ラスボス1
独り言
イマイチ乗り気しない発注だった。
いや、お仕事に優劣をつけてはいけないのは百も承知の上で。
数年前に発注してくれたこの担当者は終止不機嫌そうであまりいい思い出がなかったし、たまーにしか入らない会場だからわからないこともあったりするからイマイチ乗り気になれなかったのだ。
(慣れない会場だといろいろ戸惑うのよ^^;知らない演出があったり、裏動線で迷ったり^^;)
しかも、打ち合わせに新郎は来ず新婦と母親のふたりということで、母娘密着型かと思うと、それもちょっと面倒に思っていた。
打ち合わせ当日。
案の定、昔とは入館方法が変わっていてまごまごするし、ひさしぶりの裏動線を忘れていて階段へのドアだと思って開けたら防火扉で、目の前壁!!だったりとブライダルサロンに到着するまでにすでにHPも低下気味。
なんとかサロンに到着して、不機嫌な担当者に多少面倒そうに対応されながらも、ざっくりと新郎新婦の情報を教えてもらう。
新郎は転勤で遠方にいるからほぼ新婦と母親が打ち合わせをしていること、新婦は妊娠している、そして、新婦はお父さんが他界していること。
情報を聞き、進行表や配席表のコピーを受け取り、申し送りはおしまい、あとは待つだけな雰囲気になったところで、担当者が「で、ちょっと補足が…」とさらりとつけ加えてきた。
新婦に内緒でサプライズの手紙を読んでほしいんですよ
ああ、最近、サプライズもの多いよね。
まあ、盛り上がるけど、知られちゃいけないし、内緒で進行決めなきゃいけないから、案外大変なんだよなぁ。
新婦母から、預かってて、新婦お父さんからの手紙
出席できないおばあちゃんとかじゃないのね?
??新婦父???
だって、亡くなってるんだよね?と訝しげに思っていると、とんでもない爆弾発言が
亡くなる前に書いた手紙を新婦母が持っていたんですよ
それを代読してほしいって
ええええええ!!
あ、これ
とお土産でも渡す程度の気軽さで封筒をわたしに見せる。
いや、ちょっと待って。
他界しているお父さんが亡くなる前に書いた手紙をお母さんが持っていてサプライズで読むってことだよね。
病床のお父さんが覚悟して書いたものってことだよね。
それ、かなりヤバいヤツじゃないの〜〜〜〜!!
便せんを出し手紙をわたしに渡す担当者。
ざっと目を通した先から、もうヤバい。
鼻はつんとして目がうるむ。
数年前からガンを発病して辛く長い闘病の中、娘が結婚するときに渡すために病床で新婦母に代筆してもらったのだ。
代筆しなければならないということは恐らく、ペンを持つのもままならない状態だったのだろう。
迫る死を覚悟してのこと。
あかん、これはあかんヤツやろ!!と西の人間ではないのに西の言葉を使いたくなってしまうほど、あかん。
ああ、それは大変なお手紙ですねぇ^^;
とごまかしながらも照れ笑いすると
進行のどこで読むかなんかは新婦母と連絡取ってください
とあっさり対応され元のファイルにしまわれた。
お客様が来るまで隅のデスクで待機しながら、頭は手紙のことでいっぱい。
どうしよう、絶対泣く。
いままでいろいろな代読をしてきた。
海外に行って出席できない親友の女同士の友情。
遠方のおばあさまの鉛筆書きの手紙にも胸は打たれた。
「ロミオ、あなたはなぜロミオなの」とジュリエットにならなきゃいけない、ある意味ハードな代読もあった。
それなりにいろいろなパターンの代読をしてきた中でも、最近の『いい人』の新婦からのサプライズ手紙はかなりの強敵だった。
もうあれ以上に泣かせる代読はないだろうと思っていたのに、こんな強敵が控えていたとは!!
とにかく、担当がどんな人だろうと、コピーをもらっておこう。
一度デスクについてファイルをしまっていたから、ちょっと面倒そうにされながらも、コピーを取らせてもらう。
それを資料の間にそっと忍ばせて打ち合わせに向かった。
打ち合わせは滞りなく進む。
どうやら、まだ社会人になりたてでいきなり新郎が遠方に配属になり、あれよあれよというまに結婚することになったのだそうだ。
その後妊娠していることもわかったので、いまは実家に戻って結婚準備をお母さんとしているそうだ。
母娘密着型というより、子供の頃から父の闘病もあり母と一緒に戦ってきた戦友のような空気の母娘だった。
新婦がトイレに立ったときに、急いでお手紙を了承していることとどの場面で披露するかなどの詳細はメールでやり取りすれば大丈夫であることを伝える。
「心をこめて読ませていただきますね」と添えると、とてもしっかりした印象のお母様が、一瞬、安堵したような表情を見せた。
あ〜あ、なんとかするしかないよね〜〜。
と、気分は機関銃を背負ったシガニー ウィーパー。
しかし、明らかに劣勢。
披露宴当日まで、わたしの戦いは続くのであった。
めずらしくお仕事話で続きもの^^
<関連エントリー>
代読いろいろ
覚悟を決める時間
困った〜〜
いい人
『等式』感想です。加齢すると涙腺弱くなるよね?お子さまの時も泣いただろうから何時が一番泣かなかったんだろう?(笑)
イマイチ乗り気しない発注だった。
いや、お仕事に優劣をつけてはいけないのは百も承知の上で。
数年前に発注してくれたこの担当者は終止不機嫌そうであまりいい思い出がなかったし、たまーにしか入らない会場だからわからないこともあったりするからイマイチ乗り気になれなかったのだ。
(慣れない会場だといろいろ戸惑うのよ^^;知らない演出があったり、裏動線で迷ったり^^;)
しかも、打ち合わせに新郎は来ず新婦と母親のふたりということで、母娘密着型かと思うと、それもちょっと面倒に思っていた。
打ち合わせ当日。
案の定、昔とは入館方法が変わっていてまごまごするし、ひさしぶりの裏動線を忘れていて階段へのドアだと思って開けたら防火扉で、目の前壁!!だったりとブライダルサロンに到着するまでにすでにHPも低下気味。
なんとかサロンに到着して、不機嫌な担当者に多少面倒そうに対応されながらも、ざっくりと新郎新婦の情報を教えてもらう。
新郎は転勤で遠方にいるからほぼ新婦と母親が打ち合わせをしていること、新婦は妊娠している、そして、新婦はお父さんが他界していること。
情報を聞き、進行表や配席表のコピーを受け取り、申し送りはおしまい、あとは待つだけな雰囲気になったところで、担当者が「で、ちょっと補足が…」とさらりとつけ加えてきた。
新婦に内緒でサプライズの手紙を読んでほしいんですよ
ああ、最近、サプライズもの多いよね。
まあ、盛り上がるけど、知られちゃいけないし、内緒で進行決めなきゃいけないから、案外大変なんだよなぁ。
新婦母から、預かってて、新婦お父さんからの手紙
出席できないおばあちゃんとかじゃないのね?
??新婦父???
だって、亡くなってるんだよね?と訝しげに思っていると、とんでもない爆弾発言が
亡くなる前に書いた手紙を新婦母が持っていたんですよ
それを代読してほしいって
ええええええ!!
あ、これ
とお土産でも渡す程度の気軽さで封筒をわたしに見せる。
いや、ちょっと待って。
他界しているお父さんが亡くなる前に書いた手紙をお母さんが持っていてサプライズで読むってことだよね。
病床のお父さんが覚悟して書いたものってことだよね。
それ、かなりヤバいヤツじゃないの〜〜〜〜!!
便せんを出し手紙をわたしに渡す担当者。
ざっと目を通した先から、もうヤバい。
鼻はつんとして目がうるむ。
数年前からガンを発病して辛く長い闘病の中、娘が結婚するときに渡すために病床で新婦母に代筆してもらったのだ。
代筆しなければならないということは恐らく、ペンを持つのもままならない状態だったのだろう。
迫る死を覚悟してのこと。
あかん、これはあかんヤツやろ!!と西の人間ではないのに西の言葉を使いたくなってしまうほど、あかん。
ああ、それは大変なお手紙ですねぇ^^;
とごまかしながらも照れ笑いすると
進行のどこで読むかなんかは新婦母と連絡取ってください
とあっさり対応され元のファイルにしまわれた。
お客様が来るまで隅のデスクで待機しながら、頭は手紙のことでいっぱい。
どうしよう、絶対泣く。
いままでいろいろな代読をしてきた。
海外に行って出席できない親友の女同士の友情。
遠方のおばあさまの鉛筆書きの手紙にも胸は打たれた。
「ロミオ、あなたはなぜロミオなの」とジュリエットにならなきゃいけない、ある意味ハードな代読もあった。
それなりにいろいろなパターンの代読をしてきた中でも、最近の『いい人』の新婦からのサプライズ手紙はかなりの強敵だった。
もうあれ以上に泣かせる代読はないだろうと思っていたのに、こんな強敵が控えていたとは!!
とにかく、担当がどんな人だろうと、コピーをもらっておこう。
一度デスクについてファイルをしまっていたから、ちょっと面倒そうにされながらも、コピーを取らせてもらう。
それを資料の間にそっと忍ばせて打ち合わせに向かった。
打ち合わせは滞りなく進む。
どうやら、まだ社会人になりたてでいきなり新郎が遠方に配属になり、あれよあれよというまに結婚することになったのだそうだ。
その後妊娠していることもわかったので、いまは実家に戻って結婚準備をお母さんとしているそうだ。
母娘密着型というより、子供の頃から父の闘病もあり母と一緒に戦ってきた戦友のような空気の母娘だった。
新婦がトイレに立ったときに、急いでお手紙を了承していることとどの場面で披露するかなどの詳細はメールでやり取りすれば大丈夫であることを伝える。
「心をこめて読ませていただきますね」と添えると、とてもしっかりした印象のお母様が、一瞬、安堵したような表情を見せた。
あ〜あ、なんとかするしかないよね〜〜。
と、気分は機関銃を背負ったシガニー ウィーパー。
しかし、明らかに劣勢。
披露宴当日まで、わたしの戦いは続くのであった。
めずらしくお仕事話で続きもの^^
<関連エントリー>
代読いろいろ
覚悟を決める時間
困った〜〜
いい人
『等式』感想です。加齢すると涙腺弱くなるよね?お子さまの時も泣いただろうから何時が一番泣かなかったんだろう?(笑)
COMMENT
このコメントは管理人のみ閲覧できます