職業選択5
惹かれ合う理由
披露宴のように一回きりの祝福の場において、良い司会者ってなんだろう。
声や話術、トラブルに対処できる経験。
その時の私には、それはない。
では、何で「私」を推すか。
人柄と経験だ。
何度か話しているが、私は相手を良い気分にさせることが上手い、聞き上手なのだ。
だから、おそらく結婚に向けて夢を膨らませている人の話を丁寧に聞いてお手伝いができるのではないかと思う。
これは、性格によるものと、長年接客業をしてきた自負もある。
というか、それしかできない(笑)
でも、祝福の場で、その人柄や経験、印象は大事なのではないだろうか。
那智さんが何度となく話して、私なりに理解した慣れない私のセールスポイントのようなものや、この仕事に対する姿勢のようなものを、M社の高橋さんとブライダル担当の富田さん(仮)に、お話しする。
無謀なことや、M社では使えないことは重々承知の上で、模索していると。
二人は貴重な時間を1時間以上割いて、私に付き合ってくれた。
「やはり、いますぐに、はい使いますというわけにはいかない。こちらで教育もできない。だから、現段階では不採用としか言えない。」
思った通りの答えだ。
「ただ、あなたの印象や経験は、ブライダルには重要なことだ。おそらく向いているだろう。教育を受けキャリアを積むことをお勧めする。」
体よく断る口実かもしれないが、この言葉と次の提案が、また「to be continue」を告げることになる。
「あなたの地元(M社の隣の都市が私の地元)の、ブライダル業界を探してキャリアを積んでみては?(同じ都市の事務所の門を叩いて、所属するようになったらM社としては声を掛けられないからだ)そして、キャリアを積んで、もう一度来てみてくれないか。」
長い時間付き合ってくれたお礼を述べてM社を後にする。
まだ、終わりにならない。
本当に司会をやりたいのか、できるのか、勇気も覚悟も曖昧なまま話は続いている。
でも、駅に向かう道はなんだか晴れやかだ。
来るときと明るさが違って見える。
胸を張りたい気分だ。
「一生懸命できることをやっている充実感」で、背筋がピンと伸びているようだ。
那智さんに、会いたい。
お昼を挟んで、F社との約束がある。
M社からF社は、それほど離れていない。
ゆっくりランチを食べて、余裕で移動できる距離。
那智さんの仕事場は、その両方から離れている。
ちょうど二等辺三角形のようだ。
無駄と言おうか、無謀と言うのか、限られた時間だが行って帰って来られないこともない。
おそらくお仕事場の滞在時間は数分だろう。
それでも、那智さんに会いたい。
頑張っている私を見せたい、よく頑張っているねって言ってほしい。
私は、那智さんに連絡をして、いまから会いに行ってもよいか了解を得る。
無理をするなと言うけれど、会いたいと言い張る。
たまたまお仕事の電話が入ったり来客があるかもしれないんだよと釘を刺すけど、それでもかまわない、あなたのいるそばに行きたい。
しょうがないなと呆れ気味に、了承してくれる。
お仕事場からF社までの最短ルートを調べてもらうことをお願いして電話を切り、那智さんのいる街へ急いで移動する。
那智さんに会いたい、ただひたすら会いたい。
顔を見て、頭を撫でてもらいたい。
その一心で、時間ギリギリの逢瀬を試みる。
お仕事場に着いた。
時間がない、すぐに戻らなければならない。
でも、那智さんに会えた。
キスをしてくれた。
何も食べていないだろうと、ゼリーを口移しで食べさせてくれた。
頭を撫で、スーツのスカートをめくり、ストッキングと下着を下ろし、お仕事場の鏡の前で後ろから抱いてくれた。
その間10分。
慌ただしく今来た道を戻るけど、私はとっても幸せだ。
次のF社は本命ではない(ブライダルを扱っていないし)、教育をしてくれるかもしれないというだけで行く(行ってすぐわかったことだが教育もしていないそうだ)。
徒労に終わることが濃厚だ。
でも、私は幸せだ。
この与えられたミッションを一生懸命こなしていくのだ。
それが那智さんの望みなら、そして、那智さんの望みが私の意志だからだ。
予想通りF社でも収穫はまったくなかった。(F社にとっても収穫ゼロだろう 笑)
10年ほど前にMCの経験が少しある、キャリアのない30半ばの女性をMCとして抱えるほど派遣会社も寛大ではない。
MCとしてはキャリアがない、コンパニオンとしては年齢が(笑)、仕事できる時間や場所も
限られている。
登録用紙に経歴や条件を記入しながら、ここは双方にとって必要ない所だなと感じていた。
最後の方に「水着の仕事は可能か?」という欄があったから、冗談で「○」つけようかと思ってしまったくらいに、場違いな感じがしてしまっていた。
かくして、私の長い一日が終わった。
とても疲れた、でも、満足をしていた。
心地よい疲労感を感じながら、暮れ始めた私の住む町へ帰っていく。
ごめんなさい、まだもう少し続きます。
披露宴のように一回きりの祝福の場において、良い司会者ってなんだろう。
声や話術、トラブルに対処できる経験。
その時の私には、それはない。
では、何で「私」を推すか。
人柄と経験だ。
何度か話しているが、私は相手を良い気分にさせることが上手い、聞き上手なのだ。
だから、おそらく結婚に向けて夢を膨らませている人の話を丁寧に聞いてお手伝いができるのではないかと思う。
これは、性格によるものと、長年接客業をしてきた自負もある。
というか、それしかできない(笑)
でも、祝福の場で、その人柄や経験、印象は大事なのではないだろうか。
那智さんが何度となく話して、私なりに理解した慣れない私のセールスポイントのようなものや、この仕事に対する姿勢のようなものを、M社の高橋さんとブライダル担当の富田さん(仮)に、お話しする。
無謀なことや、M社では使えないことは重々承知の上で、模索していると。
二人は貴重な時間を1時間以上割いて、私に付き合ってくれた。
「やはり、いますぐに、はい使いますというわけにはいかない。こちらで教育もできない。だから、現段階では不採用としか言えない。」
思った通りの答えだ。
「ただ、あなたの印象や経験は、ブライダルには重要なことだ。おそらく向いているだろう。教育を受けキャリアを積むことをお勧めする。」
体よく断る口実かもしれないが、この言葉と次の提案が、また「to be continue」を告げることになる。
「あなたの地元(M社の隣の都市が私の地元)の、ブライダル業界を探してキャリアを積んでみては?(同じ都市の事務所の門を叩いて、所属するようになったらM社としては声を掛けられないからだ)そして、キャリアを積んで、もう一度来てみてくれないか。」
長い時間付き合ってくれたお礼を述べてM社を後にする。
まだ、終わりにならない。
本当に司会をやりたいのか、できるのか、勇気も覚悟も曖昧なまま話は続いている。
でも、駅に向かう道はなんだか晴れやかだ。
来るときと明るさが違って見える。
胸を張りたい気分だ。
「一生懸命できることをやっている充実感」で、背筋がピンと伸びているようだ。
那智さんに、会いたい。
お昼を挟んで、F社との約束がある。
M社からF社は、それほど離れていない。
ゆっくりランチを食べて、余裕で移動できる距離。
那智さんの仕事場は、その両方から離れている。
ちょうど二等辺三角形のようだ。
無駄と言おうか、無謀と言うのか、限られた時間だが行って帰って来られないこともない。
おそらくお仕事場の滞在時間は数分だろう。
それでも、那智さんに会いたい。
頑張っている私を見せたい、よく頑張っているねって言ってほしい。
私は、那智さんに連絡をして、いまから会いに行ってもよいか了解を得る。
無理をするなと言うけれど、会いたいと言い張る。
たまたまお仕事の電話が入ったり来客があるかもしれないんだよと釘を刺すけど、それでもかまわない、あなたのいるそばに行きたい。
しょうがないなと呆れ気味に、了承してくれる。
お仕事場からF社までの最短ルートを調べてもらうことをお願いして電話を切り、那智さんのいる街へ急いで移動する。
那智さんに会いたい、ただひたすら会いたい。
顔を見て、頭を撫でてもらいたい。
その一心で、時間ギリギリの逢瀬を試みる。
お仕事場に着いた。
時間がない、すぐに戻らなければならない。
でも、那智さんに会えた。
キスをしてくれた。
何も食べていないだろうと、ゼリーを口移しで食べさせてくれた。
頭を撫で、スーツのスカートをめくり、ストッキングと下着を下ろし、お仕事場の鏡の前で後ろから抱いてくれた。
その間10分。
慌ただしく今来た道を戻るけど、私はとっても幸せだ。
次のF社は本命ではない(ブライダルを扱っていないし)、教育をしてくれるかもしれないというだけで行く(行ってすぐわかったことだが教育もしていないそうだ)。
徒労に終わることが濃厚だ。
でも、私は幸せだ。
この与えられたミッションを一生懸命こなしていくのだ。
それが那智さんの望みなら、そして、那智さんの望みが私の意志だからだ。
予想通りF社でも収穫はまったくなかった。(F社にとっても収穫ゼロだろう 笑)
10年ほど前にMCの経験が少しある、キャリアのない30半ばの女性をMCとして抱えるほど派遣会社も寛大ではない。
MCとしてはキャリアがない、コンパニオンとしては年齢が(笑)、仕事できる時間や場所も
限られている。
登録用紙に経歴や条件を記入しながら、ここは双方にとって必要ない所だなと感じていた。
最後の方に「水着の仕事は可能か?」という欄があったから、冗談で「○」つけようかと思ってしまったくらいに、場違いな感じがしてしまっていた。
かくして、私の長い一日が終わった。
とても疲れた、でも、満足をしていた。
心地よい疲労感を感じながら、暮れ始めた私の住む町へ帰っていく。
ごめんなさい、まだもう少し続きます。