迷子の話、再び。
独特な幸福感
ある朝のこと。
那智さんからのメールを待ちながら、コーヒーを飲んであれこれ考えていたら、ふと旅行の時のことを思い出しました。
山の上のホテル。
朝日に照らされた雲海を見ようと早起きをした。
昨晩「あんなこと」や「こんなこと」をしていたから、体を休めたい気持ちは山々でしたが。
時間がもったいない。
少しでも多くのものを那智さんと見たい。
眠い目をこすって、早起きした。
窓に広がる景色は、息を飲むほど美しい。
山々は頭だけ覗かせ、眼下には雲の海だ。
朝日に照らされた雲の海は、薄紫と淡い桃色とオレンジ色、この世の美しい色を集め、それをこれ以上ないほどに完璧な配分で配置したような美しさを見せてくれる。
それが刻々と変化していくさまは、神々しいほどだ。
思わず、手を合わせたくなる。
思い出したのは、そのあとのワンシーン。
窓ガラス越しに見ているだけでは飽きたらず、私たちは急いで着替えて外に出た。
片道20分くらいの所に、見晴らしの良いスポットがある(私は知らなかったけど、山歩きや写真愛好家には知られているみたい)。
そこへ早朝のお散歩に出かけた。
正確には、思い出したのはそこからホテルに向かう帰り道のワンシーン。
舗装されていない山道を歩くのは、思った以上に重労働(しかも私は運動不足)。
那智さんは少し前を歩いている。
山道を歩いたことのある那智さんは、慣れた感じで地面をしっかりと捉えるように、静かに歩く。
慣れない私は、幸せも相まってヒョコヒョコ歩く。
風の音、地面を踏みしめる音、衣擦れの音。
それ以外の音はなにもない、静寂の世界。
話かけても、離れているし歩くペースを崩さないあなたは大してお返事もしてくれない。
でも、なんだか幸せで、でも、ほんの少し淋しくて、歌を口ずさむ。
大好きなユーミン。
「私はあなたの後ろにいます。歌を歌ってしまうくらい幸せな気分です。どうか、忘れないでね。」
あの時の幸福感を思い出したのでした。
那智さんについて行けばいいという安心感。
あの背中を見て、離れないでついて行けばいい。
私はもう迷子じゃない。
この幸福感を味わう時、同時に切なさもわいてくる。
背中を見ているだけで、ばかみたい、泣きそうになる。
これは、ひとつは、絶対に失いたくないものと知ってしまうと、幸福のおまけのようについてくる「失ったときに感じる喪失感の想像」。
もうひとつは、迷子だった私を思い出してなぐさめてあげるの、その子の涙。
甘い切なさです。
お花見のときも同じことを思いました。
どうやら那智さんの背中には、私を幸福にするパワーがあるのようです、きっと。
ある朝のこと。
那智さんからのメールを待ちながら、コーヒーを飲んであれこれ考えていたら、ふと旅行の時のことを思い出しました。
山の上のホテル。
朝日に照らされた雲海を見ようと早起きをした。
昨晩「あんなこと」や「こんなこと」をしていたから、体を休めたい気持ちは山々でしたが。
時間がもったいない。
少しでも多くのものを那智さんと見たい。
眠い目をこすって、早起きした。
窓に広がる景色は、息を飲むほど美しい。
山々は頭だけ覗かせ、眼下には雲の海だ。
朝日に照らされた雲の海は、薄紫と淡い桃色とオレンジ色、この世の美しい色を集め、それをこれ以上ないほどに完璧な配分で配置したような美しさを見せてくれる。
それが刻々と変化していくさまは、神々しいほどだ。
思わず、手を合わせたくなる。
思い出したのは、そのあとのワンシーン。
窓ガラス越しに見ているだけでは飽きたらず、私たちは急いで着替えて外に出た。
片道20分くらいの所に、見晴らしの良いスポットがある(私は知らなかったけど、山歩きや写真愛好家には知られているみたい)。
そこへ早朝のお散歩に出かけた。
正確には、思い出したのはそこからホテルに向かう帰り道のワンシーン。
舗装されていない山道を歩くのは、思った以上に重労働(しかも私は運動不足)。
那智さんは少し前を歩いている。
山道を歩いたことのある那智さんは、慣れた感じで地面をしっかりと捉えるように、静かに歩く。
慣れない私は、幸せも相まってヒョコヒョコ歩く。
風の音、地面を踏みしめる音、衣擦れの音。
それ以外の音はなにもない、静寂の世界。
話かけても、離れているし歩くペースを崩さないあなたは大してお返事もしてくれない。
でも、なんだか幸せで、でも、ほんの少し淋しくて、歌を口ずさむ。
大好きなユーミン。
「私はあなたの後ろにいます。歌を歌ってしまうくらい幸せな気分です。どうか、忘れないでね。」
あの時の幸福感を思い出したのでした。
那智さんについて行けばいいという安心感。
あの背中を見て、離れないでついて行けばいい。
私はもう迷子じゃない。
この幸福感を味わう時、同時に切なさもわいてくる。
背中を見ているだけで、ばかみたい、泣きそうになる。
これは、ひとつは、絶対に失いたくないものと知ってしまうと、幸福のおまけのようについてくる「失ったときに感じる喪失感の想像」。
もうひとつは、迷子だった私を思い出してなぐさめてあげるの、その子の涙。
甘い切なさです。
お花見のときも同じことを思いました。
どうやら那智さんの背中には、私を幸福にするパワーがあるのようです、きっと。