躾け
独特な幸福感
向かい合うバーガーショップ。
アルコールがすこし入っていい気分。
ハンバーガーのセットをひとつ、ふたりで半分。
ちょっぴり小腹を満たしたい気持ちと、このまま駅に向かうことを引き延ばすように。
那智さんが、包みを開けてひと口頬張る。
モグモグ。
あ、その目の色、その咀嚼の仕方。
小さくくいっと手招き。
食べさせてくれるんだ。
腰を浮かし顔を近づける。
那智さんもすこし乗り出して伸ばした手をうなじに回し、もうすこしわたしを近づけた。
口移し。
ああ、おいしい、うれしい。
もうひと口。
じっと見つめる。
その目と咀嚼。
次も、同じだ。
きっと食べさせてくれる。
今度はアゴをくっとさせて呼ぶ。
さっきよりもうすこし前屈みになって那智さんに近づく。
うなじに手、もっと近づくように小さく力が入る。
口移しで、もうひと口。
おいしくて、しあわせ。
次のひと口。
違う目の色、違う咀嚼の様子。
たぶん那智さんご自分のだ。
飲み込んだ。
やっぱりね^^
ポテト。
わくわくしてじっと見つめる。
きっと食べさせてくれる。
眼球がふるっと揺れた。
呼んでる。
腰を浮かせ体を大きく前に傾ける。
那智さんは手を伸ばすことも、前屈みになることもない。
すこし顔を傾けるだけ。
さっきから2回、どこまでわたしが近づけばいいか引き寄せて教えられたから。
食べさせてもらいに、わたしが行く。
見つめる、視線、咀嚼、もらう。
また見つめる、視線、咀嚼、待つ。
数回の繰り返しで、このときのわたしの食事は那智さんからもらうものになった。
喉が渇いた。
那智さん、飲んでいいですか?
なんの制約もないはずなのになんのためないもなく、許可をもらってしまった。
自らの意思で自らの手で口に運ぶことが不幸の象徴のように。
那智さんはガチガチに管理することなんて望んでいない。
このときは、ただそんな気分だっただけだろう。
だけど幸福のもとに繰り返し慣らすことは正常な思考をあっという間に変形させる。
じっと見つめ様子を伺い、教えられたもらえる距離まで近づく。
バーガーショップで咀嚼したハンバーガーを喜んで口移ししてもらう女ができあがる。
このときは自分で食べるよりも那智さんの意思で那智さんに食べさせてもらうことが、わたしの基本になっていた。
幸福のもとに繰り返されると、人の基本なんてけっこう簡単に変わる。
あ、それにこれって一石二鳥^^
だってわたしは幸せだし、那智さんは食べ過ぎないですむ(笑)
向かい合うバーガーショップ。
アルコールがすこし入っていい気分。
ハンバーガーのセットをひとつ、ふたりで半分。
ちょっぴり小腹を満たしたい気持ちと、このまま駅に向かうことを引き延ばすように。
那智さんが、包みを開けてひと口頬張る。
モグモグ。
あ、その目の色、その咀嚼の仕方。
小さくくいっと手招き。
食べさせてくれるんだ。
腰を浮かし顔を近づける。
那智さんもすこし乗り出して伸ばした手をうなじに回し、もうすこしわたしを近づけた。
口移し。
ああ、おいしい、うれしい。
もうひと口。
じっと見つめる。
その目と咀嚼。
次も、同じだ。
きっと食べさせてくれる。
今度はアゴをくっとさせて呼ぶ。
さっきよりもうすこし前屈みになって那智さんに近づく。
うなじに手、もっと近づくように小さく力が入る。
口移しで、もうひと口。
おいしくて、しあわせ。
次のひと口。
違う目の色、違う咀嚼の様子。
たぶん那智さんご自分のだ。
飲み込んだ。
やっぱりね^^
ポテト。
わくわくしてじっと見つめる。
きっと食べさせてくれる。
眼球がふるっと揺れた。
呼んでる。
腰を浮かせ体を大きく前に傾ける。
那智さんは手を伸ばすことも、前屈みになることもない。
すこし顔を傾けるだけ。
さっきから2回、どこまでわたしが近づけばいいか引き寄せて教えられたから。
食べさせてもらいに、わたしが行く。
見つめる、視線、咀嚼、もらう。
また見つめる、視線、咀嚼、待つ。
数回の繰り返しで、このときのわたしの食事は那智さんからもらうものになった。
喉が渇いた。
那智さん、飲んでいいですか?
なんの制約もないはずなのになんのためないもなく、許可をもらってしまった。
自らの意思で自らの手で口に運ぶことが不幸の象徴のように。
那智さんはガチガチに管理することなんて望んでいない。
このときは、ただそんな気分だっただけだろう。
だけど幸福のもとに繰り返し慣らすことは正常な思考をあっという間に変形させる。
じっと見つめ様子を伺い、教えられたもらえる距離まで近づく。
バーガーショップで咀嚼したハンバーガーを喜んで口移ししてもらう女ができあがる。
このときは自分で食べるよりも那智さんの意思で那智さんに食べさせてもらうことが、わたしの基本になっていた。
幸福のもとに繰り返されると、人の基本なんてけっこう簡単に変わる。
あ、それにこれって一石二鳥^^
だってわたしは幸せだし、那智さんは食べ過ぎないですむ(笑)