諸刃の刃
独特な幸福感
年始、重要なお仕事を控えている那智さんが連泊しているビジネスホテルに仮眠を取りに戻ったとき。
その3時間ほどの時間に合わせるように、わたしもそこに出向いた。
部屋に入って。
互いにコートをハンガーに掛け、少し身軽にする。
特に『尽くす』という感覚はないけれど、たまたまわたしがクローゼットのそばにいたし、那智さんお疲れのようだし、外したネクタイとシャツを受け取ってあまったハンガーに掛けた。
そのまま、ドカッと椅子に腰掛けた那智さんの足下に座る。
年末年始と忙しい時期が重なって、時間的にも精神的にも余裕のないわたしたち。
とにかくわたしは那智さんにくっついていたくて太ももに顔を付ける。
持って来たノートパソコンを広げて急ぎの仕事のチャックだけ済ませようとしているらしい。
「那智さん、お仕事があるならなさってくださいね。」
「なんで?仕事していたほうがいいなら、してるけど?」
「ここにいるだけでいいです。」
足の間に挟まって、頭上でパソコンをカチカチしている音を聞いているだけでよかった。
犬みたい。
ああ、幸せ。
片手間で、いま那智さんの意識はお仕事だとしても、意識下にはわたしがいて、『いつも意識下にはいるよ』と感じさせてくれて(これ重要!!)いる。
この時間が幸せで。
思わず。
那智さんを見上げグーにした両手を太ももに乗せて。
「わん♪」
と言ってみる。
「そうかぁ、りん子はわんこになりたいんだね〜。」
「わん♪」
再びパソコンに向かい。
こんなことを言い出す那智さん。
「ほら、靴下を脱がせろ!!」
へ!?
何?その命令口調!!
那智さんが本気でそういう口調になることはないとわかっているけど、わたし男性のそういうの怖いんだ。
だから、一瞬怯んでしまう。
見上げて顔を見てみると、疲れはにじんでいるものの楽しそうな表情。
ああ、遊んでいるんだなと、確認できてからは、わたしも安心して、それにのっかる。
「ほら、脱がせろよ、犬!!犬なんだろ?犬なら言うこと聞くんだろ?」
「わん?」
冗談とわかっていても、それに素直に従うのはなんだか面白くない。
「わん、わん」
そういいながら、手をグーのまま靴下をもぞもぞする。
犬だから、脱がせられませーん^^
「あはは、そういうことね。」
「つべこべ言ってないで脱がせるんだよ!!(笑)」
足をわたしの太ももにドカッと乗せる。
くわえて脱がそうかと思ったけど靴下破るといけないし、結局クスクス笑いながら普通に脱がして差し上げた。
「犬!!次、ポットのお湯を用意しろ〜!!」
「ああ、犬相手と思ったら、理不尽なこともできるかもしれないな〜。犬だから何を言ってもいいって感じでね。」
まだ、犬遊びね。
「わん!!」
那智さんの向こう側にあるポットまで四つん這い。
ポットの前にしゃがみ込み。
またグーのまま、ポットの蓋あたりをカリカリ。
那智さんのほうを向いてにっこり笑って。
「わん♪」
犬だから、ポット開けられませーん♪
「いいからさっさとやれ〜!!」
いままでだって、お湯湧かしてとか言われればするし、言われるまえから動くことだってある。
だから、お湯を沸かすことは理不尽なことだとは思わない。
おそらく那智さんの言いたいことは、気持ちの問題なのですよね。
そう思って聞いてみる。
「那智さん、わたしに対して理不尽なことしたいのですか?」
「それでりん子が喜ぶなら、してもいいかなと思うよ。」
ううん、そうじゃなくて。
わたしは喜ぶからとかじゃなくて。
人って基本的に相手を思いやりますよね。
特に、相手のことを大切に思えば思うほど、相手の気持ちを考えたりしますよね。
そうじゃなくて。
相手の人格を一切無視して自分勝手に振る舞いたいという欲求はありませんか?
わたしが想像するに『奴隷』と呼ぶ存在を欲する人は、こういうことを望んでいるんじゃないかと思うのです。
普通、相手に人格を認めていれば「これをしたら相手がどう思うか、相手にどう思われるか」そう考えるのが当然ですよね。
それをしないでいい存在をわたしに求めていないですか?
「う〜ん、ないな。」
「じゃあ、わたしじゃない誰かだったら?」
「うん…妄想の世界だったら、誘拐して監禁して…なんていうのもあるかもしれないけど、基本的にはないな。」
わたしには被虐願望がある。
肉体的な苦痛はもちろん。
ほんとのこというと『奴隷』のような人格無視扱いにも、淡い憧れがある。
だけど、それは『自己肯定』できにくいわたしには、傷に繋がるのだ。
以前、『淫乱牝豚調教日記』のようなもので、女性を嘲笑うような描写を目にしただけで、まるで自分のことのように気持ちが重たくなってしまった。
わたしはマゾのはずなのになんでいやな気分になってしまうのだろうと、矛盾を感じたものだ。
人格無視、わたしには諸刃の刃だ。
憧れではあるけれど、たぶん傷ついてしまう。
だから、実は、この『犬だからなにをしてもかまわない』という那智さんのスタンスに、お遊びだとわかっていても、心が小さく軋んでいたんだ。
そして、那智さんはおそらく奴隷を持ちたいと思う性癖はないよう。
妄想を実現させるのは難しいし。
だから、わたしたちは『大切にされながら酷いことをする』ということで成り立っている。
犬のお遊びで小さく軋んだ心を見つめ。
淡い憧れの人格無視は、やっぱりわたしには難しいのかなぁと思う。
諸刃の刃。
傷を負ってしまうことを覚悟できたら、もしかしたら、淡い願望は深い快感に繋がるかもしれない。
だけど、やっぱり『自己肯定』して傷つかずにいられる自信がないな。
それとも、その傷も甘美なものなのかな…。
う〜ん、やっぱりそんな甘いものではないように思う。
ああ、なんだか今日は書くことがまとまっていないゾ。
くだらない犬話から、ちょっと濃い目の話になってしまった。
で、結局。
傷つけずに『人格無視』してほしいなぁという、ただのリクエストのようなエントリー^^;
年始、重要なお仕事を控えている那智さんが連泊しているビジネスホテルに仮眠を取りに戻ったとき。
その3時間ほどの時間に合わせるように、わたしもそこに出向いた。
部屋に入って。
互いにコートをハンガーに掛け、少し身軽にする。
特に『尽くす』という感覚はないけれど、たまたまわたしがクローゼットのそばにいたし、那智さんお疲れのようだし、外したネクタイとシャツを受け取ってあまったハンガーに掛けた。
そのまま、ドカッと椅子に腰掛けた那智さんの足下に座る。
年末年始と忙しい時期が重なって、時間的にも精神的にも余裕のないわたしたち。
とにかくわたしは那智さんにくっついていたくて太ももに顔を付ける。
持って来たノートパソコンを広げて急ぎの仕事のチャックだけ済ませようとしているらしい。
「那智さん、お仕事があるならなさってくださいね。」
「なんで?仕事していたほうがいいなら、してるけど?」
「ここにいるだけでいいです。」
足の間に挟まって、頭上でパソコンをカチカチしている音を聞いているだけでよかった。
犬みたい。
ああ、幸せ。
片手間で、いま那智さんの意識はお仕事だとしても、意識下にはわたしがいて、『いつも意識下にはいるよ』と感じさせてくれて(これ重要!!)いる。
この時間が幸せで。
思わず。
那智さんを見上げグーにした両手を太ももに乗せて。
「わん♪」
と言ってみる。
「そうかぁ、りん子はわんこになりたいんだね〜。」
「わん♪」
再びパソコンに向かい。
こんなことを言い出す那智さん。
「ほら、靴下を脱がせろ!!」
へ!?
何?その命令口調!!
那智さんが本気でそういう口調になることはないとわかっているけど、わたし男性のそういうの怖いんだ。
だから、一瞬怯んでしまう。
見上げて顔を見てみると、疲れはにじんでいるものの楽しそうな表情。
ああ、遊んでいるんだなと、確認できてからは、わたしも安心して、それにのっかる。
「ほら、脱がせろよ、犬!!犬なんだろ?犬なら言うこと聞くんだろ?」
「わん?」
冗談とわかっていても、それに素直に従うのはなんだか面白くない。
「わん、わん」
そういいながら、手をグーのまま靴下をもぞもぞする。
犬だから、脱がせられませーん^^
「あはは、そういうことね。」
「つべこべ言ってないで脱がせるんだよ!!(笑)」
足をわたしの太ももにドカッと乗せる。
くわえて脱がそうかと思ったけど靴下破るといけないし、結局クスクス笑いながら普通に脱がして差し上げた。
「犬!!次、ポットのお湯を用意しろ〜!!」
「ああ、犬相手と思ったら、理不尽なこともできるかもしれないな〜。犬だから何を言ってもいいって感じでね。」
まだ、犬遊びね。
「わん!!」
那智さんの向こう側にあるポットまで四つん這い。
ポットの前にしゃがみ込み。
またグーのまま、ポットの蓋あたりをカリカリ。
那智さんのほうを向いてにっこり笑って。
「わん♪」
犬だから、ポット開けられませーん♪
「いいからさっさとやれ〜!!」
いままでだって、お湯湧かしてとか言われればするし、言われるまえから動くことだってある。
だから、お湯を沸かすことは理不尽なことだとは思わない。
おそらく那智さんの言いたいことは、気持ちの問題なのですよね。
そう思って聞いてみる。
「那智さん、わたしに対して理不尽なことしたいのですか?」
「それでりん子が喜ぶなら、してもいいかなと思うよ。」
ううん、そうじゃなくて。
わたしは喜ぶからとかじゃなくて。
人って基本的に相手を思いやりますよね。
特に、相手のことを大切に思えば思うほど、相手の気持ちを考えたりしますよね。
そうじゃなくて。
相手の人格を一切無視して自分勝手に振る舞いたいという欲求はありませんか?
わたしが想像するに『奴隷』と呼ぶ存在を欲する人は、こういうことを望んでいるんじゃないかと思うのです。
普通、相手に人格を認めていれば「これをしたら相手がどう思うか、相手にどう思われるか」そう考えるのが当然ですよね。
それをしないでいい存在をわたしに求めていないですか?
「う〜ん、ないな。」
「じゃあ、わたしじゃない誰かだったら?」
「うん…妄想の世界だったら、誘拐して監禁して…なんていうのもあるかもしれないけど、基本的にはないな。」
わたしには被虐願望がある。
肉体的な苦痛はもちろん。
ほんとのこというと『奴隷』のような人格無視扱いにも、淡い憧れがある。
だけど、それは『自己肯定』できにくいわたしには、傷に繋がるのだ。
以前、『淫乱牝豚調教日記』のようなもので、女性を嘲笑うような描写を目にしただけで、まるで自分のことのように気持ちが重たくなってしまった。
わたしはマゾのはずなのになんでいやな気分になってしまうのだろうと、矛盾を感じたものだ。
人格無視、わたしには諸刃の刃だ。
憧れではあるけれど、たぶん傷ついてしまう。
だから、実は、この『犬だからなにをしてもかまわない』という那智さんのスタンスに、お遊びだとわかっていても、心が小さく軋んでいたんだ。
そして、那智さんはおそらく奴隷を持ちたいと思う性癖はないよう。
妄想を実現させるのは難しいし。
だから、わたしたちは『大切にされながら酷いことをする』ということで成り立っている。
犬のお遊びで小さく軋んだ心を見つめ。
淡い憧れの人格無視は、やっぱりわたしには難しいのかなぁと思う。
諸刃の刃。
傷を負ってしまうことを覚悟できたら、もしかしたら、淡い願望は深い快感に繋がるかもしれない。
だけど、やっぱり『自己肯定』して傷つかずにいられる自信がないな。
それとも、その傷も甘美なものなのかな…。
う〜ん、やっぱりそんな甘いものではないように思う。
ああ、なんだか今日は書くことがまとまっていないゾ。
くだらない犬話から、ちょっと濃い目の話になってしまった。
で、結局。
傷つけずに『人格無視』してほしいなぁという、ただのリクエストのようなエントリー^^;
- 関連記事
-
- 週末用 2007/08/26
- 感情 2010/02/22
- 暗闇にならない『あなたのため』 2009/05/13