2回目の旅1
惹かれ合う理由
こんな夢を見ました。
私は、どこか人の往来の激しい場所に立っています。
デパートの正面玄関のような所です。
白いコットンのワンピースを着ています。
知らない男性が、やって来て、私の頭に水を掛けはじめます。
ビールのピッチャーくらいの量の水を、頭の上からゆっくりと。
水は、髪をつたい、滴り落ちワンピースに不規則な縞模様を作ります。
ワンピースの中は下着だけです。
それが、透けてしまう。
困りました、人前でこんなこと。
両手で隠そうとするけれど、二本の手では隠しきれないのです。
もじもじと両手と体を動かして、なんとかしようとしている私に、その人は言います。
「この次は、下着を着けずにおいで」
そんなの無理、下着が透けているだけでこんなに困るのに、下着がなければもっと恥ずかしいではありませんか。
どうしよう、困ったな、と思いながら、でも、私はまたここに来てしまうであろうことも、わかっているのです。
困りながらも、得も言えぬ幸せと興奮を覚えながら。
目を覚まして、途方に暮れる。
こんな夢を見てしまうほど、こんな夢で興奮してしまうほど、私はMなのかと。
どうしようもなく、Mなのだと気付かされる。
数年前に嫌な思いをして、少し落ち着いていたではないか。
もちろん「誰でもいいから、この両手首を縛ってくれないか」と切羽詰まって、心のやり場に困ってしまうことは、消えてはいないけれど。
1人の世界でなんとか消化できていたではないか。
オナニーでなんとかなるような体の欲求だけではないと気付く時、私は途方に暮れてしまう。
どうしても他者の存在が欲しくなる。
この私を認識してくれるだけで良いから。
ためらいながらも受話器を持つ。
嫌な思いをして以来、はじめてメッセージを吹き込むために。
でも誰かに会おうとは思わない。
ただこんな夢を見て私は誰かに困らせてほしいんだなと思う、それだけを伝えた。
だから、はっきりと「会うつもりはない」とも付け加えた。
とにかく吐き出したかったのだ。
それでもお返事はくるもので、でも、ほとんどは「そう言わずに会いましょう」と誘ってくるものだった。
落胆した、この私のMの感覚を認めてくれるだけの人はいないのか。
まあ、当たり前といえば、当たり前だけど。
その中で、一件だけ違う種類のお返事があった。
私を認めてくれている。
「あなたはM に必要な想像力と知性を持っている。会う必要はないが、電話でだけでもそのM性を引き出してあげられる」と言っているのだ。
会わないならば怖くない、しかも、この行き場のない気持ちを収められるかもしれない。
私は藁にもすがる思いで、返事を返していた。
はじめてSの男性とゆっくりと話しをする。
受話器を持ち、緊張しながら会話が始まる。
いくつか質問される。
答えるのは、嬉しい作業。
「名前はどんな漢字?」
「○と書きます。」
「やっぱり、そんな感じがした。」
「髪の色は?」
「黒いです。」
「そうだと思った、今言おうとしたんだ。」
「なぜわかるのですか?」などと言いながら、心のどこかで「あれ?」と思う。
こちらからも、いくつか質問を投げかける。
名字は聞いていたから、下のお名前は?
返ってきた答えは「おまえが知る必要はない」
職種(経営者ではあるらしい)、会社の所在地、いままでの経験・・。
奴隷は知らないでいいと言う。
また、私は心に「?」を残す。
「私は奴隷なの?そんなに簡単に奴隷になれてしまうの?それとも、役割分担で奴隷になれば良いの?なぜ、もっと教えてくれないの?」
そして、会話の端々で私のことを「ばか」と言う。
自分をすごい存在にするために。
ちっともすごくないことに気が付きながら、会話を続ける。
私はやっと叶うかもしれない「Mだということを知ってもらう」という機会を逃したくなく、その思いに蓋をしていた。
こんな調子で何度も電話が続くはずもない。
何回目かに、結局会おうという話になる。
どんな会話からそうなったか覚えていないのですが、とにかく私から会おうと言ってあげたのは、覚えています。
その人は、「会ってくれ」と私に言わせることができて満足そうでしたが。
はじめて下りる駅でずいぶんと待たされる。
待ち合わせの時間はとっくに過ぎていて、携帯も何も持っていない私は、とても不安。
冬だった。
地下鉄の改札。
外ではないとはいえ、やっぱり寒い。
体が冷え切ったころに、1人の男性が現れた。
正直に言うと、がっかりしてしまった(笑)。
「人は見た目で判断してはいけません。」
正論だとは思うけど、中身を見せてくれない人に好意を持つには、見た目だって大切だ。
それでも、私はついて行く。
もしかしたら、これから私のほしいものを与えてくれるかもしれないと、一縷の望みを捨てられずに。
ホテルの部屋に入ってから、覚えていること。
裸の私に「オナニーをしろ」と命じてきた。
いきなりそう言われても・・。
ためらいながらも従うと、何かが起動する「ピピッ」という音が聞こえた。
慌てて音の方を見ると、カメラを構えている。
ビデオだ!
「本当に撮るんですか?!」
驚く私に、その人は「顔をこちらに向けるな!」と叱責する。
半分自暴自棄になり続ける。
いくように努力する。
いけば終わりになるはずだ、そうしたら、何か別なことをしてくれるかもしれない。
命令されることに憧れていたくせに、嬉しくない。なぜだろう。
結局、その後その人は、私を後ろから犯した。
射精を終えると、さっさとスーツを着始める。
「射精をしたら、すぐ冷める」そうだ。
ほとんど、会話らしい会話もないままホテルを出る。
そして、そのまま最寄り駅で降ろされた。
私のM性(そもそもM性なんて言葉変!!)を引き出してくれると言ったその男性は、ビデオ撮影とセックスだけして、わずか1時間半ほどで、私を解放した。
経験も知識もなく、男性(父性)に慈しまれるという感覚も知らない私は、異性に対する「快・不快」を自分で判断することができなかった。(自分の心なのに)
自分自身や自分の判断に自信のない私。
相手が、私を求めてくることで(主に体を)、愛情の有無を決めるようなところがあった。
無償の愛を信じられなかったのだ。
もちろん、たかが「SMのパートナー」に、無償の愛や慈しみなんて必要ないかもしれない。
ただ、私は、相手を選ぶ基準とか審美眼を持っていなかったから、この男性の不誠実さに異を唱える自信がなかったのだ。
だから、今回は、たまたまこれだけであって、このあと最低限の人間関係を構築して、私の「M性」を引き出してくれるのだろうと、思ってしまっていた。
コミュニケーションもなく、遅刻の謝罪もない、かといって奴隷扱いさえしてくれない人に、不快だと自覚すらできないまま、関係は続いていった。
こんな夢を見ました。
私は、どこか人の往来の激しい場所に立っています。
デパートの正面玄関のような所です。
白いコットンのワンピースを着ています。
知らない男性が、やって来て、私の頭に水を掛けはじめます。
ビールのピッチャーくらいの量の水を、頭の上からゆっくりと。
水は、髪をつたい、滴り落ちワンピースに不規則な縞模様を作ります。
ワンピースの中は下着だけです。
それが、透けてしまう。
困りました、人前でこんなこと。
両手で隠そうとするけれど、二本の手では隠しきれないのです。
もじもじと両手と体を動かして、なんとかしようとしている私に、その人は言います。
「この次は、下着を着けずにおいで」
そんなの無理、下着が透けているだけでこんなに困るのに、下着がなければもっと恥ずかしいではありませんか。
どうしよう、困ったな、と思いながら、でも、私はまたここに来てしまうであろうことも、わかっているのです。
困りながらも、得も言えぬ幸せと興奮を覚えながら。
目を覚まして、途方に暮れる。
こんな夢を見てしまうほど、こんな夢で興奮してしまうほど、私はMなのかと。
どうしようもなく、Mなのだと気付かされる。
数年前に嫌な思いをして、少し落ち着いていたではないか。
もちろん「誰でもいいから、この両手首を縛ってくれないか」と切羽詰まって、心のやり場に困ってしまうことは、消えてはいないけれど。
1人の世界でなんとか消化できていたではないか。
オナニーでなんとかなるような体の欲求だけではないと気付く時、私は途方に暮れてしまう。
どうしても他者の存在が欲しくなる。
この私を認識してくれるだけで良いから。
ためらいながらも受話器を持つ。
嫌な思いをして以来、はじめてメッセージを吹き込むために。
でも誰かに会おうとは思わない。
ただこんな夢を見て私は誰かに困らせてほしいんだなと思う、それだけを伝えた。
だから、はっきりと「会うつもりはない」とも付け加えた。
とにかく吐き出したかったのだ。
それでもお返事はくるもので、でも、ほとんどは「そう言わずに会いましょう」と誘ってくるものだった。
落胆した、この私のMの感覚を認めてくれるだけの人はいないのか。
まあ、当たり前といえば、当たり前だけど。
その中で、一件だけ違う種類のお返事があった。
私を認めてくれている。
「あなたはM に必要な想像力と知性を持っている。会う必要はないが、電話でだけでもそのM性を引き出してあげられる」と言っているのだ。
会わないならば怖くない、しかも、この行き場のない気持ちを収められるかもしれない。
私は藁にもすがる思いで、返事を返していた。
はじめてSの男性とゆっくりと話しをする。
受話器を持ち、緊張しながら会話が始まる。
いくつか質問される。
答えるのは、嬉しい作業。
「名前はどんな漢字?」
「○と書きます。」
「やっぱり、そんな感じがした。」
「髪の色は?」
「黒いです。」
「そうだと思った、今言おうとしたんだ。」
「なぜわかるのですか?」などと言いながら、心のどこかで「あれ?」と思う。
こちらからも、いくつか質問を投げかける。
名字は聞いていたから、下のお名前は?
返ってきた答えは「おまえが知る必要はない」
職種(経営者ではあるらしい)、会社の所在地、いままでの経験・・。
奴隷は知らないでいいと言う。
また、私は心に「?」を残す。
「私は奴隷なの?そんなに簡単に奴隷になれてしまうの?それとも、役割分担で奴隷になれば良いの?なぜ、もっと教えてくれないの?」
そして、会話の端々で私のことを「ばか」と言う。
自分をすごい存在にするために。
ちっともすごくないことに気が付きながら、会話を続ける。
私はやっと叶うかもしれない「Mだということを知ってもらう」という機会を逃したくなく、その思いに蓋をしていた。
こんな調子で何度も電話が続くはずもない。
何回目かに、結局会おうという話になる。
どんな会話からそうなったか覚えていないのですが、とにかく私から会おうと言ってあげたのは、覚えています。
その人は、「会ってくれ」と私に言わせることができて満足そうでしたが。
はじめて下りる駅でずいぶんと待たされる。
待ち合わせの時間はとっくに過ぎていて、携帯も何も持っていない私は、とても不安。
冬だった。
地下鉄の改札。
外ではないとはいえ、やっぱり寒い。
体が冷え切ったころに、1人の男性が現れた。
正直に言うと、がっかりしてしまった(笑)。
「人は見た目で判断してはいけません。」
正論だとは思うけど、中身を見せてくれない人に好意を持つには、見た目だって大切だ。
それでも、私はついて行く。
もしかしたら、これから私のほしいものを与えてくれるかもしれないと、一縷の望みを捨てられずに。
ホテルの部屋に入ってから、覚えていること。
裸の私に「オナニーをしろ」と命じてきた。
いきなりそう言われても・・。
ためらいながらも従うと、何かが起動する「ピピッ」という音が聞こえた。
慌てて音の方を見ると、カメラを構えている。
ビデオだ!
「本当に撮るんですか?!」
驚く私に、その人は「顔をこちらに向けるな!」と叱責する。
半分自暴自棄になり続ける。
いくように努力する。
いけば終わりになるはずだ、そうしたら、何か別なことをしてくれるかもしれない。
命令されることに憧れていたくせに、嬉しくない。なぜだろう。
結局、その後その人は、私を後ろから犯した。
射精を終えると、さっさとスーツを着始める。
「射精をしたら、すぐ冷める」そうだ。
ほとんど、会話らしい会話もないままホテルを出る。
そして、そのまま最寄り駅で降ろされた。
私のM性(そもそもM性なんて言葉変!!)を引き出してくれると言ったその男性は、ビデオ撮影とセックスだけして、わずか1時間半ほどで、私を解放した。
経験も知識もなく、男性(父性)に慈しまれるという感覚も知らない私は、異性に対する「快・不快」を自分で判断することができなかった。(自分の心なのに)
自分自身や自分の判断に自信のない私。
相手が、私を求めてくることで(主に体を)、愛情の有無を決めるようなところがあった。
無償の愛を信じられなかったのだ。
もちろん、たかが「SMのパートナー」に、無償の愛や慈しみなんて必要ないかもしれない。
ただ、私は、相手を選ぶ基準とか審美眼を持っていなかったから、この男性の不誠実さに異を唱える自信がなかったのだ。
だから、今回は、たまたまこれだけであって、このあと最低限の人間関係を構築して、私の「M性」を引き出してくれるのだろうと、思ってしまっていた。
コミュニケーションもなく、遅刻の謝罪もない、かといって奴隷扱いさえしてくれない人に、不快だと自覚すらできないまま、関係は続いていった。