青くん(仮名)
独り言
子育てとか、不倫の相手の介入とか、とにかくいろいろな意味で倫理に反していると感じる可能性があります。
お気をつけください。
さらに長いです(笑)
以下、我が子の名前は『我が子』くんとします^^
いま思ってもかわいそうなことをしたと少し思うけど、我が子は通っていた幼稚園から同じ小学校に入学する子がひとりもいなかった。
もともと学区の関係でその幼稚園から少数しか入学していないことは知っていたけど、いざ蓋を開けてみたらその年は我が子だけだったのだ。
まあ、転校してくる子だっているし、合わない子と一緒だったりするのも苦労するだろうし、当時も申し訳ないと思いながら、ことさらそれが重大事項であるとは思わせないようにして心の中で『我が子がんばれ!』と思っていた。
案の定、最初の頃はひとりで帰宅して、友達と遊ぶこともなかったのだけど、しばらくするとポツポツと一緒に帰ったり遊びに来たりする子ができてきて、当初危惧していたことにはならずに済んだ。
わたしはやっとできたお友達を自宅に連れてくることを歓迎した。
ところがしばらくすると、ちょっと困った事態に陥った。
とにかく子供がたくさん来るのだ。
我が子と直接の友達だけではなく、その友達とそのまた友達とかゾロゾロついてくる。
中には明らかに我が子とは毛色の違う子や我が子の知らない子まで来る。
他の事例を知らないので、わたしの体験したことでのみ話をすると。
どうやら、多くのお宅で『家に友達を連れてきてはいけない』とか『外で遊びなさい』という理由で放課後に外以外の居場所がないみたいだった。
共働きで親が不在の場合もあるだろうけど、そうじゃないこともあるようだった。
まあ、下に赤ちゃんがいるとか事情は様々なのでしかたがないのだけど。
インドアな我が子は外遊びより家のほうがいいし、わたしも受け入れたいし、外以外の居場所がほしい子たちと妙な需要と供給が一致してしまって、気がつけば子供の預かり所みたいな状態になっていた。
明らかに我が子と縁のない子が連れられてきて、我が子と遊ぶわけでもなくリビングの隅でゲームをしている様子を見ると、さすがにこれは是正しなければと思い、ある時から『我が子と直接約束をしていない子は家にはあげない』というルールを作った。
我が子と遊ぶ約束をした子が他の子を連れてきたら、そのルールを説明して、約束をした子諸共帰るか、連れてきた子だけ帰るか、子供たちに決めさせた。
その場で帰すのはかわいそうでもあるので、いちおう『いまここで我が子に「遊ぼう」と約束をする』という救済措置も取ってあげたりもした。
まあ、そんな面倒なことを繰り返すと、どうでもいい子たちはだんだん来なくなってくるもので、過渡期を過ぎたらだいたい遊ぶ子は決まってくるものだ。
残った数人の中で最初の頃からずっと来ていた子のひとりに『青くん』という男の子がいた。
くりっとした目の細くて小さい子だった。
青くんは乱暴でないし挨拶もちゃんとできる子だった。
だけど、わりとすぐ、ちょっと違和感を感じた。
この違和感はなんだろうと少し意識してみると、青くんはわたし(大人)の顔色を伺うのだ。
小学校低学年の子なんて『俺が俺が』の塊みたいな子が多いから、わたしに『この前どこそこに行った』とか『ゲームの○をクリアした』とか、こっちとしてはまーったく興味がないことを競うように話してくるのだけど、青くんは、直接わたし(大人)に話しかけるのではなく、わたしに聞こえるように誰かに話してこちらをチラチラと見るようなところがあったり、子供たちは子供部屋にいるのにひとりキッチンにいるわたしのところに来て、わたしに『どうしたの?』と聞かれるような行動を取るような子だった。
わずかな違和感を感じながらも我が子は他の子同様、青くんとも友達と思っているので、『そういう部分のある子』程度に思っていた。
我が子はおしゃべりが遅いこともあったし、器用に立ち回れる性格ではなかったので友達付き合いが上手な方ではなかった。
もともと穏やかなところもあったので周りに押されて我慢してしまい、溜め込んでたまらずわーっとなってしまうことはたまにあった。
幼稚園のとき、自分がやりたい遊びができなくて一度だけ大泣きして主張して先生たちが驚いていたことがあったけど、そういう話を聞いたのは幼稚園に通っていた2年間で一度きりだったのだけど、この子供達が家に来るようになってから頻度が増すようになった。
最初にうちは『イヤなことは、そう思ったときにいうんだよ。我慢して一気にいうと、我が子の言いたいことは伝わらないし、みんな我が子がただ起こってばかりの人って誤解しちゃうから』と教えていた。
それでもやっぱり同じように急に我が子がわーっとなることは起きる。
この時も我が子がわーっと癇癪みたいなものを起こしたから、わたしが「我が子、またすぐ怒って~」と注意を促しながら、ふと違和感を感じていままでを振り返ってみた。
このケースでわたしが我が子を注意するとき、青くんが騒動の渦中にいることが多いような気がする。
「我が子くん、怒るなよ~」とか「我が子くん、僕の貸してあげるよ」とか、いつものわたしをチラチラ見ながら。
なるほど、合点がいった。
我が子、ごめん。
それからしばらく観察していると、案の定、青くんが我が子に小さな意地悪をちょこちょこしてるのだ。
青くんひとりだったり、他の誰かを焚きつけたりして。
それからは我が子がわーっとなったら、それまでの青くん(や他の子)の行動を指摘して、我が子の気持ちを聞き、怒る我が子もよくないけど○をした青くんもよくないよねとフォローをするようにした。
それを繰り返すうちに気づけば我が子が急に怒り出すことはなくなっていった。
しばらく穏やかに過ごしていたところ、また問題が起きた。
我が子が大事にしていたカードをトイレに捨てられてしまったのだ。
子供達が遊びに来ている中、我が子がトイレに入ったらカードが便器の中に浮いるのを見つけてトイレから出てきた。
みんな大騒ぎして、その前にトイレに入ったのは誰かと犯人探しみたいな感じになった。
一応、子供達を落ち着かせて、トイレに入った子に状況を確認すると我が子の前に入ったのは○くんと青くんだったことがわかった。
○くんが入っていたら青くんが入ってきたそうで、ふざけながら○くんは用を足して外に出たそうだ。
○くんがいうには、その時はカードはなかった。
まあ、青くんだよなとわかってはいたけど、確信が持てない中青くんを犯人扱いしてはいけなと思いつつ、青くんの事情も聞くと、「僕も知らない」という。
でも、周りの子たちは「おかしい、おかしい」と騒ぐから、青くんに「本当のことを言って」ともう一度聞くと「手が滑った」とトイレに入れたことを認めた。
これも嘘だとわかるけど、やはり現行犯でない限り犯人扱いはできないので、我が子にどうしたいか確認をする。
謝ってほしいのか弁償してほしいのか、幸いレアカードだったので多少撥水性のある素材だったためダメージは少なかったこともあり我が子からは「これからは気をつけて」という言葉だけでその場は治まった。
(ちゃんと洗いました 笑)
決着したら、子供達はもうそんなことなかったことのように別の遊びに夢中になったけど、わたしとしてはこれはあまりよろしくないぞと警戒した。
わたしはどうしたらいいのだろう。
我が子に対して危害を加えはじめているみたいなんだけど、勝手に犯人にするわけにもいかないし、勝手に付き合いを断らせるわけにもいかない。
ちょうど、那智さんがお電話できるタイミングだったので事情を説明する。
那智さんは『うーん』と考えアドバイスをしてくれた。
青くんは我が子くんの友達だけど、いまの段階では『りん子と青くん』の話にすること。
青くんに伝えることは『ウソはつかないでほしい』ということ。
やったことは怒らない(我が子との間で解決すること)からウソはつかないでほしい。
鉄は熱いうちに打てで、今日の帰り何か理由をつけて青くんと二人になって、この話をする。
これが那智さんからのアドバイスだった。
那智さんのアドバイスはときにハードルが高いこともあるけど、どれも納得できるものだしどんな言葉がいいかなど細部に渡って考えてくれるので素直にいう通りにできる。
その日の帰り、みんな帰ったあとで適当な理由をつけて我が子だけ家に残して青くんのあとを追った。
みんなと別れて一人で歩く青くんに声をかけて呼び止める。
あの顔色を伺う表情で少し戸惑っていた。
今日のことを責めに来たんじゃない。
青くんのいうことを信じる。
だから、これからもウソはつかないでほしい。
わたしはウソをつかれることが一番イヤだ。
ウソをつく子は家に呼べない。
この話は我が子は知らない、わたしと青くんのお話。
だから、あおくん、これからもウソはつかないと約束して。
そんなようなことを言った。
小学校低学年の子がどこまで理解したかわからないけど、神妙な面持ちで青くんは約束をした。
わたしは教育者でもなんでもないので、この関わりで青くんが変わるとは思わない、そんな大それたことはできない。
ただ、わたしや我が子と一緒にいるときだけでも、どちらにとっても悲しいことにはなりたくなかった。
だから、青くんと二人で話してからも変わらず接していた。
それからも青くんや数人が遊びに来た。
しばらくして、またトラブルが起きた。
この日は我が子と青くんと二人で家の前で遊んでいた。
外から我が子の半べその声が聞こえてきた。
急いで外に出て聞くと青くんが我が子のカバンの中に蝉の死骸を入れたのだそうだ。
(虫苦手な我が子です^^;)
おしゃべりがあまり得意ではない我が子よりずっと饒舌な青くん曰く「ただ死骸を持っていただけなんだけど、たまたま我が子くんにカバンが開いていて入っちゃった」という。
これも現行犯じゃないので双方の言い分を聞いて、ウソはつかないでと釘を刺し我が子の気持ちを聞いて収めた。
だんだんエスカレートしてきている。
いよいよ危うい。
わたしが見ている限り、青くんは他の子にはそういうことはやっていない。
我が子をターゲットにしているのだ。
青くんがエスカレートすることはもちろん危険なことだし、『我が子くんにはそういうことをしていい』という心理が他の子に伝染して簡単に集団的な攻撃になり得ることも非常に危ない。
青くんとは遊ぶなというのは簡単だけど、我が子にも青くんにも他の子にも正当性をもたせたかったから、すぐ行動には起こせない。
いままで以上に目を光らせることにした。
次の事件はそれから程なくして起きた。
青くんが我が子のテレビゲームのデータを消去してしまったのだ。
その時は他の子も見ていた、わたしも近くにいた。
それでもやっぱりわざとじゃない、間違えたと言い張る。
もうそろそろ限界だなと感じたけど、この時も『ウソではないか』念を押し、我が子にどうしたいか聞いてその場を収めた。
ただ、ここはこれで流してはいけないと思って
今日は青くんのことを信じるけど、ゲームのことはあまり詳しくないから、後で色々確認する
と宣言して、その日は終わった。
那智さんに相談する。
アドバイスやレクチャーで3時間くらい付き合ってくれた。
那智さんもそろそろ限界という感覚は一緒。
もう付き合わせない方がいいだろう。
ただ、それをどうやるか。
今回だけじゃなく、他にもカードや蝉など我が子に色々やってウソをついたことを他の子の前で話して我が子とは付き合わせないことを宣言する。
そうすることで、他の子も我が子が悪いんじゃないということを伝えられる。
次に青くんたちが遊びに来たときに、まずそれをして青くんは帰らせる。
小さい子を吊るし上げるようでかわいそうだけど、これも我が子を守るためだ。
青くんからだけではない、後々青くんからの入れ知恵で我が子が悪者みならないよう他の子にも理解してもらう必要があった。
那智さんは色々なケースを想定して細かくアドバイスをしてくれた。
わたしなりに、わたしの出来る限りあおくんと接してきた。
他人の子で、しかも我が子に危害を加える子に対してはこれが限界だし、この方法を取る。
ゲームのデータ消去方法を教えてもらいながら我が子にも話す。
データを消すには少なくとも2回は『はい』を押さないといけないので間違う可能性は極めて少ない。
だから、残念ながら青くんはわざと消したのだと思う。
わたしは青くんとウソはつかないと約束をしてきたので、あなたにわざと意地悪をしてウソをついた青くんをあなたと付き合わせるわけにはいかない。
だから、今度青くんが来たら、その話すをするよ、と。
わかったかどうかわからないけど我が子は神妙に聞いていた。
気が重い。
それでも我が子を守るためだ。
我が子に降りかかる火の粉は払いのけなければいけない。
いつも通りに数人が遊びに来たところで、みんなを座らせて話す。
小学校低学年の子のウソを理詰めで暴くのは簡単だ。
声を荒げることもなく淡々と事実を述べ問いただす。
遊びに来た他の子たちも黙って聞いている。
青くんは最初はしらばっくれていたけど、ついに泣き出し、ウソをついてきたことを認めた。
かわいそうだけど、もうおしまいと告げた。
一通り話して我が子と他の子は(ビビりながら 笑)遊ぶようにして、青くんには帰ってもらった。
外まで送った。
もう我が子とは遊んじゃダメだけど、これからもウソはつかない方がいいと思うよと。
そして、もし我が子に何かしたら、今度も許さないからねと最後に釘を刺して。
(なんで低学年脅さないといけないんだと思ったけど、我が子への逆恨みは避けたかった)
それから、青くんはうちには来ていない。
我が子とクラスが一緒になることもなく、共通の友達はいるけど仲良いグループは違うようになっていったみたいで接点は薄くなっていった。
簡単に表現してはいけないとは思うけど、多分、青くんは我が子が羨ましかったのだよね。
理由は忘れちゃったけど、あるとき我が子と一緒に青くんのお家に用事があって伺ったことがあった。
青くんは家の外にいて家には入れないと言っていた。
夏休みに電車のスタンプラリーに我が子と青くんともう一人を連れて行った。
電車のフリーパス(数百円)だけあれば充分なのに、青くんは1万円を持ってきていて、もう一人の子に見せびらかしていた。(我が子は、あまり興味示してなかった^^;)
いま思えば、最初の頃、関係ない子をゾロゾロ連れてきたにも青くんだった。
聞こえてくる噂話で判断したくないけど、大人の顔色を伺わざるをえない環境だったのではないかということは想像できた。
わたし(大人)の顔色を伺うことのなく受け入れられている我が子が羨ましかったのだよね。
我が子が羨ましいとして、少しでも自分の立ち位置をよくしてわたし(大人)と良い関係を築いたほうが本人のためなのに、我が子を攻撃対象にしちゃう。
子供って悲しい生き物だ。
今年、我が子は成人になった。
青くんには学区が違っていたので小学校を卒業したら、もう我が子と関わることはなくなった。
青くんも、だ。
青くんはどんな成人を迎えたのだろう。
残念な思いはあったけど、正直もう日々思い出すこともない。
同情するのは良くないし、かといって心の交流があったという美談でもない。
青くんにとっても、小さい頃うるさいおばさんがいたなくらいの記憶しかないだろう。
きっと彼なりにたくましく生きていると信じて。
我が子は相変わらずマイペースで自分の『好き』を大切にしている。
未だに地に足が付いていないようだけど、小学生の頃、音楽の成績がいいわけでも、ピアノを習っていたわけでもないのに「将来は音楽で食べていく」といって親を苦笑させたことの、ほんのすこしだけ実現させている。
直接音楽で稼いでいるとは言い難いが、音楽に携わる進路を選び、多少人脈とスキルを広げている。
まだこの先どうなるかわからないけど、わたしがあの時全力で守ったことなどはきっと忘却の彼方(それでいい)、ただ漠然と自己肯定感を持っていてくれればいい。
どうか、心豊かな大人になっていってね。
この出来事はわたしひとりでは到底背負えるものではなかった。
(父親の関わりに関しては、ここでは言及しなくてごめんなさい)
りん子を幸せにするということはりん子の周囲も幸せにすると宣言した那智さんの有言実行。
何時間もわたしの悩みに付き合ってくれて、一緒に解決の道を歩んでくれた。
那智さんはわたしの人生に大きく関わってくれているけど、この出来事もその代表的なもの。
不倫の関係でここまで関わること是非は問わないでほしい。
これもひっくるめて『わたしたち』という記録でした。
<関連エントリー>
我が子
我が子は勉強ができない
仕事って
「等式」「青くん(仮名)」感想です。懐かしい、りん子よく頑張ったなー。毅然とした態度で、教育者ではないので青くんが納得する形で切り捨てる道を選んだんだよな。そうそう、あの時もいちいち誉めたな〰〰 りんさんの心が折れたら挫折してしまうから、数ヶ月だと思うがりん子が頑張った思い出です。
子育てとか、不倫の相手の介入とか、とにかくいろいろな意味で倫理に反していると感じる可能性があります。
お気をつけください。
さらに長いです(笑)
以下、我が子の名前は『我が子』くんとします^^
いま思ってもかわいそうなことをしたと少し思うけど、我が子は通っていた幼稚園から同じ小学校に入学する子がひとりもいなかった。
もともと学区の関係でその幼稚園から少数しか入学していないことは知っていたけど、いざ蓋を開けてみたらその年は我が子だけだったのだ。
まあ、転校してくる子だっているし、合わない子と一緒だったりするのも苦労するだろうし、当時も申し訳ないと思いながら、ことさらそれが重大事項であるとは思わせないようにして心の中で『我が子がんばれ!』と思っていた。
案の定、最初の頃はひとりで帰宅して、友達と遊ぶこともなかったのだけど、しばらくするとポツポツと一緒に帰ったり遊びに来たりする子ができてきて、当初危惧していたことにはならずに済んだ。
わたしはやっとできたお友達を自宅に連れてくることを歓迎した。
ところがしばらくすると、ちょっと困った事態に陥った。
とにかく子供がたくさん来るのだ。
我が子と直接の友達だけではなく、その友達とそのまた友達とかゾロゾロついてくる。
中には明らかに我が子とは毛色の違う子や我が子の知らない子まで来る。
他の事例を知らないので、わたしの体験したことでのみ話をすると。
どうやら、多くのお宅で『家に友達を連れてきてはいけない』とか『外で遊びなさい』という理由で放課後に外以外の居場所がないみたいだった。
共働きで親が不在の場合もあるだろうけど、そうじゃないこともあるようだった。
まあ、下に赤ちゃんがいるとか事情は様々なのでしかたがないのだけど。
インドアな我が子は外遊びより家のほうがいいし、わたしも受け入れたいし、外以外の居場所がほしい子たちと妙な需要と供給が一致してしまって、気がつけば子供の預かり所みたいな状態になっていた。
明らかに我が子と縁のない子が連れられてきて、我が子と遊ぶわけでもなくリビングの隅でゲームをしている様子を見ると、さすがにこれは是正しなければと思い、ある時から『我が子と直接約束をしていない子は家にはあげない』というルールを作った。
我が子と遊ぶ約束をした子が他の子を連れてきたら、そのルールを説明して、約束をした子諸共帰るか、連れてきた子だけ帰るか、子供たちに決めさせた。
その場で帰すのはかわいそうでもあるので、いちおう『いまここで我が子に「遊ぼう」と約束をする』という救済措置も取ってあげたりもした。
まあ、そんな面倒なことを繰り返すと、どうでもいい子たちはだんだん来なくなってくるもので、過渡期を過ぎたらだいたい遊ぶ子は決まってくるものだ。
残った数人の中で最初の頃からずっと来ていた子のひとりに『青くん』という男の子がいた。
くりっとした目の細くて小さい子だった。
青くんは乱暴でないし挨拶もちゃんとできる子だった。
だけど、わりとすぐ、ちょっと違和感を感じた。
この違和感はなんだろうと少し意識してみると、青くんはわたし(大人)の顔色を伺うのだ。
小学校低学年の子なんて『俺が俺が』の塊みたいな子が多いから、わたしに『この前どこそこに行った』とか『ゲームの○をクリアした』とか、こっちとしてはまーったく興味がないことを競うように話してくるのだけど、青くんは、直接わたし(大人)に話しかけるのではなく、わたしに聞こえるように誰かに話してこちらをチラチラと見るようなところがあったり、子供たちは子供部屋にいるのにひとりキッチンにいるわたしのところに来て、わたしに『どうしたの?』と聞かれるような行動を取るような子だった。
わずかな違和感を感じながらも我が子は他の子同様、青くんとも友達と思っているので、『そういう部分のある子』程度に思っていた。
我が子はおしゃべりが遅いこともあったし、器用に立ち回れる性格ではなかったので友達付き合いが上手な方ではなかった。
もともと穏やかなところもあったので周りに押されて我慢してしまい、溜め込んでたまらずわーっとなってしまうことはたまにあった。
幼稚園のとき、自分がやりたい遊びができなくて一度だけ大泣きして主張して先生たちが驚いていたことがあったけど、そういう話を聞いたのは幼稚園に通っていた2年間で一度きりだったのだけど、この子供達が家に来るようになってから頻度が増すようになった。
最初にうちは『イヤなことは、そう思ったときにいうんだよ。我慢して一気にいうと、我が子の言いたいことは伝わらないし、みんな我が子がただ起こってばかりの人って誤解しちゃうから』と教えていた。
それでもやっぱり同じように急に我が子がわーっとなることは起きる。
この時も我が子がわーっと癇癪みたいなものを起こしたから、わたしが「我が子、またすぐ怒って~」と注意を促しながら、ふと違和感を感じていままでを振り返ってみた。
このケースでわたしが我が子を注意するとき、青くんが騒動の渦中にいることが多いような気がする。
「我が子くん、怒るなよ~」とか「我が子くん、僕の貸してあげるよ」とか、いつものわたしをチラチラ見ながら。
なるほど、合点がいった。
我が子、ごめん。
それからしばらく観察していると、案の定、青くんが我が子に小さな意地悪をちょこちょこしてるのだ。
青くんひとりだったり、他の誰かを焚きつけたりして。
それからは我が子がわーっとなったら、それまでの青くん(や他の子)の行動を指摘して、我が子の気持ちを聞き、怒る我が子もよくないけど○をした青くんもよくないよねとフォローをするようにした。
それを繰り返すうちに気づけば我が子が急に怒り出すことはなくなっていった。
しばらく穏やかに過ごしていたところ、また問題が起きた。
我が子が大事にしていたカードをトイレに捨てられてしまったのだ。
子供達が遊びに来ている中、我が子がトイレに入ったらカードが便器の中に浮いるのを見つけてトイレから出てきた。
みんな大騒ぎして、その前にトイレに入ったのは誰かと犯人探しみたいな感じになった。
一応、子供達を落ち着かせて、トイレに入った子に状況を確認すると我が子の前に入ったのは○くんと青くんだったことがわかった。
○くんが入っていたら青くんが入ってきたそうで、ふざけながら○くんは用を足して外に出たそうだ。
○くんがいうには、その時はカードはなかった。
まあ、青くんだよなとわかってはいたけど、確信が持てない中青くんを犯人扱いしてはいけなと思いつつ、青くんの事情も聞くと、「僕も知らない」という。
でも、周りの子たちは「おかしい、おかしい」と騒ぐから、青くんに「本当のことを言って」ともう一度聞くと「手が滑った」とトイレに入れたことを認めた。
これも嘘だとわかるけど、やはり現行犯でない限り犯人扱いはできないので、我が子にどうしたいか確認をする。
謝ってほしいのか弁償してほしいのか、幸いレアカードだったので多少撥水性のある素材だったためダメージは少なかったこともあり我が子からは「これからは気をつけて」という言葉だけでその場は治まった。
(ちゃんと洗いました 笑)
決着したら、子供達はもうそんなことなかったことのように別の遊びに夢中になったけど、わたしとしてはこれはあまりよろしくないぞと警戒した。
わたしはどうしたらいいのだろう。
我が子に対して危害を加えはじめているみたいなんだけど、勝手に犯人にするわけにもいかないし、勝手に付き合いを断らせるわけにもいかない。
ちょうど、那智さんがお電話できるタイミングだったので事情を説明する。
那智さんは『うーん』と考えアドバイスをしてくれた。
青くんは我が子くんの友達だけど、いまの段階では『りん子と青くん』の話にすること。
青くんに伝えることは『ウソはつかないでほしい』ということ。
やったことは怒らない(我が子との間で解決すること)からウソはつかないでほしい。
鉄は熱いうちに打てで、今日の帰り何か理由をつけて青くんと二人になって、この話をする。
これが那智さんからのアドバイスだった。
那智さんのアドバイスはときにハードルが高いこともあるけど、どれも納得できるものだしどんな言葉がいいかなど細部に渡って考えてくれるので素直にいう通りにできる。
その日の帰り、みんな帰ったあとで適当な理由をつけて我が子だけ家に残して青くんのあとを追った。
みんなと別れて一人で歩く青くんに声をかけて呼び止める。
あの顔色を伺う表情で少し戸惑っていた。
今日のことを責めに来たんじゃない。
青くんのいうことを信じる。
だから、これからもウソはつかないでほしい。
わたしはウソをつかれることが一番イヤだ。
ウソをつく子は家に呼べない。
この話は我が子は知らない、わたしと青くんのお話。
だから、あおくん、これからもウソはつかないと約束して。
そんなようなことを言った。
小学校低学年の子がどこまで理解したかわからないけど、神妙な面持ちで青くんは約束をした。
わたしは教育者でもなんでもないので、この関わりで青くんが変わるとは思わない、そんな大それたことはできない。
ただ、わたしや我が子と一緒にいるときだけでも、どちらにとっても悲しいことにはなりたくなかった。
だから、青くんと二人で話してからも変わらず接していた。
それからも青くんや数人が遊びに来た。
しばらくして、またトラブルが起きた。
この日は我が子と青くんと二人で家の前で遊んでいた。
外から我が子の半べその声が聞こえてきた。
急いで外に出て聞くと青くんが我が子のカバンの中に蝉の死骸を入れたのだそうだ。
(虫苦手な我が子です^^;)
おしゃべりがあまり得意ではない我が子よりずっと饒舌な青くん曰く「ただ死骸を持っていただけなんだけど、たまたま我が子くんにカバンが開いていて入っちゃった」という。
これも現行犯じゃないので双方の言い分を聞いて、ウソはつかないでと釘を刺し我が子の気持ちを聞いて収めた。
だんだんエスカレートしてきている。
いよいよ危うい。
わたしが見ている限り、青くんは他の子にはそういうことはやっていない。
我が子をターゲットにしているのだ。
青くんがエスカレートすることはもちろん危険なことだし、『我が子くんにはそういうことをしていい』という心理が他の子に伝染して簡単に集団的な攻撃になり得ることも非常に危ない。
青くんとは遊ぶなというのは簡単だけど、我が子にも青くんにも他の子にも正当性をもたせたかったから、すぐ行動には起こせない。
いままで以上に目を光らせることにした。
次の事件はそれから程なくして起きた。
青くんが我が子のテレビゲームのデータを消去してしまったのだ。
その時は他の子も見ていた、わたしも近くにいた。
それでもやっぱりわざとじゃない、間違えたと言い張る。
もうそろそろ限界だなと感じたけど、この時も『ウソではないか』念を押し、我が子にどうしたいか聞いてその場を収めた。
ただ、ここはこれで流してはいけないと思って
今日は青くんのことを信じるけど、ゲームのことはあまり詳しくないから、後で色々確認する
と宣言して、その日は終わった。
那智さんに相談する。
アドバイスやレクチャーで3時間くらい付き合ってくれた。
那智さんもそろそろ限界という感覚は一緒。
もう付き合わせない方がいいだろう。
ただ、それをどうやるか。
今回だけじゃなく、他にもカードや蝉など我が子に色々やってウソをついたことを他の子の前で話して我が子とは付き合わせないことを宣言する。
そうすることで、他の子も我が子が悪いんじゃないということを伝えられる。
次に青くんたちが遊びに来たときに、まずそれをして青くんは帰らせる。
小さい子を吊るし上げるようでかわいそうだけど、これも我が子を守るためだ。
青くんからだけではない、後々青くんからの入れ知恵で我が子が悪者みならないよう他の子にも理解してもらう必要があった。
那智さんは色々なケースを想定して細かくアドバイスをしてくれた。
わたしなりに、わたしの出来る限りあおくんと接してきた。
他人の子で、しかも我が子に危害を加える子に対してはこれが限界だし、この方法を取る。
ゲームのデータ消去方法を教えてもらいながら我が子にも話す。
データを消すには少なくとも2回は『はい』を押さないといけないので間違う可能性は極めて少ない。
だから、残念ながら青くんはわざと消したのだと思う。
わたしは青くんとウソはつかないと約束をしてきたので、あなたにわざと意地悪をしてウソをついた青くんをあなたと付き合わせるわけにはいかない。
だから、今度青くんが来たら、その話すをするよ、と。
わかったかどうかわからないけど我が子は神妙に聞いていた。
気が重い。
それでも我が子を守るためだ。
我が子に降りかかる火の粉は払いのけなければいけない。
いつも通りに数人が遊びに来たところで、みんなを座らせて話す。
小学校低学年の子のウソを理詰めで暴くのは簡単だ。
声を荒げることもなく淡々と事実を述べ問いただす。
遊びに来た他の子たちも黙って聞いている。
青くんは最初はしらばっくれていたけど、ついに泣き出し、ウソをついてきたことを認めた。
かわいそうだけど、もうおしまいと告げた。
一通り話して我が子と他の子は(ビビりながら 笑)遊ぶようにして、青くんには帰ってもらった。
外まで送った。
もう我が子とは遊んじゃダメだけど、これからもウソはつかない方がいいと思うよと。
そして、もし我が子に何かしたら、今度も許さないからねと最後に釘を刺して。
(なんで低学年脅さないといけないんだと思ったけど、我が子への逆恨みは避けたかった)
それから、青くんはうちには来ていない。
我が子とクラスが一緒になることもなく、共通の友達はいるけど仲良いグループは違うようになっていったみたいで接点は薄くなっていった。
簡単に表現してはいけないとは思うけど、多分、青くんは我が子が羨ましかったのだよね。
理由は忘れちゃったけど、あるとき我が子と一緒に青くんのお家に用事があって伺ったことがあった。
青くんは家の外にいて家には入れないと言っていた。
夏休みに電車のスタンプラリーに我が子と青くんともう一人を連れて行った。
電車のフリーパス(数百円)だけあれば充分なのに、青くんは1万円を持ってきていて、もう一人の子に見せびらかしていた。(我が子は、あまり興味示してなかった^^;)
いま思えば、最初の頃、関係ない子をゾロゾロ連れてきたにも青くんだった。
聞こえてくる噂話で判断したくないけど、大人の顔色を伺わざるをえない環境だったのではないかということは想像できた。
わたし(大人)の顔色を伺うことのなく受け入れられている我が子が羨ましかったのだよね。
我が子が羨ましいとして、少しでも自分の立ち位置をよくしてわたし(大人)と良い関係を築いたほうが本人のためなのに、我が子を攻撃対象にしちゃう。
子供って悲しい生き物だ。
今年、我が子は成人になった。
青くんには学区が違っていたので小学校を卒業したら、もう我が子と関わることはなくなった。
青くんも、だ。
青くんはどんな成人を迎えたのだろう。
残念な思いはあったけど、正直もう日々思い出すこともない。
同情するのは良くないし、かといって心の交流があったという美談でもない。
青くんにとっても、小さい頃うるさいおばさんがいたなくらいの記憶しかないだろう。
きっと彼なりにたくましく生きていると信じて。
我が子は相変わらずマイペースで自分の『好き』を大切にしている。
未だに地に足が付いていないようだけど、小学生の頃、音楽の成績がいいわけでも、ピアノを習っていたわけでもないのに「将来は音楽で食べていく」といって親を苦笑させたことの、ほんのすこしだけ実現させている。
直接音楽で稼いでいるとは言い難いが、音楽に携わる進路を選び、多少人脈とスキルを広げている。
まだこの先どうなるかわからないけど、わたしがあの時全力で守ったことなどはきっと忘却の彼方(それでいい)、ただ漠然と自己肯定感を持っていてくれればいい。
どうか、心豊かな大人になっていってね。
この出来事はわたしひとりでは到底背負えるものではなかった。
(父親の関わりに関しては、ここでは言及しなくてごめんなさい)
りん子を幸せにするということはりん子の周囲も幸せにすると宣言した那智さんの有言実行。
何時間もわたしの悩みに付き合ってくれて、一緒に解決の道を歩んでくれた。
那智さんはわたしの人生に大きく関わってくれているけど、この出来事もその代表的なもの。
不倫の関係でここまで関わること是非は問わないでほしい。
これもひっくるめて『わたしたち』という記録でした。
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「等式」「青くん(仮名)」感想です。懐かしい、りん子よく頑張ったなー。毅然とした態度で、教育者ではないので青くんが納得する形で切り捨てる道を選んだんだよな。そうそう、あの時もいちいち誉めたな〰〰 りんさんの心が折れたら挫折してしまうから、数ヶ月だと思うがりん子が頑張った思い出です。
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COMMENT
那智さん、やっぱり頼もしいですね。
りん子さんも小さい子供相手なだけに、大変だったろうとお察しします。
青くん、大人になってからでもいいから
あの時本当はどうすれば良かったのか、気付いてくれるといいですね。
りん子さんも小さい子供相手なだけに、大変だったろうとお察しします。
青くん、大人になってからでもいいから
あの時本当はどうすれば良かったのか、気付いてくれるといいですね。
梨梨子さん
コメントありがとうございます!
アダルトカテゴリなのにこんな内容を書けるのも、それにコメントいただけるのも、ありがたいことだなって思います。
青くんも心豊かに大人になってほいしなぁ。
がんばれ、子どもたち!って思います(^-^)
コメントありがとうございます!
アダルトカテゴリなのにこんな内容を書けるのも、それにコメントいただけるのも、ありがたいことだなって思います。
青くんも心豊かに大人になってほいしなぁ。
がんばれ、子どもたち!って思います(^-^)