16年の10分
独特な幸福感
たまたまわたしの仕事先のホテルと那智さんの会議場が近くて、たまたまわたしはその日仕事だった。
「りん子は何時にお開きなの?」と聞かれた。
会議が終わる時間とお開きの時間が合えばお茶くらいできるんじゃない?
とのことだった。
けれど、わたしのほうが2時間くらい早く終わるので、それは叶いそうになかった。
当日、駅からホテルの途中にある会議場を「那智さんの近くだー」と思いながら見上げる。
もう少しだけ那智さんを近くに感じたくて、会議場があるビルのエントランスに入ってみる。
大勢の人が行き来しているので一瞬目立たないように思うけど、エレベーターに向かうでもなく所在なさげにきょろきょろしていたら、きっと不自然。
フロントに「なにかお探しですか?」と聞かれてしまったらあわあわしそうなので、なにかを確認したふりをして早々に立ち去る(なにやってるんだろ、わたし^^;)
名残惜しい気持ちともっとリアルに感じたくて「那智さんは何階にいるのですか?」と送ってみるけど、会議中なので当然お返事はなし。
わたしも切り替えて祝福へ向かった。
無事お開きになり、スマホを見ると「◯階だよ」とひと言。
それくらいの高さだと景色はあんな感じかなーと、窓のある披露宴会場から見える景色と重ねて思う。
それとともに那智さんが恋しい気持ちが湧いてくる。
◯階に行ってみちゃおうか!?
いやいや、どんな形状になってるかわからないんだから、無理!!
だって、エレベーター降りたらいきなり会議場なんて可能性もゼロじゃないもの。
ビル名とフロアマップとかで検索してみたり(笑)
でも、詳細はわからず、諦める。
せめてもと思い、ビルの近くのファストフードで遅めのランチをすることに。
「那智さんに近よりたくて、ビルの近くの◯に入りました(笑)」と送る。
ほどなくして、那智さんから着信が!!
わあ、どうしたのですか?!
いや、ちょうどいいタイミングだったよ
どうやら、会議のあとの懇親会で必要なものを購入するため、ひとり会議場から出たところだったらしい。
ええ!!
会えるのですか?
5分か10分くらいなら
わたしはどうしたらいいのですか?
そちらに行きますね?
急いでテイクアウトに包み直してもらってお店を出る。
この辺りはわたしのほうが詳しい(つもり)だから、わたしが那智さんのもとに向かう。
俺はいまビルの一階のショップにいる
わたしはとなりのショッピングセンターの2階です
一階に降りてそちらに向かってます
じゃあ、俺はショッピングセンターって書いてる矢印の方に行くよ
広場に出た
グリーンがあるよ
本屋がある
ああ、あそこか。
ショッピングセンターとビルの連絡口がわからず行きすぎてしまったわたしは慌てて引き返す。
急いで、急いで。
もうすぐ本屋です
あ、那智さんが見えた。
那智さん、いました!!
あれ?俺のほうは見つけられてない(笑)
なんとなく先に見つけたことが嬉しくて、那智さんを遠目から見ていたくて、すこしだけ身を潜めて近づく。
その途中で、ああ失敗したと気づく。
わたしは那智さんに見つけてほしいのだ。
遠くから歩いてくるわたしを見つけてもらって、わたしを見ていてほしい。
今日はお仕事の格好だから、なおさら。
おめかししたわたしを遠くから見つけてもらうほうが、しあわせだった。
時すでに遅しで、気づいたときには那智さんの背後に到着してしまっていた。
近くのベンチに腰を下ろす。
スリーピースの上着を脱いだベスト姿の那智さん、カッコいい。
うれしくてきゃあきゃあしてしまいそうだけど、手の甲をすりすりするだけにとどめておいた(笑)
面倒な上司のわがままな思いつき叶えるための買い出しでもあったそうで、詳細は那智さんが詰めなきゃいけなくて、ホント大変。
那智さんの代わりに文句言っておいた(笑)
他愛ない話を数分。
でも、とってもしあわせな時間だった。
長く付き合っていれば、こういう偶然もあるってことだ(笑)
何気ない那智さんの言葉に、なんだかいろんなことが詰まっているように感じる。
エレベーターのドアまでお見送りして、駅へ向かう。
エレベーターホールに誰もいなかったからほっぺにキスぐらいすればよかったと、ちょっぴり悔やみながら。
「等式」「16年の10分」感想です。(笑)良いことも、悪いこともたまたま、偶然。仕事の余韻を残したりん子、カッコいいねー
たまたまわたしの仕事先のホテルと那智さんの会議場が近くて、たまたまわたしはその日仕事だった。
「りん子は何時にお開きなの?」と聞かれた。
会議が終わる時間とお開きの時間が合えばお茶くらいできるんじゃない?
とのことだった。
けれど、わたしのほうが2時間くらい早く終わるので、それは叶いそうになかった。
当日、駅からホテルの途中にある会議場を「那智さんの近くだー」と思いながら見上げる。
もう少しだけ那智さんを近くに感じたくて、会議場があるビルのエントランスに入ってみる。
大勢の人が行き来しているので一瞬目立たないように思うけど、エレベーターに向かうでもなく所在なさげにきょろきょろしていたら、きっと不自然。
フロントに「なにかお探しですか?」と聞かれてしまったらあわあわしそうなので、なにかを確認したふりをして早々に立ち去る(なにやってるんだろ、わたし^^;)
名残惜しい気持ちともっとリアルに感じたくて「那智さんは何階にいるのですか?」と送ってみるけど、会議中なので当然お返事はなし。
わたしも切り替えて祝福へ向かった。
無事お開きになり、スマホを見ると「◯階だよ」とひと言。
それくらいの高さだと景色はあんな感じかなーと、窓のある披露宴会場から見える景色と重ねて思う。
それとともに那智さんが恋しい気持ちが湧いてくる。
◯階に行ってみちゃおうか!?
いやいや、どんな形状になってるかわからないんだから、無理!!
だって、エレベーター降りたらいきなり会議場なんて可能性もゼロじゃないもの。
ビル名とフロアマップとかで検索してみたり(笑)
でも、詳細はわからず、諦める。
せめてもと思い、ビルの近くのファストフードで遅めのランチをすることに。
「那智さんに近よりたくて、ビルの近くの◯に入りました(笑)」と送る。
ほどなくして、那智さんから着信が!!
わあ、どうしたのですか?!
いや、ちょうどいいタイミングだったよ
どうやら、会議のあとの懇親会で必要なものを購入するため、ひとり会議場から出たところだったらしい。
ええ!!
会えるのですか?
5分か10分くらいなら
わたしはどうしたらいいのですか?
そちらに行きますね?
急いでテイクアウトに包み直してもらってお店を出る。
この辺りはわたしのほうが詳しい(つもり)だから、わたしが那智さんのもとに向かう。
俺はいまビルの一階のショップにいる
わたしはとなりのショッピングセンターの2階です
一階に降りてそちらに向かってます
じゃあ、俺はショッピングセンターって書いてる矢印の方に行くよ
広場に出た
グリーンがあるよ
本屋がある
ああ、あそこか。
ショッピングセンターとビルの連絡口がわからず行きすぎてしまったわたしは慌てて引き返す。
急いで、急いで。
もうすぐ本屋です
あ、那智さんが見えた。
那智さん、いました!!
あれ?俺のほうは見つけられてない(笑)
なんとなく先に見つけたことが嬉しくて、那智さんを遠目から見ていたくて、すこしだけ身を潜めて近づく。
その途中で、ああ失敗したと気づく。
わたしは那智さんに見つけてほしいのだ。
遠くから歩いてくるわたしを見つけてもらって、わたしを見ていてほしい。
今日はお仕事の格好だから、なおさら。
おめかししたわたしを遠くから見つけてもらうほうが、しあわせだった。
時すでに遅しで、気づいたときには那智さんの背後に到着してしまっていた。
近くのベンチに腰を下ろす。
スリーピースの上着を脱いだベスト姿の那智さん、カッコいい。
うれしくてきゃあきゃあしてしまいそうだけど、手の甲をすりすりするだけにとどめておいた(笑)
面倒な上司のわがままな思いつき叶えるための買い出しでもあったそうで、詳細は那智さんが詰めなきゃいけなくて、ホント大変。
那智さんの代わりに文句言っておいた(笑)
他愛ない話を数分。
でも、とってもしあわせな時間だった。
長く付き合っていれば、こういう偶然もあるってことだ(笑)
何気ない那智さんの言葉に、なんだかいろんなことが詰まっているように感じる。
エレベーターのドアまでお見送りして、駅へ向かう。
エレベーターホールに誰もいなかったからほっぺにキスぐらいすればよかったと、ちょっぴり悔やみながら。
「等式」「16年の10分」感想です。(笑)良いことも、悪いこともたまたま、偶然。仕事の余韻を残したりん子、カッコいいねー