お父さん2
惹かれ合う理由
「お父さん、癌かもしれない。」
母からの電話を受け取ったのは、子供のお友達親子数組と遊びに来ていた児童館だった。
「明日、検査をするから旅行には行かれない。」
実は、翌日母と姉と私で温泉旅行に行く予定だったのだ。
母が行きたいと言い出した旅行、滅多に自分の希望を口にすることのない母がめずらしく言い出した旅行。
しかし、子供のような父1人で検査に行かせるわけにはいかない。
なんだか、神様のいたずらが過ぎる気がして舌打ちをしたい気分だ。
このところずっと父の食欲が落ちていた。
もともとお酒の大好きな人で、食事よりお酒ばっかりだったけど、それにしても少なくなっていたようだ。
少し前、子供の学校の行事があって、待ち合わせた校門に父が来る姿を遠くから見つけて「なんだか、年取ってしまったな~」と、胸がチクリと痛んでいたので、そのころから体調に表れていたのかもしれない。
痛いことや恐いことが苦手な父だ。
病院なんて大嫌い。
その父が自ら懇意にしている町医に行くほど、不調が深刻だったのだろう。
その町医者が触診するだけで解るほど、胃にできた塊は異変を知らせていた。
父の性格を知っている医師は父には適当なことを言って、あとから母を呼び出して、おそらく癌であること、紹介状を書くから明日すぐに総合病院に検査に行くことを告げた。
そして、母から連絡が来たのだ。
姉と相談して、私たちも旅行はキャンセルする。
そのころ平日に仕事をしていなかった私は、その総合病院が近いこともあり一緒に検査に付きそうことにする。
そこではじめて那智さんにメールを送る。
「その病院でいいのか再検討して。セカンドオピニオンの準備をしたほいが良い。」
即座に返信が来る。
那智さんらしくて、思わず微笑んでしまう。
自分の足でしっかりと生きている人には、ともすればおせっかいになりそうな、こんなメールを送る那智さん。
でも、それが私には嬉しいのだ。
翌日、検査をして、やはりかなり大きな癌が父の胃に巣くっていることがわかって、すぐ入院、翌週には手術ということになった。
悪いところを取って繋げれば、いずれはお酒も飲めるし食べられるようになる、取らなければ胃の下の部分に癌がつまって食べられなくなり餓死する、ということなるのだ。
取ってすっきりしよう、柔らかい物を食べて、お酒が飲めるようになろう。
私たちは、お酒の大好きな父に、もう一度自由を味わってほしくて、父には告知せずに手術に承諾した。
この時はまだ、いろんなものと対峙しなければならないことを、私たち家族は知る由もなかった。
これから先のことは、医師や看護士の言ったことを私の脳みそを通して文章にしたり、家族が聞いたことを咀嚼し直して書きますから、医学的な信憑性はありません。
そして、病院や医療に携わる方々を批判しているものでもありません。
あくまでも、私が見て感じた出来事です。不適切な内容があってもお許しください。
更に、性癖でも「心の歪み」でもない種類の重い話です。
好みがあるでしょうから、お好みに合わなかった方ごめんなさい。
しばらく父の話をさせていただきますね。
これで「惹かれ合う理由」は、一応の完結です。
「お父さん、癌かもしれない。」
母からの電話を受け取ったのは、子供のお友達親子数組と遊びに来ていた児童館だった。
「明日、検査をするから旅行には行かれない。」
実は、翌日母と姉と私で温泉旅行に行く予定だったのだ。
母が行きたいと言い出した旅行、滅多に自分の希望を口にすることのない母がめずらしく言い出した旅行。
しかし、子供のような父1人で検査に行かせるわけにはいかない。
なんだか、神様のいたずらが過ぎる気がして舌打ちをしたい気分だ。
このところずっと父の食欲が落ちていた。
もともとお酒の大好きな人で、食事よりお酒ばっかりだったけど、それにしても少なくなっていたようだ。
少し前、子供の学校の行事があって、待ち合わせた校門に父が来る姿を遠くから見つけて「なんだか、年取ってしまったな~」と、胸がチクリと痛んでいたので、そのころから体調に表れていたのかもしれない。
痛いことや恐いことが苦手な父だ。
病院なんて大嫌い。
その父が自ら懇意にしている町医に行くほど、不調が深刻だったのだろう。
その町医者が触診するだけで解るほど、胃にできた塊は異変を知らせていた。
父の性格を知っている医師は父には適当なことを言って、あとから母を呼び出して、おそらく癌であること、紹介状を書くから明日すぐに総合病院に検査に行くことを告げた。
そして、母から連絡が来たのだ。
姉と相談して、私たちも旅行はキャンセルする。
そのころ平日に仕事をしていなかった私は、その総合病院が近いこともあり一緒に検査に付きそうことにする。
そこではじめて那智さんにメールを送る。
「その病院でいいのか再検討して。セカンドオピニオンの準備をしたほいが良い。」
即座に返信が来る。
那智さんらしくて、思わず微笑んでしまう。
自分の足でしっかりと生きている人には、ともすればおせっかいになりそうな、こんなメールを送る那智さん。
でも、それが私には嬉しいのだ。
翌日、検査をして、やはりかなり大きな癌が父の胃に巣くっていることがわかって、すぐ入院、翌週には手術ということになった。
悪いところを取って繋げれば、いずれはお酒も飲めるし食べられるようになる、取らなければ胃の下の部分に癌がつまって食べられなくなり餓死する、ということなるのだ。
取ってすっきりしよう、柔らかい物を食べて、お酒が飲めるようになろう。
私たちは、お酒の大好きな父に、もう一度自由を味わってほしくて、父には告知せずに手術に承諾した。
この時はまだ、いろんなものと対峙しなければならないことを、私たち家族は知る由もなかった。
これから先のことは、医師や看護士の言ったことを私の脳みそを通して文章にしたり、家族が聞いたことを咀嚼し直して書きますから、医学的な信憑性はありません。
そして、病院や医療に携わる方々を批判しているものでもありません。
あくまでも、私が見て感じた出来事です。不適切な内容があってもお許しください。
更に、性癖でも「心の歪み」でもない種類の重い話です。
好みがあるでしょうから、お好みに合わなかった方ごめんなさい。
しばらく父の話をさせていただきますね。
これで「惹かれ合う理由」は、一応の完結です。
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