マリオネットツアー
独特な幸福感
『人として正しいか別で』シリーズの第二弾。
地図を眺めるわたしにバイクを運転しながら電話越しに道案内する那智さん、こんな普通大人なそんなことで喜ぶ?というようなふたりの付き合い方です^^
人として正しいかは別のお話として読んでね^^
新幹線で西の街へいった。
お昼から4、5時間、ぽっかりとひとりに時間ができてしまった。
さあ、どうしようかな。
こう見えてもわりとひとりで行き当たりばったりで行動するのキライじゃない。
ただ、わりと、本でも買って同じ場所にずっとじっとしていることもキライじゃなかったりもする。
さて、どうしようかな。
前に那智さんに、そこに行くなら○○城と○○くらいは見ておいたら?と言われていたし、お天気もいいし、ちょっと出かけてみるかぁと電車に乗る。
電車に乗ってから携帯片手に下車駅をちゃんと調べるような、下調べゼロの観光。
こういうこともけっこう好き^^
ただちょっと心配事があって、○○城までは行くとしてももう少し足を伸ばして○○まで行くかどうかまだ迷い中ではあった。
靴が壊れかけていたのだ^^;
とてもお気に入りの編み上げのショートブーツ。
もう15年くらい履いていた。
ところどころ革が剥げいいカンジのボロ感を醸し出しておりましたが、とうとうこの前の日に4センチほどある踵が半分から『モロッ』と取れてしまった。
ちょうどお世話になっていたお宅におじゃまするところだったから瞬間接着剤をお借りしてとりあえずくっつけたのだけど、どこでまた壊れるかわからない。
もし、また取れてしまったら、コンビニで接着剤を買って、それでもダメなら早めに繁華街に戻って新しく靴を買おうか、そんなこともあったので、どこまで遠出しようかなと迷い中だったのだ。
ひとまず○○城駅まで到着。
お城までしばらく公園内を歩く。
やっとお城の近くまできたとき。
急に片方の足が、スカッとした。
あ、やばい!!
最初に踵が取れたときと同じ感触だ!!
さりげなく立ち止まり、さりげなく振り返ると半歩後ろに半月型の踵の残骸。
まさか皆さん踵が落ちているとは思うまい。
でもかなり情けない状態なので、そそくさと拾う。
うぅわ、どうしよう。
周囲にコンビニなんてない。
売店はあるけど人だかりができていてそこで接着剤を借りるのは恥ずかしい、万が一なかったら恥をかきに行くようなものだ。(こういうとき異常に自意識過剰になっちゃうんだよね、とほほ)
と、カバンに踵の残骸を忍ばせて、とりあえず駅のほうまで戻ろう。
ほとんどお城は見ずに引き返す。
ここで気を付けないといけないのは、接着剤で付けることを考えてブーツのほうの踵をこれ以上モロモロにさせないことだ。
擦り減ってしまっては、くっつくものもくっつかない。
ちょうとブーツカットのジーンズを履いていたので、足元は隠せる。
『あれ?あの人、踵モロモロ?』なんて気づかれることはないはずだ。
だから、まるで何ごともないように、わたしはほんのちょっと左足だけ踵を浮かせてつま先立ちで歩いた。
それなのに道を間違えてしまって駅になかなか辿り着いてくれない。
左足のふくらはぎがぷるぷるしだしたころ、なんてラッキー、ホテルがあるではないか!!
さりげなくドアマンに目で会釈して、さりげなくフロントに近づく。
若い女性のフロントだ。
うう、恥ずかしい。
でもここはなり振りかまっていられない。
事情を説明して接着剤を貸してもらった。
大きなホテルのフロントで靴の踵に接着剤を塗る…情けない…^^;
見ると、昨日付けたところとは違うところから取れていた。
うう、どうやら、靴としての寿命が来たということなのかな。
やっぱり○○まで行くのはやめにして繁華街に戻って新しく靴を買おう。
そう思ってホテルを出たところで那智さんから電話がかかってきた。
「おざぶざ〜ん(笑)」
地獄に仏?
わたしは降り掛かった災難を泣き笑いで話す。
「バカじゃないの(笑)で、どうするの?」
ひと通り話し終わって聞かれたので、近くにコンビニも見当たらないから繁華街に戻って接着剤か靴を買おうと思うと答えると。
「まだ時間あるんだろ?それなら、○○まで行けよ〜(笑)」
あらら、いきなり指示ですか?
「え〜、わたし○○まで行くの?」
「そう、で、串あげ食べるんだよ〜」
「わあ、わたし、那智さんのいう通り?」
「そう、いう通り^^」
あらら、もう決定。
那智さんの意思で○○ゆきが決定してしまった。
うう、いう通り、うれしい^^
「いま○○城駅だろ…200m先に○○ストアがある。駅前の幹線道路を西に200m」
「ええ?那智さん調べてくれたのですか?」
パソコンの前に座っているんだ。
それで調べてくれたんだ。
「うん、ちょっと離れてるね。そこで接着剤買えば安心だろ?」
「う〜ん、でも、ちょっと200mも歩くなら、このまま電車に乗って○○のある駅まで行ってしまいたいです」
「…、じゃあ…、○○方面の電車、5分発があるからそれに乗って」
「はーい^^」
強制マリオネットツアーのはじまりだ^^
電車を待っている間。
「那智さんの入った串あげ屋さんに行きたーい」と話していたら、お店情報を添付したメールが届く。
次に『○○駅で乗り換え、20分発○○行き、○○駅下車』と乗り換え案内のメール。
わあ、すごいすごい、那智さん、楽しい^^
下車駅に到着。
さっそく電話をかける。
「南口から出て」
「あ〜、はいはい、ありました。○○方面って書いてあります」
改札を出る。
「じゃあ、いくよ^^駅を背にして左に進む。右手に○○スーパーがあるだろ?信号を渡って、そこを右に曲がる」
「はい、ありました〜。信号待ちしてます。渡りまーす。なんか楽しい^^」
「曲がったら、3つめの路地、そうだな30mくらいね、それを左」
「みっつ。みっつ。たぶん、ここかなぁ」
「曲がったら、左にロー○ンがあるよ。そこで買いな」
「ありました、ありました。買います〜」
いわれた通り右に曲がり、いわれた通り3つめを探す。
いわれたものが見つかったときのうれしさ、トランプを同時にめくって出たカードが同じだったようなありもしないテレパシーのうれしさだ。
ああ、たのしい。
遠隔操作、マリオネット状態^^
コンビニで接着剤を買い、そこから那智さんの入ったお店までまたマリオネット。
「その最初の角に元祖○○って店、あるだろ?」
あ〜、はい、あります、あります。
那智さんが行ったことのあるお店だ。
でも見ると長い行列ができている。
そこまで並びたくないな〜。
「すごく並んでます〜。那智さんが入ったお店に入りいけど、こんなに並ぶのはイヤですよ」
とクレーム。
「ったく、しょうがねぇなー…じゃあ、いま来た道を戻って」
「はーい^^」
口コミか何かを見てくれたのだろう。
第二、第三の候補をあげてくれて、また道案内。
わたしは那智さんの声を頼りに見知らぬ街をキョロキョロと宝探しのようにたのしむ。
携帯片手にひとり串あげ屋に並び、横は入りしそうなおにいちゃんに携帯片手に『並んでるよ』と文句いい、なんだかひとりなんだけどひとりじゃない、不思議なひとりだった。
その街はいまではずいぶん観光地化されているけど、ひと昔前はかなり危険な場所だったそうだ。
そんなこともあったし、きっと付き合ってくれたのだろう。
でも、ふと、思って聞いてみる。
「那智さん、これって良くないことですか?何でも那智さんのいう通り」
普段はここまでしないだろ?今日はたまたま遊んだだけ。
それに、りん子はこうされることがうれしいだろ?
そう。
あまりそう思われていないかもしれないけど^^;、わりとわたしはひとりでも平気。
行き当たりばったりで迷ったりすることも、キライじゃない。
だけど那智さんのいう通りになることが、好きなのだ。
クラリスが布をかけてもらって眠りに落ちるように。
那智さんの意思がわたしの意志と感じられることが幸せなのだ。
で、たぶん、那智さんは彼の思いつく方法でわたしを楽しませることが好きなのだ。
携帯でずっと道案内してもらいながら観光する。
行き先を決めてもらって、それに従う。
…人として正しいか、それは別の話で^^;
これは無理なことでいう通りにさせようと思っていないから、成立することは充分承知の上で。
わたしたちは、こういう関係が心地よい、ちょっと特殊な愛し合い方^^
あ、でも、『すごく並んでいる』とクレームをつけるあたり、意思のないマリオネットとは言い難いけど^^;
『人として正しいか別で』シリーズの第二弾。
地図を眺めるわたしにバイクを運転しながら電話越しに道案内する那智さん、こんな普通大人なそんなことで喜ぶ?というようなふたりの付き合い方です^^
人として正しいかは別のお話として読んでね^^
新幹線で西の街へいった。
お昼から4、5時間、ぽっかりとひとりに時間ができてしまった。
さあ、どうしようかな。
こう見えてもわりとひとりで行き当たりばったりで行動するのキライじゃない。
ただ、わりと、本でも買って同じ場所にずっとじっとしていることもキライじゃなかったりもする。
さて、どうしようかな。
前に那智さんに、そこに行くなら○○城と○○くらいは見ておいたら?と言われていたし、お天気もいいし、ちょっと出かけてみるかぁと電車に乗る。
電車に乗ってから携帯片手に下車駅をちゃんと調べるような、下調べゼロの観光。
こういうこともけっこう好き^^
ただちょっと心配事があって、○○城までは行くとしてももう少し足を伸ばして○○まで行くかどうかまだ迷い中ではあった。
靴が壊れかけていたのだ^^;
とてもお気に入りの編み上げのショートブーツ。
もう15年くらい履いていた。
ところどころ革が剥げいいカンジのボロ感を醸し出しておりましたが、とうとうこの前の日に4センチほどある踵が半分から『モロッ』と取れてしまった。
ちょうどお世話になっていたお宅におじゃまするところだったから瞬間接着剤をお借りしてとりあえずくっつけたのだけど、どこでまた壊れるかわからない。
もし、また取れてしまったら、コンビニで接着剤を買って、それでもダメなら早めに繁華街に戻って新しく靴を買おうか、そんなこともあったので、どこまで遠出しようかなと迷い中だったのだ。
ひとまず○○城駅まで到着。
お城までしばらく公園内を歩く。
やっとお城の近くまできたとき。
急に片方の足が、スカッとした。
あ、やばい!!
最初に踵が取れたときと同じ感触だ!!
さりげなく立ち止まり、さりげなく振り返ると半歩後ろに半月型の踵の残骸。
まさか皆さん踵が落ちているとは思うまい。
でもかなり情けない状態なので、そそくさと拾う。
うぅわ、どうしよう。
周囲にコンビニなんてない。
売店はあるけど人だかりができていてそこで接着剤を借りるのは恥ずかしい、万が一なかったら恥をかきに行くようなものだ。(こういうとき異常に自意識過剰になっちゃうんだよね、とほほ)
と、カバンに踵の残骸を忍ばせて、とりあえず駅のほうまで戻ろう。
ほとんどお城は見ずに引き返す。
ここで気を付けないといけないのは、接着剤で付けることを考えてブーツのほうの踵をこれ以上モロモロにさせないことだ。
擦り減ってしまっては、くっつくものもくっつかない。
ちょうとブーツカットのジーンズを履いていたので、足元は隠せる。
『あれ?あの人、踵モロモロ?』なんて気づかれることはないはずだ。
だから、まるで何ごともないように、わたしはほんのちょっと左足だけ踵を浮かせてつま先立ちで歩いた。
それなのに道を間違えてしまって駅になかなか辿り着いてくれない。
左足のふくらはぎがぷるぷるしだしたころ、なんてラッキー、ホテルがあるではないか!!
さりげなくドアマンに目で会釈して、さりげなくフロントに近づく。
若い女性のフロントだ。
うう、恥ずかしい。
でもここはなり振りかまっていられない。
事情を説明して接着剤を貸してもらった。
大きなホテルのフロントで靴の踵に接着剤を塗る…情けない…^^;
見ると、昨日付けたところとは違うところから取れていた。
うう、どうやら、靴としての寿命が来たということなのかな。
やっぱり○○まで行くのはやめにして繁華街に戻って新しく靴を買おう。
そう思ってホテルを出たところで那智さんから電話がかかってきた。
「おざぶざ〜ん(笑)」
地獄に仏?
わたしは降り掛かった災難を泣き笑いで話す。
「バカじゃないの(笑)で、どうするの?」
ひと通り話し終わって聞かれたので、近くにコンビニも見当たらないから繁華街に戻って接着剤か靴を買おうと思うと答えると。
「まだ時間あるんだろ?それなら、○○まで行けよ〜(笑)」
あらら、いきなり指示ですか?
「え〜、わたし○○まで行くの?」
「そう、で、串あげ食べるんだよ〜」
「わあ、わたし、那智さんのいう通り?」
「そう、いう通り^^」
あらら、もう決定。
那智さんの意思で○○ゆきが決定してしまった。
うう、いう通り、うれしい^^
「いま○○城駅だろ…200m先に○○ストアがある。駅前の幹線道路を西に200m」
「ええ?那智さん調べてくれたのですか?」
パソコンの前に座っているんだ。
それで調べてくれたんだ。
「うん、ちょっと離れてるね。そこで接着剤買えば安心だろ?」
「う〜ん、でも、ちょっと200mも歩くなら、このまま電車に乗って○○のある駅まで行ってしまいたいです」
「…、じゃあ…、○○方面の電車、5分発があるからそれに乗って」
「はーい^^」
強制マリオネットツアーのはじまりだ^^
電車を待っている間。
「那智さんの入った串あげ屋さんに行きたーい」と話していたら、お店情報を添付したメールが届く。
次に『○○駅で乗り換え、20分発○○行き、○○駅下車』と乗り換え案内のメール。
わあ、すごいすごい、那智さん、楽しい^^
下車駅に到着。
さっそく電話をかける。
「南口から出て」
「あ〜、はいはい、ありました。○○方面って書いてあります」
改札を出る。
「じゃあ、いくよ^^駅を背にして左に進む。右手に○○スーパーがあるだろ?信号を渡って、そこを右に曲がる」
「はい、ありました〜。信号待ちしてます。渡りまーす。なんか楽しい^^」
「曲がったら、3つめの路地、そうだな30mくらいね、それを左」
「みっつ。みっつ。たぶん、ここかなぁ」
「曲がったら、左にロー○ンがあるよ。そこで買いな」
「ありました、ありました。買います〜」
いわれた通り右に曲がり、いわれた通り3つめを探す。
いわれたものが見つかったときのうれしさ、トランプを同時にめくって出たカードが同じだったようなありもしないテレパシーのうれしさだ。
ああ、たのしい。
遠隔操作、マリオネット状態^^
コンビニで接着剤を買い、そこから那智さんの入ったお店までまたマリオネット。
「その最初の角に元祖○○って店、あるだろ?」
あ〜、はい、あります、あります。
那智さんが行ったことのあるお店だ。
でも見ると長い行列ができている。
そこまで並びたくないな〜。
「すごく並んでます〜。那智さんが入ったお店に入りいけど、こんなに並ぶのはイヤですよ」
とクレーム。
「ったく、しょうがねぇなー…じゃあ、いま来た道を戻って」
「はーい^^」
口コミか何かを見てくれたのだろう。
第二、第三の候補をあげてくれて、また道案内。
わたしは那智さんの声を頼りに見知らぬ街をキョロキョロと宝探しのようにたのしむ。
携帯片手にひとり串あげ屋に並び、横は入りしそうなおにいちゃんに携帯片手に『並んでるよ』と文句いい、なんだかひとりなんだけどひとりじゃない、不思議なひとりだった。
その街はいまではずいぶん観光地化されているけど、ひと昔前はかなり危険な場所だったそうだ。
そんなこともあったし、きっと付き合ってくれたのだろう。
でも、ふと、思って聞いてみる。
「那智さん、これって良くないことですか?何でも那智さんのいう通り」
普段はここまでしないだろ?今日はたまたま遊んだだけ。
それに、りん子はこうされることがうれしいだろ?
そう。
あまりそう思われていないかもしれないけど^^;、わりとわたしはひとりでも平気。
行き当たりばったりで迷ったりすることも、キライじゃない。
だけど那智さんのいう通りになることが、好きなのだ。
クラリスが布をかけてもらって眠りに落ちるように。
那智さんの意思がわたしの意志と感じられることが幸せなのだ。
で、たぶん、那智さんは彼の思いつく方法でわたしを楽しませることが好きなのだ。
携帯でずっと道案内してもらいながら観光する。
行き先を決めてもらって、それに従う。
…人として正しいか、それは別の話で^^;
これは無理なことでいう通りにさせようと思っていないから、成立することは充分承知の上で。
わたしたちは、こういう関係が心地よい、ちょっと特殊な愛し合い方^^
あ、でも、『すごく並んでいる』とクレームをつけるあたり、意思のないマリオネットとは言い難いけど^^;