ヤンキー万歳^^
独り言
わたしがお仕事をいただいているのは、この界隈では一応名の通ったホテルや会場が多い。
一流と言われている会場なので、多分費用もそれなりにかかると思う。
それが良いか悪いか別にして、お客様もいい年だったり、名前の知れた企業に勤めていたり、比較的高学歴だったりが多いように感じる。
こういうと『天狗』とかイメージしそうですけど、わたしはお客様運に恵まれているようでいやな思いをしたことが一度もない。(トホホなことは多少あってもね)
皆さん、その日をゲストへの感謝と、満足していただこうという気持ちでいっぱいで、こちらも一緒になって応援したくなる方ばかり。
司会のわたしが『祝福の空気』を作り出しやすくなるような『祝福の種』を持ってらっしゃるのだ。
ただ、概ね、年齢も年収も学歴も高いというお客様が多いという傾向にある。
仕事のほとんどはそれらの会場なんだけど、年に数件郊外のレストランや結婚式場からお仕事をいただくこともある。
そうすると、恐らくそれらが下がる。
まだ20代前半で、学歴もそれほど立派ではなくて、比較的ガテン系の仕事が増える。(えっと、わたしも学歴ないので、それを否定してるんじゃないですよ)
要するに、ヤンキー率が一気に上がるのだ。(でき婚率も上がる^^)
若いながらも家庭を持とうとする気持ちは立派だと思う。
だから、どちらが良い悪いということではないのだけど。
ちょっとトホホなところもあって。
ヤンキーさんは、まず忘れ物が多い(笑)
必要な資料を事前にお願いしていても、よーく忘れる^^;
それに、特に新郎はじっとしててくれない。
しょっちゅうタバコ吸いに行っちゃうし、携帯鳴るし。
しかも、どちらかというと非協力的なのだ。
話はどんどんおちゃらけた方向に行っちゃうし、決めないといけないことでも『はあ、俺どっちでもいいよ〜』とけっこう新婦任せ。
で、新婦は新婦で負けずに『ったく、話聞けよな!!』とすごんだりして。
こちらは、その痴話げんか(じゃれ合い?)から、軌道那智正しては話を進めという感じで、ちょっとトホホなのだ。
それでも、不思議だ。
『祝福の種』は必ず見つけられる。
20歳そこそこのできちゃった婚。
最初は式も披露宴もしないつもりだったけど、新婦の親がやっぱりやれということになって急遽親族だけの少人数披露宴を開くことになったのだ。
この新郎が、全然話を聞かない^^;
最初から全部新婦任せ、勝手に席を立ってタバコ吸いに行くし話を振っても目も合わせない。
多分テレているんだよね、自分が『ご新郎様』なんて立場であることに。
まったくもう、子供っぽいな〜と思うけど、テレている感じが手に取るようにわかるから、まあかわいいもの^^
いろいろ新婦(だけ^^;)と決めて、そろそろ打ち合せもおしまいという頃。
司会者は少しのことでも情報があるほうがいいから、『何かある?』と聞くのだ。
例えば、手作りの物とか、こだわりとか。
この時も『何か手作りの物とかありますか?』と聞いてみたら。
ウェルカムボードと席札を新郎が手作りしたと新婦が答えてくれた。
これはチャンス!!
新郎に話を振ったみた。
絵を描くのが好きなんだそうで、お金がないから自分で作ることにしたのだそう。
席札は、ヤクルトジョアの入れ物に紙粘土で人形を作って、一人一人似顔絵を描くそうだ。
「わあ、それすごいですね!!でも、描くのも飲むのも大変そう(笑)」って言ったら。
「そうなんっすよ〜。ジョア飲みまくり。」ってこの日はじめて、わたしの目を正面から見て笑った。
よし!!『祝福の種』ゲット^^
披露宴は20人ちょっとのとても規模の小さいものだった。
いつもの一流ホテルとは違う、ちょっと古い郊外の結婚式場。
マイクも音響機材も、ぜんぜんレベルが違う。
はじめて会うキャプテンが。
「新婦のお父さん、ずっと無言なんだよ〜」と困り果てた顔をして打ち合せにやってきた。
どうやら、披露宴をしろと言ったものの、このでき婚自体には反対なんだそうだ。
それでも、娘のために結婚式くらいはしろ!!ということだったらしい。
案の定、挙式が済んで、会場に入ってきた新婦父は口を一文字にしてブスッとしてる。
テーブルを横切り自分の席に向かう途中、チラッと席札代わりの人形を見た。
よし、チャンス!!
自分の席にも置いてある、紙粘土でできた決して出来のよいとは言い難い人形を手に取りじっと眺めている。
そそっと近寄りご挨拶をして。
「それは新郎の手作りなんですよ。ほら名前が書いてありますでしょ?皆さんにひとつずつオリジナルです。」
ちょこっと宣伝しておいた。
お開き。
新婦父は涙を堪えながら花束を受け取り。
新郎は泣きながら謝辞。
送賓が済んで、あれほど仏頂面だった新婦父が新郎の肩を抱き、しっかり握手していた。
娘を思う親とヤンキー少年、2人の新婦を大切にしようという気持ちがしっかり握手しているみたいだった。
手作りのアイテムが並ぶ披露宴はめずらしくないけど、紙粘土人形ははじめてだ。
小学生の工作みたいな紙粘土人形、完成度は『う〜ん』という感じだったけど。
でも、少し役に立ったかもね。
また、別のカップル。
こちらは、ふたりとも一生懸命なヤンキーさんたちだったけど、とにかく忘れ物が多い^^;
用意してねと言ったものをことごとく忘れる。
とっても大事なこと(プロフィールの内容とかね)も伝え忘れたりして、『ええ?それ聞いてないよ〜』とかいうのが後からポロポロ。
でも、一番『事前にそれ教えといて〜』というのが抜けていて、ちょっと慌てた。
人前式というの知ってます?
神様の前じゃなくて、参列している人の前で愛を誓うというもの。
式の流れは教会式とほとんど変わりないのだけど、牧師さんの代わりに司会者が進行を勤めるのだ。
披露宴内ですることもあるし、披露宴の前にチャペルですることもある。
誓いの言葉、指輪の交換、証明書に署名、立会人代表にも署名をしてもらう、だいたいそんな流れ。
今回はレストランウェディングで、披露宴前にその中庭で人前式を執り行うことになっていた。
披露宴内であれば皆さん席次表通りに座っているから、事前に立会人代表の方の顔と名前を一致させておけるのだけど、披露宴前だとそれができない。
お母様などが立会人代表であれば問題ないのだけど、今回は友人を代表に選んでいるから、事前にチェックできないのは少し不安だった。(基本的に前に出る方の顔と名前は一致させておきたいのだ)
でも、まあ、それほど大人数ではないし、多分わたしの声に反応してくれるだろうと思いながら人前式がはじまった。
新郎新婦による証明書にサイン。
続いて、本日お越しの皆様の中から立会人代表として新郎側新婦側からお一人ずつ前に来て署名をしていただきます。
新郎側『山田太郎(仮)様』と新婦側『佐藤一郎(仮)様』お願いいたします。
お名前を呼びながら『そうそう、新婦側も男性なんだよな〜、普通は女のお友達に頼みそうなのに』なんて思ってた。
多分、いきなりの指名だったのだろう、一瞬の間を空けてひとりの男性が出てきた(男性っていうか、まだ男の子って感じ^^;)
カジュアルな人前式だから『よ!!太郎!!』なんて言われてる。
えっと、こちらが山田様ね、新郎側。
すぐ動きがないから、もう一度呼んでみる。
「新婦側から佐藤一郎(仮)様、どうぞ前にお越しください^^」
次の瞬間。
一歩踏み出して動き出した人を見て、ちょっと驚いた。
佐藤一郎(仮)さんは、鮮やかなブルーのドレスを身にまとい髪をきちんとセットした女性だったのだ。
いただいた名前が間違えていたのかと、間違えて呼んでしまったのかと、一瞬心臓が凍りそうになった。
でも、ちゃんと見ると、女性じゃない、ニューハーフさんだということがすぐにわかる。
うわぁ、それ言っといてよ〜^^;
知っていたらフルネーム呼ばないよ〜。
わたし自身は、セクシャルマイノリティはまったく問題ないと思ってる。
むしろ頑張れと応援したい気分だ。
だけど、残念なことにまだ『日本の大人の社会』では、特にこういう形式ばった場所では、タブーはたくさんある。
名前を呼び前に出てもらう役割を、敢えて彼女にする必要はないと思うのが、いまの『日本の大人の社会』なのだ。
とても大切な友人で是非代表してサインをしてほしいというなら、せめて事前に知らせておいてくれ〜と、彼女の姿を見てから以降、『山田様、佐藤様ありがとうございました〜』とフルネームで呼ぶのをやめにしながら、忘れっぽい新郎新婦にちょっとトホホになっていた。
新郎は両親がいなくて里親が列席していた。
そのことも臆することなく披露して、その里親は新郎のヤンキー仲間とも仲良しだった。
佐藤一郎(仮)様のテーブルには、新婦の友人女性とそのお嬢ちゃんも一緒にいて女性4、5人で盛り上がっていた。
友人のお子さんの小さなお嬢ちゃんに『あ〜ん』と口を開けてアイスを食べさせてもらってる佐藤一郎(仮)様を見ながら。
あの小さな女の子は『男に生まれてきたけど、本当は女の子だった』という性があることを、きっとわたしたちより自然に受け入れることができるんじゃないかなと、なんだか嬉しくなってしまった。
こんなふうに少しずつでも、多種多様な生き方があるということをお勉強で知るのではなくて、それが当たり前に目の前にあって自然に身に付いていく、そんなふうになっていけばステキだな。
そのほうが、いまの日本の大人の社会よりも生きやすい気がする。
とても忘れっぽいヤンキーカップルだったけど。
もしかしたら、日本の大人の社会の物差しで計らない彼らにとっては『佐藤一郎(仮)さん』は特殊な人じゃなかったのかもしれない。
だから、わざわざ司会者に伝える必要がなかったのだとしたら。
なんだか、ちょっとステキじゃない!?と思ってしまう。
彼女が前に出た時も、披露宴で新婦のお父様にお酌されている時も、とても自然な空気が漂っていた。
一番不自然に慌ててしまたのは、わたしたちスタッフだったかもしれない。(キャプテンも驚いてた^^;)
わたしも『日本の大人の社会』が物差しなんだな〜と思うと、なんだかちょっと恥ずかしかった。
常識は大切だけど、それで生きにくい人がいるなら、そんな枠のない世界が少しずつ広がっていくのも悪くない。
もしかしたら、常識がないと言われている中からそういう価値観が生まれているとしたら。
話聞いてなかったり忘れっぽくても。
子供っぽい紙人形を席札にしてしまっても。
挙式の友人代表をニューハーフにしてしまっても。
実家が幹線道路が近くにあったから土曜日の夜は暴走族の音がうるさくてかなり迷惑だったけど。
でも、
なんだか、ヤンキー万歳だ^^
いろいろな人から『祝福の種』を見つけることが、わたしの仕事の大事なところで、とても幸福なところだと思う。
そういう仕事に就けていることに感謝しながら。
今日も精一杯の祝福を。
心から幸せを祝って、一生懸命働いた後のお酒はきっとおいしいはずだもの^^
わたしがお仕事をいただいているのは、この界隈では一応名の通ったホテルや会場が多い。
一流と言われている会場なので、多分費用もそれなりにかかると思う。
それが良いか悪いか別にして、お客様もいい年だったり、名前の知れた企業に勤めていたり、比較的高学歴だったりが多いように感じる。
こういうと『天狗』とかイメージしそうですけど、わたしはお客様運に恵まれているようでいやな思いをしたことが一度もない。(トホホなことは多少あってもね)
皆さん、その日をゲストへの感謝と、満足していただこうという気持ちでいっぱいで、こちらも一緒になって応援したくなる方ばかり。
司会のわたしが『祝福の空気』を作り出しやすくなるような『祝福の種』を持ってらっしゃるのだ。
ただ、概ね、年齢も年収も学歴も高いというお客様が多いという傾向にある。
仕事のほとんどはそれらの会場なんだけど、年に数件郊外のレストランや結婚式場からお仕事をいただくこともある。
そうすると、恐らくそれらが下がる。
まだ20代前半で、学歴もそれほど立派ではなくて、比較的ガテン系の仕事が増える。(えっと、わたしも学歴ないので、それを否定してるんじゃないですよ)
要するに、ヤンキー率が一気に上がるのだ。(でき婚率も上がる^^)
若いながらも家庭を持とうとする気持ちは立派だと思う。
だから、どちらが良い悪いということではないのだけど。
ちょっとトホホなところもあって。
ヤンキーさんは、まず忘れ物が多い(笑)
必要な資料を事前にお願いしていても、よーく忘れる^^;
それに、特に新郎はじっとしててくれない。
しょっちゅうタバコ吸いに行っちゃうし、携帯鳴るし。
しかも、どちらかというと非協力的なのだ。
話はどんどんおちゃらけた方向に行っちゃうし、決めないといけないことでも『はあ、俺どっちでもいいよ〜』とけっこう新婦任せ。
で、新婦は新婦で負けずに『ったく、話聞けよな!!』とすごんだりして。
こちらは、その痴話げんか(じゃれ合い?)から、軌道那智正しては話を進めという感じで、ちょっとトホホなのだ。
それでも、不思議だ。
『祝福の種』は必ず見つけられる。
20歳そこそこのできちゃった婚。
最初は式も披露宴もしないつもりだったけど、新婦の親がやっぱりやれということになって急遽親族だけの少人数披露宴を開くことになったのだ。
この新郎が、全然話を聞かない^^;
最初から全部新婦任せ、勝手に席を立ってタバコ吸いに行くし話を振っても目も合わせない。
多分テレているんだよね、自分が『ご新郎様』なんて立場であることに。
まったくもう、子供っぽいな〜と思うけど、テレている感じが手に取るようにわかるから、まあかわいいもの^^
いろいろ新婦(だけ^^;)と決めて、そろそろ打ち合せもおしまいという頃。
司会者は少しのことでも情報があるほうがいいから、『何かある?』と聞くのだ。
例えば、手作りの物とか、こだわりとか。
この時も『何か手作りの物とかありますか?』と聞いてみたら。
ウェルカムボードと席札を新郎が手作りしたと新婦が答えてくれた。
これはチャンス!!
新郎に話を振ったみた。
絵を描くのが好きなんだそうで、お金がないから自分で作ることにしたのだそう。
席札は、ヤクルトジョアの入れ物に紙粘土で人形を作って、一人一人似顔絵を描くそうだ。
「わあ、それすごいですね!!でも、描くのも飲むのも大変そう(笑)」って言ったら。
「そうなんっすよ〜。ジョア飲みまくり。」ってこの日はじめて、わたしの目を正面から見て笑った。
よし!!『祝福の種』ゲット^^
披露宴は20人ちょっとのとても規模の小さいものだった。
いつもの一流ホテルとは違う、ちょっと古い郊外の結婚式場。
マイクも音響機材も、ぜんぜんレベルが違う。
はじめて会うキャプテンが。
「新婦のお父さん、ずっと無言なんだよ〜」と困り果てた顔をして打ち合せにやってきた。
どうやら、披露宴をしろと言ったものの、このでき婚自体には反対なんだそうだ。
それでも、娘のために結婚式くらいはしろ!!ということだったらしい。
案の定、挙式が済んで、会場に入ってきた新婦父は口を一文字にしてブスッとしてる。
テーブルを横切り自分の席に向かう途中、チラッと席札代わりの人形を見た。
よし、チャンス!!
自分の席にも置いてある、紙粘土でできた決して出来のよいとは言い難い人形を手に取りじっと眺めている。
そそっと近寄りご挨拶をして。
「それは新郎の手作りなんですよ。ほら名前が書いてありますでしょ?皆さんにひとつずつオリジナルです。」
ちょこっと宣伝しておいた。
お開き。
新婦父は涙を堪えながら花束を受け取り。
新郎は泣きながら謝辞。
送賓が済んで、あれほど仏頂面だった新婦父が新郎の肩を抱き、しっかり握手していた。
娘を思う親とヤンキー少年、2人の新婦を大切にしようという気持ちがしっかり握手しているみたいだった。
手作りのアイテムが並ぶ披露宴はめずらしくないけど、紙粘土人形ははじめてだ。
小学生の工作みたいな紙粘土人形、完成度は『う〜ん』という感じだったけど。
でも、少し役に立ったかもね。
また、別のカップル。
こちらは、ふたりとも一生懸命なヤンキーさんたちだったけど、とにかく忘れ物が多い^^;
用意してねと言ったものをことごとく忘れる。
とっても大事なこと(プロフィールの内容とかね)も伝え忘れたりして、『ええ?それ聞いてないよ〜』とかいうのが後からポロポロ。
でも、一番『事前にそれ教えといて〜』というのが抜けていて、ちょっと慌てた。
人前式というの知ってます?
神様の前じゃなくて、参列している人の前で愛を誓うというもの。
式の流れは教会式とほとんど変わりないのだけど、牧師さんの代わりに司会者が進行を勤めるのだ。
披露宴内ですることもあるし、披露宴の前にチャペルですることもある。
誓いの言葉、指輪の交換、証明書に署名、立会人代表にも署名をしてもらう、だいたいそんな流れ。
今回はレストランウェディングで、披露宴前にその中庭で人前式を執り行うことになっていた。
披露宴内であれば皆さん席次表通りに座っているから、事前に立会人代表の方の顔と名前を一致させておけるのだけど、披露宴前だとそれができない。
お母様などが立会人代表であれば問題ないのだけど、今回は友人を代表に選んでいるから、事前にチェックできないのは少し不安だった。(基本的に前に出る方の顔と名前は一致させておきたいのだ)
でも、まあ、それほど大人数ではないし、多分わたしの声に反応してくれるだろうと思いながら人前式がはじまった。
新郎新婦による証明書にサイン。
続いて、本日お越しの皆様の中から立会人代表として新郎側新婦側からお一人ずつ前に来て署名をしていただきます。
新郎側『山田太郎(仮)様』と新婦側『佐藤一郎(仮)様』お願いいたします。
お名前を呼びながら『そうそう、新婦側も男性なんだよな〜、普通は女のお友達に頼みそうなのに』なんて思ってた。
多分、いきなりの指名だったのだろう、一瞬の間を空けてひとりの男性が出てきた(男性っていうか、まだ男の子って感じ^^;)
カジュアルな人前式だから『よ!!太郎!!』なんて言われてる。
えっと、こちらが山田様ね、新郎側。
すぐ動きがないから、もう一度呼んでみる。
「新婦側から佐藤一郎(仮)様、どうぞ前にお越しください^^」
次の瞬間。
一歩踏み出して動き出した人を見て、ちょっと驚いた。
佐藤一郎(仮)さんは、鮮やかなブルーのドレスを身にまとい髪をきちんとセットした女性だったのだ。
いただいた名前が間違えていたのかと、間違えて呼んでしまったのかと、一瞬心臓が凍りそうになった。
でも、ちゃんと見ると、女性じゃない、ニューハーフさんだということがすぐにわかる。
うわぁ、それ言っといてよ〜^^;
知っていたらフルネーム呼ばないよ〜。
わたし自身は、セクシャルマイノリティはまったく問題ないと思ってる。
むしろ頑張れと応援したい気分だ。
だけど、残念なことにまだ『日本の大人の社会』では、特にこういう形式ばった場所では、タブーはたくさんある。
名前を呼び前に出てもらう役割を、敢えて彼女にする必要はないと思うのが、いまの『日本の大人の社会』なのだ。
とても大切な友人で是非代表してサインをしてほしいというなら、せめて事前に知らせておいてくれ〜と、彼女の姿を見てから以降、『山田様、佐藤様ありがとうございました〜』とフルネームで呼ぶのをやめにしながら、忘れっぽい新郎新婦にちょっとトホホになっていた。
新郎は両親がいなくて里親が列席していた。
そのことも臆することなく披露して、その里親は新郎のヤンキー仲間とも仲良しだった。
佐藤一郎(仮)様のテーブルには、新婦の友人女性とそのお嬢ちゃんも一緒にいて女性4、5人で盛り上がっていた。
友人のお子さんの小さなお嬢ちゃんに『あ〜ん』と口を開けてアイスを食べさせてもらってる佐藤一郎(仮)様を見ながら。
あの小さな女の子は『男に生まれてきたけど、本当は女の子だった』という性があることを、きっとわたしたちより自然に受け入れることができるんじゃないかなと、なんだか嬉しくなってしまった。
こんなふうに少しずつでも、多種多様な生き方があるということをお勉強で知るのではなくて、それが当たり前に目の前にあって自然に身に付いていく、そんなふうになっていけばステキだな。
そのほうが、いまの日本の大人の社会よりも生きやすい気がする。
とても忘れっぽいヤンキーカップルだったけど。
もしかしたら、日本の大人の社会の物差しで計らない彼らにとっては『佐藤一郎(仮)さん』は特殊な人じゃなかったのかもしれない。
だから、わざわざ司会者に伝える必要がなかったのだとしたら。
なんだか、ちょっとステキじゃない!?と思ってしまう。
彼女が前に出た時も、披露宴で新婦のお父様にお酌されている時も、とても自然な空気が漂っていた。
一番不自然に慌ててしまたのは、わたしたちスタッフだったかもしれない。(キャプテンも驚いてた^^;)
わたしも『日本の大人の社会』が物差しなんだな〜と思うと、なんだかちょっと恥ずかしかった。
常識は大切だけど、それで生きにくい人がいるなら、そんな枠のない世界が少しずつ広がっていくのも悪くない。
もしかしたら、常識がないと言われている中からそういう価値観が生まれているとしたら。
話聞いてなかったり忘れっぽくても。
子供っぽい紙人形を席札にしてしまっても。
挙式の友人代表をニューハーフにしてしまっても。
実家が幹線道路が近くにあったから土曜日の夜は暴走族の音がうるさくてかなり迷惑だったけど。
でも、
なんだか、ヤンキー万歳だ^^
いろいろな人から『祝福の種』を見つけることが、わたしの仕事の大事なところで、とても幸福なところだと思う。
そういう仕事に就けていることに感謝しながら。
今日も精一杯の祝福を。
心から幸せを祝って、一生懸命働いた後のお酒はきっとおいしいはずだもの^^