職業選択2
惹かれ合う理由
話が思いもよらない方向へ進んでいる感じがする。
私の中の警戒信号が点滅している。
那智さんは「そう、やりたいことが見つかってよかったね~。」で済む人ではないのだった。
披露宴の司会者になるには、どういう方法があるのか、どうやったら実現するのか、話は終わりにならない。
まずキャリアがなきゃ無理。
いまさらどこかの事務所に掛け合ってみたってはじめて門を叩くほとんどキャリアのない人間は門前払いをくらうだけだ。
いくら説明しても納得してくれない。
「門を叩いてみたの?」
「いいえ。」
「それなら、わからないじゃないか。叩いてだめならしかたがないけど、叩く前に無理と決めるのはよくない。」
そして、披露宴は土日中心だから、どうしても家族の協力が必要だ。
私の夫は、私が平日に働くことにはなんの反対もしない。
彼に影響が及ばないということが、最大の条件だ。
私は毎日深夜に帰宅する夫を起きて待っている。
帰宅してから私の手料理を食べ、私とおしゃべりをすることが夫の楽しみだからだ。
眠いときは仮眠してから、起きて夕飯の支度をしている。(そんな凄いご飯は作りませんよ)
だから、私が忙しくてそれができなくなることや、子供の具合が悪いから私の代わりに仕事を休んでとか、をできるだけ避けてほしいと思っている。
それさえクリアできれば、多少家が散らかっていても私の日中には言及しないのだ。
その夫に、土日家を空ける仕事がしたいなんて言えない。
「配膳の仕事より効率よく稼げるだろ?遊びにいくんじゃない働きに出るのに、お願いできないの?それに子供がお父さんと仲良くなる絶好にチャンスだよ。」
確かに、夫と子供は仲が悪いわけではない。
でも、どこか仲良くなり切れていないところはある。
いつも私が間にいる。
ときどき飲み会などで、週末の夜私が出かけてしまうと、翌朝などは二人はより親密になっている感じはする。
間に入る私がいなければ、それなりに関係は深まるようだ。
子供は放っておいても、お母さんは大好きだ。
だから、強制的に私がいない状況をつくることは、悪いことではないだろう。
それには、夫へのフォローも必要で、それがけっこう面倒。
那智さんは、どういうフォローをしたらよいかまで、アドバイスしてくれる。
そして、何よりも30半ばを過ぎて、いまから新しいことを始める勇気がないのだ。
憧れているとはいえ、責任ある仕事について、家庭も仕事も両立させる自信がないのだ。
配膳の仕事で大満足をしているわけではないけれど、お小遣い稼ぎとして忙しいけど気ままにできる仕事のぬるま湯は居心地がよいのだ。
そこから、新たな挑戦をする自信がない。
それを「無理です。」という言葉に集約させて、抵抗を試みる。
「司会なんて誰にでもできることじゃない。俺はりん子ならできると思うから言っているんだよ。」
「人に注目される仕事をしたら、ずっときれいでいられるよ。俺もりん子がきれいなほうが嬉しい。りん子このためでもあるけれど、俺のためでもあるんだ。」
「配膳の仕事をダメだと言っているんじゃない、でもやりたことがあるんなら、諦めちゃいけない。無理なんて誰が決めたの?(私です・・)やってみないとわからないよね?」
「無理です。」という材料をひとつひとつ摘み取っていかれてしまって、もう私は「はい、やります。」としか言えない。
「とにかく、どういう方法があるかネットででも調べてごらん。」
「はい、わかりました。」
もう私は、お返事をするしかなかった。
いつものことだが、私自身より私のことを考えてくれる那智さんに、甘えるだけの「無理です。」は通用しない。
それに、こんなに一生懸命に思ってくれる気持ちをむげにもできない。
しばらくしたら、ほとぼりも冷めるかもしれない。
とにかく、この日は了解するしかなかった。
「脅迫に近い後押し」は、この日から始まったのだ。
すみません~まだまだ続きます~。
一旦休憩させてね。
話が思いもよらない方向へ進んでいる感じがする。
私の中の警戒信号が点滅している。
那智さんは「そう、やりたいことが見つかってよかったね~。」で済む人ではないのだった。
披露宴の司会者になるには、どういう方法があるのか、どうやったら実現するのか、話は終わりにならない。
まずキャリアがなきゃ無理。
いまさらどこかの事務所に掛け合ってみたってはじめて門を叩くほとんどキャリアのない人間は門前払いをくらうだけだ。
いくら説明しても納得してくれない。
「門を叩いてみたの?」
「いいえ。」
「それなら、わからないじゃないか。叩いてだめならしかたがないけど、叩く前に無理と決めるのはよくない。」
そして、披露宴は土日中心だから、どうしても家族の協力が必要だ。
私の夫は、私が平日に働くことにはなんの反対もしない。
彼に影響が及ばないということが、最大の条件だ。
私は毎日深夜に帰宅する夫を起きて待っている。
帰宅してから私の手料理を食べ、私とおしゃべりをすることが夫の楽しみだからだ。
眠いときは仮眠してから、起きて夕飯の支度をしている。(そんな凄いご飯は作りませんよ)
だから、私が忙しくてそれができなくなることや、子供の具合が悪いから私の代わりに仕事を休んでとか、をできるだけ避けてほしいと思っている。
それさえクリアできれば、多少家が散らかっていても私の日中には言及しないのだ。
その夫に、土日家を空ける仕事がしたいなんて言えない。
「配膳の仕事より効率よく稼げるだろ?遊びにいくんじゃない働きに出るのに、お願いできないの?それに子供がお父さんと仲良くなる絶好にチャンスだよ。」
確かに、夫と子供は仲が悪いわけではない。
でも、どこか仲良くなり切れていないところはある。
いつも私が間にいる。
ときどき飲み会などで、週末の夜私が出かけてしまうと、翌朝などは二人はより親密になっている感じはする。
間に入る私がいなければ、それなりに関係は深まるようだ。
子供は放っておいても、お母さんは大好きだ。
だから、強制的に私がいない状況をつくることは、悪いことではないだろう。
それには、夫へのフォローも必要で、それがけっこう面倒。
那智さんは、どういうフォローをしたらよいかまで、アドバイスしてくれる。
そして、何よりも30半ばを過ぎて、いまから新しいことを始める勇気がないのだ。
憧れているとはいえ、責任ある仕事について、家庭も仕事も両立させる自信がないのだ。
配膳の仕事で大満足をしているわけではないけれど、お小遣い稼ぎとして忙しいけど気ままにできる仕事のぬるま湯は居心地がよいのだ。
そこから、新たな挑戦をする自信がない。
それを「無理です。」という言葉に集約させて、抵抗を試みる。
「司会なんて誰にでもできることじゃない。俺はりん子ならできると思うから言っているんだよ。」
「人に注目される仕事をしたら、ずっときれいでいられるよ。俺もりん子がきれいなほうが嬉しい。りん子このためでもあるけれど、俺のためでもあるんだ。」
「配膳の仕事をダメだと言っているんじゃない、でもやりたことがあるんなら、諦めちゃいけない。無理なんて誰が決めたの?(私です・・)やってみないとわからないよね?」
「無理です。」という材料をひとつひとつ摘み取っていかれてしまって、もう私は「はい、やります。」としか言えない。
「とにかく、どういう方法があるかネットででも調べてごらん。」
「はい、わかりました。」
もう私は、お返事をするしかなかった。
いつものことだが、私自身より私のことを考えてくれる那智さんに、甘えるだけの「無理です。」は通用しない。
それに、こんなに一生懸命に思ってくれる気持ちをむげにもできない。
しばらくしたら、ほとぼりも冷めるかもしれない。
とにかく、この日は了解するしかなかった。
「脅迫に近い後押し」は、この日から始まったのだ。
すみません~まだまだ続きます~。
一旦休憩させてね。