旅行3
独特な幸福感
旅行のお話もそろそろおしまいにしようかと思います。
最後は「帰り道」。
もっと過激なことをご想像されていたかたがいらっしゃったら、ごめんなさい。
気持ちハートフルにまとめさせていただきました。(充分過激!?そんなことないですよね・・)
本当は「野外露出未遂」や「こたつの上の排泄ショー」など、過激になりそうなこともあるんですが、それは内緒にします(また、いつかって書くと、書くまで那智さんに許してもらえないから「内緒」で♪ちょっと学習)
そのホテルは山の上にあるから、送迎バスに乗らないと帰れない。
チェックアウトを澄ませて、バスの時間までまだ随分ある。
ロビーの横のラウンジが待合室のようになっていて、続々とチェックアウトした人が入ってくる。
お散歩を終えて、私たちもそのラウンジで待つことにする。
この1時間ほどをどう過ごそうか、2人でいる時間が刻々と減っていくのだ。
それをお互いわかっているけど口にしないで、いかにこの時間を楽しくするか、暗黙の了解だ。
残ったウイスキーを飲んでしまおうと、バックから取り出す那智さん。
ラウンジ内にアルコールの匂いが立ちこめる。
午前中から何やっているとまわりに思われはしないか、すぐ人目を気にする私。
勧められて、一回は首を横に振る。
人目と、ウイスキーが苦手なことと、行きのバスで少し車酔いをしてしまった私は帰りも心配。
いろんな理由で首を振るけど、「一緒に飲んだ方が楽しいよ。」と那智さんはまた勧める。
暗黙の了解だ。
私も一緒に楽しむんだ。
那智さんの企画に乗っかって楽しむんだ。
ほんの少し飲んだだけで、もう良い気分。
なんでもないことが、おかしくて楽しくて、くすくす笑う。
やっぱり乗っかって正解。
ホテルを後にするまでの、ともすれば間延びしそうな1時間を、楽しい時間にしてくれた。
それでもまだ、バスの発車時間まで20分くらいはあるから、私は念のため、ホテルの人に酔い止めをもらいにフロントに行ってみる。
すぐには見当たらないようで、親切なスタッフは事務所の中に入って探してくれている。
那智さんが外に出て眺めの良いベンチに腰掛け煙草を吸っているのが見える。
ああ、私も早くあそこに行きたい。
隣に座って、景色をまぶたに焼き付けたい。
「楽しかったですね~。」なんて言いながら、ちょっといちゃいちゃしたい。
でも、なかなかスタッフは戻ってきてくれない。
せっかくの親切を無駄にするわけにはいかないし、私も不安だから、我慢してフロントで待つ。
やっと見つけてくれて、いただいた酔い止めは「顆粒」のものだった。
が~ん。
子供みたいで恥ずかしいのですが、私は粉薬が飲めないのです。
厳しい!!
でも、飲まないわけにはいかない、百歩譲って「顆粒」だから、なんとかなるだろう。
売店に移動して、喫茶コーナーでお水をもらって、悪戦苦闘おえってなりながらもなんとか喉に流し込む。
その売店からは、那智さんの姿が見えない。
急いで外に出ると、もうバスが到着してみんな中に乗り込んでいるところだった。
まだ出発時間まで数分残っているはずなのに!!
よく考えてみれば、出発時間は出発する時間だ。
その前に到着して乗り込む作業時間を考えれば、早く来ることは当然だった。
いちゃいちゃしたかったのです~。
名残惜しむ時間を過ごしたかったのです~。
バカな私。
駆け寄って、那智さんに「遅い」と頭を小突かれて、「お話ししたかったの~。」と半べそで地団駄を踏む30代後半♪
とても残念だけど、こんなことで半べそになる自分に驚き呆れ、幸せになる。
行きと違い、帰りの特急電車は空いていた。
那智さんは面白がって、一番後ろに移動して、そこで私を抱こうとする。
帰りはジーンズにしたからなかなか上手くいかずに、結局諦めて指定席に戻る。
暗黙の了解だ。
この時間を楽しくしよう。
かなり無理に「淋しい」気持ちを押し込めて、私は痛々しいくらい穏やかに笑う。
ふと那智さんの手が私の頭に伸び修さんの太股に頭を乗せる。
白髪を抜くのだ。
他の人は知らないけど、私は多少白髪がある。
加齢だけじゃないと思う。
表面ははそれほど目立たなくてもかき分けるとけっこうあるみたいだ。
黒髪だから、なおのこと気になるようで、時々那智さんは白髪を抜く。
これは、那智さんが私に対して「是が非でも」って状態になる唯一のこと。
お仕事場に遊びに行っても、普段は素っ気ないくらい別れ際はあっさりされるのに、白髪を抜いているときだけは「お願い!!もう少しいて!!」って感じになるのだ。
それはそれは、夢中になってくれる。
私に夢中になってくれることは嬉しいのだが、それが始まると、もうそれ以外なにもなしになってしまってちょっと淋しい。
帰りの電車でそれをはじめたのだ。
「嫌だ、それに夢中になって、この貴重な時間を過ごしたくない」
案の定、全然おしまいになる気配がない。
それでも、髪を触られていることは気持ち良くてうっとりしはじめる。
ここで、気が付いた。
これが那智さんの「暗黙の了解」なんだ。
いま那智さんは指先から、私に幸福を注いでくれているんだ。
そう気付いたら、これはもう幸せ以外の何ものでもない。
会話はなくなった。
私は静かに目を瞑り、電車の揺れと、那智さんの体温に身を任せてこの大切な時を味わい尽くす。
どうか、永遠に下車駅に到着しないでほしい。
このままずっと揺られていたい。
そんな願いは叶うはずもなく、電車は駅に到着する。
別々のホームに向かう。
言葉少なに、でも、一生懸命笑ってさようならをする。
充分幸せだったのだ。
私たちは帰ってやらなきゃいけないことがある。
在来線に乗り換えて、幸い座れてメールを打ち始めると、ここで涙が溢れてくる。
ここは電車の中だ。
必死に堪えるけれど止まらない。
「今頃泣いています。幸せな旅行でした。永遠に電車が止まらなければいいななんて思ってしまいました。」
「りん子のことだけ考えて抜きました。お互い同じ気持ちだね。」
タオルで顔を押さえるけれど、それでも我慢できなくてしゃくり上げて泣いてしまう。
楽しい旅行を台無しにしてはいけない。
でも、一緒にいる時間が長いと離れるのがつらい。
あまり「不倫の悲劇」みたいにしたくないけど、やっぱりちょっとつらい。
きっと那智さんも同じだ。
だけど那智さんはしっかり立っているはずだ。
気持ちを切り替えて、また、明日を迎えよう。
私たちと私たちを取り巻く人々が、明日も良い日にを迎えられますように、祈りながら。
旅行のお話もそろそろおしまいにしようかと思います。
最後は「帰り道」。
もっと過激なことをご想像されていたかたがいらっしゃったら、ごめんなさい。
気持ちハートフルにまとめさせていただきました。(充分過激!?そんなことないですよね・・)
本当は「野外露出未遂」や「こたつの上の排泄ショー」など、過激になりそうなこともあるんですが、それは内緒にします(また、いつかって書くと、書くまで那智さんに許してもらえないから「内緒」で♪ちょっと学習)
そのホテルは山の上にあるから、送迎バスに乗らないと帰れない。
チェックアウトを澄ませて、バスの時間までまだ随分ある。
ロビーの横のラウンジが待合室のようになっていて、続々とチェックアウトした人が入ってくる。
お散歩を終えて、私たちもそのラウンジで待つことにする。
この1時間ほどをどう過ごそうか、2人でいる時間が刻々と減っていくのだ。
それをお互いわかっているけど口にしないで、いかにこの時間を楽しくするか、暗黙の了解だ。
残ったウイスキーを飲んでしまおうと、バックから取り出す那智さん。
ラウンジ内にアルコールの匂いが立ちこめる。
午前中から何やっているとまわりに思われはしないか、すぐ人目を気にする私。
勧められて、一回は首を横に振る。
人目と、ウイスキーが苦手なことと、行きのバスで少し車酔いをしてしまった私は帰りも心配。
いろんな理由で首を振るけど、「一緒に飲んだ方が楽しいよ。」と那智さんはまた勧める。
暗黙の了解だ。
私も一緒に楽しむんだ。
那智さんの企画に乗っかって楽しむんだ。
ほんの少し飲んだだけで、もう良い気分。
なんでもないことが、おかしくて楽しくて、くすくす笑う。
やっぱり乗っかって正解。
ホテルを後にするまでの、ともすれば間延びしそうな1時間を、楽しい時間にしてくれた。
それでもまだ、バスの発車時間まで20分くらいはあるから、私は念のため、ホテルの人に酔い止めをもらいにフロントに行ってみる。
すぐには見当たらないようで、親切なスタッフは事務所の中に入って探してくれている。
那智さんが外に出て眺めの良いベンチに腰掛け煙草を吸っているのが見える。
ああ、私も早くあそこに行きたい。
隣に座って、景色をまぶたに焼き付けたい。
「楽しかったですね~。」なんて言いながら、ちょっといちゃいちゃしたい。
でも、なかなかスタッフは戻ってきてくれない。
せっかくの親切を無駄にするわけにはいかないし、私も不安だから、我慢してフロントで待つ。
やっと見つけてくれて、いただいた酔い止めは「顆粒」のものだった。
が~ん。
子供みたいで恥ずかしいのですが、私は粉薬が飲めないのです。
厳しい!!
でも、飲まないわけにはいかない、百歩譲って「顆粒」だから、なんとかなるだろう。
売店に移動して、喫茶コーナーでお水をもらって、悪戦苦闘おえってなりながらもなんとか喉に流し込む。
その売店からは、那智さんの姿が見えない。
急いで外に出ると、もうバスが到着してみんな中に乗り込んでいるところだった。
まだ出発時間まで数分残っているはずなのに!!
よく考えてみれば、出発時間は出発する時間だ。
その前に到着して乗り込む作業時間を考えれば、早く来ることは当然だった。
いちゃいちゃしたかったのです~。
名残惜しむ時間を過ごしたかったのです~。
バカな私。
駆け寄って、那智さんに「遅い」と頭を小突かれて、「お話ししたかったの~。」と半べそで地団駄を踏む30代後半♪
とても残念だけど、こんなことで半べそになる自分に驚き呆れ、幸せになる。
行きと違い、帰りの特急電車は空いていた。
那智さんは面白がって、一番後ろに移動して、そこで私を抱こうとする。
帰りはジーンズにしたからなかなか上手くいかずに、結局諦めて指定席に戻る。
暗黙の了解だ。
この時間を楽しくしよう。
かなり無理に「淋しい」気持ちを押し込めて、私は痛々しいくらい穏やかに笑う。
ふと那智さんの手が私の頭に伸び修さんの太股に頭を乗せる。
白髪を抜くのだ。
他の人は知らないけど、私は多少白髪がある。
加齢だけじゃないと思う。
表面ははそれほど目立たなくてもかき分けるとけっこうあるみたいだ。
黒髪だから、なおのこと気になるようで、時々那智さんは白髪を抜く。
これは、那智さんが私に対して「是が非でも」って状態になる唯一のこと。
お仕事場に遊びに行っても、普段は素っ気ないくらい別れ際はあっさりされるのに、白髪を抜いているときだけは「お願い!!もう少しいて!!」って感じになるのだ。
それはそれは、夢中になってくれる。
私に夢中になってくれることは嬉しいのだが、それが始まると、もうそれ以外なにもなしになってしまってちょっと淋しい。
帰りの電車でそれをはじめたのだ。
「嫌だ、それに夢中になって、この貴重な時間を過ごしたくない」
案の定、全然おしまいになる気配がない。
それでも、髪を触られていることは気持ち良くてうっとりしはじめる。
ここで、気が付いた。
これが那智さんの「暗黙の了解」なんだ。
いま那智さんは指先から、私に幸福を注いでくれているんだ。
そう気付いたら、これはもう幸せ以外の何ものでもない。
会話はなくなった。
私は静かに目を瞑り、電車の揺れと、那智さんの体温に身を任せてこの大切な時を味わい尽くす。
どうか、永遠に下車駅に到着しないでほしい。
このままずっと揺られていたい。
そんな願いは叶うはずもなく、電車は駅に到着する。
別々のホームに向かう。
言葉少なに、でも、一生懸命笑ってさようならをする。
充分幸せだったのだ。
私たちは帰ってやらなきゃいけないことがある。
在来線に乗り換えて、幸い座れてメールを打ち始めると、ここで涙が溢れてくる。
ここは電車の中だ。
必死に堪えるけれど止まらない。
「今頃泣いています。幸せな旅行でした。永遠に電車が止まらなければいいななんて思ってしまいました。」
「りん子のことだけ考えて抜きました。お互い同じ気持ちだね。」
タオルで顔を押さえるけれど、それでも我慢できなくてしゃくり上げて泣いてしまう。
楽しい旅行を台無しにしてはいけない。
でも、一緒にいる時間が長いと離れるのがつらい。
あまり「不倫の悲劇」みたいにしたくないけど、やっぱりちょっとつらい。
きっと那智さんも同じだ。
だけど那智さんはしっかり立っているはずだ。
気持ちを切り替えて、また、明日を迎えよう。
私たちと私たちを取り巻く人々が、明日も良い日にを迎えられますように、祈りながら。
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