わんこと「汚されたい」1
非日常的な日常
「怒らない私」から派生した話を、もっと書けそうな感じもしていますが、またまとまったらしますね。
ということで、お待たせしました、わんことその他です〜。(待ってない!?)
今朝の那智さんは少しお仕事モード。
用事を済ませるために、一足先に待ち合わせの街に行っている。
だから事前に「欲情して」なんて、遊んでくれない。
寂しいけど、ホッとしてもいる。
こういう時のM心は、ゆらゆらと揺れる。
待ち合わせて、もうひとつ用事があるそうで、銀行による。
何やら、カウンターでお話しをしている。
私は後ろのソファで雑誌を見ながら待っている。
もしかしたら、トイレに行きたくなるかもしれない。
手続きをしている間、ソファに戻って来た那智さんに聞いてみる。
「お手洗いに行ってもいいですか?」
「だめだよ。」
ニヤッと微笑む那智さん。
銀行でお仕事モード、私もそれと同じような気分でいたから、その「だめ」は別のスイッチの存在を思い出させる言葉だった。
ああ、拒否が嬉しい。
これが切羽詰まっていたら、嬉しいなんて言ってられないけど、まだ大丈夫。
その甘美な否定に、一瞬酔う。
またカウンターに戻って、銀行員とお話しをはじめた。
スイッチオンとまでいかなかったこの中途半端な状態で、またM心はゆらゆら揺れる。
銀行を出て、いつもホテルに向かう道。
心配していたトイレも大丈夫そう。
お仕事モードの那智さんも見れて、なんだかちょっと浮かれ気味の私。
マ○○の前で立ち止まる。
いきなり、心の針がぶーんと振れる。
どっちに振れたかわからないんだけど、とにかく大きく振れた。
那智さんはモーニングを頼んで、私はコーヒーを頼む。
2階をスルーして3階へ。
誰もいない。
また、針が大きく振れる。
人がいてもなにかするでしょう。
でも、人がいないともっと酷いことになるはず。
どっちがいいのか、わからないわ。
前回わんこになった、入って右端の席にトレーを置いて、那智さんが対角線上にある防犯カメラに気付く。
「あれ?いままでなかったよな。」
那智さんはそれをチェックしているだろうから、恐らく以前はなかったはず。
なぜ、今頃付いてるの!?
私は、そのきっかけが自分たちにあるように思えてしまって、恐ろしくなってしまう。
「多分なかったと思うんだけどな〜。」
そう言いながら、何もなかったように、そのカメラの真下の席に移動してる。
恐いです、那智さん、カメラに映ってしまう。
実際にテーブルに着くと、真下でしかも少しカメラのほうが前に出ている。
これなら、映らないと思いたい。
バッグから尻尾。
「後ろ向いて」
ベンチシートに腰掛ける那智さんに背を向けて立ち、スカートをめくる。
手際良く、尻尾をお尻にねじ込ませてくれている。
私は両側にあるテーブルに手を付き、お尻を突き出すように少しだけ前屈みになって、協力する。
だって、いつ人が来るかわからないのだもの、一秒でも早く終わってほしいもの。
「欲情しなさい」って、遊んでくれなかったから、銀行に行ったりしたから、私の心は正常なの。
だから、いまはとにかく恐い。
誰か来ないうちに、早く終わってほしい。
ビクビクして、終わりになるのを待つ。
ああ、でも、お尻に異物が入っていく感覚が気持ち良くて、正常な心のまま、そんなことで感じてしまう。
尻尾は入って、首輪リードを付けて、完成。
まだ、正常よりでゆらゆらしている。
だから、尻尾を付けてる自分とそれをちょっと喜ぶ自分に、恥ずかしさを隠しきれずにいる。
なんだか、今日は「わんこ」になりきれてないな〜、そんな気持ちを込めて、照れ笑い。
そんな気持ちを知ってか知らずか、リードをグッと引かれ床に下りる指示。
人のいないフロアでわんこになれる嬉しさよりも、今日は戸惑いのほうがずっと大きいよ。
引く力に少し抵抗するように体に力が入る。
それでも、おずおずと床に手を付く。
防犯カメラが気になって、ちょっとでも那智さんの足下に近づこうと、ペタペタとにじり寄る。
もう私の頭はベンチシートに触れんばかりだ。
正常な気持ちでわんこになってる。
ああ、人が上がって来たらどうしよう。
正常な分だけまともな想像ができてしまって、恐くてしかたがない。
「ガタッ!!」
なにか音がした。
全身の毛穴が開いたような、皮膚がビリビリと痺れる感覚。
飛び跳ねて上半身を起こして、那智さんにしがみつく。
恐い、恐い、恐い。
まだ、撫でてくれている。
戻らなきゃ。
四つん這いにならなきゃ。
鼓動が激しくなる。
また、元に戻る。
恐い、那智さん、いつものように「誰か来てもこのままだよ」って言ってください。
そうして、私を正常から引き離して。
観念するしか道はないと、とどめを刺して。
なんの音だったのか、私にはわからなかった。
またスタッフが上がって来たのかもしれない。
心は正常だけど、状況判断ができるほど冷静ではないらしい。
撫でていた手が離れた。
モーニングのマフィンを包む紙の音がしてきて、那智さんがお食事を始めたのがわかった。
私は、まだビクビクしながら、ずっと足下にいる。
誰も上がって来ませんように。
怯えた人間から抜け出せないでいる。
でも、那智さんの太腿に頭をくっつけて、食事をする気配を足下で聞いているのは、わずかに幸せ感をくれた。
「ガサッ」と音がして、目の前にマフィンを包んでいた紙のラップが落とされた。
次に、噛み砕かれたソーセージマフィンの塊がごろっと。
ご飯だ。
床に敷かれた紙の上に置かれた咀嚼したマフィンが、犬のご飯。
ああ、嬉しい、ご飯だ。
その瞬間、今日ずっと私を困らせていた「正常」が一気に飛んでいってしまった。
どうしよう、ためらう気持ちが1ミリくらいしかない。
床に置かれたご飯を喜ぶ私ばかりだ。
床に顔を近づけて、ご飯を口に含む。
モグモグと食べる。
嬉しい、わんこになれたわ。
ここにご飯があるということは、そこにいなさいということだもの、私はわんこでいるしかないのだもの。
やっとわんこになれた。
二口くらい口に含んだ、その時、ゴツンという勢いで、那智さんの足が頭に乗せられた。
革靴の固い底が頭を押し付け、咀嚼されたマフィンに顔を埋める。
ぐりぐりと踏みつけられるたびに、頬に鼻にグチャグチャと着く。
鼻が潰れそうで痛い。
息が苦しい。
顔も髪も油で汚れているだろう。
だけど、嬉しい。
酷くされて、汚くされて、喜んでる私。
足が離された。
ご飯の続き。
顔で潰れてしまったご飯をまた食べる。
唇で探って、舌で掬って。
視界には、残りのご飯と床と那智さんの靴しかない。
顔がギトギトしてるのがわかる。
舌が長かったら、舐めてきれいにできるのに。
紙の上は、マフィンの欠片だけになった。
全部食べたい。
ぺろぺろと舌で舐める。
紙一枚を隔てて、床を感じる。
床を舐めているみたいだ。
タイルの目地までわかる。
固い床を、ぺろぺろ舐める。
那智さんがくれたご飯を全部食べたいもの。
ああ、嬉しい。
床を舐める卑しい犬みたい。
本当に床じゃなくって良かった。
汚いもの。
でも、本当に床でも、同じことをしてしまいそうだ。
食べ終わってしまうのが、とても惜しくて何度も何度も紙を舐めていた。
「怒らない私」から派生した話を、もっと書けそうな感じもしていますが、またまとまったらしますね。
ということで、お待たせしました、わんことその他です〜。(待ってない!?)
今朝の那智さんは少しお仕事モード。
用事を済ませるために、一足先に待ち合わせの街に行っている。
だから事前に「欲情して」なんて、遊んでくれない。
寂しいけど、ホッとしてもいる。
こういう時のM心は、ゆらゆらと揺れる。
待ち合わせて、もうひとつ用事があるそうで、銀行による。
何やら、カウンターでお話しをしている。
私は後ろのソファで雑誌を見ながら待っている。
もしかしたら、トイレに行きたくなるかもしれない。
手続きをしている間、ソファに戻って来た那智さんに聞いてみる。
「お手洗いに行ってもいいですか?」
「だめだよ。」
ニヤッと微笑む那智さん。
銀行でお仕事モード、私もそれと同じような気分でいたから、その「だめ」は別のスイッチの存在を思い出させる言葉だった。
ああ、拒否が嬉しい。
これが切羽詰まっていたら、嬉しいなんて言ってられないけど、まだ大丈夫。
その甘美な否定に、一瞬酔う。
またカウンターに戻って、銀行員とお話しをはじめた。
スイッチオンとまでいかなかったこの中途半端な状態で、またM心はゆらゆら揺れる。
銀行を出て、いつもホテルに向かう道。
心配していたトイレも大丈夫そう。
お仕事モードの那智さんも見れて、なんだかちょっと浮かれ気味の私。
マ○○の前で立ち止まる。
いきなり、心の針がぶーんと振れる。
どっちに振れたかわからないんだけど、とにかく大きく振れた。
那智さんはモーニングを頼んで、私はコーヒーを頼む。
2階をスルーして3階へ。
誰もいない。
また、針が大きく振れる。
人がいてもなにかするでしょう。
でも、人がいないともっと酷いことになるはず。
どっちがいいのか、わからないわ。
前回わんこになった、入って右端の席にトレーを置いて、那智さんが対角線上にある防犯カメラに気付く。
「あれ?いままでなかったよな。」
那智さんはそれをチェックしているだろうから、恐らく以前はなかったはず。
なぜ、今頃付いてるの!?
私は、そのきっかけが自分たちにあるように思えてしまって、恐ろしくなってしまう。
「多分なかったと思うんだけどな〜。」
そう言いながら、何もなかったように、そのカメラの真下の席に移動してる。
恐いです、那智さん、カメラに映ってしまう。
実際にテーブルに着くと、真下でしかも少しカメラのほうが前に出ている。
これなら、映らないと思いたい。
バッグから尻尾。
「後ろ向いて」
ベンチシートに腰掛ける那智さんに背を向けて立ち、スカートをめくる。
手際良く、尻尾をお尻にねじ込ませてくれている。
私は両側にあるテーブルに手を付き、お尻を突き出すように少しだけ前屈みになって、協力する。
だって、いつ人が来るかわからないのだもの、一秒でも早く終わってほしいもの。
「欲情しなさい」って、遊んでくれなかったから、銀行に行ったりしたから、私の心は正常なの。
だから、いまはとにかく恐い。
誰か来ないうちに、早く終わってほしい。
ビクビクして、終わりになるのを待つ。
ああ、でも、お尻に異物が入っていく感覚が気持ち良くて、正常な心のまま、そんなことで感じてしまう。
尻尾は入って、首輪リードを付けて、完成。
まだ、正常よりでゆらゆらしている。
だから、尻尾を付けてる自分とそれをちょっと喜ぶ自分に、恥ずかしさを隠しきれずにいる。
なんだか、今日は「わんこ」になりきれてないな〜、そんな気持ちを込めて、照れ笑い。
そんな気持ちを知ってか知らずか、リードをグッと引かれ床に下りる指示。
人のいないフロアでわんこになれる嬉しさよりも、今日は戸惑いのほうがずっと大きいよ。
引く力に少し抵抗するように体に力が入る。
それでも、おずおずと床に手を付く。
防犯カメラが気になって、ちょっとでも那智さんの足下に近づこうと、ペタペタとにじり寄る。
もう私の頭はベンチシートに触れんばかりだ。
正常な気持ちでわんこになってる。
ああ、人が上がって来たらどうしよう。
正常な分だけまともな想像ができてしまって、恐くてしかたがない。
「ガタッ!!」
なにか音がした。
全身の毛穴が開いたような、皮膚がビリビリと痺れる感覚。
飛び跳ねて上半身を起こして、那智さんにしがみつく。
恐い、恐い、恐い。
まだ、撫でてくれている。
戻らなきゃ。
四つん這いにならなきゃ。
鼓動が激しくなる。
また、元に戻る。
恐い、那智さん、いつものように「誰か来てもこのままだよ」って言ってください。
そうして、私を正常から引き離して。
観念するしか道はないと、とどめを刺して。
なんの音だったのか、私にはわからなかった。
またスタッフが上がって来たのかもしれない。
心は正常だけど、状況判断ができるほど冷静ではないらしい。
撫でていた手が離れた。
モーニングのマフィンを包む紙の音がしてきて、那智さんがお食事を始めたのがわかった。
私は、まだビクビクしながら、ずっと足下にいる。
誰も上がって来ませんように。
怯えた人間から抜け出せないでいる。
でも、那智さんの太腿に頭をくっつけて、食事をする気配を足下で聞いているのは、わずかに幸せ感をくれた。
「ガサッ」と音がして、目の前にマフィンを包んでいた紙のラップが落とされた。
次に、噛み砕かれたソーセージマフィンの塊がごろっと。
ご飯だ。
床に敷かれた紙の上に置かれた咀嚼したマフィンが、犬のご飯。
ああ、嬉しい、ご飯だ。
その瞬間、今日ずっと私を困らせていた「正常」が一気に飛んでいってしまった。
どうしよう、ためらう気持ちが1ミリくらいしかない。
床に置かれたご飯を喜ぶ私ばかりだ。
床に顔を近づけて、ご飯を口に含む。
モグモグと食べる。
嬉しい、わんこになれたわ。
ここにご飯があるということは、そこにいなさいということだもの、私はわんこでいるしかないのだもの。
やっとわんこになれた。
二口くらい口に含んだ、その時、ゴツンという勢いで、那智さんの足が頭に乗せられた。
革靴の固い底が頭を押し付け、咀嚼されたマフィンに顔を埋める。
ぐりぐりと踏みつけられるたびに、頬に鼻にグチャグチャと着く。
鼻が潰れそうで痛い。
息が苦しい。
顔も髪も油で汚れているだろう。
だけど、嬉しい。
酷くされて、汚くされて、喜んでる私。
足が離された。
ご飯の続き。
顔で潰れてしまったご飯をまた食べる。
唇で探って、舌で掬って。
視界には、残りのご飯と床と那智さんの靴しかない。
顔がギトギトしてるのがわかる。
舌が長かったら、舐めてきれいにできるのに。
紙の上は、マフィンの欠片だけになった。
全部食べたい。
ぺろぺろと舌で舐める。
紙一枚を隔てて、床を感じる。
床を舐めているみたいだ。
タイルの目地までわかる。
固い床を、ぺろぺろ舐める。
那智さんがくれたご飯を全部食べたいもの。
ああ、嬉しい。
床を舐める卑しい犬みたい。
本当に床じゃなくって良かった。
汚いもの。
でも、本当に床でも、同じことをしてしまいそうだ。
食べ終わってしまうのが、とても惜しくて何度も何度も紙を舐めていた。