ビッグサプライズ
独特な幸福感
じつは、いまだに浴衣に対して苦手意識がなくならない。
もともと肩幅あるし胸(それなりに)あるし、洋服には適した体型ではあるけれど、まったくもって着物体型ではないというコンプレックスがあることに加えて、着付けに自信もないので、イメージしているよりずっと着こなせていないと思っているのも原因だと思っている。
だけど、着たいし、苦手意識を払拭したい。
先日、ちらっと覗いた浴衣売り場の店員さんが『着れば着るほど着付けはうまくなる』といっていたので、今年はできるだけ浴衣を着る機会を増やそうと思う。
浴衣を着ることに対するハードルをすこしでも下げて、似合うか似合わないかは置いておいても、着付けに対する自信は持ちたい。
今年は、すでに一度那智さんと一緒のときに着る予定が雨で流れた。
次は再来週の風鈴市で着ることになっているから、もしかしたら、そのときだけしか那智さんの前で着る機会がないかもしれない。
だから、今日の『普通』の夜デートのときでも浴衣を着てしまおう。
内緒にしておいて、はじめて浴衣を見せたときみたいにびっくりさせちゃおうか!?
そんなふうに夜デートの前夜まで思っていた。
ところが、当日の朝のお電話タイムで、サプライズをバラしてしまった。
那智さんに内緒にできないという気持ちもあったけど、もともと那智さんの意に沿っていることが幸せなわたしにとって、サプライズを行うことは『意に沿っていない』状態に近いものなので、心から『やりたい!!』とは思いにくいのだ。
那智さんは、わたしがよかれと思ってしたことは基本(たとえそれがマイナスの結果を生んでも)怒らない。
そこまで大げさなことじゃなくて、些細な『意に沿わない』ことになったとしても、ぜんぜん大丈夫だということもわかっている。
だけど、わたし自身の気持ちとして、内緒事は不安。
しかも、この日はデートのついでに那智さんの用事ですこし改まった場所に行くことになっていたので、内緒で浴衣を着ていくことが、はたして那智さんにとって喜ばしいことなのか、安心したい気持ちが勝ってしまって、『浴衣で行っていいか』聞いてしまったのだ。
「本当はサプライズにしたかったのですけど」と話すわたしに「そうだね」と返事をする那智さんの声がちょっとだけ残念そうに聞こえてきた。
わたしが毎度こんな調子なので、那智さんにとってわたしからのサプライズが、もしかしたら『たまには欲しいもの』なのかもしれない。
サプライズができにくい、この関係性はお互いの幸せだけど、ちょっとだけつまらなくて申し訳ないなと思うので、
今回は安心したくて聞いてしまいましたけど、今後は聞かなくていいってことにしてていいですよね?
と、いつかサプライズしますよ!!とこの宣言をさせてもらって、これからは『意に沿わない』と心配することなくサプライズができる状態にした。
この宣言をしつつ、わたしは新たなサプライズを思いつき、企て出した(笑)
今夜のデートはわたしの地元駅で待ち合わせなのだけど、内緒で那智さんのお仕事場までお迎えにいってしまおう!!
幸い那智さんのお仕事場を出てすぐの駅に向かう道は一本なので、そこさえ張っておけば待ち伏せは成功する。
お仕事場を出て、ふと見たら目の前に浴衣のりん子がいる!!
浴衣を着てくることは知っていても、まさか、そこにいるとは!!とビッグサプライズになるはずだ~。
とても、楽しい企てにわくわく。
万が一、入れ違いになってしまってはいけないから、早めにお仕事場近くまでいかないと。
時間を逆算して、いざ着付け。
一年ぶりの浴衣は、帯に多少まごついたけど、それなりにできた。
いちおう、お仕事場近くの百貨店の呉服売り場で「購入しなくて申し訳ないけど」と帯のチェックまでしてもらったり(笑)
沈黙は不自然かと思い、途中で「早めに出ましたよ~」とまるでいま出たっぽいメールを送ったり(笑)
那智さんが上がる5分前に定位置で待機!!
わたしがいる場所は、那智さんのお仕事場のドアを出て左、突き当たりのT字のところ。
さすがにドアの目の前はためらうし、視覚的にいきなり目の前より道路の先で全身から確認できたほうがいいかと思って。
そして、いよいよ、那智さん上がる時間。
作業服のひとがこちらに向かう、その後ろにドアからできて来た那智さん発見。
そのひとがいい感じに目隠しになるか、逆に邪魔か、すこしハラハラ。
作業服のひとがT字を曲がった、さあ、那智さんとわたしを遮るものはない!!
スマホ手にした那智さん。
わたしに電話?
でも、今日は電話鳴っても出ないつもり。
音消している。
だって、取ってる間に気づかれたらまぬけだもの。
顔上げた。
見て、那智さん、りん子、ここよ~。
いい顔作る(笑)
…
あれ?
すぐスマホに目を落した。
那智さん、那智さん。
ぷりっぷりのいい顔で視線を送る。
浴衣のりん子、ここにいますよ~。
顔は正面向いてるけど、若干視線がスマホ。
しかも、スマホの向きが横!!
あ~、スマホゲームだ~~~。
ゲームのチェックしてる!!!
まっすぐ歩いて、T字で待つわたしの斜め横を通過してささっと左折。
いやいや、気づいて(笑)
けっこうな長身の女の浴衣姿、目立つでしょ!?
見事なスルーに、一瞬、その場に立ち尽くしてしまいそうになるけど、いかんいかん、気を取り直し、追いかけなければ。
ちょこちょこついていく。
ああ、情けない(笑)
下駄の音に気づくかと思いきや、気づかず。
さらに右折。
いっそのこともう一本向こうの道から先回りして「ばあ』と出ようか。
いや、明らかにわたしのほうが遅いのではぐれる可能性大。
どうしたものかと、しばらく黙って後を追う。
もーーー、せっかくサプライズしたのに~~。
しかたなく声をかける。
那智さんのばか~(笑)
…
これもスルー。
もーーー、ちょっと声を大きく。
那智さんのばか~~~(笑)
え!?と振り返り、やっと気づいてくれた。
那智さん、わたしよりスマホゲームに夢中でした;;
と文句いってみるけど、それよりなにより、いきなり『那智さん』と声かけられて、この近辺で『那智さん』と呼ぶ人はいないからまず驚き、振り返ったらりん子で、浴衣で、さらのびっくりしたそうで、めずらしく『ちょっと驚いている那智さん』。
あいかわらず驚くリアクションはほぼ皆無なのだけど、表情の緩み具合いから、じつはけっこうびっくりしたっぽい感じではあった。
(しかも、浴衣着てくるって話忘れてたらしいので、よりびっくり)
わたしとしては、遠巻きにりん子を見つけて浴衣姿を堪能してほしいなと思ったのだけど、那智さんとしては驚きのインパクトが大きいほうがサプライズ感を楽しめたそうなので、よしとします。
那智さんの意に沿っていたいとすごーく思うわたしなのですが、結果的には、意に沿わな過ぎのビッグサプライズをしてしまったのでした^^;
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浴衣大作戦1 2
「等式」感想です。そりゃびっくりしました。声をかけられるはずの無い場所で、笑いました。昔はあり得ないサプライズ企画を考えてくれるだけでありがたく、発展を感じます。
じつは、いまだに浴衣に対して苦手意識がなくならない。
もともと肩幅あるし胸(それなりに)あるし、洋服には適した体型ではあるけれど、まったくもって着物体型ではないというコンプレックスがあることに加えて、着付けに自信もないので、イメージしているよりずっと着こなせていないと思っているのも原因だと思っている。
だけど、着たいし、苦手意識を払拭したい。
先日、ちらっと覗いた浴衣売り場の店員さんが『着れば着るほど着付けはうまくなる』といっていたので、今年はできるだけ浴衣を着る機会を増やそうと思う。
浴衣を着ることに対するハードルをすこしでも下げて、似合うか似合わないかは置いておいても、着付けに対する自信は持ちたい。
今年は、すでに一度那智さんと一緒のときに着る予定が雨で流れた。
次は再来週の風鈴市で着ることになっているから、もしかしたら、そのときだけしか那智さんの前で着る機会がないかもしれない。
だから、今日の『普通』の夜デートのときでも浴衣を着てしまおう。
内緒にしておいて、はじめて浴衣を見せたときみたいにびっくりさせちゃおうか!?
そんなふうに夜デートの前夜まで思っていた。
ところが、当日の朝のお電話タイムで、サプライズをバラしてしまった。
那智さんに内緒にできないという気持ちもあったけど、もともと那智さんの意に沿っていることが幸せなわたしにとって、サプライズを行うことは『意に沿っていない』状態に近いものなので、心から『やりたい!!』とは思いにくいのだ。
那智さんは、わたしがよかれと思ってしたことは基本(たとえそれがマイナスの結果を生んでも)怒らない。
そこまで大げさなことじゃなくて、些細な『意に沿わない』ことになったとしても、ぜんぜん大丈夫だということもわかっている。
だけど、わたし自身の気持ちとして、内緒事は不安。
しかも、この日はデートのついでに那智さんの用事ですこし改まった場所に行くことになっていたので、内緒で浴衣を着ていくことが、はたして那智さんにとって喜ばしいことなのか、安心したい気持ちが勝ってしまって、『浴衣で行っていいか』聞いてしまったのだ。
「本当はサプライズにしたかったのですけど」と話すわたしに「そうだね」と返事をする那智さんの声がちょっとだけ残念そうに聞こえてきた。
わたしが毎度こんな調子なので、那智さんにとってわたしからのサプライズが、もしかしたら『たまには欲しいもの』なのかもしれない。
サプライズができにくい、この関係性はお互いの幸せだけど、ちょっとだけつまらなくて申し訳ないなと思うので、
今回は安心したくて聞いてしまいましたけど、今後は聞かなくていいってことにしてていいですよね?
と、いつかサプライズしますよ!!とこの宣言をさせてもらって、これからは『意に沿わない』と心配することなくサプライズができる状態にした。
この宣言をしつつ、わたしは新たなサプライズを思いつき、企て出した(笑)
今夜のデートはわたしの地元駅で待ち合わせなのだけど、内緒で那智さんのお仕事場までお迎えにいってしまおう!!
幸い那智さんのお仕事場を出てすぐの駅に向かう道は一本なので、そこさえ張っておけば待ち伏せは成功する。
お仕事場を出て、ふと見たら目の前に浴衣のりん子がいる!!
浴衣を着てくることは知っていても、まさか、そこにいるとは!!とビッグサプライズになるはずだ~。
とても、楽しい企てにわくわく。
万が一、入れ違いになってしまってはいけないから、早めにお仕事場近くまでいかないと。
時間を逆算して、いざ着付け。
一年ぶりの浴衣は、帯に多少まごついたけど、それなりにできた。
いちおう、お仕事場近くの百貨店の呉服売り場で「購入しなくて申し訳ないけど」と帯のチェックまでしてもらったり(笑)
沈黙は不自然かと思い、途中で「早めに出ましたよ~」とまるでいま出たっぽいメールを送ったり(笑)
那智さんが上がる5分前に定位置で待機!!
わたしがいる場所は、那智さんのお仕事場のドアを出て左、突き当たりのT字のところ。
さすがにドアの目の前はためらうし、視覚的にいきなり目の前より道路の先で全身から確認できたほうがいいかと思って。
そして、いよいよ、那智さん上がる時間。
作業服のひとがこちらに向かう、その後ろにドアからできて来た那智さん発見。
そのひとがいい感じに目隠しになるか、逆に邪魔か、すこしハラハラ。
作業服のひとがT字を曲がった、さあ、那智さんとわたしを遮るものはない!!
スマホ手にした那智さん。
わたしに電話?
でも、今日は電話鳴っても出ないつもり。
音消している。
だって、取ってる間に気づかれたらまぬけだもの。
顔上げた。
見て、那智さん、りん子、ここよ~。
いい顔作る(笑)
…
あれ?
すぐスマホに目を落した。
那智さん、那智さん。
ぷりっぷりのいい顔で視線を送る。
浴衣のりん子、ここにいますよ~。
顔は正面向いてるけど、若干視線がスマホ。
しかも、スマホの向きが横!!
あ~、スマホゲームだ~~~。
ゲームのチェックしてる!!!
まっすぐ歩いて、T字で待つわたしの斜め横を通過してささっと左折。
いやいや、気づいて(笑)
けっこうな長身の女の浴衣姿、目立つでしょ!?
見事なスルーに、一瞬、その場に立ち尽くしてしまいそうになるけど、いかんいかん、気を取り直し、追いかけなければ。
ちょこちょこついていく。
ああ、情けない(笑)
下駄の音に気づくかと思いきや、気づかず。
さらに右折。
いっそのこともう一本向こうの道から先回りして「ばあ』と出ようか。
いや、明らかにわたしのほうが遅いのではぐれる可能性大。
どうしたものかと、しばらく黙って後を追う。
もーーー、せっかくサプライズしたのに~~。
しかたなく声をかける。
那智さんのばか~(笑)
…
これもスルー。
もーーー、ちょっと声を大きく。
那智さんのばか~~~(笑)
え!?と振り返り、やっと気づいてくれた。
那智さん、わたしよりスマホゲームに夢中でした;;
と文句いってみるけど、それよりなにより、いきなり『那智さん』と声かけられて、この近辺で『那智さん』と呼ぶ人はいないからまず驚き、振り返ったらりん子で、浴衣で、さらのびっくりしたそうで、めずらしく『ちょっと驚いている那智さん』。
あいかわらず驚くリアクションはほぼ皆無なのだけど、表情の緩み具合いから、じつはけっこうびっくりしたっぽい感じではあった。
(しかも、浴衣着てくるって話忘れてたらしいので、よりびっくり)
わたしとしては、遠巻きにりん子を見つけて浴衣姿を堪能してほしいなと思ったのだけど、那智さんとしては驚きのインパクトが大きいほうがサプライズ感を楽しめたそうなので、よしとします。
那智さんの意に沿っていたいとすごーく思うわたしなのですが、結果的には、意に沿わな過ぎのビッグサプライズをしてしまったのでした^^;
<関連エントリー>
浴衣大作戦1 2
「等式」感想です。そりゃびっくりしました。声をかけられるはずの無い場所で、笑いました。昔はあり得ないサプライズ企画を考えてくれるだけでありがたく、発展を感じます。