さんにキレてしまったことがある。
『○○させるって言っておいて、してくれない!!』って。
その○○というのは、いま考えても『ひょえ〜〜〜』ということなので、本当はしてくれなくて正解なんだけど。
そのときのわたしのバイオリズムやあれこれで、キレてしまった。
でも、それはバイオリズムだけが原因じゃないんだ。
那智さんは、させるときは有無を言わさずさせるけど、大概はそうじゃない。
『する?』『させよっかな〜』というように話題を振り、そのときのわたしの反応を楽しんで、それで賽を振ることが多い。
その気ままな状態が好きなのです。
だから、事前に『○○する!』と宣言することは少ないの。
『○○する?』とか『○○したらどうする?』というような投げかけになることが多いのです。
それが、いつと限定されていない漠然としたお話ならば『きゃっきゃ』と楽しむのだけど、例えば次回のデートの計画や、今日のこのあとの行動について会話してるときなどは、わたしの脳みその中が一気に忙しくなるのです。
そのキレてしまったときも、那智さんとしては『○○する?』という程度の振りだったのでしょうけど、これから数分後に起こるかもしれない話題だったので、わたしとしては『たられば』で楽しむなんて可愛らしいレベルの思考回路にななれなかったのです。
もし、そうなったら、ああして、こうして、こうやって危険を避けて、それでも那智さんに少しでも不細工に映らないようにするには…、などなど、脳みそフル回転で危機管理能力を発揮して、いろんな敵と闘うのです(笑)
それで最悪の中の最良を自分でシミュレーションしてファイティングポーズで待つ訳です。
でも、それがたまたま那智さんの気まぐれでしなかったりしたときに、ほとんどはホッとするのですが、そのときはなんだか危機管理損のような(ほんとはしたかった!?)気分でつっかかってしまったのだ。
『させるって言っておいて、してくれない!!』
命令されたら困るくせに、文句をいう変なM女(笑)
そんなわたしに那智さんは。
「するとはっきり言ってないよ?それに、今日しなくてもいつかする、それにいつも話題が出たこと は、その通りにはしないだろ!?言ったことよりも、ちょっと酷いことするだろ。だからね、りん子はしてくれないってがっかりすることないの。この次するとき は、もうちょっと酷いことにしてあげるから。」
と、言ってなぐさてくれる。
ん?なに?なんか、なぐさめられてる!?…『してあげる』って…!?
なんだか変な構図?
そう、那智さんは、話題に出したことを実行するときには、その通りになしない。
それより少し酷くするのだ。
だから、『してくれない!!』なんて文句いう必要ないのだ。
おまけ付きでそれ以上の酷いことになるのだから。
言ったことよりも少し酷いことをする、それをずっと身を以て体験しているから、わたしの危機管理能力はどんどん発展してしまう。
今日はこの危機管理能力のお話。(ここまでが前振り!!)
那智さんと遠出するときがあった。
この日の服装は新調したワンピース。
丈の短いAラインと大きな飾りボタンが、ちょっとバービーちゃんを連想させる^^;
いい年してバービーなんだけど、いま流行のレギンズを合わせれば、大人の可愛らしいにもなるので、思い切って着てしまおう!!
特急電車の発車時刻までまだ一時間もあるから、駅構内にあるコーヒーショップでお喋りを楽しむ。
遠出のわくわくも加わって、あっという間の楽しい時間だった。
このワンピースを着ると決まったときから、どこからレギンスは脱ぐことになっていた。
生活圏内から遠く離れるからミニで生足、特急電車で那智さんも遊べるし^^;
そろそろ発車時間も近付いてきたころ、那智さんがふたつの選択肢をくれた。
ひとつは電車のトイレで脱ぐ。
席を立ったときと、トイレから戻って来たときと、服装が変化してることを周りの人が気付いて『?』と思うかもしれないというリスク。
もうひとつは、電車に乗る前、トイレかどこかで脱いで、超ミニ生足姿で駅構内を闊歩する。
まあ、短いスカートの女性なんて履いて捨てるほどいるけれど、この姿に変わる理由を思い描いて自意識過剰のりん子は、充分恥ずかしい。
これを、那智さんがこう聞いてきたの。
「りん子、どうする?電車で脱ぐ?それともここで脱いでいく?」
ここで脱いでいく?
ここで…?
ここで!?
電車のリスクはすぐ理解できた。
でも、『ここで』に対して、わたしの危機管理能力が作動したの。
ここで?
コーヒーショップの、このカウンターで!?
えっと、周りの人…、新聞読んでる、携帯に没頭してる、若い子2人が手鏡持ってメイクしてる…。
一瞬立って、レギンス下ろすの…!?無理!!
ここって言った、ここって、ここよね?トイレとかじゃなくて!?
一瞬のうちに一所懸命に考えて、出た言葉が。
「ここで、ですか!?」(床に向かって指を指す)
「わはは、ここなわけないでしょ!!トイレのつもりだったよ。俺、そこまで考えてないよ〜!!りん子、ここで脱ぎたいの!?」
違うんです!!危機管理能力のせいなのです!!!
また、先日も。
『同性の目』で書いた透け服の話で、まだ微妙な透け具合がいいという話題になる前の、透けシミュレーションで盛り上がっているときのこと。
「あの服、そんなに透けたっけ?」
「はい、ペチコート付けないと下着がはっきりわかります。」
「そうかぁ、じゃあ、今度のデートのとき、着てみる?」
「ええ!?お昼の○○でですか!!!」
そこでわたしの危機管理能力が、またフル回転する。
ペチコートなしであれを着たら、透けてしまうことは避けられない…。
どう足掻いても恥ずかしいことには変わりないのだから、だとしたら、どうすれば視線を跳ね返すことができる!?
ちょっとでも『素敵』にするには、どの下着が透ければまし?
同系色?生地が少ないほうがセクシー?いや、それは恥ずかしすぎる…。
どんな下着が、いいの!!!!(ああ、なんて無駄な抵抗^^;でも、このときはけっこう真剣)
頭の中はぐるぐる。
真剣に考えて、那智さんに質問。
「下着、着けますよね!?」
「はははは、りん子、下着着けたくないの!?俺、そんなこと思ってもなかったよ!!」
「いえ、そういうつもりは全然ないです。」
「りん子は、いつも俺と想像の上を行くな〜。」
違う!
違う!!
違います!!!
那智さんに『酷いこと』の小石を投げられると、わたしの湖面には波紋が広がるのです。
それはいままでの経験上、幾重にも幾重にも広がるのです。
そして、わたしは、いくつもできた波紋の輪の一番遠いところを想定して、危険回避に努めるのです。
で、どうやら、わたしは、その一番酷いことをもとに言葉を発してしまうらしいのです。
その結果。
「俺より上を行く」、と言われてしまうのです。
「りん子、ありがとう、俺の想像の輪を広げてくれて」、なんて言われてしまうのです。
長年培った危機管理能力がそうさせるのだけど、那智さんには『酷いことしてほしい』に見えてしまうらしいのです。
違うのにーと思いながら。
ひとつ上行く(らしい)わたしに、さらにいつものようにちょっと酷いこと上乗せさせて。
気が付けば、当初より2段階酷いことをされるわたしなのでした(当社比)。
リードを付けて1
非日常的な日常
もうかなり機は熟してる。
那智さんがいつものホテル街の数十mじゃないところでわたしをわんこにしたいと思ってから、ずいぶんわたしのあわあわや那智さん自身の心の動きを楽しんでる。
もう、それを楽しむ時期は終わりに近付いてると、那智さんもわたしも感じている。
百貨店のアクセサリー売り場?
コンビニからホテル街まで?
最近のお気に入り候補は、百貨店の側面、ショウウィンドウが並ぶ通路。
数々のブランドショップのロゴマークとガラス越しに見える上品なディスプレイ、その前をりん子をわんこにして散歩する。
那智さんが目をつけている百貨店の側面は、側面だから、正面玄関のある大通りに比べたら、人通りは若干少ない。
散歩や写真を撮る余裕が持てる。
「エ○メスの前で写真撮ったらいいだろうな〜」なんて言ってる。
ここのところデートの度に、コンビニの前や百貨店を通り過ぎるとき『やる!?』とわたしをからかい、反応を楽しんでいる。
そんな中、わたしは、また自らお墓に穴を掘ってしまった。
リードがほしいと言ってしまったの。
いままで使っていたリードは犬用のものではなく、100円ショップなどに売ってるキーチェーンのようなものを簡易リードにしていた。
M女さんのブログで犬用のしっかりしたリードを見る度に、こういうのがいいな〜と思っていたのだ。
那智さんはふたりきりのときには、首輪にリードということはあまりしないのだけど、それでも時々してもらうときには、ちゃんとしたリードがいいと思い、それを伝えたのだ。
『はい、そうですか。じゃあ、ふたりのときにしましょうね』なんてお返事が来るはずはなく。
「いいよ、買ってあげる。でも、それを買うってことは百貨店わんこを受け入れるってとこだよね〜。」
と。
ああ、確かに、いりん子のタイミングでそれをお願いするってことは、こういう流れになるよね…。
一歩先を読めない自分に、ため息。(それともしたかったのか!?笑)
那智さんが買ってくれたリードは赤とピンクの2色を編んであるもの。
最初お電話で『ショッキングピンク』と聞いたときには、黒などのシックな物をイメージしていたから、ちょっと残念だったけど。
買ってから、次のデートのときに実際見せてもらうと、とってもきれいで可愛い!!
それを付ける姿を想像して、なんだかとても嬉しくなった。
嬉しい、可愛い、付けてみたい!!
そう思うものの、それを見せられたのは、百貨店の側面。
その前に鞄から首輪を出し、『さ、付けて』と手渡された。
歩きながら首輪を付ける。
これだけ取っても、妙な光景にならないか、気になってしまう。
少しずつ百貨店に近付き、正面玄関の前に立つ。
万事休す?
開店時間前だった。
命拾いした思い。
「ああ、残念だね。」
そういって、正面玄関を横切り、ショウウィンドウが並ぶ側面に向かう。
怖々付いて行く。
角を曲がったところで、鞄から取り出しはじめてリードを見せてくれた。
嬉しい!!可愛い!!
一瞬心が跳ね上がる。
でも、いりん子こで付けることは避けたい。
百貨店の側面のショウウィンドウ。
実際立ってみると、距離がかなりある。
この距離は、さすがに那智さんも一瞬たじろいだはずだ。
そして、思った以上に人がいる。
「やる?」
小さく、でも、強く首を横に振る。
無理です、無理です、那智さん。
那智さんも、そう言ってみたものの、今日はそのテンションは低いらしい。
そばでディスプレイを直している店員さんがいることもあって、わたしの拒否は比較的あっさりと受け入れてもらった。
第一関門クリア。
でも、まだ安心できない。
面白がって、わたしにリードを渡し、掌と体であわあわと隠しながら歩かせ、そのままコンビニに。
でも、ここでも、先客が入り口前でタバコを吸っていた。
那智さんは、元々そこに人がいるときにはしないのだ。
『ケンカを売っているようだから』というのが那智さんのルール。
ということで、コンビニ前のわんこもお預け(?)
何事もなく、ホテル街に向かうのだった。
(もう、いま思えば、ホテル街の道路?やります!やります!!一般道に比べたら屁でもない…とまでは言いませんが、それほど一般道は勇気がいります)
那智さんは、知ってるの。
那智さんが『やる?』ではなく『やりなさい』と言えば、わたしがするということを。
だから、わたしの拒否は、拒否であってそうじゃない。
ただの那智さんの『楽しみ』のひとつなだけだ。
リードを買ってもらってしまった。
那智さんは、充分事前の『楽しみ』を味わったはずだ。
もう、かなり機は熟している。
ホテル街じゃないところで、わたしがわんこになるのは時間の問題だった。
引っぱりまーすm^^m
もうかなり機は熟してる。
那智さんがいつものホテル街の数十mじゃないところでわたしをわんこにしたいと思ってから、ずいぶんわたしのあわあわや那智さん自身の心の動きを楽しんでる。
もう、それを楽しむ時期は終わりに近付いてると、那智さんもわたしも感じている。
百貨店のアクセサリー売り場?
コンビニからホテル街まで?
最近のお気に入り候補は、百貨店の側面、ショウウィンドウが並ぶ通路。
数々のブランドショップのロゴマークとガラス越しに見える上品なディスプレイ、その前をりん子をわんこにして散歩する。
那智さんが目をつけている百貨店の側面は、側面だから、正面玄関のある大通りに比べたら、人通りは若干少ない。
散歩や写真を撮る余裕が持てる。
「エ○メスの前で写真撮ったらいいだろうな〜」なんて言ってる。
ここのところデートの度に、コンビニの前や百貨店を通り過ぎるとき『やる!?』とわたしをからかい、反応を楽しんでいる。
そんな中、わたしは、また自らお墓に穴を掘ってしまった。
リードがほしいと言ってしまったの。
いままで使っていたリードは犬用のものではなく、100円ショップなどに売ってるキーチェーンのようなものを簡易リードにしていた。
M女さんのブログで犬用のしっかりしたリードを見る度に、こういうのがいいな〜と思っていたのだ。
那智さんはふたりきりのときには、首輪にリードということはあまりしないのだけど、それでも時々してもらうときには、ちゃんとしたリードがいいと思い、それを伝えたのだ。
『はい、そうですか。じゃあ、ふたりのときにしましょうね』なんてお返事が来るはずはなく。
「いいよ、買ってあげる。でも、それを買うってことは百貨店わんこを受け入れるってとこだよね〜。」
と。
ああ、確かに、いりん子のタイミングでそれをお願いするってことは、こういう流れになるよね…。
一歩先を読めない自分に、ため息。(それともしたかったのか!?笑)
那智さんが買ってくれたリードは赤とピンクの2色を編んであるもの。
最初お電話で『ショッキングピンク』と聞いたときには、黒などのシックな物をイメージしていたから、ちょっと残念だったけど。
買ってから、次のデートのときに実際見せてもらうと、とってもきれいで可愛い!!
それを付ける姿を想像して、なんだかとても嬉しくなった。
嬉しい、可愛い、付けてみたい!!
そう思うものの、それを見せられたのは、百貨店の側面。
その前に鞄から首輪を出し、『さ、付けて』と手渡された。
歩きながら首輪を付ける。
これだけ取っても、妙な光景にならないか、気になってしまう。
少しずつ百貨店に近付き、正面玄関の前に立つ。
万事休す?
開店時間前だった。
命拾いした思い。
「ああ、残念だね。」
そういって、正面玄関を横切り、ショウウィンドウが並ぶ側面に向かう。
怖々付いて行く。
角を曲がったところで、鞄から取り出しはじめてリードを見せてくれた。
嬉しい!!可愛い!!
一瞬心が跳ね上がる。
でも、いりん子こで付けることは避けたい。
百貨店の側面のショウウィンドウ。
実際立ってみると、距離がかなりある。
この距離は、さすがに那智さんも一瞬たじろいだはずだ。
そして、思った以上に人がいる。
「やる?」
小さく、でも、強く首を横に振る。
無理です、無理です、那智さん。
那智さんも、そう言ってみたものの、今日はそのテンションは低いらしい。
そばでディスプレイを直している店員さんがいることもあって、わたしの拒否は比較的あっさりと受け入れてもらった。
第一関門クリア。
でも、まだ安心できない。
面白がって、わたしにリードを渡し、掌と体であわあわと隠しながら歩かせ、そのままコンビニに。
でも、ここでも、先客が入り口前でタバコを吸っていた。
那智さんは、元々そこに人がいるときにはしないのだ。
『ケンカを売っているようだから』というのが那智さんのルール。
ということで、コンビニ前のわんこもお預け(?)
何事もなく、ホテル街に向かうのだった。
(もう、いま思えば、ホテル街の道路?やります!やります!!一般道に比べたら屁でもない…とまでは言いませんが、それほど一般道は勇気がいります)
那智さんは、知ってるの。
那智さんが『やる?』ではなく『やりなさい』と言えば、わたしがするということを。
だから、わたしの拒否は、拒否であってそうじゃない。
ただの那智さんの『楽しみ』のひとつなだけだ。
リードを買ってもらってしまった。
那智さんは、充分事前の『楽しみ』を味わったはずだ。
もう、かなり機は熟している。
ホテル街じゃないところで、わたしがわんこになるのは時間の問題だった。
引っぱりまーすm^^m
リードを付けて2
非日常的な日常
明日デートを控え、那智さんとちょっと打ち合わせをする。
あ、そんな大げさなものじゃなくて『どこ行きます〜』みたいな楽しいものです^^
「明日はわんこにさせるつもりだから、四つん這いになっても良い格好で来るんだよ」
これはスカートの丈のことを言ってるの。
長くて引きずってしまうことはもちろんなんだけど、短くてパンツが見えてしまうことも気にして言ってくれているんだ。
面白いなと思う、四つん這いにしてわんこにはさせるけど、下着は見せないようにって。
少しでも危険を排除してくれているんだろうなと思うと、ちょっと嬉しい。
でも、でも、人通りのある一般道?百貨店の中?とにかくそんな場所で四つん這いになることは、ものすごく恥ずかしくて怖くて、勇気がいること。
わんこになってリードを引かれる。
針の穴くらいの憧れはあるけれど、大多数のわたしは『無理!!』と首を横に振っている。
「あのワンピースを着ていこうと思ってたんですけど。」
ミニのワンピという服装を持ち出して、延期作戦。
「パンツ見せながらでいいなら、どうぞ着ておいで。」
却下。
「○○公園でわんこになって浣腸して排泄とどっちがいい?」
「○○公園です。一般道は厳しいです…。」
どうしても普通の道路というのが、居たたまれなくて恐ろしい。
もう四の五の言ってごねる。
「じゃあ、駅前の交差点とショウウィンドウだったら?」
「ええ!?交差点なんて歩く人の邪魔になりますよ〜!!」
「隅を歩けば?でもな、交差点はみんな見てないと思うんだよね。」
確かに、足早に移動する人が多いから、周りの人だけしか気付かないかもしれない。
距離も短い。
ショウウィンドウよりも目立たないかもしれない。
「そ、そ、そうですね…、じゃあ、交差点?」
あり得ないよぉと思いながらも、選択する。
「そうかぁ、俺としては交差点とショウウィンドウでは楽しみ方が違うんだよな。」
交差点は、きっと急ぎ足になるだろう。
大勢の人の中でゲリラ的に楽しむ感じかな?
で、ショウウィンドウでは、ゆっくり散歩する。
堂々とりん子を連れて。
時々、頭撫でたりして。
俺としてはショウウィンドウの楽しみ方が好きなんだよね。
がーーーーーん。
わたしは、わたしの心の動きに驚愕する。
そして、必死に打ち消す。
それでも、一度芽生えてしまった羨望は何度振り払ってもわたしの心を湧かせてしまうのだ。
頭を撫でる。
頭を撫でる。
ああ、わんこになって那智さんにお散歩してもらって、途中で頭を撫でてもらう。
なんて幸福な瞬間だろう。
無理!!と何度も否定しながら、この頭を撫でるというひと言が、わたしの針の穴ほどの憧れを一気に広げるのだ。
そして、広げた先には、自分でも驚くほど大きな欲望が露呈する。
ほんとは、わかっていたのかもしれない。
それが、『頭を撫でる』で表に現れただけなのかもしれない。
その夜、電話を切って、覚悟を決めた。
もう那智さんの全部任せよう。
わたしは那智さんの足下だけ見ていればいい。
何かあったら那智さんがなんとかしてくれる。
だから、覚悟を決めよう。
わたしはわんこになりたいのだもの。
それでも、覚悟は決めたものの、朝になってやっぱり怖いことには変わりない。
考えた末、ミニワンピはやめて、白いふわっとしたスカートを着た。
昨日の電話では『やる』とはっきり言われたわけではないから、ミニワンピを着ていって『これじゃ下着が見えちゃうからNG』になる可能性に期待するという手もある。
だけど、それがかえって那智さんのやる気に火を着けてしまいかねない。
だから、四つん這いになっても大丈夫な短過ぎず長過ぎずの白いスカートを選んだ。
そして、勇気が出なかったときのために、濃い色の下着をバックにしのばせた。
なぜかというと『代替え案』(笑)
『那智さん、わんこのかわりにペチコート脱いで下着変えます。透け感を楽しんで!!』という^^;(「危機管理能力」のお話です)
覚悟を決めるとはいっても、なかなか思い切れないものだ。
それでも、結局は那智さんの気持ちひとつなのですけどね。
朝のおはよう電話で、待ち合わせについて再確認した。
どちらからもわんこの話題は出なかった。
あのきれいなリード。
人々の驚きと軽蔑の視線。
わたしを撫でる那智さんの手の感触。
驚かせてごめんなさいという気持ち。
那智さんの足下の幸福。
シーソーのように、行ったり来たり。
待ち合わせに向かう。
さて、ミニワンピをやめたことは、凶と出るか、吉と出るか。
待ち合わせ場所に先に着いている那智さんを見つけて小走りで近寄る。
那智さんはわたしの姿を一瞥して。
「いいね〜、その白いスカート。そんなの持ってたっけ?」
と気に入ってくれた様子。
…、でも、那智さん、このスカート何度も履いてます(T−T)
そんな、涙は、このあとのセリフでぶっ飛ぶ!!
「いいな、そのスカートでわんこにさせるの。」
「うう(やっぱり…)」
「いや、今日はなしにしようかと思って来たんだけど、そのスカート見たらわんこにさせたくなっちゃった。」
えええええええ!!!!
なに?それ!!
やめるつもりだったのですか?
今日は散々話題に出して『あわあわ』させて、それで満足パターンだったのですか!?
それが、このスカートを見て、やる気になってしまったと?
憧れや覚悟は嘘じゃない。
だけど、とんでもなく勇気がいること。
する直前でも、している最中でさえも、怖さと恥ずかしさと申し訳なさで震えるだろう。
清水の舞台から飛び降りようと体に力を入れたときに『やらなくていいよ』と言われ、ホッとして力を抜いた瞬間に『あ、やっぱりやって』と言われたようなものだ。
会話の一瞬だけど、わたしは『やらない』安堵を感じてしまった。
心が折れる。
白いスカートにしたことが仇になってしまった。
那智さんが、ずんずんと百貨店のほうに向かって歩いていく。
「そうそう、ちょっと条例とか調べてみたんだよね。それに近いもの見当たらなかったよ。」
そ、そりゃあ、条例を制定する人だって、わんこは想定してないでしょう^^;
そんな話を聞きながらわたしは「そちら側は日差しが強いから〜」とか「マ○○に寄りませんか〜」などなど無駄な抵抗を口にする。
なんとかマ○○に寄ることは叶ったけど、いま思い返しても歩いてるときもマ○○の中も何を会話したかほとんど覚えて言いないの^^;
簡単にお茶だけして、すぐマ○○を出た。
マ○○から百貨店までも記憶があまりない。
気が付けば百貨店の前だ。
もちろん開店時間には早いことはもうわかってる。
開店前で、2重のガラス扉の半分だけ開けて中に入って待っていられるスペース、ご年配の方が数人いる。
そこを指して。
「ここで四つん這いになる?笑」
ぶんぶんと首を振る。
角を曲がり、側面のショウウィンドウへ。
今日は、ディスプレイを変えている店員さんはいない。
でも、なんだか人がいっぱいいる(ような感じがする!!)。
ショウウィンドウの一番隅に立つ。
目が眩むような距離。
無理!!
絶対無理!!!
「那智さん、無理です!!」
昨夜、ここで那智さんに任せると覚悟を決め、一瞬でもうっとりできたのに。
いまはもう怖くて足がすくんでしまっている。
「はい。付けて。」
首輪を渡された。
無理、無理…心の中で呪文を唱えるように繰り返す。
鞄からきれいな色のリードを取り出す。
「無理です、那智さん、出さないで!!」
無言で、カチャリと首輪に付けた。
それで、わざと手を離しリードをだらーんとさせる。
きゃーーー!!慌ててかき寄せ、胸の前で丸めて隠す。
ああ、どうしよう、いま那智さんがわたしの手からリードを取って、くいと引っ張ったら。
わたしは、するのだ。
でも、でも、どうしても、一度折れた心が怖がってしまって、ダメ。
「那智さん、ごめんなさい!!那智さんがしないつもりだったって言ったから、くじけてしまって、今日はもう怖くてしかたありません!!!ここではできないです!!」
心からのお願い(笑)
「ん?もう一度確認するよ?今日、ここではできない?」
こくりとうなずく。
「わかった、じゃあ、今日じゃなきゃするね。」
…もう一度こくりとうなずく。
「うん、じゃ、今日はやめよう。」
よかった。
首の皮一枚。
いつかするだろう。
今日だって、『しなさい』と言われれば、する。
だけど、怖さが先に立ってしまって、幸福に変換するのに、時間がかかるか手間がかかるか、しそうだもの。
できれば、わんこになる幸福に早く早く浸りたい。
だから、くじけてしまった今日じゃなくて、よかった。
わんこ回避になって、わんこになるはずだったショウウィンドウを歩く。
やっぱり距離が長い、そして、思った以上に人が通る。
あらためて、怖いと感じてしまう。
回避にはなったけど、それはショウウィンドウでのことであって、那智さんとしては、このまま終わってはちょっとつまらないな〜といった様子で、しばらく百貨店周りを散策する。
もう、くじけまくりのわたしはどこを提案されても首を横に振るばかり。
那智さんも、まあ、その感じを楽しんでいるようにも見えるから、こちらも冗談半分という感じ。
そして、いつものコンビニに近付いてきた。
何もしないのは、ちょっとつまらないな〜と思っている那智さん。
ホテル街の数十mはもう2回やっているから、違う面白さを味わいたいはずだ。
そうなると、あとはこのコンビニで何かするしか残っていない。
コンビニ前に誰かがいれば何もない。
誰かいて。
祈るように歩く。
誰かいてほしい。
でも、那智さんの足下の幸せ、撫でる手、それをヒリヒリするほど望んでいることも、自覚している。
誰かいてほしいの?
誰もいないでほしいの?
混乱しながら、コンビニの角を曲がった。
うう、まだ終わらないです!!!!
明日デートを控え、那智さんとちょっと打ち合わせをする。
あ、そんな大げさなものじゃなくて『どこ行きます〜』みたいな楽しいものです^^
「明日はわんこにさせるつもりだから、四つん這いになっても良い格好で来るんだよ」
これはスカートの丈のことを言ってるの。
長くて引きずってしまうことはもちろんなんだけど、短くてパンツが見えてしまうことも気にして言ってくれているんだ。
面白いなと思う、四つん這いにしてわんこにはさせるけど、下着は見せないようにって。
少しでも危険を排除してくれているんだろうなと思うと、ちょっと嬉しい。
でも、でも、人通りのある一般道?百貨店の中?とにかくそんな場所で四つん這いになることは、ものすごく恥ずかしくて怖くて、勇気がいること。
わんこになってリードを引かれる。
針の穴くらいの憧れはあるけれど、大多数のわたしは『無理!!』と首を横に振っている。
「あのワンピースを着ていこうと思ってたんですけど。」
ミニのワンピという服装を持ち出して、延期作戦。
「パンツ見せながらでいいなら、どうぞ着ておいで。」
却下。
「○○公園でわんこになって浣腸して排泄とどっちがいい?」
「○○公園です。一般道は厳しいです…。」
どうしても普通の道路というのが、居たたまれなくて恐ろしい。
もう四の五の言ってごねる。
「じゃあ、駅前の交差点とショウウィンドウだったら?」
「ええ!?交差点なんて歩く人の邪魔になりますよ〜!!」
「隅を歩けば?でもな、交差点はみんな見てないと思うんだよね。」
確かに、足早に移動する人が多いから、周りの人だけしか気付かないかもしれない。
距離も短い。
ショウウィンドウよりも目立たないかもしれない。
「そ、そ、そうですね…、じゃあ、交差点?」
あり得ないよぉと思いながらも、選択する。
「そうかぁ、俺としては交差点とショウウィンドウでは楽しみ方が違うんだよな。」
交差点は、きっと急ぎ足になるだろう。
大勢の人の中でゲリラ的に楽しむ感じかな?
で、ショウウィンドウでは、ゆっくり散歩する。
堂々とりん子を連れて。
時々、頭撫でたりして。
俺としてはショウウィンドウの楽しみ方が好きなんだよね。
がーーーーーん。
わたしは、わたしの心の動きに驚愕する。
そして、必死に打ち消す。
それでも、一度芽生えてしまった羨望は何度振り払ってもわたしの心を湧かせてしまうのだ。
頭を撫でる。
頭を撫でる。
ああ、わんこになって那智さんにお散歩してもらって、途中で頭を撫でてもらう。
なんて幸福な瞬間だろう。
無理!!と何度も否定しながら、この頭を撫でるというひと言が、わたしの針の穴ほどの憧れを一気に広げるのだ。
そして、広げた先には、自分でも驚くほど大きな欲望が露呈する。
ほんとは、わかっていたのかもしれない。
それが、『頭を撫でる』で表に現れただけなのかもしれない。
その夜、電話を切って、覚悟を決めた。
もう那智さんの全部任せよう。
わたしは那智さんの足下だけ見ていればいい。
何かあったら那智さんがなんとかしてくれる。
だから、覚悟を決めよう。
わたしはわんこになりたいのだもの。
それでも、覚悟は決めたものの、朝になってやっぱり怖いことには変わりない。
考えた末、ミニワンピはやめて、白いふわっとしたスカートを着た。
昨日の電話では『やる』とはっきり言われたわけではないから、ミニワンピを着ていって『これじゃ下着が見えちゃうからNG』になる可能性に期待するという手もある。
だけど、それがかえって那智さんのやる気に火を着けてしまいかねない。
だから、四つん這いになっても大丈夫な短過ぎず長過ぎずの白いスカートを選んだ。
そして、勇気が出なかったときのために、濃い色の下着をバックにしのばせた。
なぜかというと『代替え案』(笑)
『那智さん、わんこのかわりにペチコート脱いで下着変えます。透け感を楽しんで!!』という^^;(「危機管理能力」のお話です)
覚悟を決めるとはいっても、なかなか思い切れないものだ。
それでも、結局は那智さんの気持ちひとつなのですけどね。
朝のおはよう電話で、待ち合わせについて再確認した。
どちらからもわんこの話題は出なかった。
あのきれいなリード。
人々の驚きと軽蔑の視線。
わたしを撫でる那智さんの手の感触。
驚かせてごめんなさいという気持ち。
那智さんの足下の幸福。
シーソーのように、行ったり来たり。
待ち合わせに向かう。
さて、ミニワンピをやめたことは、凶と出るか、吉と出るか。
待ち合わせ場所に先に着いている那智さんを見つけて小走りで近寄る。
那智さんはわたしの姿を一瞥して。
「いいね〜、その白いスカート。そんなの持ってたっけ?」
と気に入ってくれた様子。
…、でも、那智さん、このスカート何度も履いてます(T−T)
そんな、涙は、このあとのセリフでぶっ飛ぶ!!
「いいな、そのスカートでわんこにさせるの。」
「うう(やっぱり…)」
「いや、今日はなしにしようかと思って来たんだけど、そのスカート見たらわんこにさせたくなっちゃった。」
えええええええ!!!!
なに?それ!!
やめるつもりだったのですか?
今日は散々話題に出して『あわあわ』させて、それで満足パターンだったのですか!?
それが、このスカートを見て、やる気になってしまったと?
憧れや覚悟は嘘じゃない。
だけど、とんでもなく勇気がいること。
する直前でも、している最中でさえも、怖さと恥ずかしさと申し訳なさで震えるだろう。
清水の舞台から飛び降りようと体に力を入れたときに『やらなくていいよ』と言われ、ホッとして力を抜いた瞬間に『あ、やっぱりやって』と言われたようなものだ。
会話の一瞬だけど、わたしは『やらない』安堵を感じてしまった。
心が折れる。
白いスカートにしたことが仇になってしまった。
那智さんが、ずんずんと百貨店のほうに向かって歩いていく。
「そうそう、ちょっと条例とか調べてみたんだよね。それに近いもの見当たらなかったよ。」
そ、そりゃあ、条例を制定する人だって、わんこは想定してないでしょう^^;
そんな話を聞きながらわたしは「そちら側は日差しが強いから〜」とか「マ○○に寄りませんか〜」などなど無駄な抵抗を口にする。
なんとかマ○○に寄ることは叶ったけど、いま思い返しても歩いてるときもマ○○の中も何を会話したかほとんど覚えて言いないの^^;
簡単にお茶だけして、すぐマ○○を出た。
マ○○から百貨店までも記憶があまりない。
気が付けば百貨店の前だ。
もちろん開店時間には早いことはもうわかってる。
開店前で、2重のガラス扉の半分だけ開けて中に入って待っていられるスペース、ご年配の方が数人いる。
そこを指して。
「ここで四つん這いになる?笑」
ぶんぶんと首を振る。
角を曲がり、側面のショウウィンドウへ。
今日は、ディスプレイを変えている店員さんはいない。
でも、なんだか人がいっぱいいる(ような感じがする!!)。
ショウウィンドウの一番隅に立つ。
目が眩むような距離。
無理!!
絶対無理!!!
「那智さん、無理です!!」
昨夜、ここで那智さんに任せると覚悟を決め、一瞬でもうっとりできたのに。
いまはもう怖くて足がすくんでしまっている。
「はい。付けて。」
首輪を渡された。
無理、無理…心の中で呪文を唱えるように繰り返す。
鞄からきれいな色のリードを取り出す。
「無理です、那智さん、出さないで!!」
無言で、カチャリと首輪に付けた。
それで、わざと手を離しリードをだらーんとさせる。
きゃーーー!!慌ててかき寄せ、胸の前で丸めて隠す。
ああ、どうしよう、いま那智さんがわたしの手からリードを取って、くいと引っ張ったら。
わたしは、するのだ。
でも、でも、どうしても、一度折れた心が怖がってしまって、ダメ。
「那智さん、ごめんなさい!!那智さんがしないつもりだったって言ったから、くじけてしまって、今日はもう怖くてしかたありません!!!ここではできないです!!」
心からのお願い(笑)
「ん?もう一度確認するよ?今日、ここではできない?」
こくりとうなずく。
「わかった、じゃあ、今日じゃなきゃするね。」
…もう一度こくりとうなずく。
「うん、じゃ、今日はやめよう。」
よかった。
首の皮一枚。
いつかするだろう。
今日だって、『しなさい』と言われれば、する。
だけど、怖さが先に立ってしまって、幸福に変換するのに、時間がかかるか手間がかかるか、しそうだもの。
できれば、わんこになる幸福に早く早く浸りたい。
だから、くじけてしまった今日じゃなくて、よかった。
わんこ回避になって、わんこになるはずだったショウウィンドウを歩く。
やっぱり距離が長い、そして、思った以上に人が通る。
あらためて、怖いと感じてしまう。
回避にはなったけど、それはショウウィンドウでのことであって、那智さんとしては、このまま終わってはちょっとつまらないな〜といった様子で、しばらく百貨店周りを散策する。
もう、くじけまくりのわたしはどこを提案されても首を横に振るばかり。
那智さんも、まあ、その感じを楽しんでいるようにも見えるから、こちらも冗談半分という感じ。
そして、いつものコンビニに近付いてきた。
何もしないのは、ちょっとつまらないな〜と思っている那智さん。
ホテル街の数十mはもう2回やっているから、違う面白さを味わいたいはずだ。
そうなると、あとはこのコンビニで何かするしか残っていない。
コンビニ前に誰かがいれば何もない。
誰かいて。
祈るように歩く。
誰かいてほしい。
でも、那智さんの足下の幸せ、撫でる手、それをヒリヒリするほど望んでいることも、自覚している。
誰かいてほしいの?
誰もいないでほしいの?
混乱しながら、コンビニの角を曲がった。
うう、まだ終わらないです!!!!
9万件です。
独り言
週末はちょっと忙しいわたし。
パソコン覗いたら、おお、9万件突破していました!!
ということで。
おかげさまで9万件です。
ありがとうございます。
内田春菊さんの本で『あたしのこと憶えてる?』という短編小説があります。
記憶がなくなっていってしまう男の子とのラブストーリーだったと思うけど、内容も去ることながら、わたしはこのタイトルがなんとなく、好き。
読んでるからだと思うけど、このタイトル、ちょっと切なくて優しい感じがするのです。
お話とは全然関係ないけれど、この切な優しい気持ちで。
カウンターのひとつひとつに。
コメントをくださった方々に。
メールで内緒話してくれた人に。
あたしのこと憶えてる?
わたしは、あなたのこと憶えているよ〜。
感謝して、そして、気にかけているよ〜。
隅っこで細々と、これからもノロケやくだらないお話を、那智さんとの大切な大切な日々を残していきたいと思います。
楽しんでいただけたら、嬉しいです^^
とってもとっても、ありがとうございました!!
これからも、どうぞよろしくお願いします^^
リードのお話は、ちょっと待っててね♪(なんか、いっぱい引っ張ってる状態になっちゃってますが^^;)
週末はちょっと忙しいわたし。
パソコン覗いたら、おお、9万件突破していました!!
ということで。
おかげさまで9万件です。
ありがとうございます。
内田春菊さんの本で『あたしのこと憶えてる?』という短編小説があります。
記憶がなくなっていってしまう男の子とのラブストーリーだったと思うけど、内容も去ることながら、わたしはこのタイトルがなんとなく、好き。
読んでるからだと思うけど、このタイトル、ちょっと切なくて優しい感じがするのです。
お話とは全然関係ないけれど、この切な優しい気持ちで。
カウンターのひとつひとつに。
コメントをくださった方々に。
メールで内緒話してくれた人に。
あたしのこと憶えてる?
わたしは、あなたのこと憶えているよ〜。
感謝して、そして、気にかけているよ〜。
隅っこで細々と、これからもノロケやくだらないお話を、那智さんとの大切な大切な日々を残していきたいと思います。
楽しんでいただけたら、嬉しいです^^
とってもとっても、ありがとうございました!!
これからも、どうぞよろしくお願いします^^
リードのお話は、ちょっと待っててね♪(なんか、いっぱい引っ張ってる状態になっちゃってますが^^;)
リードを付けて3
非日常的な日常
『リードを付けて1 2』の続きです。
那智さんの歩く速度が緩む。
ああ、ここで止まらないで、ここで止まれば、今日は確実にわんこになる。
コンビニの前には誰もいない。
那智さんルールでは、『あり』の状態。
このコンビニは歩道と店舗の間に駐車(駐輪?)スペースがあって、その駐車スペースにガードレールのような柵があるのだ。
その柵は歩道と店舗の中間辺りにある。
そこまで来た、来てしまった。
「買い物するから、ここで待ってて。」
「四つん這いでですか?」
「うん、リードを結んでおくからね。」
無理です!!
ひとりで待つなんて怖い。
以前、この場面もシミュレーションしてた。
『りん子が外で待ってて、俺がコンビニから出て来たら頭撫でてあげる。いいこで待ってたねって』
これも、わたしの憧れのシーンだ。
でも、やっぱり、さあやりましょうとなると、怖いし恥ずかしいし、無理。
首を振って、首から繋がっているリードを胸に抱えて、小さく抵抗する。
那智さんが手を伸ばし、リードを取ろうとする。
取られまいと抱える腕に力が入る。
わたしは左手を体の前に出し、拒否をしようとした。
その瞬間。
那智さんの右手が『パンッ』とその手を振り払った。
それが合図だった。
『やる?』と遊ぶことから、実行に変わったことを知らせる合図。
こうなると、もうわたしに拒否権はない。
怖い恥ずかしいやりたくないと思っても、やるのだ。
那智さんの意志がわたしの意志になる。
なぜ?
それは、そういう関係だから。
わたしがそういう関係を望んでいるから。
振り払われたわたしの左手はもうリードを抱えるために胸に戻ることはなかった。
もう片方の腕も白旗を挙げ、リードから離す。
那智さんがリード掴んだ。
文字通り那智さんに『渡した』瞬間だった。
とりあえずゆっくり、その場にしゃがむ。
いきなり四つん這いになるよりも、抵抗感を少しでも減らしたくて。
柵の一番低いポールにリードを結ぶ那智さんの手しか見えない。
「お尻を上げるんですよね?」
「そう。」
以前、コンビに前でわんこになったとき、アスファルトに両手両膝はついたけど、怖くてお尻を上げられなかった。
那智さんの望む姿勢は、膝をつきお尻を上げて背中が地面と平行になること。
だから、次はそうしなきゃダメと言われていたの。
両手をアスファルトにつける。
いつもながら、アスファルトが近い。
そして、自分の掌がアスファルトについている不思議。
まだ那智さんが側にいてくれてる。
怖々お尻を上げる。
でも、怖くて、膝の角度は90度にできていない(60度くらい?)。
わたしの姿勢を確認してからか、那智さんがさっと頭を撫でてくれて、離れていった。
ひとりのなっちゃった!!
歩道に背中を向けて、うつむいて髪を垂らして息を潜める。
怖い、恥ずかしい。
アスファルトにつく掌だけを見つめて、ひたすら時間が過ぎるのを待つ。
でも、僅かに、ごく僅かにわんこの喜びも湧く。
それでも、早く早く那智さんと祈る中。
まだ四つん這いになって20秒も経っていないころだ。
「大丈夫ですか?」
背後から男性の声がした。
声かけられてしまった!!!
心臓が口から飛び出そうだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!!!
「はい!!」
顔を上げず固まった体勢のまま、とにかく必死に返事をする。
多分、必死だったから、思いの外大きな声になってしまったような気がする。
心配してくれたのに、ごめんなさい。
もし不快な思いをさせてしまったら、ほんとにごめんなさい。
でも、どうか、わたしを気にしないで!!!
怖さと申し訳ない気持ちで体が震える。
怖くて、なんとか膝を60度にしてお尻を上げていた姿勢を保っていられない。
怯える犬のようにお尻が下がってしまう。
それでも、踵にお尻をつけてしまったら、それは那智さんの望みじゃない。
だから、萎えそうな気持ちをなんとか励まし、ぎりぎりお尻を浮かせるようにする。
アスファルトについた小刻みに震える掌だけを見つめる。
那智さんが買ってくれた可愛い指輪。
そこに気持ちを集中させるの。
声をかけた男性は多分離れていっただろう。
それでも、どこからともなくざわついた空気が伝わってくる。
男性の、女性の、『なに』という囁くのような気配。
消えてしまいたい。
早く、早く、那智さん帰ってきて。
思ったより時間がかかっているように感じられる。
もう、恥ずかしくて死んでしまいそう。
早く、早く、早く!!!!
目を閉じて現実から逃げてしまおうと思ったところで、足音が近付いて来た。
ああ、那智さんだ。
目を開け、靴を見つけると安心して一気に感情が溢れ出す。
「いいこに待ってたね。」
しゃがんで首筋や頭をたくさんたくさん撫でてくれた。
これがほしかったの。
わたしはわんこの体勢のまま、やっと訪れた安堵の時間を噛みしめる。
「那智さん、『大丈夫』って声かけられました!!もう怖くて怖くてしょうがなかったです!!でもお尻つけなかったです。ちょっと下がっちゃったけど、つかなかったです!!!」
興奮してわんこのまま訴えてしまう。
もう半べそ。
「そうだったんだ。それは怖かったね、えらかった。」
ずっと撫でてくれている。
リードを外して「さあ、立ちな」と促され、はじめて体勢を変えていないことに気付いた。
お茶を買うだけで、もっと早く戻ってくることを想定していたそうだ。
一度外を確認してそれでレジに行ったら、レジがトラブっていて思った以上に時間がかかってしまった。
それで、那智さんもちょっと焦ったのだそう。
そんな話をしながらホテルに向かうけど、わたしは全然聞いてない。
「もう、怖かった、怖かった、那智さんなかなか来てくれないのだもの。わたし一生懸命頑張ったのぉぉぉぉ!!!」
ホテルに入ってからもずっと騒ぎっぱなし。
那智さんがよしよしとしてくれて、はじめて安心して『わーん』と泣くことができた。
そこからは、超甘甘な時間。
さすがにあの状態で声をかけられたということは、可哀想に思ったのでしょう。
「りん子、これではじめて幸せ感じられたんじゃない!?」なんて言われるほどのここに書くことをためらうような甘い甘い時間でした(笑)
実は、この日は夕方公園かで散歩に行き、そこでもわんこになったのです。
公園までの並木道、本物のわんちゃんを散歩させてる人を見つけては「一緒に散歩する?」なんて言われながら、とりあえず公園のベンチへ。
そこであらかじめつけていたリードをくっと引かれ、ちょっと抵抗するわたしの髪を掴み。
わたしは公園のベンチに腰掛ける那智さんの足元で四つん這いになったのです。
「あ、向こうから団体が来てる。」
「あっちからくる若い子たち、わざわざ止まって見てるよ。」
そんな風に言われていちいち体に力が入るけど、薄暗がりの中、ひとりじゃないわんこは、数時間前の恐怖に比べたら随分と気持ちが楽だった。
この日の2回のわんこで、那智さんなりに再確認したことがあるらしい。
それは。
2回とも受けに回った感じだった。
特に夕方は、こちらが座っている状態をみんなが見て通り過ぎる関係値が、『見せている』ではなく『見られている』と感じるのだそう。
その晒されているような感覚は好きじゃないようです。
那智さんとしては、連れ歩き堂々と晒したいと思うのだそうです。
別に勝ち負けを争うものでもないのだけど、那智さんの気持ちが『勝ち』って思えるようなわんこがいいそうです。
『攻め』のわんこ…。
言わんとしてることはわからないでもないけれど、どっちにしてもわたしは恥ずかしいだけです!!
いろいろ試すうちに、好みが確立されていき、『いつか』来るそのときまでの那智さんのお楽しみが増えるということ。
わたしとしては、とにかくひとりにしないで!!!!と思うの出来事でした^^;
それにしても、リードってどうしてあんなに嬉しいのでしょう。
くいっと引っ張っていなくても、たるんでいてリードを引かれている感触を感じられていなくても、繋がっているというだけで、どうしようもなく、安心で幸福で、ホクホクしてしまう。
那智さんが買ってくれたきれいな色のリード。
それをつけ、その先を那智さんが握ってくれていればなんでもできるような気がしてしまう。
『気がする』だけなんですけど^^;
百貨店?ショウウィンドウ?
どこかはわからないけど、那智さん好みの堂々とゆっくりと散歩を楽しむようなわんこは、先送りになった。
どんどん具体的になっていく。
日常の中でふとその具体的な様子を思い返している。
そうするとますます膨れ上がり、気付くとずっと頭から離れず、そればかり考えている。
最初は『信じられない!!』と思っていたこと、いつのまにか捕われてしまって、この数日間困惑しっぱなし。
バッグからリードを取り出して眺めてしまう、わたしでした。
『リードを付けて1 2』の続きです。
那智さんの歩く速度が緩む。
ああ、ここで止まらないで、ここで止まれば、今日は確実にわんこになる。
コンビニの前には誰もいない。
那智さんルールでは、『あり』の状態。
このコンビニは歩道と店舗の間に駐車(駐輪?)スペースがあって、その駐車スペースにガードレールのような柵があるのだ。
その柵は歩道と店舗の中間辺りにある。
そこまで来た、来てしまった。
「買い物するから、ここで待ってて。」
「四つん這いでですか?」
「うん、リードを結んでおくからね。」
無理です!!
ひとりで待つなんて怖い。
以前、この場面もシミュレーションしてた。
『りん子が外で待ってて、俺がコンビニから出て来たら頭撫でてあげる。いいこで待ってたねって』
これも、わたしの憧れのシーンだ。
でも、やっぱり、さあやりましょうとなると、怖いし恥ずかしいし、無理。
首を振って、首から繋がっているリードを胸に抱えて、小さく抵抗する。
那智さんが手を伸ばし、リードを取ろうとする。
取られまいと抱える腕に力が入る。
わたしは左手を体の前に出し、拒否をしようとした。
その瞬間。
那智さんの右手が『パンッ』とその手を振り払った。
それが合図だった。
『やる?』と遊ぶことから、実行に変わったことを知らせる合図。
こうなると、もうわたしに拒否権はない。
怖い恥ずかしいやりたくないと思っても、やるのだ。
那智さんの意志がわたしの意志になる。
なぜ?
それは、そういう関係だから。
わたしがそういう関係を望んでいるから。
振り払われたわたしの左手はもうリードを抱えるために胸に戻ることはなかった。
もう片方の腕も白旗を挙げ、リードから離す。
那智さんがリード掴んだ。
文字通り那智さんに『渡した』瞬間だった。
とりあえずゆっくり、その場にしゃがむ。
いきなり四つん這いになるよりも、抵抗感を少しでも減らしたくて。
柵の一番低いポールにリードを結ぶ那智さんの手しか見えない。
「お尻を上げるんですよね?」
「そう。」
以前、コンビに前でわんこになったとき、アスファルトに両手両膝はついたけど、怖くてお尻を上げられなかった。
那智さんの望む姿勢は、膝をつきお尻を上げて背中が地面と平行になること。
だから、次はそうしなきゃダメと言われていたの。
両手をアスファルトにつける。
いつもながら、アスファルトが近い。
そして、自分の掌がアスファルトについている不思議。
まだ那智さんが側にいてくれてる。
怖々お尻を上げる。
でも、怖くて、膝の角度は90度にできていない(60度くらい?)。
わたしの姿勢を確認してからか、那智さんがさっと頭を撫でてくれて、離れていった。
ひとりのなっちゃった!!
歩道に背中を向けて、うつむいて髪を垂らして息を潜める。
怖い、恥ずかしい。
アスファルトにつく掌だけを見つめて、ひたすら時間が過ぎるのを待つ。
でも、僅かに、ごく僅かにわんこの喜びも湧く。
それでも、早く早く那智さんと祈る中。
まだ四つん這いになって20秒も経っていないころだ。
「大丈夫ですか?」
背後から男性の声がした。
声かけられてしまった!!!
心臓が口から飛び出そうだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!!!
「はい!!」
顔を上げず固まった体勢のまま、とにかく必死に返事をする。
多分、必死だったから、思いの外大きな声になってしまったような気がする。
心配してくれたのに、ごめんなさい。
もし不快な思いをさせてしまったら、ほんとにごめんなさい。
でも、どうか、わたしを気にしないで!!!
怖さと申し訳ない気持ちで体が震える。
怖くて、なんとか膝を60度にしてお尻を上げていた姿勢を保っていられない。
怯える犬のようにお尻が下がってしまう。
それでも、踵にお尻をつけてしまったら、それは那智さんの望みじゃない。
だから、萎えそうな気持ちをなんとか励まし、ぎりぎりお尻を浮かせるようにする。
アスファルトについた小刻みに震える掌だけを見つめる。
那智さんが買ってくれた可愛い指輪。
そこに気持ちを集中させるの。
声をかけた男性は多分離れていっただろう。
それでも、どこからともなくざわついた空気が伝わってくる。
男性の、女性の、『なに』という囁くのような気配。
消えてしまいたい。
早く、早く、那智さん帰ってきて。
思ったより時間がかかっているように感じられる。
もう、恥ずかしくて死んでしまいそう。
早く、早く、早く!!!!
目を閉じて現実から逃げてしまおうと思ったところで、足音が近付いて来た。
ああ、那智さんだ。
目を開け、靴を見つけると安心して一気に感情が溢れ出す。
「いいこに待ってたね。」
しゃがんで首筋や頭をたくさんたくさん撫でてくれた。
これがほしかったの。
わたしはわんこの体勢のまま、やっと訪れた安堵の時間を噛みしめる。
「那智さん、『大丈夫』って声かけられました!!もう怖くて怖くてしょうがなかったです!!でもお尻つけなかったです。ちょっと下がっちゃったけど、つかなかったです!!!」
興奮してわんこのまま訴えてしまう。
もう半べそ。
「そうだったんだ。それは怖かったね、えらかった。」
ずっと撫でてくれている。
リードを外して「さあ、立ちな」と促され、はじめて体勢を変えていないことに気付いた。
お茶を買うだけで、もっと早く戻ってくることを想定していたそうだ。
一度外を確認してそれでレジに行ったら、レジがトラブっていて思った以上に時間がかかってしまった。
それで、那智さんもちょっと焦ったのだそう。
そんな話をしながらホテルに向かうけど、わたしは全然聞いてない。
「もう、怖かった、怖かった、那智さんなかなか来てくれないのだもの。わたし一生懸命頑張ったのぉぉぉぉ!!!」
ホテルに入ってからもずっと騒ぎっぱなし。
那智さんがよしよしとしてくれて、はじめて安心して『わーん』と泣くことができた。
そこからは、超甘甘な時間。
さすがにあの状態で声をかけられたということは、可哀想に思ったのでしょう。
「りん子、これではじめて幸せ感じられたんじゃない!?」なんて言われるほどのここに書くことをためらうような甘い甘い時間でした(笑)
実は、この日は夕方公園かで散歩に行き、そこでもわんこになったのです。
公園までの並木道、本物のわんちゃんを散歩させてる人を見つけては「一緒に散歩する?」なんて言われながら、とりあえず公園のベンチへ。
そこであらかじめつけていたリードをくっと引かれ、ちょっと抵抗するわたしの髪を掴み。
わたしは公園のベンチに腰掛ける那智さんの足元で四つん這いになったのです。
「あ、向こうから団体が来てる。」
「あっちからくる若い子たち、わざわざ止まって見てるよ。」
そんな風に言われていちいち体に力が入るけど、薄暗がりの中、ひとりじゃないわんこは、数時間前の恐怖に比べたら随分と気持ちが楽だった。
この日の2回のわんこで、那智さんなりに再確認したことがあるらしい。
それは。
2回とも受けに回った感じだった。
特に夕方は、こちらが座っている状態をみんなが見て通り過ぎる関係値が、『見せている』ではなく『見られている』と感じるのだそう。
その晒されているような感覚は好きじゃないようです。
那智さんとしては、連れ歩き堂々と晒したいと思うのだそうです。
別に勝ち負けを争うものでもないのだけど、那智さんの気持ちが『勝ち』って思えるようなわんこがいいそうです。
『攻め』のわんこ…。
言わんとしてることはわからないでもないけれど、どっちにしてもわたしは恥ずかしいだけです!!
いろいろ試すうちに、好みが確立されていき、『いつか』来るそのときまでの那智さんのお楽しみが増えるということ。
わたしとしては、とにかくひとりにしないで!!!!と思うの出来事でした^^;
それにしても、リードってどうしてあんなに嬉しいのでしょう。
くいっと引っ張っていなくても、たるんでいてリードを引かれている感触を感じられていなくても、繋がっているというだけで、どうしようもなく、安心で幸福で、ホクホクしてしまう。
那智さんが買ってくれたきれいな色のリード。
それをつけ、その先を那智さんが握ってくれていればなんでもできるような気がしてしまう。
『気がする』だけなんですけど^^;
百貨店?ショウウィンドウ?
どこかはわからないけど、那智さん好みの堂々とゆっくりと散歩を楽しむようなわんこは、先送りになった。
どんどん具体的になっていく。
日常の中でふとその具体的な様子を思い返している。
そうするとますます膨れ上がり、気付くとずっと頭から離れず、そればかり考えている。
最初は『信じられない!!』と思っていたこと、いつのまにか捕われてしまって、この数日間困惑しっぱなし。
バッグからリードを取り出して眺めてしまう、わたしでした。