海の街4
非日常的な日常
ふいに唇に乾いた感触。
那智さんがキスをしてくれた。
あたりは明るい、朝になっていた。
乾いた那智さんの唇とほんのすこし湿度のある体温がわたしに触れた。
あああああ。
意識は眠っているはずなのに、体中がむるむると震える。
細胞がいきなり目覚めて、内蔵も産毛も全身が那智さんを欲しているのがわかる。
昨日、あんなにお腹いっぱいギブアップだったことがウソのように、唇が触れただけであっけなく欲情している自分がおかしい。
一度押し広げられた穴はもとには戻らないのだろうか。
与えられて、欲している自分にわたしの欲望はどれだけ消化が早いんだと思う。
そのまま抱かれる。
あっさりと欲情しているから、簡単だ。
上になるように指示される。
最近のわたしは騎乗位もとても感じるようになっているので、下から見上げられる恥ずかしさより快感を欲するほうが勝っているから、ほとんどためらいなく指示通りに動く。
ああ、気持ちいい。
那智さんが乳首を触ってくれると快感が倍増する。
ひたすら快感に没頭する。
気持ちいい角度、動き、那智さんの上で腰を振る自分の姿に酔うように。
快感が競り上がってきた。
那智さん、イッてもいいですか?
天を仰ぎ競り上がる快感を取り逃がさないように唱える。
こっち向いて
なぜ?
目を見て
指示された。
目を見ながら「イッてもいいですか?」と聞き「いいよ」を合図に快感を放出させる。
滅多に命令をしない那智さんの指示は甘美だ。
胸をぎゅっと掴まれたように苦しく気持ちいい。
そんな甘美な指示に酔いながら、また自分の快感に没頭しはじめると、また
目を見て
と、指示。
どうしたんだろう?
ずっと見ていろということなのだろうか。
意図がわからずすこし戸惑いながらも指示に従う。
その後も、快感に目をつぶりそうになると指示、恥ずかしさに顔を伏せようとすると、また指示。
ずっとずっと那智さんの目を見つめている。
那智さんに突かれ気持ちよくて大声を出す、動きに合わせて快感の大きさが変わる。
いまわたしの快感はこの視線を釘付けにしている男性が司っているのだ。
「ずっと見ていろ」とは言われていない、でも、目を逸らすと、引き戻す。
その都度引き戻され、見つめる不自由さが、コントロールされているよろこびと那智さんの魅力になって、気がつけば、わたしはよろこんで那智さんだけを見つめていた。
腕枕に抱かれながら。
目を見ろって言われてどうだった?
那智さんステキって思ったのと、那智さんのものって思いました
この快感は那智さんがくれているって感じていました
りん子さ、前に「快感に没頭したいから」俺のことは考えないようにするって言ってただろ?
ああ、はい
たしかに、セックスのときに自己嫌悪や相手がどう思うかとかいろいろなことを考えてしまってぜんぜん没頭できなかったわたしが那智さんに荷物を預け、徐々に夢中になりはじめた頃、あえて、那智さんのことを意識せず自分の快感だけに没頭するように仕向けようと宣言したことはある。
もちろん、完全に那智さんを意識しないなんて無理なんだけど、できるだけ自分の快感を優先する練習のために意識しようとしたのだ。
那智さんも、わたしがセックスに対して冷めている部分を排除しようとしていたから、当然受け入れてくれたし、より快感を得られるように楽しんでくれていたけど、とにかく、そんなふうに意識するように決めて宣言したことがあるのはたしかだ。
あれは、あれで必要なことだったんだけど、あの話が出たとき、じゃあ、いつかは俺を意識することのほうが気持ちいいと思うようにさせようって決めてたんだ(笑)
りん子はコントロールされるほうが幸せなんだから、俺を意識して感じられたほうがより気持ちいいと思ったんだよ
だから、目を見るように?!
うん、たくさん感じられるようになるまで待って、感じられるようになってから、その快感を俺が与えていると思えば、その俺を意識しているほうがもっと感じるだろうなってね
だから、ずっとこの機会を待ってたの(笑)
そうですよね!!
だって、わたしがその宣言をしたのって、…ずいぶん前、2、3年前ですよね!!
そうだね
じゃあ、そんな前から計画していたのですか!!
うん(笑)
ああ。
本当だ。
那智さんの目を見ることで恥ずかしさや気が散る懸念よりも、この快感は那智さんに手綱を握られコントロールされている従属の快感のほうがずっと大きかった。
那智さんのうれしそうな欲情を光らせ、反面包み込むような眼差しに「わたしは那智さんのもの」と叫びたくなる。
これは、大きな快感を得ることができてはじめて成立する快感だ。
そして、もうひとつの大きなポイントは「ずっと見ていろ」とは言われなかったことだ。
目を逸らすと呼び戻し、また自由にさせる、それを繰り返すことで命令ではなく、わたしの意思でわたしが見たいと思っていることを植え付けるのだ。
命令よりも、もっと確実な自分の意思。
犬が飼い主を見上げて一挙手一投足を見逃すまいとするような幸福。
おそらく、わたしはこの幸福と快感が好きになっている。
それにしても、相変わらず長期計画を立てて遂行してくれる気の長さと情熱に感謝しつつも、呆れる…いえ、感心します(笑)
「等式」感想です。いつかは「そうする」の意思の継続は叶う物だなと思う。物事、長期計画で気負いもせず、出来ることだけ胆としていくなんて、私の性分ではなかったはずなのに、それが負担でなく出来てきているのが不思議に思う。花や野菜を育てたり、仕事上での大人の喧嘩も同様です。
加齢すると気が長くなるのか、それとも俗に言う大人の余裕?(笑)私をリアルでご存知の方は笑ってしまいますね。
りん子(^-^)たしかに、那智さん、わたしに対しては根気強く育てていますけど、わりとそれ以外は即決型でしたよね。決まらないの嫌い(笑)それが最近はわたし以外でもそういうふうになっているのは年齢のせいもあるかもしれないけど、わたしで鍛えられたとも言えませんか?(笑)
ふいに唇に乾いた感触。
那智さんがキスをしてくれた。
あたりは明るい、朝になっていた。
乾いた那智さんの唇とほんのすこし湿度のある体温がわたしに触れた。
あああああ。
意識は眠っているはずなのに、体中がむるむると震える。
細胞がいきなり目覚めて、内蔵も産毛も全身が那智さんを欲しているのがわかる。
昨日、あんなにお腹いっぱいギブアップだったことがウソのように、唇が触れただけであっけなく欲情している自分がおかしい。
一度押し広げられた穴はもとには戻らないのだろうか。
与えられて、欲している自分にわたしの欲望はどれだけ消化が早いんだと思う。
そのまま抱かれる。
あっさりと欲情しているから、簡単だ。
上になるように指示される。
最近のわたしは騎乗位もとても感じるようになっているので、下から見上げられる恥ずかしさより快感を欲するほうが勝っているから、ほとんどためらいなく指示通りに動く。
ああ、気持ちいい。
那智さんが乳首を触ってくれると快感が倍増する。
ひたすら快感に没頭する。
気持ちいい角度、動き、那智さんの上で腰を振る自分の姿に酔うように。
快感が競り上がってきた。
那智さん、イッてもいいですか?
天を仰ぎ競り上がる快感を取り逃がさないように唱える。
こっち向いて
なぜ?
目を見て
指示された。
目を見ながら「イッてもいいですか?」と聞き「いいよ」を合図に快感を放出させる。
滅多に命令をしない那智さんの指示は甘美だ。
胸をぎゅっと掴まれたように苦しく気持ちいい。
そんな甘美な指示に酔いながら、また自分の快感に没頭しはじめると、また
目を見て
と、指示。
どうしたんだろう?
ずっと見ていろということなのだろうか。
意図がわからずすこし戸惑いながらも指示に従う。
その後も、快感に目をつぶりそうになると指示、恥ずかしさに顔を伏せようとすると、また指示。
ずっとずっと那智さんの目を見つめている。
那智さんに突かれ気持ちよくて大声を出す、動きに合わせて快感の大きさが変わる。
いまわたしの快感はこの視線を釘付けにしている男性が司っているのだ。
「ずっと見ていろ」とは言われていない、でも、目を逸らすと、引き戻す。
その都度引き戻され、見つめる不自由さが、コントロールされているよろこびと那智さんの魅力になって、気がつけば、わたしはよろこんで那智さんだけを見つめていた。
腕枕に抱かれながら。
目を見ろって言われてどうだった?
那智さんステキって思ったのと、那智さんのものって思いました
この快感は那智さんがくれているって感じていました
りん子さ、前に「快感に没頭したいから」俺のことは考えないようにするって言ってただろ?
ああ、はい
たしかに、セックスのときに自己嫌悪や相手がどう思うかとかいろいろなことを考えてしまってぜんぜん没頭できなかったわたしが那智さんに荷物を預け、徐々に夢中になりはじめた頃、あえて、那智さんのことを意識せず自分の快感だけに没頭するように仕向けようと宣言したことはある。
もちろん、完全に那智さんを意識しないなんて無理なんだけど、できるだけ自分の快感を優先する練習のために意識しようとしたのだ。
那智さんも、わたしがセックスに対して冷めている部分を排除しようとしていたから、当然受け入れてくれたし、より快感を得られるように楽しんでくれていたけど、とにかく、そんなふうに意識するように決めて宣言したことがあるのはたしかだ。
あれは、あれで必要なことだったんだけど、あの話が出たとき、じゃあ、いつかは俺を意識することのほうが気持ちいいと思うようにさせようって決めてたんだ(笑)
りん子はコントロールされるほうが幸せなんだから、俺を意識して感じられたほうがより気持ちいいと思ったんだよ
だから、目を見るように?!
うん、たくさん感じられるようになるまで待って、感じられるようになってから、その快感を俺が与えていると思えば、その俺を意識しているほうがもっと感じるだろうなってね
だから、ずっとこの機会を待ってたの(笑)
そうですよね!!
だって、わたしがその宣言をしたのって、…ずいぶん前、2、3年前ですよね!!
そうだね
じゃあ、そんな前から計画していたのですか!!
うん(笑)
ああ。
本当だ。
那智さんの目を見ることで恥ずかしさや気が散る懸念よりも、この快感は那智さんに手綱を握られコントロールされている従属の快感のほうがずっと大きかった。
那智さんのうれしそうな欲情を光らせ、反面包み込むような眼差しに「わたしは那智さんのもの」と叫びたくなる。
これは、大きな快感を得ることができてはじめて成立する快感だ。
そして、もうひとつの大きなポイントは「ずっと見ていろ」とは言われなかったことだ。
目を逸らすと呼び戻し、また自由にさせる、それを繰り返すことで命令ではなく、わたしの意思でわたしが見たいと思っていることを植え付けるのだ。
命令よりも、もっと確実な自分の意思。
犬が飼い主を見上げて一挙手一投足を見逃すまいとするような幸福。
おそらく、わたしはこの幸福と快感が好きになっている。
それにしても、相変わらず長期計画を立てて遂行してくれる気の長さと情熱に感謝しつつも、呆れる…いえ、感心します(笑)
「等式」感想です。いつかは「そうする」の意思の継続は叶う物だなと思う。物事、長期計画で気負いもせず、出来ることだけ胆としていくなんて、私の性分ではなかったはずなのに、それが負担でなく出来てきているのが不思議に思う。花や野菜を育てたり、仕事上での大人の喧嘩も同様です。
加齢すると気が長くなるのか、それとも俗に言う大人の余裕?(笑)私をリアルでご存知の方は笑ってしまいますね。
りん子(^-^)たしかに、那智さん、わたしに対しては根気強く育てていますけど、わりとそれ以外は即決型でしたよね。決まらないの嫌い(笑)それが最近はわたし以外でもそういうふうになっているのは年齢のせいもあるかもしれないけど、わたしで鍛えられたとも言えませんか?(笑)
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COMMENT
実は与えられていたにしても、自ら得た快感に、いつかはこうさせたかったと言葉にされることは、本当に安心に繋がるし確かにあなたのもの的感覚にも酔えるね^^
何より自分に注がれる相手の思いが嬉しい。
那智さんのそれは情熱のようだ…。
体温を感じた。
このどこまでもほっとかない感が嬉しいね。
お釈迦様の手のなかみたいで…。
何より自分に注がれる相手の思いが嬉しい。
那智さんのそれは情熱のようだ…。
体温を感じた。
このどこまでもほっとかない感が嬉しいね。
お釈迦様の手のなかみたいで…。
高燃費?w
ヘロヘロにされた翌日は、更に欲情してしまう心と体(これってM女性の特徴?w)
さくっとイッて満足してる女性のほうが、お得なのかしらと時々思ってしまいますw
そうそう、私は彼の目を捉えて逸らせないですねぇ。
そのうち…りん子さんも目を逸らせなくなったりして^^
ヘロヘロにされた翌日は、更に欲情してしまう心と体(これってM女性の特徴?w)
さくっとイッて満足してる女性のほうが、お得なのかしらと時々思ってしまいますw
そうそう、私は彼の目を捉えて逸らせないですねぇ。
そのうち…りん子さんも目を逸らせなくなったりして^^
『どこまでもほっとかない』、まさしくその通り。
人によっては「そこはほっといて」となる可能性もあります(笑)
それこそ、相性ですよね。
そうやって見直すと那智さんはやはりサディストではないような気がする。
で、わたしには彼のやり方が合っているのでしょう。
mineさんのコメントで改めて認識しました^^
人によっては「そこはほっといて」となる可能性もあります(笑)
それこそ、相性ですよね。
そうやって見直すと那智さんはやはりサディストではないような気がする。
で、わたしには彼のやり方が合っているのでしょう。
mineさんのコメントで改めて認識しました^^
そうだ!!忘れてた!!(笑)
翌日に欲情の大きな再来があることを!!
あれって不思議ですよね、むしろ時間が空くと落ち着きます^^
M&Mさん、目逸らさないのですね。
たしかに、自分をこんなにしている男の目というものはいろいろな要素があってすごい魅力でした。
これはクセになりそうです^^
翌日に欲情の大きな再来があることを!!
あれって不思議ですよね、むしろ時間が空くと落ち着きます^^
M&Mさん、目逸らさないのですね。
たしかに、自分をこんなにしている男の目というものはいろいろな要素があってすごい魅力でした。
これはクセになりそうです^^