ビジネスチャンス?
独特な幸福感
二年前の寒い季節。
いつもは駅の改札口で「さよなら」するのだが、珍しく那智さんに買い物があって、この日は駅より少し手前の交差点で別れることになった。
私は駅に、那智さんはデパートに、それぞれ向かう。
お別れの抱擁なんてするわけないし、バイバーイって大きく手を振るほどの年でもないから、「ぺこっ」とお辞儀をして小さく手を振る。
那智さんなんて、目配せ程度の合図。
それで、別れて駅に向かう。
私はいつも別れたあとすぐに、今日の気持ちをメールするので携帯を握りしめたまま足早に、次の交差点を渡る。
交差点を渡りきった所で、声を掛けられた。
気付かなかったが、いつの間にか40代と思しき男性が私と並んで歩いている。
「とても失礼なお願いなんですが、あなたの下着を1万円で売ってくれませんか?」と言っている。
私はびっくりして、咄嗟に正直に伝える。
「○分の電車に乗りたいから、ダメです。」(じゃあ、電車に間に合えばいいのか!というツッコミはおいといて 汗)
まじめそうで比較的爽やかな印象のその男性は、それでも引き下がらない。
名刺を取り出して「今日がダメなら、べつな日にお茶しませんか?名刺を渡しますから。」
受け取るわけにはいかず、断って駅の階段を駆け上がった所で、那智さんに電話してことの顛末を伝える。
那智さんは、大笑い。
「それは、惜しいことしたな〜。俺が側にいたら『脱ぐところ見せますから、プラス3千円』とか『脱がさせてあげるからプラス5千円』とかできたのにな〜。」
那智さんが一緒なら声掛けませんって。
それにしても、あの男性は純粋なナンパではないことは想像できる。
きっと、那智さんと私が別れるところを見ていたのではないだろうか。
スーツ着た40代の男性と、30代の女性が、ぎこちなく交差点で別れる。
その日の私は黒いロングブーツに黒いコート、ロングブーツはヒールが高いからちょっと派手に見えたかもしれない(でも、ノーメイクだし、黒髪だし、派手とは違うかな)。
とにかく、その男性の目には、私たちの間に金銭の授受が発生していると映ったのだと思う。
だから、後を追い(しかも携帯握っているし「次のお客に連絡?」みたいに思ったのかも?)、自分もお客になろうとしたのではないだろうか。
だって、いきなり「パンツ売って」ですよ。
純粋に、私とお知り合いになりたいということではないだろう。
結局「念のため、駅を降りたらタクシーで帰ること」という指示と、「これから、そういうことがあったら俺に電話するんだよ♪お小遣い稼ぎになる。」という言葉を残してビジネスチャンスは幕を閉じた。
まあ、那智さんの思惑とは裏腹に、それ以来そんなビジネスチャンスは巡って来ていないのだが。
今年の夏、私は那智さんに会いに行く電車の中で痴漢に遭った。
朝のラッシュがまだ残る時間帯、特急電車はすし詰めだった。
お尻をさわさわと触られているけど、身動きできない。
次の駅で降りて、急いで那智さんにメールをする。
「痴漢に遭いました!!」
「腕を掴んで『この人痴漢です』って言って」
「もう、電車降りたから、終わってます。」
「なんだ残念。それで、5万は稼げたのに。」
あの、もう少し、私の心配をしてください。
私をお小遣い稼ぎに使わないでください。
このあと、「次回、痴漢被害に遭ったときの、対処(稼ぎ)方法」を伝授されたことは言うまでもない。
でも、そうそう、そんなことには遭遇しないから、残念ながら稼ぎには繋がらない。
女子高校生じゃないんだから、需要も少ないでしょうしね♪
二年前の寒い季節。
いつもは駅の改札口で「さよなら」するのだが、珍しく那智さんに買い物があって、この日は駅より少し手前の交差点で別れることになった。
私は駅に、那智さんはデパートに、それぞれ向かう。
お別れの抱擁なんてするわけないし、バイバーイって大きく手を振るほどの年でもないから、「ぺこっ」とお辞儀をして小さく手を振る。
那智さんなんて、目配せ程度の合図。
それで、別れて駅に向かう。
私はいつも別れたあとすぐに、今日の気持ちをメールするので携帯を握りしめたまま足早に、次の交差点を渡る。
交差点を渡りきった所で、声を掛けられた。
気付かなかったが、いつの間にか40代と思しき男性が私と並んで歩いている。
「とても失礼なお願いなんですが、あなたの下着を1万円で売ってくれませんか?」と言っている。
私はびっくりして、咄嗟に正直に伝える。
「○分の電車に乗りたいから、ダメです。」(じゃあ、電車に間に合えばいいのか!というツッコミはおいといて 汗)
まじめそうで比較的爽やかな印象のその男性は、それでも引き下がらない。
名刺を取り出して「今日がダメなら、べつな日にお茶しませんか?名刺を渡しますから。」
受け取るわけにはいかず、断って駅の階段を駆け上がった所で、那智さんに電話してことの顛末を伝える。
那智さんは、大笑い。
「それは、惜しいことしたな〜。俺が側にいたら『脱ぐところ見せますから、プラス3千円』とか『脱がさせてあげるからプラス5千円』とかできたのにな〜。」
那智さんが一緒なら声掛けませんって。
それにしても、あの男性は純粋なナンパではないことは想像できる。
きっと、那智さんと私が別れるところを見ていたのではないだろうか。
スーツ着た40代の男性と、30代の女性が、ぎこちなく交差点で別れる。
その日の私は黒いロングブーツに黒いコート、ロングブーツはヒールが高いからちょっと派手に見えたかもしれない(でも、ノーメイクだし、黒髪だし、派手とは違うかな)。
とにかく、その男性の目には、私たちの間に金銭の授受が発生していると映ったのだと思う。
だから、後を追い(しかも携帯握っているし「次のお客に連絡?」みたいに思ったのかも?)、自分もお客になろうとしたのではないだろうか。
だって、いきなり「パンツ売って」ですよ。
純粋に、私とお知り合いになりたいということではないだろう。
結局「念のため、駅を降りたらタクシーで帰ること」という指示と、「これから、そういうことがあったら俺に電話するんだよ♪お小遣い稼ぎになる。」という言葉を残してビジネスチャンスは幕を閉じた。
まあ、那智さんの思惑とは裏腹に、それ以来そんなビジネスチャンスは巡って来ていないのだが。
今年の夏、私は那智さんに会いに行く電車の中で痴漢に遭った。
朝のラッシュがまだ残る時間帯、特急電車はすし詰めだった。
お尻をさわさわと触られているけど、身動きできない。
次の駅で降りて、急いで那智さんにメールをする。
「痴漢に遭いました!!」
「腕を掴んで『この人痴漢です』って言って」
「もう、電車降りたから、終わってます。」
「なんだ残念。それで、5万は稼げたのに。」
あの、もう少し、私の心配をしてください。
私をお小遣い稼ぎに使わないでください。
このあと、「次回、痴漢被害に遭ったときの、対処(稼ぎ)方法」を伝授されたことは言うまでもない。
でも、そうそう、そんなことには遭遇しないから、残念ながら稼ぎには繋がらない。
女子高校生じゃないんだから、需要も少ないでしょうしね♪