白旗を挙げた日
惹かれ合う理由
相変わらず、尋常じゃない頻度のメールや電話を欲し、どんどんと那智さんに依存しているのは自覚していた。
その依存度合いが、いつか邪魔に思われてしまうのではないか、不安に思いながらも抑えることができない。
「いつか、あなたが私をうっとうしくて嫌になるのではないか、心配」
そんな風に訴えてみると必ず、
「できるときはできるし、ダメなときはダメって言うから、大丈夫。無理して付き合っているんじゃないから。」と答えてくれる。
本当に、手が離せないときなどは、あっさりと「後で」と言う。
そして、必ず後からかけ直してくれる。
メールの返事も、返ってこないときもある。
そして、おそらく一段落ついたのだろう、その間うっとうしいほどにたくさん送ったメールに対してひとつひとつ返事をくれる。(面白くない質問とかは、時々無視されちゃうけど♪)
些細なことですぐ不安になる、愛情をもらうことに自信のない私に、依存していて良いと根気強く言葉や態度で教えてくれる。
警戒心の強い野良猫を少しずつ飼い慣らすように。
それでも不安な私は、なぜ私の依存が嫌にならないと言えるのか聞いてみると「合っているから」と答えてくれる。
いつもいつも。
多分、「言葉選び」や「間」のようなものが、うっとうしいと思われる訴えも、那智さんには耐えられるものだったのかもしれない。
この「感性が合う」ということは、つかみどころがない。
目に見えないものだから、不安は拭い去れない部分もある。
でも、逆に、これこそ「根拠ない」安心にもなる。
「スタイルがいいから」とか「料理が上手いから」というような、目に見えることではなく、本人の努力でなんともならない「感性が合う」は、きっと私オリジナルだからだ。
意志の及ばないところが好きと言ってくれるのは、条件なしで好きと言われているようで、私を安心させてくれるのだ。
それでも、まだ私は自信がない。
自分の選んできたことが、けっして良い結果をもたらしていない経験が、自信が持てない原因だろう。
何度も何度も、同じような質問を繰り返す「私のこと好き?」「どこが好き?」(ああ、うっとうしい〜)、いつも同じ答えでも、それが安心。
それでも、まだ試すように「自信がない」と訴える。
(無意識だけど、試しているんだといまなら思える。子供がわざとわがままを言って親の反応を見るようなこと)
「自分の選択に自信がありません。だから、あなたとの付き合いもいつか壊れるかもしれないから不安です。」
「大丈夫。りん子が選んだんじゃない。俺がりん子を選んだんだから。」
その場しのぎの甘い言葉は絶対吐かない、きちんと向き合ってくれる、私の負の部分を知っている人の、この台詞は目眩がするほど幸福だ。
涙が溢れてしかたがない。
この人と知り合って私はどれほどの涙を流しただろう。
幸せの涙だ。
もしかしたら、委ねてもいいかもしれない。
そう思い始めた、4度目のデート。
どういう流れか忘れたけれど、那智さんが私の胸を口に含んだ状態で、私が那智さんの頭を抱き込む体勢になった。
私は、いままで男の人を見下して付き合っていたとき、よくその体勢をしたのだ。
おっぱいを飲む赤ん坊を抱きかかえるように、男の人を包む。(腕枕してあげたこともあります!!)
それと同じ状態を那智さんでしたときに、一瞬、あの見下しの快感(相手を下に見ることで自分が優位にたっていると錯覚させる快感ね)が蘇ってしまったのだ。
胸の奥がギュッとなるような、切なく苦しい感覚。
正直に伝えた。
今後、付き合っていくうちに、あなたを見下してしまうときが来てしまうかもしれない。
「どうなったら、りん子は男を見下すの?」
「私に甘えて、私が負の感情を見せずに良い子でいるとが当たり前になって、私がどう思っているか考えなくと、そうなります。」
「多分、俺はそうならないと思うけど。じゃあ、仮に体調不良とかで、仕事が忙しいとかで頼ると見下すの?」
「頼るのは、かまわないです。それに感謝の気持ちが麻痺してくると、ダメなの。」
しばらく、考える那智さん。
その後那智さんが出した答えが、果たして正解か、どうかはわからない。
けれど、私の深層部分の心に気付かず、増長するだけの男の人とばかり付き合っていた私をノックアウトさせるには、充分なお返事だった。
いままで誰1人として、向き合えず、まして解決策なんて提示されたことないのだ。
それは、私にとって救いの言葉だった。
「じゃあ、これから、もし俺がりん子のいう「増長する」になったら、ちゃんと言って、そしたら、俺はりん子に酷いことをしてあげる。ごめんねって謝りながら、りん子が俺より下になれるように、みじめにしてあげる。そして、引っ張り上げてあげる。そしたら、見下さずにすむだろう。」
もうダメかもしれない。
この人には、かなわない。
那智さんの私を思う気持ちは本当なのだろう。
そして、私は那智さんには、かなわない。
私自身でも見つけられなかったことを、見つけて、それで助けてくれると言っているこの人に私は付いていくしかないのだろう。
不安や自信のなさは、相変わらずだ。
でも、かなわないと思える那智さんに付いていったら、いつかきっときちんと自分の足で立ち、胸を張って生きていかれるだろう。
心の中で、白旗を挙げた瞬間だった。
相変わらず、尋常じゃない頻度のメールや電話を欲し、どんどんと那智さんに依存しているのは自覚していた。
その依存度合いが、いつか邪魔に思われてしまうのではないか、不安に思いながらも抑えることができない。
「いつか、あなたが私をうっとうしくて嫌になるのではないか、心配」
そんな風に訴えてみると必ず、
「できるときはできるし、ダメなときはダメって言うから、大丈夫。無理して付き合っているんじゃないから。」と答えてくれる。
本当に、手が離せないときなどは、あっさりと「後で」と言う。
そして、必ず後からかけ直してくれる。
メールの返事も、返ってこないときもある。
そして、おそらく一段落ついたのだろう、その間うっとうしいほどにたくさん送ったメールに対してひとつひとつ返事をくれる。(面白くない質問とかは、時々無視されちゃうけど♪)
些細なことですぐ不安になる、愛情をもらうことに自信のない私に、依存していて良いと根気強く言葉や態度で教えてくれる。
警戒心の強い野良猫を少しずつ飼い慣らすように。
それでも不安な私は、なぜ私の依存が嫌にならないと言えるのか聞いてみると「合っているから」と答えてくれる。
いつもいつも。
多分、「言葉選び」や「間」のようなものが、うっとうしいと思われる訴えも、那智さんには耐えられるものだったのかもしれない。
この「感性が合う」ということは、つかみどころがない。
目に見えないものだから、不安は拭い去れない部分もある。
でも、逆に、これこそ「根拠ない」安心にもなる。
「スタイルがいいから」とか「料理が上手いから」というような、目に見えることではなく、本人の努力でなんともならない「感性が合う」は、きっと私オリジナルだからだ。
意志の及ばないところが好きと言ってくれるのは、条件なしで好きと言われているようで、私を安心させてくれるのだ。
それでも、まだ私は自信がない。
自分の選んできたことが、けっして良い結果をもたらしていない経験が、自信が持てない原因だろう。
何度も何度も、同じような質問を繰り返す「私のこと好き?」「どこが好き?」(ああ、うっとうしい〜)、いつも同じ答えでも、それが安心。
それでも、まだ試すように「自信がない」と訴える。
(無意識だけど、試しているんだといまなら思える。子供がわざとわがままを言って親の反応を見るようなこと)
「自分の選択に自信がありません。だから、あなたとの付き合いもいつか壊れるかもしれないから不安です。」
「大丈夫。りん子が選んだんじゃない。俺がりん子を選んだんだから。」
その場しのぎの甘い言葉は絶対吐かない、きちんと向き合ってくれる、私の負の部分を知っている人の、この台詞は目眩がするほど幸福だ。
涙が溢れてしかたがない。
この人と知り合って私はどれほどの涙を流しただろう。
幸せの涙だ。
もしかしたら、委ねてもいいかもしれない。
そう思い始めた、4度目のデート。
どういう流れか忘れたけれど、那智さんが私の胸を口に含んだ状態で、私が那智さんの頭を抱き込む体勢になった。
私は、いままで男の人を見下して付き合っていたとき、よくその体勢をしたのだ。
おっぱいを飲む赤ん坊を抱きかかえるように、男の人を包む。(腕枕してあげたこともあります!!)
それと同じ状態を那智さんでしたときに、一瞬、あの見下しの快感(相手を下に見ることで自分が優位にたっていると錯覚させる快感ね)が蘇ってしまったのだ。
胸の奥がギュッとなるような、切なく苦しい感覚。
正直に伝えた。
今後、付き合っていくうちに、あなたを見下してしまうときが来てしまうかもしれない。
「どうなったら、りん子は男を見下すの?」
「私に甘えて、私が負の感情を見せずに良い子でいるとが当たり前になって、私がどう思っているか考えなくと、そうなります。」
「多分、俺はそうならないと思うけど。じゃあ、仮に体調不良とかで、仕事が忙しいとかで頼ると見下すの?」
「頼るのは、かまわないです。それに感謝の気持ちが麻痺してくると、ダメなの。」
しばらく、考える那智さん。
その後那智さんが出した答えが、果たして正解か、どうかはわからない。
けれど、私の深層部分の心に気付かず、増長するだけの男の人とばかり付き合っていた私をノックアウトさせるには、充分なお返事だった。
いままで誰1人として、向き合えず、まして解決策なんて提示されたことないのだ。
それは、私にとって救いの言葉だった。
「じゃあ、これから、もし俺がりん子のいう「増長する」になったら、ちゃんと言って、そしたら、俺はりん子に酷いことをしてあげる。ごめんねって謝りながら、りん子が俺より下になれるように、みじめにしてあげる。そして、引っ張り上げてあげる。そしたら、見下さずにすむだろう。」
もうダメかもしれない。
この人には、かなわない。
那智さんの私を思う気持ちは本当なのだろう。
そして、私は那智さんには、かなわない。
私自身でも見つけられなかったことを、見つけて、それで助けてくれると言っているこの人に私は付いていくしかないのだろう。
不安や自信のなさは、相変わらずだ。
でも、かなわないと思える那智さんに付いていったら、いつかきっときちんと自分の足で立ち、胸を張って生きていかれるだろう。
心の中で、白旗を挙げた瞬間だった。