2回目の旅2
惹かれ合う理由
次に会ったのは、春になってからだ。
時々電話連絡はしていたけれどほとんど繋がらない人で、それでも私は毎晩毎晩連絡を待ったのだ。
その人が良いのか、繋がりたいだけなのか、わからなくなるほどに。
2回目も前回待ち合わせた駅だ。
今度から、待ち合わせる時には必ず缶コーヒーを買っておくように指示されたので、コーヒー片手に待ち合わせ場所にたたずむ。
相変わらず大幅に遅刻。
以前電話で、「缶コーヒーの代金は支払うけど、おまえの舌の上に100円玉を置いてやる。涎が垂れてみっともないだろうな」と言われたことがある。
そのころから、「惨めな私」に憧れを持っていることを自覚していたので、密かに楽しみにしていたのだ。
遅れてきたその人はコーヒーを受け取ると、手渡しでお金をくれた。
残念に思ってしまった。
私が貪欲過ぎるのだろうか・・。
なかなか、私のM心は満たされない。
また撮影から始まった。
今度は写真だ。
服を着たまま、スカートをはだけさせたり、シャツのボタンを外したり、ポーズを取らされる。
そのうち、バイブレーターを持ち出して小道具に使いはじめた。
胸元に置いたり、ストッキングの上から当てるように促されたり。
そのまま感じるように使えと言われても、どう使っていいかもわからないし、なぜか、この状況に酔えない。
やっぱり、嬉しくない。
撮影が終わって、すぐまた抱かれた。
前回もそうだが男は裸にならない。
シャツとパンツを着たまま、後ろから犯すのだ。
それで、終わりだった。
「おまえは、ほとんど褒められたところはないけど、唯一足だけはきれいだ」
そんな言葉を言われても、全然心に響かない。
なぜ、何もないのだろう、それともこれもSMなのだろうか。
では、なぜ嬉しくないのだろう。
帰路に就く電車に揺られながら、虚しく思う。
心が通わないと始まらないことに、薄々気付きはじめていた。
「今日は、思い切り派手な服装で、派手な化粧で来い。それと、洗濯ばさみを買ってくるように」
三回目は夏だった。
20代前半に買った派手なワンピースで待つ。
とても目立ってしまっている。
それでも、男はまた大幅に遅刻だ。
そして、また撮影。
でも、違うこともした。
フェラチオをした。
男は男性器に名前を付けていた。「男様」(すごい名称!!)と呼べと言う。
私はそのままの名称(おちんちんとかね・・・)は口にするのが苦手だったから、好都合だった。
でも、冷めたままそう呼んで、くわえる私には気付いていない。
また、後ろを向かされる。
そして、はじめてSMらしいことをした。
ホテルの靴べらで、お尻を叩かれたのだ。
でも、痛くない。
なんだか恐る恐る叩いている感じが伝わってしまう。
痛くないものなのか。
SMって演技しないといけないものなのか。
痛くないものを、どう表現したら良いのかわからず、とまどいながらベッドに顔を埋めていた。
バックから犯されている時にテレビ画面に流れるアダルトビデオを観ながら「おまえはただの穴だ」と言われた言葉だけが、なんだか私の救いだった。
使われず仕舞いだった洗濯ばさみを持ち帰りながら、私はやっと気付く。
好きな人じゃなければ、だめなんだ。
好きな人の前だから、恥ずかしいし嬉しいんだ。
でも好きな人なら、過去に付き合った恋人でも事足りたはずだ。
好きな人に頼んで恥ずかしくしてもらっても嬉しくない。
演技でもなく、スパイスでもなく、心から跪きたいのだ。
私は、支配されたいのだ。
支配なんて、容易いことではない。
それにはこの人だから言うことを聞きたいと思わせてくれる人じゃないとだめなんだ。
その人の欲求を、私にぶつけてほしいんだ。
縛られたり、叩かれたり、されたいのではない。
圧倒的な存在の言うことをききたいのだ。
いつも服を着たまま、私の顔を見るわけでもなく後ろから犯す、キスはおろか(したいと思わなかったけど)手も握らない男に、恋も支配もできるわけがない。
結局、男の体調不良も重なり、あっけなく終わりを迎えた。
「待てるか」と聞かれたが、なんの未練もないあっさりと別れた。
この男は私が良いのではない。
私じゃなくても、事足りるはずだ。
どうしたら尊敬する人に欲求をぶつけてもらえるのか。
そもそも見下す感情だけで、尊敬という感情を持ったことのない私に人を尊敬できるのだろうか。
私の本当の旅は、この時から始まったのかもしれない。
次に会ったのは、春になってからだ。
時々電話連絡はしていたけれどほとんど繋がらない人で、それでも私は毎晩毎晩連絡を待ったのだ。
その人が良いのか、繋がりたいだけなのか、わからなくなるほどに。
2回目も前回待ち合わせた駅だ。
今度から、待ち合わせる時には必ず缶コーヒーを買っておくように指示されたので、コーヒー片手に待ち合わせ場所にたたずむ。
相変わらず大幅に遅刻。
以前電話で、「缶コーヒーの代金は支払うけど、おまえの舌の上に100円玉を置いてやる。涎が垂れてみっともないだろうな」と言われたことがある。
そのころから、「惨めな私」に憧れを持っていることを自覚していたので、密かに楽しみにしていたのだ。
遅れてきたその人はコーヒーを受け取ると、手渡しでお金をくれた。
残念に思ってしまった。
私が貪欲過ぎるのだろうか・・。
なかなか、私のM心は満たされない。
また撮影から始まった。
今度は写真だ。
服を着たまま、スカートをはだけさせたり、シャツのボタンを外したり、ポーズを取らされる。
そのうち、バイブレーターを持ち出して小道具に使いはじめた。
胸元に置いたり、ストッキングの上から当てるように促されたり。
そのまま感じるように使えと言われても、どう使っていいかもわからないし、なぜか、この状況に酔えない。
やっぱり、嬉しくない。
撮影が終わって、すぐまた抱かれた。
前回もそうだが男は裸にならない。
シャツとパンツを着たまま、後ろから犯すのだ。
それで、終わりだった。
「おまえは、ほとんど褒められたところはないけど、唯一足だけはきれいだ」
そんな言葉を言われても、全然心に響かない。
なぜ、何もないのだろう、それともこれもSMなのだろうか。
では、なぜ嬉しくないのだろう。
帰路に就く電車に揺られながら、虚しく思う。
心が通わないと始まらないことに、薄々気付きはじめていた。
「今日は、思い切り派手な服装で、派手な化粧で来い。それと、洗濯ばさみを買ってくるように」
三回目は夏だった。
20代前半に買った派手なワンピースで待つ。
とても目立ってしまっている。
それでも、男はまた大幅に遅刻だ。
そして、また撮影。
でも、違うこともした。
フェラチオをした。
男は男性器に名前を付けていた。「男様」(すごい名称!!)と呼べと言う。
私はそのままの名称(おちんちんとかね・・・)は口にするのが苦手だったから、好都合だった。
でも、冷めたままそう呼んで、くわえる私には気付いていない。
また、後ろを向かされる。
そして、はじめてSMらしいことをした。
ホテルの靴べらで、お尻を叩かれたのだ。
でも、痛くない。
なんだか恐る恐る叩いている感じが伝わってしまう。
痛くないものなのか。
SMって演技しないといけないものなのか。
痛くないものを、どう表現したら良いのかわからず、とまどいながらベッドに顔を埋めていた。
バックから犯されている時にテレビ画面に流れるアダルトビデオを観ながら「おまえはただの穴だ」と言われた言葉だけが、なんだか私の救いだった。
使われず仕舞いだった洗濯ばさみを持ち帰りながら、私はやっと気付く。
好きな人じゃなければ、だめなんだ。
好きな人の前だから、恥ずかしいし嬉しいんだ。
でも好きな人なら、過去に付き合った恋人でも事足りたはずだ。
好きな人に頼んで恥ずかしくしてもらっても嬉しくない。
演技でもなく、スパイスでもなく、心から跪きたいのだ。
私は、支配されたいのだ。
支配なんて、容易いことではない。
それにはこの人だから言うことを聞きたいと思わせてくれる人じゃないとだめなんだ。
その人の欲求を、私にぶつけてほしいんだ。
縛られたり、叩かれたり、されたいのではない。
圧倒的な存在の言うことをききたいのだ。
いつも服を着たまま、私の顔を見るわけでもなく後ろから犯す、キスはおろか(したいと思わなかったけど)手も握らない男に、恋も支配もできるわけがない。
結局、男の体調不良も重なり、あっけなく終わりを迎えた。
「待てるか」と聞かれたが、なんの未練もないあっさりと別れた。
この男は私が良いのではない。
私じゃなくても、事足りるはずだ。
どうしたら尊敬する人に欲求をぶつけてもらえるのか。
そもそも見下す感情だけで、尊敬という感情を持ったことのない私に人を尊敬できるのだろうか。
私の本当の旅は、この時から始まったのかもしれない。