職業選択3
惹かれ合う理由
とりあえず、「はい」という返事で納得してくれたのか、その日の電話は終わりになった。
でも私はまだ心の中は、「無理に決まっている。しばらくすれば那智さんの熱も冷めるだろう。」と甘い考えでいた。
第二弾は、それほど時間が経たないで訪れた。
「調べてみた?」
・・・・・・調べていない。
「だめじゃん。どうするんだよ。」
苦し紛れに、頭の片隅にあった考えを提案してみる。
以前、イベントコンパニオンのアルバイトをしていた頃の何人かとはいまでも年賀状のやり取りくらいはしている。
1度目の離婚を機に一掃した人たちなので、とっても距離を置いた付き合いではあるが・・。
その中の1人は、その時もMCをしていたのだ。
10年もフリーで仕事をしているらしいことは、噂で聞いていた。
かつて私が所属していた事務所とも繋がりはあるはずだろう。
その子を頼るというのは、どうでしょう。
ネットで調べなかった代わりに私が言った提案は、ネットなんかよりもずっと、那智さんにとって(私にとっても!?)「司会業」が実現可能なことに思える材料になったようだ。
たしかに表面だけ見れば、現役でMCをしてる知り合いに繋がりのある事務所を紹介してもらうことは、正しい方法だろう。
でも、考えてみて、なんとなく疎遠になっている人に電話をかけるだけでも億劫なことなのに、司会をしたいなんて無謀な相談をするのだ。
「今更なんで?」と絶句されるのが関の山だ。
私は自信がないくせにプライドが高い、さらに人にマイナスの感情を持たせることは避けたいと思っている。
その私が、自信のないことを、無謀にも(同じような職種をしている彼女なら無謀度合いは痛いほどわかるだろう)お願いして、驚かれるために電話をするのだ。
「無理です。絶対無理!!驚かれておしまいです!!」
「驚かれたっていいでしょ。無理と断られたら諦められるだろ?」
「私なんか紹介したら、彼女の顔に泥を塗ることになるかもしれない。」
「紹介してもらうんじゃないよ。披露宴の司会になる方法を知っているか聞いてみるんだ。無謀なことはわかっているけど、憧れを捨てられないから、探っている、ダメなら諦められるからってほんとの気持ちを伝えるんだ。紹介となるとその子も負担になるだろ?だから、方法だけでも教えてもらうんだ。」
いろんなこと言って諦めてもらおうとするけれど、まったく効果なし。
「電話できません。」
「りん子には、手はないの?」
「あります。」
「口はないの?」
「あります。」
「じゃあ、電話できるよね♪」
「できるけど、できません。」
「なんで?」
「勇気がないからです。」
「できることを、勇気がないからってやらないのはよくないよね♪」
けっして声を荒げることもなく、穏やかにでも一歩も引かない強さで、首を立てに振らざるをえない状況に追い込まれる。
何より、なぜこんなに私のことで真剣になってくれるのかわからない。
わからないけど、幸せだ。
結局、断る理由がなくなって、その子に連絡を取ると答える。
「わかりました、電話します。」
「そう、偉いね。で、いつするの?」
えええええええええっ、「いつするか」って、そんないきなり聞かれても!!!!
「・・・明日か、明後日か・・・。」
「いましてごらん。今も明日も同じだろ?まだ失礼な時間じゃないし。一旦電話を切るから、終わったらまたかけて。」
有無を言わせないとは、こういうことをいうのだろう。
「有無を言わせない」を体感した瞬間だった(笑)
結局、その夜は旦那さんが出て、彼女は不在だった。
「またかけます。」と言い残して電話を切る。
安堵なのか、生殺しなのか、複雑な気分だ。
死刑執行が伸びただけで、死刑は回避されたわけではないのだけは、確かだ。
「そうか、残念だったね。じゃあ、今度は昼間に電話してみよう。」
新たに死刑宣告をされたようだ。
なかなか終わりにならない。
その子の仕事の都合で、なかなか連絡が取れず、しばらくしてから話す機会が訪れた。
「MC業をもう一度やりたい。無理はわかっているけれど、でも、やらずには諦められない。経験のあるあなたに、どんな方法があるかだけでも教えてもらいたい。あとは自分でなんとかするから。」
那智さんにレクチャーされたように一生懸命お話しをしてみる。
声が震えていることを、悟られないようにしながら、真摯に。
なぜ、こんなに真摯になっているのか、わからない。
でも私に真摯に向き合ってくれる那智さんに、一生懸命取り組んだ結果を報告したい。
たとえ、良いお返事がもらえなくても、それは大したことではない。
私が一生懸命やったと胸を張れれば、那智さんはわかってくれるはずだからだ。
「いま付き合いのある事務所は二つある。」
彼女は、私が思った以上に真剣に答えてくれた。
疎遠にしていたのは、私の方だ。
申し訳ない気持ちと感謝の気持ち、そして、勇気を出した心地よさを味わっていた。
まだまだ、壁は高い。
越える決心すら付いていないくらい、まだ私は逃げ腰だ。
そう簡単に「よーし!!」みたいに、なれるものでもない。
しかし、真剣に方法を模索してくれる友人の話を聞きながら、これを那智さんに報告したら喜んでくれるかもしれないと、わくわくしながらメモを取っていた。
わあ、まだまだ続きます。
どうしよう、いままでで一番長いシリーズになりそうです。
色っぽくないし、劇的な話じゃないし、申し訳ないですが、つづく!!(ライフカード風に♪)
とりあえず、「はい」という返事で納得してくれたのか、その日の電話は終わりになった。
でも私はまだ心の中は、「無理に決まっている。しばらくすれば那智さんの熱も冷めるだろう。」と甘い考えでいた。
第二弾は、それほど時間が経たないで訪れた。
「調べてみた?」
・・・・・・調べていない。
「だめじゃん。どうするんだよ。」
苦し紛れに、頭の片隅にあった考えを提案してみる。
以前、イベントコンパニオンのアルバイトをしていた頃の何人かとはいまでも年賀状のやり取りくらいはしている。
1度目の離婚を機に一掃した人たちなので、とっても距離を置いた付き合いではあるが・・。
その中の1人は、その時もMCをしていたのだ。
10年もフリーで仕事をしているらしいことは、噂で聞いていた。
かつて私が所属していた事務所とも繋がりはあるはずだろう。
その子を頼るというのは、どうでしょう。
ネットで調べなかった代わりに私が言った提案は、ネットなんかよりもずっと、那智さんにとって(私にとっても!?)「司会業」が実現可能なことに思える材料になったようだ。
たしかに表面だけ見れば、現役でMCをしてる知り合いに繋がりのある事務所を紹介してもらうことは、正しい方法だろう。
でも、考えてみて、なんとなく疎遠になっている人に電話をかけるだけでも億劫なことなのに、司会をしたいなんて無謀な相談をするのだ。
「今更なんで?」と絶句されるのが関の山だ。
私は自信がないくせにプライドが高い、さらに人にマイナスの感情を持たせることは避けたいと思っている。
その私が、自信のないことを、無謀にも(同じような職種をしている彼女なら無謀度合いは痛いほどわかるだろう)お願いして、驚かれるために電話をするのだ。
「無理です。絶対無理!!驚かれておしまいです!!」
「驚かれたっていいでしょ。無理と断られたら諦められるだろ?」
「私なんか紹介したら、彼女の顔に泥を塗ることになるかもしれない。」
「紹介してもらうんじゃないよ。披露宴の司会になる方法を知っているか聞いてみるんだ。無謀なことはわかっているけど、憧れを捨てられないから、探っている、ダメなら諦められるからってほんとの気持ちを伝えるんだ。紹介となるとその子も負担になるだろ?だから、方法だけでも教えてもらうんだ。」
いろんなこと言って諦めてもらおうとするけれど、まったく効果なし。
「電話できません。」
「りん子には、手はないの?」
「あります。」
「口はないの?」
「あります。」
「じゃあ、電話できるよね♪」
「できるけど、できません。」
「なんで?」
「勇気がないからです。」
「できることを、勇気がないからってやらないのはよくないよね♪」
けっして声を荒げることもなく、穏やかにでも一歩も引かない強さで、首を立てに振らざるをえない状況に追い込まれる。
何より、なぜこんなに私のことで真剣になってくれるのかわからない。
わからないけど、幸せだ。
結局、断る理由がなくなって、その子に連絡を取ると答える。
「わかりました、電話します。」
「そう、偉いね。で、いつするの?」
えええええええええっ、「いつするか」って、そんないきなり聞かれても!!!!
「・・・明日か、明後日か・・・。」
「いましてごらん。今も明日も同じだろ?まだ失礼な時間じゃないし。一旦電話を切るから、終わったらまたかけて。」
有無を言わせないとは、こういうことをいうのだろう。
「有無を言わせない」を体感した瞬間だった(笑)
結局、その夜は旦那さんが出て、彼女は不在だった。
「またかけます。」と言い残して電話を切る。
安堵なのか、生殺しなのか、複雑な気分だ。
死刑執行が伸びただけで、死刑は回避されたわけではないのだけは、確かだ。
「そうか、残念だったね。じゃあ、今度は昼間に電話してみよう。」
新たに死刑宣告をされたようだ。
なかなか終わりにならない。
その子の仕事の都合で、なかなか連絡が取れず、しばらくしてから話す機会が訪れた。
「MC業をもう一度やりたい。無理はわかっているけれど、でも、やらずには諦められない。経験のあるあなたに、どんな方法があるかだけでも教えてもらいたい。あとは自分でなんとかするから。」
那智さんにレクチャーされたように一生懸命お話しをしてみる。
声が震えていることを、悟られないようにしながら、真摯に。
なぜ、こんなに真摯になっているのか、わからない。
でも私に真摯に向き合ってくれる那智さんに、一生懸命取り組んだ結果を報告したい。
たとえ、良いお返事がもらえなくても、それは大したことではない。
私が一生懸命やったと胸を張れれば、那智さんはわかってくれるはずだからだ。
「いま付き合いのある事務所は二つある。」
彼女は、私が思った以上に真剣に答えてくれた。
疎遠にしていたのは、私の方だ。
申し訳ない気持ちと感謝の気持ち、そして、勇気を出した心地よさを味わっていた。
まだまだ、壁は高い。
越える決心すら付いていないくらい、まだ私は逃げ腰だ。
そう簡単に「よーし!!」みたいに、なれるものでもない。
しかし、真剣に方法を模索してくれる友人の話を聞きながら、これを那智さんに報告したら喜んでくれるかもしれないと、わくわくしながらメモを取っていた。
わあ、まだまだ続きます。
どうしよう、いままでで一番長いシリーズになりそうです。
色っぽくないし、劇的な話じゃないし、申し訳ないですが、つづく!!(ライフカード風に♪)