上の立場の視線
非日常的な日常
今日はわんこになっても大丈夫な服装で来るように言われていた。
いつも那智さんは自分の心の流れを楽しむから、そう言っていてもしないこともあるし、前振りなしでいきなりのこともあるから、その宣言が『決定事項』だとは限らない。
わんこ。
恥ずかしいという言葉がそぐわないほど、恐怖を伴うほどの緊張と羞恥。
目の前に提示されたら、できれば回避したいという思考が働く。
でも、渦中の。
人目が気になり過ぎて自分のことしか考えられなくなるような内と外の乖離状態の快感を。
那智さんに触れている部分だけが幸福との接点のような盲目的な快感を。
時折思い出しては、『してほしい』と競り上がってしまう。
だから服装のことを言われると、恐怖と観念する気持ちとわずかな喜びを感じる。
このときは、ちょっと計りかねている感じだった。
わんこはぜんぜんやっていなかった。
だから那智さんの言葉が、どうも真実味を持って受け取れない。
反面、ひさしぶりだから『必ずやる』ということも読み取れる。
自分のことなのに、なんだか他人事のように感じていたのだ。
待ち合わせて、遅い朝ご飯を取る。
セルフサービスの和食屋さん。
おしゃべりしながら和やかに。
先に食べ終わった那智さんが大きな鞄から尻尾を取り出していう。
「ここで付けるほうがいい?それともトイレで付ける?どっちでもいいよ」
ああ、尻尾。
瞬時に自分のスカートの丈を思う。
ひざ上の丈。
手のひらを広げて親指から小指まで…15�より少しくらいは尻尾が覗くだろう。
「わあ、付けるのですね…」
「うん、今日は、決定事項^^」
続いて、フロアの人の様子を思う。
わたしたちは4人掛けのテーブルにいる。
パーテーションを挟んで同じ4人掛けに男性4人。
そのパーテーションが、男性たちが後ろに椅子を引くか立ち上がるかすればこちらが見えるくらいの死角を作ってくれている。
わたしを背にして壁際のカウンター席に一人の男性、こちらはテーブルが壁についているから、こちらに背を向けている形になっている。
トイレまでは、4人の男性の前を歩いてセルフサービスのカウンターを通り過ぎないと行かれない、店員さんは3人はいたはず。
でも、でも、ここで椅子に腰掛けながら入れるのは気持ち的にも技術的にも難しい^^;
決定事項と言われているのだから抵抗のしようもない。
そして、すこし、尻尾がうれしい。
迷ってトイレを選んだ。
尻尾と首輪を渡され、それをバッグに詰め込んでトイレに行く。
女性客はいなかったはずだからたぶん女性用のトイレをノックされることはないはず、ちょっぴり安心。
トイレに入り、下着を取り。
ひさしぶりのアナルパールを見る。
とても人様にお見せできない状態で^^;それをひとつひとつ差し入れていく。
気持ちは焦る。
でも、ここは焦っちゃいけないの。
女性客はいなかったはずと自分を落ち着かせて、丁寧に入れる。
あと3つ。
ふたつ。
最後のひとつ。
落ちないようにグッと差し込む*^^*
完成。
姿勢を正してみる。
お尻から太ももひざの裏にかけて、ありえない違和感。
質量感のあるもふもふがスカートをふんわりさせているようだ。
首輪をつけて、外に出る。
慌てていたんだと思う。
席までの記憶が曖昧だ。
尻尾を踏まないように太ももの横に流して椅子に座る。
あああああ、ダメだ。
うれしい。
尻尾がうれしい。
尻尾の存在をイヤというほど感じさせてくれる、椅子に座るという行為。
尻尾が生えているわたしがうれしくて幸福で、大好きでたまらない。
ひさしぶりの尻尾、太ももに触れる大きな違和感が、恥ずかしいも怖いもごめんなさいも全部押さえ込むほどの幸福感だった。
もう、きっと濡れている。
ホクホクの幸福感と歪んだ自己愛は、わたしを濡らすのだ。
那智さんがリードを持った。
「こっちおいで」
うぎゃ、ここでリード!?
そのまま外?
一瞬ためらい、周囲を伺う。
相変わらずパーテーションの向こうに男性4人とわたしを背にして男性1人。
ためらう気持ちがあるはずなのに、体が動く。
それも、たぶん、嬉々として動いている。
静かに立ち上がり近づこうと一歩。
「見せてみ^^」
そのままチラッと後ろを見せる。
「ああ、見える、見える」
目立たないように那智さんの真横にすっと近づいてしゃがむ。
リードをつけてもらうために上を向いて首を差し出す。
カチャリ。
リードが繋がった。
「四つん這いになって」
ここで?
首を差し出した姿勢のまま見上げる。
どこでもわんこ、だ。
「うん」
4人の声が遠くに聞こえる。
後ろの男性は動く気配は感じられない。
見上げたまま、恐る恐る手を床に。
那智さんと目が合ったまま体だけ動かす。
ああ、見てしまった。
わたし、はじめてだ、お外でわんこになるときに那智さんの目を見るの。
いつもはいっぱいいっぱいでそんな余裕ないもの。
今日はたまたま視線があった状態だったからあの目を見ることができたのだ。
なんて慈愛に満ちた目。
やさしく、愛しいもの抱きかかえるような、そして那智さん自身も満たされている目だ。
SMに付きものの『蔑み』も『冷徹』もない。
ただただ優しい『上』の立場の視線だ。
ああああ、いま、わたし、わんこになる快感と幸福と同時に、那智さんの満足になっている喜びを全身で味わえている。
今日のわんこは、いままでの中では状況としては厳しいほうではなかっただろう。
(だってね、コンビニや百貨店の正面玄関に比べたらね^^;)
だから、那智さんも『可愛がる』気持ちをゆったり味わえたからこその目だったのだと思う。
それでもあんな視線に出会ってしまったら、もうわんこは幸せ以外の何者でもなくなってしまった。
首筋を撫でられる。
幸福にうっとりしそうになると。
「足が近すぎるね」
緊張して体を縮めているとダメなんだ。
手のひらとひざを離して、ちゃんと四つん這いにならないとダメなの。
うう、慈愛に見てても甘くない那智さん^^;
じりじりとひざを後ろに下げる。
必然的にお尻の位置も上がる。
怖い。
だけど太ももに当たる大きな違和感がわたしを撫でる。
幸せ。
ちゃんとしたわんこ。
「そう、でいきたね。うん、かわいい、かわいい^^」
那智さんの声はさっきの満足の目と同じ色を帯びた声だ。
その言葉を聞きながら足に頭を擦り付け首筋の愛撫と太ももにある大きな違和感の尻尾に身を任せて目を閉じる。
僅かに残る理性が後ろの男性が不審に思いませんようにと願うけれど、それもいつしか那智さんに預けてしまっていた。
うれしくて写真撮ってもらっちゃいました*^^*
この後、尻尾をつけてホテルまで。
気づく人は気づくでしょうし、だけど『?』だと思うくらいだろうけど。
でも、歩くたびにスカートから覗く尻尾がぴょんこぴょんこ跳ねるのだ。
もう恥ずかしくて恥ずかしくて、たまらない。
那智さんの腕にしがみついて、尻尾が跳ねるようにわたしの気持ちも跳ねる。
どう跳ねる?
うん、恥ずかしくてたまらないけど、うれしくてうれしくてたまらないのだ。
尻尾をつけている自分が好き。
きっと那智さんも喜んでくれているはず。
歪んだ自己愛と那智さんのものと感じられる従属感がうれしいし、感じる。
百貨店に入りフロアを横切る。
ブランドのショップのガラスに映るわたしのスカートからは尻尾。
恥ずかしくて一刻も早くホテルに入りたいのに、ずっと見ていたいという願う自分もいる。
正面玄関と反対側の出口。
ブランドのショップが途切れたところで、もう一度『じゃ、ここで、わんこ』。
向かい側にはまだショップがあるよぉ。
店員さんもいますよぉ。
拒否権なし。
ここでも那智さんの好みの四つん這い。
頭隠して尻隠さず、頭だけ那智さんにくっつけてお尻は店内に向けて。
強制的に盲目。
次は外に出て、ベンチ。
いつもここには誰かしら腰掛けているのだけど、このときはいなかった。
昼間の明るい時間、普通に通行人のいる歩道でベンチに腰掛ける那智さんの足の間に割居るように四つん這い。
立ち止まって携帯でおしゃべりしている女性の声のトーンが気になる。
どうか、気づきませんように。
「あのカップルが通り過ぎたらおしまいね」
カップルが歩いているのか。
ごめんなさいと思いながら、どんどん自分の羞恥や快楽だけの世界になる。
ずっと那智さんの足に顔を埋めていた。
さっきの和食屋さんのいとしいものを包むような視線よりも、人が多いぶん緊張しているだろうから厳しい表情になっているはずだ。
見ることはできないけど、想像はできる。
だけど、きっと、目の奥に,満足感をたたえてくれていると思う。
だって、わたしは那智さんの足元で。
周りが気になり過ぎて恥ずかし過ぎて、何も考えられなくなる、この内と外の乖離。
那智さんの手のひらだけがわたしの生を実感できるような快感。
こんなふうになっていたのだもの。
残暑の日差しは厳しくて焼けたアスファルトが手のひらを熱くしていたけど、それを実感するのは立ち上がった後だった。
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どこでもわんこ『飼い主の目、犬の目』
今日はわんこになっても大丈夫な服装で来るように言われていた。
いつも那智さんは自分の心の流れを楽しむから、そう言っていてもしないこともあるし、前振りなしでいきなりのこともあるから、その宣言が『決定事項』だとは限らない。
わんこ。
恥ずかしいという言葉がそぐわないほど、恐怖を伴うほどの緊張と羞恥。
目の前に提示されたら、できれば回避したいという思考が働く。
でも、渦中の。
人目が気になり過ぎて自分のことしか考えられなくなるような内と外の乖離状態の快感を。
那智さんに触れている部分だけが幸福との接点のような盲目的な快感を。
時折思い出しては、『してほしい』と競り上がってしまう。
だから服装のことを言われると、恐怖と観念する気持ちとわずかな喜びを感じる。
このときは、ちょっと計りかねている感じだった。
わんこはぜんぜんやっていなかった。
だから那智さんの言葉が、どうも真実味を持って受け取れない。
反面、ひさしぶりだから『必ずやる』ということも読み取れる。
自分のことなのに、なんだか他人事のように感じていたのだ。
待ち合わせて、遅い朝ご飯を取る。
セルフサービスの和食屋さん。
おしゃべりしながら和やかに。
先に食べ終わった那智さんが大きな鞄から尻尾を取り出していう。
「ここで付けるほうがいい?それともトイレで付ける?どっちでもいいよ」
ああ、尻尾。
瞬時に自分のスカートの丈を思う。
ひざ上の丈。
手のひらを広げて親指から小指まで…15�より少しくらいは尻尾が覗くだろう。
「わあ、付けるのですね…」
「うん、今日は、決定事項^^」
続いて、フロアの人の様子を思う。
わたしたちは4人掛けのテーブルにいる。
パーテーションを挟んで同じ4人掛けに男性4人。
そのパーテーションが、男性たちが後ろに椅子を引くか立ち上がるかすればこちらが見えるくらいの死角を作ってくれている。
わたしを背にして壁際のカウンター席に一人の男性、こちらはテーブルが壁についているから、こちらに背を向けている形になっている。
トイレまでは、4人の男性の前を歩いてセルフサービスのカウンターを通り過ぎないと行かれない、店員さんは3人はいたはず。
でも、でも、ここで椅子に腰掛けながら入れるのは気持ち的にも技術的にも難しい^^;
決定事項と言われているのだから抵抗のしようもない。
そして、すこし、尻尾がうれしい。
迷ってトイレを選んだ。
尻尾と首輪を渡され、それをバッグに詰め込んでトイレに行く。
女性客はいなかったはずだからたぶん女性用のトイレをノックされることはないはず、ちょっぴり安心。
トイレに入り、下着を取り。
ひさしぶりのアナルパールを見る。
とても人様にお見せできない状態で^^;それをひとつひとつ差し入れていく。
気持ちは焦る。
でも、ここは焦っちゃいけないの。
女性客はいなかったはずと自分を落ち着かせて、丁寧に入れる。
あと3つ。
ふたつ。
最後のひとつ。
落ちないようにグッと差し込む*^^*
完成。
姿勢を正してみる。
お尻から太ももひざの裏にかけて、ありえない違和感。
質量感のあるもふもふがスカートをふんわりさせているようだ。
首輪をつけて、外に出る。
慌てていたんだと思う。
席までの記憶が曖昧だ。
尻尾を踏まないように太ももの横に流して椅子に座る。
あああああ、ダメだ。
うれしい。
尻尾がうれしい。
尻尾の存在をイヤというほど感じさせてくれる、椅子に座るという行為。
尻尾が生えているわたしがうれしくて幸福で、大好きでたまらない。
ひさしぶりの尻尾、太ももに触れる大きな違和感が、恥ずかしいも怖いもごめんなさいも全部押さえ込むほどの幸福感だった。
もう、きっと濡れている。
ホクホクの幸福感と歪んだ自己愛は、わたしを濡らすのだ。
那智さんがリードを持った。
「こっちおいで」
うぎゃ、ここでリード!?
そのまま外?
一瞬ためらい、周囲を伺う。
相変わらずパーテーションの向こうに男性4人とわたしを背にして男性1人。
ためらう気持ちがあるはずなのに、体が動く。
それも、たぶん、嬉々として動いている。
静かに立ち上がり近づこうと一歩。
「見せてみ^^」
そのままチラッと後ろを見せる。
「ああ、見える、見える」
目立たないように那智さんの真横にすっと近づいてしゃがむ。
リードをつけてもらうために上を向いて首を差し出す。
カチャリ。
リードが繋がった。
「四つん這いになって」
ここで?
首を差し出した姿勢のまま見上げる。
どこでもわんこ、だ。
「うん」
4人の声が遠くに聞こえる。
後ろの男性は動く気配は感じられない。
見上げたまま、恐る恐る手を床に。
那智さんと目が合ったまま体だけ動かす。
ああ、見てしまった。
わたし、はじめてだ、お外でわんこになるときに那智さんの目を見るの。
いつもはいっぱいいっぱいでそんな余裕ないもの。
今日はたまたま視線があった状態だったからあの目を見ることができたのだ。
なんて慈愛に満ちた目。
やさしく、愛しいもの抱きかかえるような、そして那智さん自身も満たされている目だ。
SMに付きものの『蔑み』も『冷徹』もない。
ただただ優しい『上』の立場の視線だ。
ああああ、いま、わたし、わんこになる快感と幸福と同時に、那智さんの満足になっている喜びを全身で味わえている。
今日のわんこは、いままでの中では状況としては厳しいほうではなかっただろう。
(だってね、コンビニや百貨店の正面玄関に比べたらね^^;)
だから、那智さんも『可愛がる』気持ちをゆったり味わえたからこその目だったのだと思う。
それでもあんな視線に出会ってしまったら、もうわんこは幸せ以外の何者でもなくなってしまった。
首筋を撫でられる。
幸福にうっとりしそうになると。
「足が近すぎるね」
緊張して体を縮めているとダメなんだ。
手のひらとひざを離して、ちゃんと四つん這いにならないとダメなの。
うう、慈愛に見てても甘くない那智さん^^;
じりじりとひざを後ろに下げる。
必然的にお尻の位置も上がる。
怖い。
だけど太ももに当たる大きな違和感がわたしを撫でる。
幸せ。
ちゃんとしたわんこ。
「そう、でいきたね。うん、かわいい、かわいい^^」
那智さんの声はさっきの満足の目と同じ色を帯びた声だ。
その言葉を聞きながら足に頭を擦り付け首筋の愛撫と太ももにある大きな違和感の尻尾に身を任せて目を閉じる。
僅かに残る理性が後ろの男性が不審に思いませんようにと願うけれど、それもいつしか那智さんに預けてしまっていた。
うれしくて写真撮ってもらっちゃいました*^^*
この後、尻尾をつけてホテルまで。
気づく人は気づくでしょうし、だけど『?』だと思うくらいだろうけど。
でも、歩くたびにスカートから覗く尻尾がぴょんこぴょんこ跳ねるのだ。
もう恥ずかしくて恥ずかしくて、たまらない。
那智さんの腕にしがみついて、尻尾が跳ねるようにわたしの気持ちも跳ねる。
どう跳ねる?
うん、恥ずかしくてたまらないけど、うれしくてうれしくてたまらないのだ。
尻尾をつけている自分が好き。
きっと那智さんも喜んでくれているはず。
歪んだ自己愛と那智さんのものと感じられる従属感がうれしいし、感じる。
百貨店に入りフロアを横切る。
ブランドのショップのガラスに映るわたしのスカートからは尻尾。
恥ずかしくて一刻も早くホテルに入りたいのに、ずっと見ていたいという願う自分もいる。
正面玄関と反対側の出口。
ブランドのショップが途切れたところで、もう一度『じゃ、ここで、わんこ』。
向かい側にはまだショップがあるよぉ。
店員さんもいますよぉ。
拒否権なし。
ここでも那智さんの好みの四つん這い。
頭隠して尻隠さず、頭だけ那智さんにくっつけてお尻は店内に向けて。
強制的に盲目。
次は外に出て、ベンチ。
いつもここには誰かしら腰掛けているのだけど、このときはいなかった。
昼間の明るい時間、普通に通行人のいる歩道でベンチに腰掛ける那智さんの足の間に割居るように四つん這い。
立ち止まって携帯でおしゃべりしている女性の声のトーンが気になる。
どうか、気づきませんように。
「あのカップルが通り過ぎたらおしまいね」
カップルが歩いているのか。
ごめんなさいと思いながら、どんどん自分の羞恥や快楽だけの世界になる。
ずっと那智さんの足に顔を埋めていた。
さっきの和食屋さんのいとしいものを包むような視線よりも、人が多いぶん緊張しているだろうから厳しい表情になっているはずだ。
見ることはできないけど、想像はできる。
だけど、きっと、目の奥に,満足感をたたえてくれていると思う。
だって、わたしは那智さんの足元で。
周りが気になり過ぎて恥ずかし過ぎて、何も考えられなくなる、この内と外の乖離。
那智さんの手のひらだけがわたしの生を実感できるような快感。
こんなふうになっていたのだもの。
残暑の日差しは厳しくて焼けたアスファルトが手のひらを熱くしていたけど、それを実感するのは立ち上がった後だった。
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