ためらいと幸福
非日常的な日常
わんこの尻尾を付けた私は言いたくない言葉(なんて言葉かは内緒にさせてね)を口にしなければならない状況に追い込まれ、それでも、数パーセント残っている理性でなんとか抵抗を試みる。
しかしどうすることもできず、それを口にすることと引き替えにいくことを許してもらう。
そして口にしてもなお、感じ続けてしまう自分に驚き、傷付き、不安になる。
こんな時は「そんなはしたないりん子も好きだ」と示していただいて、自分を許したい。
でも那智さんは抜き取った尻尾に結びつけてあるアナルパール(ちょっと露骨な名称だから、以下「パール」にさせてくださいね)を自分の鼻先に持っていき、もっと私をつらくさせる。
「臭いはずだ!どうしよう。」
そして、さらに、追い打ちをかける。
体と心を翻弄されて、朦朧としている私にそのパールを近づける。
私にも匂いを嗅がせるのかと身構えると同時に、あなたの動きが一瞬の逡巡を見せる、そして、瞳が輝いて楽しい思いつきを実行に移すために動作は流れていく。
パールを持っていないほうの手で私のあごに掴んで口を開けるように促している。
私の口に入れるのだ。
さっきまで、私のお尻の中にあったそれを、私の口に入れようとしているのだ。
近づいたそれを見ると、所々に茶色いかすが付いている。
ためらう。
那智さん、私に向けてくださるすべてのことが、私の幸福だ。
「愛している」も唾液も意地悪も。
不思議なことに、一瞬躊躇してしまうようなことを向けられると、「私はあなたのものだ」とより実感できて、一層の幸福を味わってしまう。
そして、酷いことをさせようとしている時の、那智さんのなんと魅力的なことか。
私は、蛇に睨まれた蛙のようだ。
蛙は恐怖で身を堅くするらしいけれど、私は幸福の余り動けなくなる。
口を開けることも、閉じることも、すべて那智さんの指先からの指示だ。
言葉はなく、淡々と流れていく。
那智さんの逡巡も思いつきも私へも指示も、そして、私のためらいも遂行も。
私に意志はない。
いや、正確には、ある。
那智さんの意志が私の意志だ。
口から出したパールを確かめて、はじめて那智さんは言葉を発する。
「まだ、きれいになっていないよ」
あなたの意志は私の意志だ。
「口の中にパールを入れる」から、さらに、きれいにするということが加わったのだ。
だから、今度は私は、もう一度口に入ったパールをきれいにしようと、舌を使ってなめる。
ためらいを幸福が凌駕する。
「いい顔だ」
那智さんの満足げな表情に、この上ない喜びを感じる。
この瞬間、私は修さんの満足のためだけに存在していたいと、心から願うのだ。
那智さんの足下に犬のようにしゃがみこむ。
でも、私は犬ではない。
1人の大人の女だ。
それを自覚しながらも、那智さんのものだと感じるこの瞬間の積み重ね。
このためだけに生きていたいと、祈るように願うのだ。
はしたない私をはしたないままにして、許しの言葉をかけるどころか、もっと堕ちるようなことをさせる那智さん。
那智さんの意志でさらにひどいことをさせるということと、那智さんの満足げな表情を免罪符として受け取り、はしたない私を許してしまいたいとも、願う。
わんこの尻尾を付けた私は言いたくない言葉(なんて言葉かは内緒にさせてね)を口にしなければならない状況に追い込まれ、それでも、数パーセント残っている理性でなんとか抵抗を試みる。
しかしどうすることもできず、それを口にすることと引き替えにいくことを許してもらう。
そして口にしてもなお、感じ続けてしまう自分に驚き、傷付き、不安になる。
こんな時は「そんなはしたないりん子も好きだ」と示していただいて、自分を許したい。
でも那智さんは抜き取った尻尾に結びつけてあるアナルパール(ちょっと露骨な名称だから、以下「パール」にさせてくださいね)を自分の鼻先に持っていき、もっと私をつらくさせる。
「臭いはずだ!どうしよう。」
そして、さらに、追い打ちをかける。
体と心を翻弄されて、朦朧としている私にそのパールを近づける。
私にも匂いを嗅がせるのかと身構えると同時に、あなたの動きが一瞬の逡巡を見せる、そして、瞳が輝いて楽しい思いつきを実行に移すために動作は流れていく。
パールを持っていないほうの手で私のあごに掴んで口を開けるように促している。
私の口に入れるのだ。
さっきまで、私のお尻の中にあったそれを、私の口に入れようとしているのだ。
近づいたそれを見ると、所々に茶色いかすが付いている。
ためらう。
那智さん、私に向けてくださるすべてのことが、私の幸福だ。
「愛している」も唾液も意地悪も。
不思議なことに、一瞬躊躇してしまうようなことを向けられると、「私はあなたのものだ」とより実感できて、一層の幸福を味わってしまう。
そして、酷いことをさせようとしている時の、那智さんのなんと魅力的なことか。
私は、蛇に睨まれた蛙のようだ。
蛙は恐怖で身を堅くするらしいけれど、私は幸福の余り動けなくなる。
口を開けることも、閉じることも、すべて那智さんの指先からの指示だ。
言葉はなく、淡々と流れていく。
那智さんの逡巡も思いつきも私へも指示も、そして、私のためらいも遂行も。
私に意志はない。
いや、正確には、ある。
那智さんの意志が私の意志だ。
口から出したパールを確かめて、はじめて那智さんは言葉を発する。
「まだ、きれいになっていないよ」
あなたの意志は私の意志だ。
「口の中にパールを入れる」から、さらに、きれいにするということが加わったのだ。
だから、今度は私は、もう一度口に入ったパールをきれいにしようと、舌を使ってなめる。
ためらいを幸福が凌駕する。
「いい顔だ」
那智さんの満足げな表情に、この上ない喜びを感じる。
この瞬間、私は修さんの満足のためだけに存在していたいと、心から願うのだ。
那智さんの足下に犬のようにしゃがみこむ。
でも、私は犬ではない。
1人の大人の女だ。
それを自覚しながらも、那智さんのものだと感じるこの瞬間の積み重ね。
このためだけに生きていたいと、祈るように願うのだ。
はしたない私をはしたないままにして、許しの言葉をかけるどころか、もっと堕ちるようなことをさせる那智さん。
那智さんの意志でさらにひどいことをさせるということと、那智さんの満足げな表情を免罪符として受け取り、はしたない私を許してしまいたいとも、願う。