本当に怖いのは?
非日常的な日常
鞭による痛みでは飛べるらしいことは、わかった。
では、怖さとの闘いの先に「飛ぶ」はあるのだろうか。
いまの私の答えは、NOだった。
先週少し体調を崩してしまった。
那智さんとしては、痛いことのその先を覗きたい気持ちはあったようだが、体調がいまひとつで、週末に仕事が詰まっている私に、鞭の雨を降らせることは、さすがに無責任でできないらしい。
そこで、体力をそれほど奪わず、私の心を急降下させるために登場させたのが、針だ。
以前「非日常的な日常」の「恐怖体験」で書いたが、私は一度「乳首に針を貫通」させた経験がある。
恐がりで、耳にピアスの穴さえ開けられない私だ。
その恐怖は、筆舌に尽くせない。(でも、頑張って尽くします)
最近、那智さんは私を梁に括るのがお好みだ。
今日も両手を額の位置くらいで留まるように梁から吊るす。
私のウエストをきつく締めているコルセットのホックを、一番細いところにつけ直す(コルセットに関しては、また別な機会に書かせてくださいませ)、おそらくウエスト50cmくらいになっているだろう。
裸にコルセット姿は那智さんのお気に入りだ。
不自然なほどにくびれたウエストはいびつな人間を作り出している。
この不自然でいびつな感じが、好きなのだそうだ。
裸だから、胸は露になっている。
「今日は、針を刺してあげるね。鞭より疲れないだろ?」
私は、恐怖と諦めで、深い息を吐き、那智さんの行動を見つめる。
「怖いです。」
私にできる精一杯の抵抗、意思表示。
「いや」なんて言おうものなら、更に酷さが増すのはわかっている。
おとなしく恐怖に震えて、なす術無く、させるがままになっているしか私に道はない。
以前付き合っていた看護婦さんの置き土産の注射針を袋から取り出して、淡々と用意している。
二人に言葉はなく、静寂の中すべてが進んでいる。
最後にもう一度、静かに訴える。
「怖いです。」
怖がる私を那智さんは楽しんでくれているだろうか、大騒ぎして怖がるわけではないけど、小さく震える私を見て満足してくれるだろうか。
怖い、だけど、すべてを那智さんに委ねていることは、それはそれで幸せだ。
私の体は、那智さんの好きにできる。
私に決定権はなく、那智さんの意思が私の意思。
この那智さんに同化しているような感覚は、得難い。
はじめに那智さんが乳首にキスをしてくれた。
そこから先は、もう怖くて見ていることができない。
チクッとした痛みが乳首に走る。
恐ろしくて身を固くするが、まだこれは耐えられる。
何度か、位置を定めるようにチクチクと針の先が当たる。
怖い、怖い、いつ来るかわからない、でも、見ることもできない。
自分の乳首に針が刺さっていく様を見ているのは、やはり怖い。
私の体に当てていた那智さんの針を持っていない左手に力が入った、その瞬間、深い痛みが私を襲う。
「いやああああああああ」
痛さと怖さで、声を上げてしまう。
貫通させるには、少し時間がかかるのだ。
鞭のような衝撃的な痛みではない、深い深い痛み、心を抉られるような苦痛だ。
そして、それは瞬時には終わらない。
抉られるような痛みが軽くなった、きっと貫通したんだ。
怖くて見ることができない私は、痛さの具合で状況を計る。
こんどは静かな痛みだ。
大きく静かに息を吐く。
爆弾を抱えているような静かな痛みに、ため息の大きな振動は避けたい。
体が揺れないように静かに息を吐く。
どうか、このまま痛さが増してきませんように、祈るように那智さんを見つめる。
カメラを取り出した那智さんは、私の顔、胸、全身とカメラに収めていく。
ウエストがいびつに細く、乳首に針を貫通させた姿は、グロテスクだろう。
私のファンタジーに「グロテスクな私」というのがあるのは自覚している。
異様な私、異質な私。
コルセットに針姿は、このファンタジーを叶えているようで、恐怖の中に一握りの恍惚の存在を見つけ、ほんの少し微笑む。
腰を下ろし、ゆっくりとコーヒーを飲んで私を鑑賞している那智さんを見下ろしながら、この急降下を私に与えられる唯一の存在畏怖の念。
しかし、私は爆弾を抱えている、徐々に痛みが増し始めた頃、針は抜き取られた。
針の処理を、はじめと同様淡々と行う那智さんの気配を感じ、安堵してはじめて乳首を見てみると、ポツンと小さな血の固まりが、飾りのように着いていた。
あまりにも小さく可愛らしいその赤に、いま味わった恐怖がそぐわなくて、なんだか拍子抜け。
針は怖い、そして、それを楽しむ那智さんも怖い、だけど、それでも濡れる私はどうなのだろうと、訝しく思う。
怖さでは飛べない。
飛べないことで追い詰められるのは、辛い。
でも、本当に怖いのは何だろう。
針?那智さん?それとも、私自身?
この針の楽しさは、怖がる私。
そして、そこから発展して思うのは、他人に見せて、反応を知りたい。
那智さんの、感想だ。
どうか、あまり発展しないように、ここでお話しして「他者に見せた」ことにしてもらいたいなと目論む私。
鞭による痛みでは飛べるらしいことは、わかった。
では、怖さとの闘いの先に「飛ぶ」はあるのだろうか。
いまの私の答えは、NOだった。
先週少し体調を崩してしまった。
那智さんとしては、痛いことのその先を覗きたい気持ちはあったようだが、体調がいまひとつで、週末に仕事が詰まっている私に、鞭の雨を降らせることは、さすがに無責任でできないらしい。
そこで、体力をそれほど奪わず、私の心を急降下させるために登場させたのが、針だ。
以前「非日常的な日常」の「恐怖体験」で書いたが、私は一度「乳首に針を貫通」させた経験がある。
恐がりで、耳にピアスの穴さえ開けられない私だ。
その恐怖は、筆舌に尽くせない。(でも、頑張って尽くします)
最近、那智さんは私を梁に括るのがお好みだ。
今日も両手を額の位置くらいで留まるように梁から吊るす。
私のウエストをきつく締めているコルセットのホックを、一番細いところにつけ直す(コルセットに関しては、また別な機会に書かせてくださいませ)、おそらくウエスト50cmくらいになっているだろう。
裸にコルセット姿は那智さんのお気に入りだ。
不自然なほどにくびれたウエストはいびつな人間を作り出している。
この不自然でいびつな感じが、好きなのだそうだ。
裸だから、胸は露になっている。
「今日は、針を刺してあげるね。鞭より疲れないだろ?」
私は、恐怖と諦めで、深い息を吐き、那智さんの行動を見つめる。
「怖いです。」
私にできる精一杯の抵抗、意思表示。
「いや」なんて言おうものなら、更に酷さが増すのはわかっている。
おとなしく恐怖に震えて、なす術無く、させるがままになっているしか私に道はない。
以前付き合っていた看護婦さんの置き土産の注射針を袋から取り出して、淡々と用意している。
二人に言葉はなく、静寂の中すべてが進んでいる。
最後にもう一度、静かに訴える。
「怖いです。」
怖がる私を那智さんは楽しんでくれているだろうか、大騒ぎして怖がるわけではないけど、小さく震える私を見て満足してくれるだろうか。
怖い、だけど、すべてを那智さんに委ねていることは、それはそれで幸せだ。
私の体は、那智さんの好きにできる。
私に決定権はなく、那智さんの意思が私の意思。
この那智さんに同化しているような感覚は、得難い。
はじめに那智さんが乳首にキスをしてくれた。
そこから先は、もう怖くて見ていることができない。
チクッとした痛みが乳首に走る。
恐ろしくて身を固くするが、まだこれは耐えられる。
何度か、位置を定めるようにチクチクと針の先が当たる。
怖い、怖い、いつ来るかわからない、でも、見ることもできない。
自分の乳首に針が刺さっていく様を見ているのは、やはり怖い。
私の体に当てていた那智さんの針を持っていない左手に力が入った、その瞬間、深い痛みが私を襲う。
「いやああああああああ」
痛さと怖さで、声を上げてしまう。
貫通させるには、少し時間がかかるのだ。
鞭のような衝撃的な痛みではない、深い深い痛み、心を抉られるような苦痛だ。
そして、それは瞬時には終わらない。
抉られるような痛みが軽くなった、きっと貫通したんだ。
怖くて見ることができない私は、痛さの具合で状況を計る。
こんどは静かな痛みだ。
大きく静かに息を吐く。
爆弾を抱えているような静かな痛みに、ため息の大きな振動は避けたい。
体が揺れないように静かに息を吐く。
どうか、このまま痛さが増してきませんように、祈るように那智さんを見つめる。
カメラを取り出した那智さんは、私の顔、胸、全身とカメラに収めていく。
ウエストがいびつに細く、乳首に針を貫通させた姿は、グロテスクだろう。
私のファンタジーに「グロテスクな私」というのがあるのは自覚している。
異様な私、異質な私。
コルセットに針姿は、このファンタジーを叶えているようで、恐怖の中に一握りの恍惚の存在を見つけ、ほんの少し微笑む。
腰を下ろし、ゆっくりとコーヒーを飲んで私を鑑賞している那智さんを見下ろしながら、この急降下を私に与えられる唯一の存在畏怖の念。
しかし、私は爆弾を抱えている、徐々に痛みが増し始めた頃、針は抜き取られた。
針の処理を、はじめと同様淡々と行う那智さんの気配を感じ、安堵してはじめて乳首を見てみると、ポツンと小さな血の固まりが、飾りのように着いていた。
あまりにも小さく可愛らしいその赤に、いま味わった恐怖がそぐわなくて、なんだか拍子抜け。
針は怖い、そして、それを楽しむ那智さんも怖い、だけど、それでも濡れる私はどうなのだろうと、訝しく思う。
怖さでは飛べない。
飛べないことで追い詰められるのは、辛い。
でも、本当に怖いのは何だろう。
針?那智さん?それとも、私自身?
この針の楽しさは、怖がる私。
そして、そこから発展して思うのは、他人に見せて、反応を知りたい。
那智さんの、感想だ。
どうか、あまり発展しないように、ここでお話しして「他者に見せた」ことにしてもらいたいなと目論む私。