那智さん、上書き
非日常的な日常
そのホテルには和室の部屋がある。
その部屋は、那智さんのお気に入りだ。
新しく機能満載でもないし、インテリアがお洒落なスタイリッシュな部屋でもない。
和室に座布団、隣接した部屋にはベッドが置いてある。
新しくないけど、贅沢な広さだ。
その和室には、梁がある。
麻縄で縛られる。
後ろに回した手もその位置で固定され、そこから縄を伸ばして梁にくくりつける。
もう私は不自由だ。
動かせる両足も、半径2、30センチをさまよえるだけだ。
この日は、ずいぶんと可愛がってもらった。
縛られ、柱にもたれ掛かれるように梁にくくりつけられたところで、那智さんがコーヒーを煎れる準備をはじめている。
テーブルには、あの痛いバラ鞭が置いてある。
縛られて、幸福に浸りながらも、那智さんの動向から目が離せない。
コーヒーを飲んでしばらく眺められるのか、それともバラ鞭で打つのが先か。
沸いたお湯(わかります?アルミ?の小さいポットで湧かすやつです)をカップに注いで、コーヒーを煎れている那智さんの動きが、コーヒーを煎れる流れからずれて、こちに向かう。
左手にはさっき湧いたお湯の入った小さなポット、右手にはティースプーン。
まだ、私は何が起こるかわかっていない。
そのお湯をスプーンですくったのを見た瞬間、次に何が起こるか悟って首を横に振って抵抗を試みる。
私に熱湯をかけるのだ。
素早く動いたスプーンから、熱湯が飛び散り私の太股を焼く。
「わあああああ。」
叫ばずにはいられないほど、熱い。
二回、同じようにした後、ポットを持つ自分の手にもお湯をかけた。
試しているんだ。
負けず嫌いで、痛がる表情をほとんど見せない那智さんの腕が、ぶるっと震えた。
ほら、熱いでしょ・・・。
でも、熱いけど、大丈夫と判断が下されてからは、もう容赦ない。
太股、お腹、とかける。
熱い、痛いというほうが近いくらいに熱い。
ロウソクの比ではないほどの熱さだ。
この慣れない苦痛をどう対処したら良いのだろう。
その都度、声を上げて、身をよじって、耐える。
それまで、少し離れてかけていた那智さんが、近寄ってきた。
那智さんが、そばにいることは、それだけで嬉しい、でも、恐い至近距離からの熱湯はもっと強く肌を痛めつけるだろう。
スプーンですくって、それを私の肩の上に持っていく。
ぽたぽたぽたと肩にお湯が垂れる。
多分、脂肪が少ない部分はより熱いはずだ。
肌に落ちた瞬間、垂れていく最中、温度は違えど熱さに震える。
次は、乳首だ。
もう恐くて恐くて仕方がない。
絶対に痛い。
垂らされた瞬間、熱さのあまりビクッと体を引いてしまった。
ダメだ、拒否反応はダメだ。
酷さに拍車がかかるし、垂らしたいという那智さんの意に添いたい。
その後は、体を硬直させて胸を差し出す。
痛みが乳首を刺す。
歯を食いしばり、苦悶の声を上げ、痛みが去るのを待つ。
少し痛みから逃れて、柱に体を預けて力を抜いて前屈みになって、ため息で心を落ち着かせる。
そんな平穏なため息がつけるのは一瞬だ。
今度は背中だ。
肩胛骨のくぼみにお湯が溜まって、熱さの持続だ。
少しずつ流れていく。
また、ため息。
安堵を表すように握った手をゆっくりと開くと、その掌に、また熱湯だ。
掌の硬直と叫び声で満足したのか、少し冷めてしまってるコーヒーを飲んで一息入れる那智さん。
息を整えながら、朦朧とした意識の中を漂う。
それにしても、もたれかかっている柱と太股や膝の裏がビショビショに濡れている。
これは、さっきかけたお湯のせいなのだろうか、多分それだけじゃないことも、わかっている。
コーヒーを飲んだ那智さんが、今度はバラ鞭を手に取った。
今日は、たくさん可愛がってくれるんだ。
バラ鞭の激痛と恐怖はいつまで経っても慣れることはない、それなのに、那智さんが私を見て、矢継ぎ早に可愛がろうと思ってくれることは、この上ない喜びだ。
いま、私は柱を背にして、那智さんの方を向いているから、このままだと正面から鞭を打たれることになる。
立っていてたり、ベッドに伏せていたりと体勢は様々だが、いままではずっと後ろを向いていた。
はじめての経験だ。
いつ飛んでくるかわからない恐怖もあるが、飛んでくる鞭が見えている恐怖は計り知れない、もしかしたら顔に当たるかもしれないという恐さも伴うのだ。
でも、「非日常的な日常」の「知らないこと」でも書いたが、私は鞭で打たれるときには、どんなに痛くても恐くても振り向けない(いまのところは)、だから、その時の那智さんの表情を見ることはないのだ。
恐らく表情を変えずに鞭を打つ那智さんは、痺れるくらいに私の心を鷲掴みにするだろうと思うけど、見ることはない。
正面から打たれたら、その表情を見ることができるのだ。
そう思ったら恐怖だけではなく、僅かな期待を持つことができた。
それでも、飛んでくる鞭の勢いは恐い。
脇腹に一撃。
はじめてのことだから、もう少し加減してくれるのではないかと思った私が甘かった。
お尻ほどではないが、強い一撃だ。
もう一度お腹、そして太股、定期的なリズムで振り下ろされる。
那智さんの表情を見たい。
見えているはずだ、でも、それが脳みそまで届いていないみたいだ。
見えているはずなのに、もう私の脳みそには、恐怖と苦痛しか伝達されていないようだ。
いや、違う、恐怖と苦痛のその後に、更なる鞭の苦痛を焦がれ、求める懇願が連続して襲って、私をノックアウトさせる。
太股から、徐々に上がってくるから、恐くて顔を背けてしまう。
脳に伝達する以前に、私の視界から那智さんの姿は消えた。
天井か壁を見ながら、体から汗が滴り落ちるのを感じながら、痛みを逃すためか、嬉しいから喜んでいるのか、わからない叫び声を上げている。
打たれたから叫んでいるだけではないようだ、打たれていない間も声を上げ続けている。
でも、もう、それが何の種類の叫び声か、わからなくてもいい。
前から打たれ、後ろを向かされて更に強く打たれ、もう一度前を向き胸を連打されて、感情をぐるぐると振り回されて気が付くと自分に感情があることを忘れてしまっているような、浮遊感。
それだから、もう叫び声の種類なんてどうでもいい。
那智さんが、ベッドに腰掛けて煙草を吸っている。
終わったみたいだ。
息が荒く、汗びっしょりだ、朦朧としながら那智さんを見ている。
煙草を消して、こちらに来てくれる。
今日は、まだ抱きしめてもらってもいないし、キスもしていない。
那智さんに触れたい一心で、歩み寄るけど縄で不自由な私は、もう少しのところでおあずけを食らって、切ない。
わざと、ギリギリのところで立ち止まっている意地悪な那智さん。
ふと一歩、近づいて持っていたライターを私の足の甲に乗せたのだ。
抱擁にライターが邪魔なら、床に置けばいいのに。
不思議に思った瞬間、那智さんが私を抱きしめた。
抱擁よりも強い力で、私の足を踏みつけながら。
ただ、踏まれるのではない、硬いライターを挟んで踏まれる痛さは、骨が折れそうなほど強烈だ。
足の甲というよりも、甲と指の間くらいに置かれていたライターで、このまま骨折してしまうかもしれないと思ってしまうほどだ。
それでも、那智さんの肩に顔をくっつけられて、痛いのに喜んでいる。
痛いから声を上げているけれど、そのうち涙が流れていることに気が付く。
これはどんな種類の涙か、わかる。
嬉しくて泣いているのだ。
たくさん可愛がってもらって、酷いことをされればされるほど那智さんに属している感じが味わえて安心できるから、これはその嬉し泣きだ。
痛くて叫びながら、嬉しくて泣いている。
この「熱湯」は、那智さんには楽しい出来事だったらしい。
まず、ロウソクと違って片づけが簡単♪(使った人ならわかりますよね)
そして、「非日常的な日常」の「not favorite」で書いたように、ロウソクではたいした反応をしなかった私に、「熱さで参らせる」楽しさがあったのだそうだ。
ブログに書いたから「された」のか、「してもらえた」のか、それは微妙なところです。
それにしても、ずいぶん前のことなのに、よく覚えているな〜と思う(私の誕生日なんて最近覚えたくらいなのに)。
「負けず嫌い」な那智さんに、もうひとつ「執念深い」という新しいプロフィールを足しましょう♪
そのホテルには和室の部屋がある。
その部屋は、那智さんのお気に入りだ。
新しく機能満載でもないし、インテリアがお洒落なスタイリッシュな部屋でもない。
和室に座布団、隣接した部屋にはベッドが置いてある。
新しくないけど、贅沢な広さだ。
その和室には、梁がある。
麻縄で縛られる。
後ろに回した手もその位置で固定され、そこから縄を伸ばして梁にくくりつける。
もう私は不自由だ。
動かせる両足も、半径2、30センチをさまよえるだけだ。
この日は、ずいぶんと可愛がってもらった。
縛られ、柱にもたれ掛かれるように梁にくくりつけられたところで、那智さんがコーヒーを煎れる準備をはじめている。
テーブルには、あの痛いバラ鞭が置いてある。
縛られて、幸福に浸りながらも、那智さんの動向から目が離せない。
コーヒーを飲んでしばらく眺められるのか、それともバラ鞭で打つのが先か。
沸いたお湯(わかります?アルミ?の小さいポットで湧かすやつです)をカップに注いで、コーヒーを煎れている那智さんの動きが、コーヒーを煎れる流れからずれて、こちに向かう。
左手にはさっき湧いたお湯の入った小さなポット、右手にはティースプーン。
まだ、私は何が起こるかわかっていない。
そのお湯をスプーンですくったのを見た瞬間、次に何が起こるか悟って首を横に振って抵抗を試みる。
私に熱湯をかけるのだ。
素早く動いたスプーンから、熱湯が飛び散り私の太股を焼く。
「わあああああ。」
叫ばずにはいられないほど、熱い。
二回、同じようにした後、ポットを持つ自分の手にもお湯をかけた。
試しているんだ。
負けず嫌いで、痛がる表情をほとんど見せない那智さんの腕が、ぶるっと震えた。
ほら、熱いでしょ・・・。
でも、熱いけど、大丈夫と判断が下されてからは、もう容赦ない。
太股、お腹、とかける。
熱い、痛いというほうが近いくらいに熱い。
ロウソクの比ではないほどの熱さだ。
この慣れない苦痛をどう対処したら良いのだろう。
その都度、声を上げて、身をよじって、耐える。
それまで、少し離れてかけていた那智さんが、近寄ってきた。
那智さんが、そばにいることは、それだけで嬉しい、でも、恐い至近距離からの熱湯はもっと強く肌を痛めつけるだろう。
スプーンですくって、それを私の肩の上に持っていく。
ぽたぽたぽたと肩にお湯が垂れる。
多分、脂肪が少ない部分はより熱いはずだ。
肌に落ちた瞬間、垂れていく最中、温度は違えど熱さに震える。
次は、乳首だ。
もう恐くて恐くて仕方がない。
絶対に痛い。
垂らされた瞬間、熱さのあまりビクッと体を引いてしまった。
ダメだ、拒否反応はダメだ。
酷さに拍車がかかるし、垂らしたいという那智さんの意に添いたい。
その後は、体を硬直させて胸を差し出す。
痛みが乳首を刺す。
歯を食いしばり、苦悶の声を上げ、痛みが去るのを待つ。
少し痛みから逃れて、柱に体を預けて力を抜いて前屈みになって、ため息で心を落ち着かせる。
そんな平穏なため息がつけるのは一瞬だ。
今度は背中だ。
肩胛骨のくぼみにお湯が溜まって、熱さの持続だ。
少しずつ流れていく。
また、ため息。
安堵を表すように握った手をゆっくりと開くと、その掌に、また熱湯だ。
掌の硬直と叫び声で満足したのか、少し冷めてしまってるコーヒーを飲んで一息入れる那智さん。
息を整えながら、朦朧とした意識の中を漂う。
それにしても、もたれかかっている柱と太股や膝の裏がビショビショに濡れている。
これは、さっきかけたお湯のせいなのだろうか、多分それだけじゃないことも、わかっている。
コーヒーを飲んだ那智さんが、今度はバラ鞭を手に取った。
今日は、たくさん可愛がってくれるんだ。
バラ鞭の激痛と恐怖はいつまで経っても慣れることはない、それなのに、那智さんが私を見て、矢継ぎ早に可愛がろうと思ってくれることは、この上ない喜びだ。
いま、私は柱を背にして、那智さんの方を向いているから、このままだと正面から鞭を打たれることになる。
立っていてたり、ベッドに伏せていたりと体勢は様々だが、いままではずっと後ろを向いていた。
はじめての経験だ。
いつ飛んでくるかわからない恐怖もあるが、飛んでくる鞭が見えている恐怖は計り知れない、もしかしたら顔に当たるかもしれないという恐さも伴うのだ。
でも、「非日常的な日常」の「知らないこと」でも書いたが、私は鞭で打たれるときには、どんなに痛くても恐くても振り向けない(いまのところは)、だから、その時の那智さんの表情を見ることはないのだ。
恐らく表情を変えずに鞭を打つ那智さんは、痺れるくらいに私の心を鷲掴みにするだろうと思うけど、見ることはない。
正面から打たれたら、その表情を見ることができるのだ。
そう思ったら恐怖だけではなく、僅かな期待を持つことができた。
それでも、飛んでくる鞭の勢いは恐い。
脇腹に一撃。
はじめてのことだから、もう少し加減してくれるのではないかと思った私が甘かった。
お尻ほどではないが、強い一撃だ。
もう一度お腹、そして太股、定期的なリズムで振り下ろされる。
那智さんの表情を見たい。
見えているはずだ、でも、それが脳みそまで届いていないみたいだ。
見えているはずなのに、もう私の脳みそには、恐怖と苦痛しか伝達されていないようだ。
いや、違う、恐怖と苦痛のその後に、更なる鞭の苦痛を焦がれ、求める懇願が連続して襲って、私をノックアウトさせる。
太股から、徐々に上がってくるから、恐くて顔を背けてしまう。
脳に伝達する以前に、私の視界から那智さんの姿は消えた。
天井か壁を見ながら、体から汗が滴り落ちるのを感じながら、痛みを逃すためか、嬉しいから喜んでいるのか、わからない叫び声を上げている。
打たれたから叫んでいるだけではないようだ、打たれていない間も声を上げ続けている。
でも、もう、それが何の種類の叫び声か、わからなくてもいい。
前から打たれ、後ろを向かされて更に強く打たれ、もう一度前を向き胸を連打されて、感情をぐるぐると振り回されて気が付くと自分に感情があることを忘れてしまっているような、浮遊感。
それだから、もう叫び声の種類なんてどうでもいい。
那智さんが、ベッドに腰掛けて煙草を吸っている。
終わったみたいだ。
息が荒く、汗びっしょりだ、朦朧としながら那智さんを見ている。
煙草を消して、こちらに来てくれる。
今日は、まだ抱きしめてもらってもいないし、キスもしていない。
那智さんに触れたい一心で、歩み寄るけど縄で不自由な私は、もう少しのところでおあずけを食らって、切ない。
わざと、ギリギリのところで立ち止まっている意地悪な那智さん。
ふと一歩、近づいて持っていたライターを私の足の甲に乗せたのだ。
抱擁にライターが邪魔なら、床に置けばいいのに。
不思議に思った瞬間、那智さんが私を抱きしめた。
抱擁よりも強い力で、私の足を踏みつけながら。
ただ、踏まれるのではない、硬いライターを挟んで踏まれる痛さは、骨が折れそうなほど強烈だ。
足の甲というよりも、甲と指の間くらいに置かれていたライターで、このまま骨折してしまうかもしれないと思ってしまうほどだ。
それでも、那智さんの肩に顔をくっつけられて、痛いのに喜んでいる。
痛いから声を上げているけれど、そのうち涙が流れていることに気が付く。
これはどんな種類の涙か、わかる。
嬉しくて泣いているのだ。
たくさん可愛がってもらって、酷いことをされればされるほど那智さんに属している感じが味わえて安心できるから、これはその嬉し泣きだ。
痛くて叫びながら、嬉しくて泣いている。
この「熱湯」は、那智さんには楽しい出来事だったらしい。
まず、ロウソクと違って片づけが簡単♪(使った人ならわかりますよね)
そして、「非日常的な日常」の「not favorite」で書いたように、ロウソクではたいした反応をしなかった私に、「熱さで参らせる」楽しさがあったのだそうだ。
ブログに書いたから「された」のか、「してもらえた」のか、それは微妙なところです。
それにしても、ずいぶん前のことなのに、よく覚えているな〜と思う(私の誕生日なんて最近覚えたくらいなのに)。
「負けず嫌い」な那智さんに、もうひとつ「執念深い」という新しいプロフィールを足しましょう♪
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