3回目の旅1
惹かれ合う理由
「心も体も支配する」
伝言ダイヤルのメッセージは、容易いことのように言っている。
どうしたら支配できるのだろう。
1人の人間を支配するなんて、そんな簡単なことではないはずだ。
もし簡単にできるならば、それは演技だ。
高揚させるための演技だ。
少なくとも私はそんなに容易に支配はできない。
支配されたいと望みながら、できるもんかと半信半疑で思う。
どうしたら出会えるのだろう。
心も体も支配して、私を好きなように扱える人。
経験が豊富な人なら良いのか。
うんと年上なら委ねられるのか。
エリートならば、尊敬できるのか。
たくさんの男性と話しをした。
中には、有名(らしい)な調教師を名乗る人もいた。
年齢、職業、経験、色々聞いてもピンとこない。
「何がしたいというよりは、その人のしたいと思うことを、私を使って叶えてほしいと思っています。」
みんな一様に感動する。
どこの大学を出たのかなんて、バカな質問をしてくる男も1人や2人ではない。
高校を卒業してすぐに働いたことを告げるとき、私は、そういう物差ししか持っていないその男をバカにしてしまう。
「しおらしい」「清楚」「話し易い」「ダイヤの原石」
賞賛の言葉を並べられても、気持ちが良いのは一瞬だけだ。
だって、そう思われるようにしているんだもの。
当たり前。
心の中で舌を出していることを自覚してしまっていては、尊敬なんて無理。
ここでもそれ以上の私を探ろうともしない男たちをバカにしてしまう。
一度目は怖い思いをして諦めて、二回目は好意を持てずに諦めた。
でももしかしたら、安全な人で好意を持てて、その人がSMをしてくれるかもしれないという望みが捨てられず、テレクラで相手を捜していた。
でも話せば話すほど、私が夢中になれる人に出会うのは難しいような気もしていた。
一体何人と話しをしたのか、わからなくなるころ、私は3人目の男性に出会うことになる。
その男性とは、比較的話しが弾んだ。
同じ地域に在住だったこともあって、セクシャルな話題以外でも会話が成立していて心地良かった。
その人は、仕事で週のほとんどをクライアントがいる東北で過ごしているらしい。
だから夜にたくさん話しができた。
誰かと繋がっていたい私には、好都合だった。
ポンポンと会話が飛び交うというよりかは、ゆっくりと時間が流れていくようだった。
SMの話題や、ちょっとした意地悪なんてものはなくて、物足りない感じはしたけれど、それでも、会話に端々で「こんな道具を買った」など言われると嬉しかったものだ。
直接的に聞けはしないから、なんとか「私をこうしたい」というような話題になるように、仕向けていた。
時々、功を奏して出てくる話題を心に留めておこうと水面下で必死だった。
はじめて会ったのは、いわゆるシティホテルだ。
仕事で一泊するらしい。
あらかじめ部屋番号を告げられていたから、直接部屋をノックする。
ずいぶんと会話をしたから、問題ないとは思うけど、やっぱり怖い。
ドアを開けたその男性は、眼鏡を掛けた優しそうな人だった。
少しホッとする。
名刺をもらってしばらく会話をして、隣の部屋を案内される。
和室のシングルらしいその部屋は、襖で仕切られて小さい部屋がふたつあったのだ。
つけっぱなしのテレビからは、音声を消したアダルトビデオが流れ、敷かれた布団の横には、いくつかの道具が並べられていた。
実は、この時コンタクトの調子が悪くて外していたため、並べなれているものが何かははっきりわかりませんでした。
男は私を縛った。
と言っても、長くない綿ロープで胸を交差するようにぐるっと一周。
男性はバイブレーターを使ったりしたあと、普通に私を抱いた。
最後に男は私に浣腸をしたいと言い出した。
驚く私は当然のように首を振る。
でも本当は心の中で追い詰められたいと思ってもいたので、拒否をしながらもどこかで彼に任せようとも感じていた。
しかし、私の「NO」はあっさりと受け取られてしまった。
安堵に浸りながら、一抹の寂しさを覚えていた。
ホテルで別れた私は好感の持てる人だったことに喜んでいた。
この人が私を支配し翻弄したいと思ってくれたら、私は満たされるかもしれない。
相変わらず飢餓感は拭い去れないけれど、きっとそのうちに満たされるだろう。
新しい出会いに感謝した夜だった。
この男性とは、その後一年ほど付き合うことになる。
これが最後になればいいな、と祈るように思っていた。
「心も体も支配する」
伝言ダイヤルのメッセージは、容易いことのように言っている。
どうしたら支配できるのだろう。
1人の人間を支配するなんて、そんな簡単なことではないはずだ。
もし簡単にできるならば、それは演技だ。
高揚させるための演技だ。
少なくとも私はそんなに容易に支配はできない。
支配されたいと望みながら、できるもんかと半信半疑で思う。
どうしたら出会えるのだろう。
心も体も支配して、私を好きなように扱える人。
経験が豊富な人なら良いのか。
うんと年上なら委ねられるのか。
エリートならば、尊敬できるのか。
たくさんの男性と話しをした。
中には、有名(らしい)な調教師を名乗る人もいた。
年齢、職業、経験、色々聞いてもピンとこない。
「何がしたいというよりは、その人のしたいと思うことを、私を使って叶えてほしいと思っています。」
みんな一様に感動する。
どこの大学を出たのかなんて、バカな質問をしてくる男も1人や2人ではない。
高校を卒業してすぐに働いたことを告げるとき、私は、そういう物差ししか持っていないその男をバカにしてしまう。
「しおらしい」「清楚」「話し易い」「ダイヤの原石」
賞賛の言葉を並べられても、気持ちが良いのは一瞬だけだ。
だって、そう思われるようにしているんだもの。
当たり前。
心の中で舌を出していることを自覚してしまっていては、尊敬なんて無理。
ここでもそれ以上の私を探ろうともしない男たちをバカにしてしまう。
一度目は怖い思いをして諦めて、二回目は好意を持てずに諦めた。
でももしかしたら、安全な人で好意を持てて、その人がSMをしてくれるかもしれないという望みが捨てられず、テレクラで相手を捜していた。
でも話せば話すほど、私が夢中になれる人に出会うのは難しいような気もしていた。
一体何人と話しをしたのか、わからなくなるころ、私は3人目の男性に出会うことになる。
その男性とは、比較的話しが弾んだ。
同じ地域に在住だったこともあって、セクシャルな話題以外でも会話が成立していて心地良かった。
その人は、仕事で週のほとんどをクライアントがいる東北で過ごしているらしい。
だから夜にたくさん話しができた。
誰かと繋がっていたい私には、好都合だった。
ポンポンと会話が飛び交うというよりかは、ゆっくりと時間が流れていくようだった。
SMの話題や、ちょっとした意地悪なんてものはなくて、物足りない感じはしたけれど、それでも、会話に端々で「こんな道具を買った」など言われると嬉しかったものだ。
直接的に聞けはしないから、なんとか「私をこうしたい」というような話題になるように、仕向けていた。
時々、功を奏して出てくる話題を心に留めておこうと水面下で必死だった。
はじめて会ったのは、いわゆるシティホテルだ。
仕事で一泊するらしい。
あらかじめ部屋番号を告げられていたから、直接部屋をノックする。
ずいぶんと会話をしたから、問題ないとは思うけど、やっぱり怖い。
ドアを開けたその男性は、眼鏡を掛けた優しそうな人だった。
少しホッとする。
名刺をもらってしばらく会話をして、隣の部屋を案内される。
和室のシングルらしいその部屋は、襖で仕切られて小さい部屋がふたつあったのだ。
つけっぱなしのテレビからは、音声を消したアダルトビデオが流れ、敷かれた布団の横には、いくつかの道具が並べられていた。
実は、この時コンタクトの調子が悪くて外していたため、並べなれているものが何かははっきりわかりませんでした。
男は私を縛った。
と言っても、長くない綿ロープで胸を交差するようにぐるっと一周。
男性はバイブレーターを使ったりしたあと、普通に私を抱いた。
最後に男は私に浣腸をしたいと言い出した。
驚く私は当然のように首を振る。
でも本当は心の中で追い詰められたいと思ってもいたので、拒否をしながらもどこかで彼に任せようとも感じていた。
しかし、私の「NO」はあっさりと受け取られてしまった。
安堵に浸りながら、一抹の寂しさを覚えていた。
ホテルで別れた私は好感の持てる人だったことに喜んでいた。
この人が私を支配し翻弄したいと思ってくれたら、私は満たされるかもしれない。
相変わらず飢餓感は拭い去れないけれど、きっとそのうちに満たされるだろう。
新しい出会いに感謝した夜だった。
この男性とは、その後一年ほど付き合うことになる。
これが最後になればいいな、と祈るように思っていた。