みっともない私1
非日常的な日常
この日は「縄とわんこセット」を持参するリクエストだった(道具はなんとなく半分ずつ持っているので)のだけど、諸事情で持って行くことができなかった。
家を出る時にそのことは伝えてあるから、那智さんもそのつもりでしょう。
残念だな〜ひさしぶりに「わんこ」になれるはずだったのに。
わんこになるのは、いろんな自分を許せてしまえるとても便利なアイテム。
だから、わんこは好きなんだ。
でも、仕方がない今日は私の方の事情でダメだったのだから、また今度那智さんがその気になるのを待とう。
待ち合わせの場所で待つ。
少し遅刻するかもとメールがあったから、予定の時間を2、3分過ぎたくらいで辺りを気にし始める。
この前のデートの時には背後からお尻を触られて「きゃあ」となってしまったから、今日は警戒しなくては。
那智さんはいたずらっ子のように、待っている私を驚かすから気を抜けない。
それでも、時々ふっと警戒するのを忘れてしまって、前回のように驚かされてしまうのだ。
また私がそういう時に、そこまでしなくてもってくらいの大きなリアクションをしてしまうから、那智さんも楽しくて続けるのでしょうけど、こればかりは慣れないので、警戒するしかない。
本当に、毎度毎度ヒヤヒヤしながら待っているのだ。
しばらくキョロキョロしながら辺りを伺っていたら、数メートル離れた喫煙所で那智さんがこちらを見ながらタバコを吸っている。
一瞬固まって、目だけ大きく見開いて、驚きを表す。
「一体、いつからそこにいたのですか?」
「どうして、声をかけてくれなかったの?」
とにかくささっと近づいて、質問したい気持ちを抑えてまずは「おはようございます」。
どうか、キョロキョロしている私の姿が不細工に映っていませんように。
ほんと、悪趣味な人。
そんなふうに、那智さんは私を驚かしたりするのが大好き、まるでいたずらっこ。
待ち合わせの場所から、いつものホテルに歩き始めたら、まるで今日のお天気の話題のようにこんなことを言い出して、私の目を点にさせる。
「今日は、あの坂をジーンズを脱いで歩くんだよ。」
うわあ、本当に?
いくら驚かすのが好きだからって、いくらなんでもいきなり凄いことを。
少し前のデートの時、私は「T字帯」を着けてくるように言われた。
以前、那智さんと知り合って半年過ぎた頃に、私は子宮口に「筋腫の一種」といわれるでき物(結局なんだかわからずじまい)ができて、手術して取ったのだ。
その時の入院の時に使った「T字帯」の残り。
まあ、ふんどしみたいなものね。(ああ、恥ずかしい)
私たちの間では「ふんどし」と呼ばれているのだけど、すごい久々の登場。
ホテルで遊ばれて、最後の方に「本当は、ホテルまでのあの坂をスカートを脱がせてふんどしで歩かせようと思っていたんだ、だけど、思ったより人が多かったから、やめた。今度しようね。」と言われたのだ。
その時は、その姿を想像して、いくら那智さんでもそうは言っても、なかなか実行できるもんじゃないだろうと、まだ、想像の域を出ていなかったことだった。
私の認識が甘かった、那智さんは「やる」と言ったら必ずやる人。
タイミングやモチベーションが合えば、やる、数日後でも数年でも。
私たちがよく利用するホテルは、待ち合わせ場所から歩いて7、8分の所にある。
車や人通りのある道路から、右に曲がって緩やかな坂を上って、50Mほどでホテルの入り口。
そのあたりは、ホテルが多い場所だから、曲がってからの人通りはそれほど多くはない、それでも、普通の道路、ビルの非常階段とか、エレベーターの中ではなく、一般道路。
角を曲がるまでは、すぐコンビニや飲食店もあって、本当に普通の道路。
その角を曲がったところ、白昼堂々私を下着姿にしようとしている。
「あの坂を、ジーンズを脱いで歩くんだよ。」
「え?」と言ったっきり、言葉が出ない。
那智さんの目を見て、驚きの表情を浮かべながら、ただただ首を横に振る。
もう、ぶんぶんと振る。
あまりの唐突で大胆な提案に、私の心はジェットコースターに乗っているみたいだ。
その角までの数分間、私の頭は真っ白になってしまいそうなのを必死に引き戻し、なんとか回避できないものか、回らない頭を回転させてみる。
今日はジーンスに、コート。
このコートは、まっすぐ立って、お尻が少し見えるくらいの長さだ。
ジーンズを脱げば、明らかに下着だけとわかってしまう。
なぜ、ロングコートを着てこなかったのだろう、なぜ「わんこ」を持ってこなかたのだろう(きっとわんこがあったら、この展開にはならなかったはず)、後悔先に立たず。
「ダメ」も「無理」も「いや」もどれも言ってはいけない、勢いで言ってしまったとしてもそれを発した時点で確実に実行が決まってしまう。
一生懸命画策するけど、ダメ、黙って首を振り、おとなしくうつむくしかなす術がない。
確かに「露出に憧れている」とは言ったけど、一般道路を下着を見せて歩くなんて考えもしなかったし、やっぱり妄想の中のお話。
まさか、本当にそんなことになるとは。
ああ、どうしよう、那智さんは絶対にする、このままおとなしくしていれば、万が一気が変わるかもしれないけど、確率は低いだろう。(おとなしいとつまらないから、もしくは、哀れんで)
それでも、まだ信じられない。
私は、本当に下着だけになるの?
パンツだけで、街を歩くの?
コートを着ているから、全部見えるわけではないけど、それでも本当にそんなことが、できてしまうの?
那智さんも私も。
それを、避けたい、状況が悪化しないようにしたい、でも、那智さんがしよと思ってくれることは嬉しいし幸せ、それが酷ければ酷いほど「那智さんのもの」って思えるから、嬉しい。
もしかしたら、私は、この酷いことを取り下げられたら、寂しいと思ってしまうかもしれない。
だからといって、わざと大騒ぎするほど、望んでいるわけでもない。
私は、私がどうしたいのか、わからなくて、なんの手だても打てないまま、あの坂に一歩一歩確実に近づいていた。
この日は「縄とわんこセット」を持参するリクエストだった(道具はなんとなく半分ずつ持っているので)のだけど、諸事情で持って行くことができなかった。
家を出る時にそのことは伝えてあるから、那智さんもそのつもりでしょう。
残念だな〜ひさしぶりに「わんこ」になれるはずだったのに。
わんこになるのは、いろんな自分を許せてしまえるとても便利なアイテム。
だから、わんこは好きなんだ。
でも、仕方がない今日は私の方の事情でダメだったのだから、また今度那智さんがその気になるのを待とう。
待ち合わせの場所で待つ。
少し遅刻するかもとメールがあったから、予定の時間を2、3分過ぎたくらいで辺りを気にし始める。
この前のデートの時には背後からお尻を触られて「きゃあ」となってしまったから、今日は警戒しなくては。
那智さんはいたずらっ子のように、待っている私を驚かすから気を抜けない。
それでも、時々ふっと警戒するのを忘れてしまって、前回のように驚かされてしまうのだ。
また私がそういう時に、そこまでしなくてもってくらいの大きなリアクションをしてしまうから、那智さんも楽しくて続けるのでしょうけど、こればかりは慣れないので、警戒するしかない。
本当に、毎度毎度ヒヤヒヤしながら待っているのだ。
しばらくキョロキョロしながら辺りを伺っていたら、数メートル離れた喫煙所で那智さんがこちらを見ながらタバコを吸っている。
一瞬固まって、目だけ大きく見開いて、驚きを表す。
「一体、いつからそこにいたのですか?」
「どうして、声をかけてくれなかったの?」
とにかくささっと近づいて、質問したい気持ちを抑えてまずは「おはようございます」。
どうか、キョロキョロしている私の姿が不細工に映っていませんように。
ほんと、悪趣味な人。
そんなふうに、那智さんは私を驚かしたりするのが大好き、まるでいたずらっこ。
待ち合わせの場所から、いつものホテルに歩き始めたら、まるで今日のお天気の話題のようにこんなことを言い出して、私の目を点にさせる。
「今日は、あの坂をジーンズを脱いで歩くんだよ。」
うわあ、本当に?
いくら驚かすのが好きだからって、いくらなんでもいきなり凄いことを。
少し前のデートの時、私は「T字帯」を着けてくるように言われた。
以前、那智さんと知り合って半年過ぎた頃に、私は子宮口に「筋腫の一種」といわれるでき物(結局なんだかわからずじまい)ができて、手術して取ったのだ。
その時の入院の時に使った「T字帯」の残り。
まあ、ふんどしみたいなものね。(ああ、恥ずかしい)
私たちの間では「ふんどし」と呼ばれているのだけど、すごい久々の登場。
ホテルで遊ばれて、最後の方に「本当は、ホテルまでのあの坂をスカートを脱がせてふんどしで歩かせようと思っていたんだ、だけど、思ったより人が多かったから、やめた。今度しようね。」と言われたのだ。
その時は、その姿を想像して、いくら那智さんでもそうは言っても、なかなか実行できるもんじゃないだろうと、まだ、想像の域を出ていなかったことだった。
私の認識が甘かった、那智さんは「やる」と言ったら必ずやる人。
タイミングやモチベーションが合えば、やる、数日後でも数年でも。
私たちがよく利用するホテルは、待ち合わせ場所から歩いて7、8分の所にある。
車や人通りのある道路から、右に曲がって緩やかな坂を上って、50Mほどでホテルの入り口。
そのあたりは、ホテルが多い場所だから、曲がってからの人通りはそれほど多くはない、それでも、普通の道路、ビルの非常階段とか、エレベーターの中ではなく、一般道路。
角を曲がるまでは、すぐコンビニや飲食店もあって、本当に普通の道路。
その角を曲がったところ、白昼堂々私を下着姿にしようとしている。
「あの坂を、ジーンズを脱いで歩くんだよ。」
「え?」と言ったっきり、言葉が出ない。
那智さんの目を見て、驚きの表情を浮かべながら、ただただ首を横に振る。
もう、ぶんぶんと振る。
あまりの唐突で大胆な提案に、私の心はジェットコースターに乗っているみたいだ。
その角までの数分間、私の頭は真っ白になってしまいそうなのを必死に引き戻し、なんとか回避できないものか、回らない頭を回転させてみる。
今日はジーンスに、コート。
このコートは、まっすぐ立って、お尻が少し見えるくらいの長さだ。
ジーンズを脱げば、明らかに下着だけとわかってしまう。
なぜ、ロングコートを着てこなかったのだろう、なぜ「わんこ」を持ってこなかたのだろう(きっとわんこがあったら、この展開にはならなかったはず)、後悔先に立たず。
「ダメ」も「無理」も「いや」もどれも言ってはいけない、勢いで言ってしまったとしてもそれを発した時点で確実に実行が決まってしまう。
一生懸命画策するけど、ダメ、黙って首を振り、おとなしくうつむくしかなす術がない。
確かに「露出に憧れている」とは言ったけど、一般道路を下着を見せて歩くなんて考えもしなかったし、やっぱり妄想の中のお話。
まさか、本当にそんなことになるとは。
ああ、どうしよう、那智さんは絶対にする、このままおとなしくしていれば、万が一気が変わるかもしれないけど、確率は低いだろう。(おとなしいとつまらないから、もしくは、哀れんで)
それでも、まだ信じられない。
私は、本当に下着だけになるの?
パンツだけで、街を歩くの?
コートを着ているから、全部見えるわけではないけど、それでも本当にそんなことが、できてしまうの?
那智さんも私も。
それを、避けたい、状況が悪化しないようにしたい、でも、那智さんがしよと思ってくれることは嬉しいし幸せ、それが酷ければ酷いほど「那智さんのもの」って思えるから、嬉しい。
もしかしたら、私は、この酷いことを取り下げられたら、寂しいと思ってしまうかもしれない。
だからといって、わざと大騒ぎするほど、望んでいるわけでもない。
私は、私がどうしたいのか、わからなくて、なんの手だても打てないまま、あの坂に一歩一歩確実に近づいていた。