もってる女
独り言
夏の暑い日。
盆の入りを迎え家族で父の墓参りにいった。
その夜、夢を見た。
父の夢だ。
夢の中で私は布団に入っている。
体は大人なんだけど、状況は子供の頃のようだ。
幼い頃、姉と布団を並べて寝ていた空気。
隣りに姉の姿があるかどうかわからないけど、夢は「あ、お父さんが来る」という気持ちからはじまる。
私と姉はよく寝る前に布団に入って話しをした。
暗い部屋でひそひそ話すのは、なんだかイタズラをしているみたいで楽しかった。
母に「寝なさい!!」と怒鳴られるまで、ひそひそ遊んでいた。
時々、酔っぱらった父も来るのだ。
階段を上がる足音でわかる。
酔っぱらいの父が来ると面倒なんだ。
起きているのがわかるもんなら、電気をつけ「部屋を片付けろ〜」とか「早く寝ろ〜」とか思いつきの説教がはじまる(電気つけて「早く寝ろ」がすでにヘン!!)
怒鳴り散らすとかではないので、怖いのではなくて『面倒』なのだ。
だから、父の足音が聞こえたら「お父さん、来た!!」と2人して狸寝入りをするのだ。
その「お父さん、来た!!」から夢ははじまる。
姉の姿は確認できない。
でもとにかく寝たフリ。
顔を半分布団に埋めてゆっくりウソの寝息を立てる。
父が覗きに来る気配。
お姉ちゃんと面白半分に、でも真剣に父にばれないように寝たふりをする気分が蘇る。
懐かしい。
父が入ってきた『なんだ、寝てるのかぁ』と酔っぱらいの口調。
ふふ、騙されてる。
近寄ってきた。
顔を覗き込んでるのが気配でわかる。
実際もよくそうされて、私か姉のどちらかが吹き出してバレちゃうなんて面白展開になることもあった。
だけど夢の中では絶対にバレてはいけないことのように思えて、とにかく必死に目を閉じていた。
執拗に覗き込む父。
ドキドキが増していく。
そのドキドキといつもと違う父の様子にだんだん怖くなってきてしまう。
それでも必死に息を潜めて狸寝入り。
いきなり暗闇の中、父が足首を掴んできた。
あまりの驚きに目を開けてみると、足元にいる父が苦しそうにしている。
闘病中の父を何倍もデフォルメさせたような苦しそうな表情で、私にすがりついてきているのだ。
まるで、私をどこかに引きずり込もうとしているように。
私は寝たふりなどすっかり忘れて叫ぶ。
「お父さん、やめて!!」
でも舌を巻き込んで喉をふさいでいるみたいで声にならない。
鉛のように重い唇をこじ開け、叫ぶ。
お父さん、やめて!!
「&#○×%!!」
その言葉になっていない声で目が覚めた。
ああ、夢だったんだ。
とても生々しい夢だ。
心臓がどきどきしている。
夢だったことに、ホッと大きくため息をついたとき。
「…ううぅおぉあうぅぅぅ…」
隣室から大きなうめき声。
どきーん!!
落ち着こうとしていた心臓がまた跳ね上がる。
夫だ。
何か夢でも見たのだろうか、うなされている。
とても切羽詰まったうめき声だった。
静かになった。
なんでもない、ただの寝言だったみたい。
それにしても恐ろしげな寝言だったなぁ。
ドキドキと激しく脈打つ心臓を落ち着かせようと、一生懸命冷静に状況を理解しようとする。
気持ちを鎮めて、寝よう。
明日は旅行にいくのだ。
目を閉じ、再び眠りに就こうとしたとき。
カタカタ…カタッ…
なに?
何かの音。
気のせい?
息を殺す。
…カタッ、カタカタカタッ…
ううん、聞こえる、気のせいじゃない。
じゃあ、なんだろ?
廊下の先、パソコンが置いてある部屋のほうから聞こえる気がする。
なに?
キーボード?
夫がまだ起きているの?
それはない、だっていまうめき声がしたもの、彼は隣りの部屋にいる。
息を殺す。
かすかに夫の寝息。
ほら、いる。
カタカタ、カタ…カタ…
夫じゃない。
泥棒?
まさかね。
心霊現象!?
なわけないよね、こんなにハッキリと。
じゃあ、なに!?
泥棒があんな音を当てるはずない。
もしかして、見知らぬ誰かが普通にキーボードを叩いていたりして?
うう、そのあり得ない状態も怖い。
じゃあ、それは大人?
あ、意外と見知らぬ子供がいたら、一番怖いかも?
ああ、ばか、私ったら、とっても怖いくせに、一瞬想像の羽根を広げてしまう^^;
よけいに心臓が激しく動いちゃうじゃないか。
もう自分の耳に『どっきん、どっきん』と聞こえるほど脈を打っている。
どうしよう。
このままじゃ気になって眠れない。
もし万が一、侵入者だとしたら、パソコン部屋に一番近い部屋の子供のことを考える。
そこは迷う間はなかった。
意を決してドアを開け、寝息をたてる夫の横を静かに抜け、廊下に向かう。
カタ…カタ
その間も物音は止まない。
恐る恐るリビングのドアを開ける。
音のするほうに視線を向けると…
カ、カナブンッ…!!
えええーーー!?
カナブン!?
飛び回って廊下や玄関にぶち当たりまくっているのだ。
それで『カタカタ』
どうやら昼間のうちに入り込んでいたらしい。
がく〜〜〜っ、腰砕け。
さっきまでの『どっきん、どっきん』はなんだったのよ〜。
でも泥棒でも幽霊でも、まして見知らぬ子供でもなくてよかった。
ひとり安堵して腰砕けの深夜だった。
そこからはニキータのわたし。(『戦うりん子』)
殺生せず、でも触れないように外に出すために格闘^^;(うう触れません…)
こちらに向かってくるカナブンにあわあわしながら、なんとか逃がしてた。
まったく人騒がせなカナブン。
この話をしたら友だちが「りん子ってもってるよね」と言った。
その子の友人に話を面白おかしくするために、多少のウソも交えて脚色する人がいるらしい。
それを『話を盛る』といっているのだ。
で、私も盛ってるって。
そしたら、横にいたもう1人の友人が。
「違うよ、りん子はわざと盛ってるんじゃなくて、自然と盛っちゃうんだよ」と言った。
そうなのだ。
わざと脚色するつもりはないのだけど、どうも私は何事も大げさに捉え大げさに反応してしまうみたいなのだ。
この夜の話も、このまんま夜中にひとりで右往左往だった。
ブログでもひとつのことをこーんなに長く細かく書いてしまうのは、すっきりした文章が書けないだけじゃなくて、多分いっぱい盛っちゃってるんだ。
ネタには困らないけど、年がら年中盛ってるのもけっこう疲れます^^
ちなみに。
翌日夫にこの話したら、やはり彼も怖い夢を見ていたらしい。
霊感が強いというほどでもないけど夫もわりとシックスセンスが敏感なときがある。
だから、もしかしたらお墓参りで何か感じちゃったのかねなんて話してた。
お誕生日のときといい、今回といい、少なくとも、私は、また父にいいように翻弄されてしまったらしい。
(『見えないものの力』)
ねえ、お父さん、いい加減私のこと引っ張り回さないでくれる?
ということで、皆さんにはいつも『もってる話』にお付き合いいただいております^^
まったく人騒がせなのはカナブンじゃなくて、わたしかもしれない^^;
夏の暑い日。
盆の入りを迎え家族で父の墓参りにいった。
その夜、夢を見た。
父の夢だ。
夢の中で私は布団に入っている。
体は大人なんだけど、状況は子供の頃のようだ。
幼い頃、姉と布団を並べて寝ていた空気。
隣りに姉の姿があるかどうかわからないけど、夢は「あ、お父さんが来る」という気持ちからはじまる。
私と姉はよく寝る前に布団に入って話しをした。
暗い部屋でひそひそ話すのは、なんだかイタズラをしているみたいで楽しかった。
母に「寝なさい!!」と怒鳴られるまで、ひそひそ遊んでいた。
時々、酔っぱらった父も来るのだ。
階段を上がる足音でわかる。
酔っぱらいの父が来ると面倒なんだ。
起きているのがわかるもんなら、電気をつけ「部屋を片付けろ〜」とか「早く寝ろ〜」とか思いつきの説教がはじまる(電気つけて「早く寝ろ」がすでにヘン!!)
怒鳴り散らすとかではないので、怖いのではなくて『面倒』なのだ。
だから、父の足音が聞こえたら「お父さん、来た!!」と2人して狸寝入りをするのだ。
その「お父さん、来た!!」から夢ははじまる。
姉の姿は確認できない。
でもとにかく寝たフリ。
顔を半分布団に埋めてゆっくりウソの寝息を立てる。
父が覗きに来る気配。
お姉ちゃんと面白半分に、でも真剣に父にばれないように寝たふりをする気分が蘇る。
懐かしい。
父が入ってきた『なんだ、寝てるのかぁ』と酔っぱらいの口調。
ふふ、騙されてる。
近寄ってきた。
顔を覗き込んでるのが気配でわかる。
実際もよくそうされて、私か姉のどちらかが吹き出してバレちゃうなんて面白展開になることもあった。
だけど夢の中では絶対にバレてはいけないことのように思えて、とにかく必死に目を閉じていた。
執拗に覗き込む父。
ドキドキが増していく。
そのドキドキといつもと違う父の様子にだんだん怖くなってきてしまう。
それでも必死に息を潜めて狸寝入り。
いきなり暗闇の中、父が足首を掴んできた。
あまりの驚きに目を開けてみると、足元にいる父が苦しそうにしている。
闘病中の父を何倍もデフォルメさせたような苦しそうな表情で、私にすがりついてきているのだ。
まるで、私をどこかに引きずり込もうとしているように。
私は寝たふりなどすっかり忘れて叫ぶ。
「お父さん、やめて!!」
でも舌を巻き込んで喉をふさいでいるみたいで声にならない。
鉛のように重い唇をこじ開け、叫ぶ。
お父さん、やめて!!
「&#○×%!!」
その言葉になっていない声で目が覚めた。
ああ、夢だったんだ。
とても生々しい夢だ。
心臓がどきどきしている。
夢だったことに、ホッと大きくため息をついたとき。
「…ううぅおぉあうぅぅぅ…」
隣室から大きなうめき声。
どきーん!!
落ち着こうとしていた心臓がまた跳ね上がる。
夫だ。
何か夢でも見たのだろうか、うなされている。
とても切羽詰まったうめき声だった。
静かになった。
なんでもない、ただの寝言だったみたい。
それにしても恐ろしげな寝言だったなぁ。
ドキドキと激しく脈打つ心臓を落ち着かせようと、一生懸命冷静に状況を理解しようとする。
気持ちを鎮めて、寝よう。
明日は旅行にいくのだ。
目を閉じ、再び眠りに就こうとしたとき。
カタカタ…カタッ…
なに?
何かの音。
気のせい?
息を殺す。
…カタッ、カタカタカタッ…
ううん、聞こえる、気のせいじゃない。
じゃあ、なんだろ?
廊下の先、パソコンが置いてある部屋のほうから聞こえる気がする。
なに?
キーボード?
夫がまだ起きているの?
それはない、だっていまうめき声がしたもの、彼は隣りの部屋にいる。
息を殺す。
かすかに夫の寝息。
ほら、いる。
カタカタ、カタ…カタ…
夫じゃない。
泥棒?
まさかね。
心霊現象!?
なわけないよね、こんなにハッキリと。
じゃあ、なに!?
泥棒があんな音を当てるはずない。
もしかして、見知らぬ誰かが普通にキーボードを叩いていたりして?
うう、そのあり得ない状態も怖い。
じゃあ、それは大人?
あ、意外と見知らぬ子供がいたら、一番怖いかも?
ああ、ばか、私ったら、とっても怖いくせに、一瞬想像の羽根を広げてしまう^^;
よけいに心臓が激しく動いちゃうじゃないか。
もう自分の耳に『どっきん、どっきん』と聞こえるほど脈を打っている。
どうしよう。
このままじゃ気になって眠れない。
もし万が一、侵入者だとしたら、パソコン部屋に一番近い部屋の子供のことを考える。
そこは迷う間はなかった。
意を決してドアを開け、寝息をたてる夫の横を静かに抜け、廊下に向かう。
カタ…カタ
その間も物音は止まない。
恐る恐るリビングのドアを開ける。
音のするほうに視線を向けると…
カ、カナブンッ…!!
えええーーー!?
カナブン!?
飛び回って廊下や玄関にぶち当たりまくっているのだ。
それで『カタカタ』
どうやら昼間のうちに入り込んでいたらしい。
がく〜〜〜っ、腰砕け。
さっきまでの『どっきん、どっきん』はなんだったのよ〜。
でも泥棒でも幽霊でも、まして見知らぬ子供でもなくてよかった。
ひとり安堵して腰砕けの深夜だった。
そこからはニキータのわたし。(『戦うりん子』)
殺生せず、でも触れないように外に出すために格闘^^;(うう触れません…)
こちらに向かってくるカナブンにあわあわしながら、なんとか逃がしてた。
まったく人騒がせなカナブン。
この話をしたら友だちが「りん子ってもってるよね」と言った。
その子の友人に話を面白おかしくするために、多少のウソも交えて脚色する人がいるらしい。
それを『話を盛る』といっているのだ。
で、私も盛ってるって。
そしたら、横にいたもう1人の友人が。
「違うよ、りん子はわざと盛ってるんじゃなくて、自然と盛っちゃうんだよ」と言った。
そうなのだ。
わざと脚色するつもりはないのだけど、どうも私は何事も大げさに捉え大げさに反応してしまうみたいなのだ。
この夜の話も、このまんま夜中にひとりで右往左往だった。
ブログでもひとつのことをこーんなに長く細かく書いてしまうのは、すっきりした文章が書けないだけじゃなくて、多分いっぱい盛っちゃってるんだ。
ネタには困らないけど、年がら年中盛ってるのもけっこう疲れます^^
ちなみに。
翌日夫にこの話したら、やはり彼も怖い夢を見ていたらしい。
霊感が強いというほどでもないけど夫もわりとシックスセンスが敏感なときがある。
だから、もしかしたらお墓参りで何か感じちゃったのかねなんて話してた。
お誕生日のときといい、今回といい、少なくとも、私は、また父にいいように翻弄されてしまったらしい。
(『見えないものの力』)
ねえ、お父さん、いい加減私のこと引っ張り回さないでくれる?
ということで、皆さんにはいつも『もってる話』にお付き合いいただいております^^
まったく人騒がせなのはカナブンじゃなくて、わたしかもしれない^^;
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