モンスターを抱きしめて
独特な幸福感
待合室のような広い空間。
壁に寄せるように置かれた長椅子にわたしを含めて3人の女性が座っている。
二人ともわたしよりも若い子。
ちょっと派手めな服装、二人で談笑している。
なぜ笑っていられるんだろ?
その疑問が先に湧いて、いま自分の置かれている状況を思い出す。
なぜ笑っていられるんだろ?…これから売られるというのに。
そうだ、わたしはいま、わたしを買う男性をここで待っているんだ。
それを思い出して、一層彼女たちの笑い声が空しく恐ろしいものに感じて、顔を隠すように体を縮める。
男性が近づいて来た。
わたしの隣の女性を指名して、その娘を連れてどこかへ消えた。
もっと怖くなって椅子で膝を抱えてうずくまる。
一人分ぽっかり空いた向こうにいる女性も次に来た男性が連れて行った。
一人残ったわたし。
このまま何も起こらないでほしいと願う。
でも一方で『若い子のほうが人気あるのかな、わたし、いろいろできるのに』なんて思ったりしている^^;
ふと、自分がブラジャーをしていないことに気づく。
抱えた膝に当たる柔らかい乳房。
何か、この事態を『嫌がっていない』象徴に感じられて、自分に驚く。
男性は目の前に現れた。
「ああ、あなたが残っていてよかった。」
わたしより、少し若く見える男性がそう言った。
「さあ、立って。」
この人がわたしを買ったんだ。
いやな感じの人じゃなくて、少しホッとする。
手を引かれて、たくさんある部屋のドアのひとつを開けた。
「先客がいるな、でも、それもいいかも。」
先に部屋に入った男性が、わたしを招き入れる。
コンクリートの打ちっぱなしの部屋には、最初に連れて行かれた子がいた。
一緒のはずの男性の気配はない。
その子は全裸で両足を拘束され天井から吊られていた。
といっても、上半身は床に付いていたので下半身だけ宙に浮いている状態だった。
いやな臭いが充満していた。
彼女の口から髪にかけて吐瀉物が広がっている。
吐いたんだ。
その吐瀉物が喉に詰まったのか、白目を剥いて意識がない。
ちゃんと呼吸できているだろうか。
気になるけど、それにしても吐瀉物の臭いがきつい。
この部屋に長くはいたくない。
「お願いします。部屋を変えてくれませんか。この臭いはつらいです。」
彼女の安否を気にしながらも、わたしは自分のことで精一杯だ。
「わかった。」
部屋を出た。
乳房が揺れる。
この人はわたしが下着を着けていないことを知らないのかな。
わずかに、ごくわずかに残念に思う。
服に当たる乳首が、何かに反応しているみたいだった。
次の部屋へ向かいながら。
さっきの子の様子が気になる。
待っている間に聞こえてきた会話では、ここの『バイト』は大したことないと言っていた。
どうやら中身がわかっていない様子だった。
それで、あの状態。
さぞかし怖かっただろうと、不憫に思う。
もう一人の子はどこに行ったのだろう。
連れて行った男性の様子を思い出して、酷いことになっていなければいいなと思う。
部屋を変えてもらえてよかった。
あの臭いの中じゃないだけでも「まし』だと思わなきゃ。
彼女ほど、酷いことにならないといいな。
人って、最悪を見ると、それより『まし』なだけで、良しとしてしまえるものなんだなぁと自分自身に妙に感心してしまう。
「じゃあ、ここにしよう。」
木製のドアを開けると。
天井がそれほど高くない狭い部屋。
マットレスが床一面に敷かれていて、壁際にはクッションが並んでいる。
さっきの部屋に比べると、ずいぶん穏やかな雰囲気だ。
穏やかじゃないのは。
その狭い部屋に数人の男性がいたことだった。
そして、みんな洋服を着ていないことだった。
「さあ、入って。」
促されるままに部屋に入る。
わたしを買った男性が、座るわたしの背後から手を回し。
「こいつはノーブラなんですよ。ちゃんとわかってますから、みなさん、好きにしてください。」
そういって乳房を愛撫した。
ああ、知っていたんだ。
なんだかとても恥ずかしい。
一人の男性が髪を掴み股間に顔を埋めさせる。
下半身を違う誰かが触り出した。
那智さんにするように。
でも、心は込めないんだ。
でも丁寧に上下させる、早くいかせるために。
「ああ、うまいな。」
当たり前だ。
那智さんを喜ばせてあげられているんだから。
と、不思議な自負。
早くいくよういに。
さっきの子みたいに酷いことにならないように。
さっきの子は明日のわたしかもしれない。
生きて帰れるように。
丁寧に、心は込めず、那智さんを思って一心不乱に口を使った。
だけど、わたしは気づいている。
椅子で待っているときからずっと、心の奥底ではわずかに『ワクワク』したいたこと。
とてもリアルな夢だった。
目が覚めて。
吐瀉物の臭いが生々しく残り、臭いを感じる夢もあるんだな〜と変なところに感心する。
吐瀉物の臭いと一緒に『ワクワク』まで残っている。
他の人もこういう夢を見るものなのだろうか。
この手の『アブノーマルの宝石箱やぁ(@彦摩呂^^)』みたいな夢をみるたび、とても困惑する。
オナニーや普通のセックスをするだけでは、満足できそうにないのがわかるから。
そして、地を這うように心の底で『ワクワク』しているから。
わたしはずっとこの『ワクワク』を持て余している。
那智さんに鎮めてもらっているので、普段は形を潜めているけど。
ときどき持て余してしまう、モンスター。
この夢だって、モンスターだって、他人からしてみたら大したことないかもしれないけれど、わたしには大きな困惑なんだ、だから、ずっと昔からずっと困っていた。
自分の手でこのモンスターを鎮めることは、難しい。
どこから着手いいかもわからないし、とても怖いし、きっとただの傷になるだけだ。
だから、那智さんにお願いする。
夢をそのままなぞるようなことだけしても傷つきそう。
だけど、モンスターが『ワクワク』しちゃってます。
どうか、わたしが傷つかない方法でこいつを鎮めてください。
あなただけの方法で、どうか鎮めてください。
那智さんにしかできない。
父性やら何やらを埋めてもらっているけれど、このモンスターを『よしよし』と鎮めることも那智さんにしかできないこと。
唯一とか絶対とか、自分の心に嘘をつきたくないから、できるだけ使わないようにしている。
だけど、こういうとき、思う。
那智さんがいてくれないと、わたしどうやって生きていけばいいかわからなくて途方に暮れてしまう、って。
待合室のような広い空間。
壁に寄せるように置かれた長椅子にわたしを含めて3人の女性が座っている。
二人ともわたしよりも若い子。
ちょっと派手めな服装、二人で談笑している。
なぜ笑っていられるんだろ?
その疑問が先に湧いて、いま自分の置かれている状況を思い出す。
なぜ笑っていられるんだろ?…これから売られるというのに。
そうだ、わたしはいま、わたしを買う男性をここで待っているんだ。
それを思い出して、一層彼女たちの笑い声が空しく恐ろしいものに感じて、顔を隠すように体を縮める。
男性が近づいて来た。
わたしの隣の女性を指名して、その娘を連れてどこかへ消えた。
もっと怖くなって椅子で膝を抱えてうずくまる。
一人分ぽっかり空いた向こうにいる女性も次に来た男性が連れて行った。
一人残ったわたし。
このまま何も起こらないでほしいと願う。
でも一方で『若い子のほうが人気あるのかな、わたし、いろいろできるのに』なんて思ったりしている^^;
ふと、自分がブラジャーをしていないことに気づく。
抱えた膝に当たる柔らかい乳房。
何か、この事態を『嫌がっていない』象徴に感じられて、自分に驚く。
男性は目の前に現れた。
「ああ、あなたが残っていてよかった。」
わたしより、少し若く見える男性がそう言った。
「さあ、立って。」
この人がわたしを買ったんだ。
いやな感じの人じゃなくて、少しホッとする。
手を引かれて、たくさんある部屋のドアのひとつを開けた。
「先客がいるな、でも、それもいいかも。」
先に部屋に入った男性が、わたしを招き入れる。
コンクリートの打ちっぱなしの部屋には、最初に連れて行かれた子がいた。
一緒のはずの男性の気配はない。
その子は全裸で両足を拘束され天井から吊られていた。
といっても、上半身は床に付いていたので下半身だけ宙に浮いている状態だった。
いやな臭いが充満していた。
彼女の口から髪にかけて吐瀉物が広がっている。
吐いたんだ。
その吐瀉物が喉に詰まったのか、白目を剥いて意識がない。
ちゃんと呼吸できているだろうか。
気になるけど、それにしても吐瀉物の臭いがきつい。
この部屋に長くはいたくない。
「お願いします。部屋を変えてくれませんか。この臭いはつらいです。」
彼女の安否を気にしながらも、わたしは自分のことで精一杯だ。
「わかった。」
部屋を出た。
乳房が揺れる。
この人はわたしが下着を着けていないことを知らないのかな。
わずかに、ごくわずかに残念に思う。
服に当たる乳首が、何かに反応しているみたいだった。
次の部屋へ向かいながら。
さっきの子の様子が気になる。
待っている間に聞こえてきた会話では、ここの『バイト』は大したことないと言っていた。
どうやら中身がわかっていない様子だった。
それで、あの状態。
さぞかし怖かっただろうと、不憫に思う。
もう一人の子はどこに行ったのだろう。
連れて行った男性の様子を思い出して、酷いことになっていなければいいなと思う。
部屋を変えてもらえてよかった。
あの臭いの中じゃないだけでも「まし』だと思わなきゃ。
彼女ほど、酷いことにならないといいな。
人って、最悪を見ると、それより『まし』なだけで、良しとしてしまえるものなんだなぁと自分自身に妙に感心してしまう。
「じゃあ、ここにしよう。」
木製のドアを開けると。
天井がそれほど高くない狭い部屋。
マットレスが床一面に敷かれていて、壁際にはクッションが並んでいる。
さっきの部屋に比べると、ずいぶん穏やかな雰囲気だ。
穏やかじゃないのは。
その狭い部屋に数人の男性がいたことだった。
そして、みんな洋服を着ていないことだった。
「さあ、入って。」
促されるままに部屋に入る。
わたしを買った男性が、座るわたしの背後から手を回し。
「こいつはノーブラなんですよ。ちゃんとわかってますから、みなさん、好きにしてください。」
そういって乳房を愛撫した。
ああ、知っていたんだ。
なんだかとても恥ずかしい。
一人の男性が髪を掴み股間に顔を埋めさせる。
下半身を違う誰かが触り出した。
那智さんにするように。
でも、心は込めないんだ。
でも丁寧に上下させる、早くいかせるために。
「ああ、うまいな。」
当たり前だ。
那智さんを喜ばせてあげられているんだから。
と、不思議な自負。
早くいくよういに。
さっきの子みたいに酷いことにならないように。
さっきの子は明日のわたしかもしれない。
生きて帰れるように。
丁寧に、心は込めず、那智さんを思って一心不乱に口を使った。
だけど、わたしは気づいている。
椅子で待っているときからずっと、心の奥底ではわずかに『ワクワク』したいたこと。
とてもリアルな夢だった。
目が覚めて。
吐瀉物の臭いが生々しく残り、臭いを感じる夢もあるんだな〜と変なところに感心する。
吐瀉物の臭いと一緒に『ワクワク』まで残っている。
他の人もこういう夢を見るものなのだろうか。
この手の『アブノーマルの宝石箱やぁ(@彦摩呂^^)』みたいな夢をみるたび、とても困惑する。
オナニーや普通のセックスをするだけでは、満足できそうにないのがわかるから。
そして、地を這うように心の底で『ワクワク』しているから。
わたしはずっとこの『ワクワク』を持て余している。
那智さんに鎮めてもらっているので、普段は形を潜めているけど。
ときどき持て余してしまう、モンスター。
この夢だって、モンスターだって、他人からしてみたら大したことないかもしれないけれど、わたしには大きな困惑なんだ、だから、ずっと昔からずっと困っていた。
自分の手でこのモンスターを鎮めることは、難しい。
どこから着手いいかもわからないし、とても怖いし、きっとただの傷になるだけだ。
だから、那智さんにお願いする。
夢をそのままなぞるようなことだけしても傷つきそう。
だけど、モンスターが『ワクワク』しちゃってます。
どうか、わたしが傷つかない方法でこいつを鎮めてください。
あなただけの方法で、どうか鎮めてください。
那智さんにしかできない。
父性やら何やらを埋めてもらっているけれど、このモンスターを『よしよし』と鎮めることも那智さんにしかできないこと。
唯一とか絶対とか、自分の心に嘘をつきたくないから、できるだけ使わないようにしている。
だけど、こういうとき、思う。
那智さんがいてくれないと、わたしどうやって生きていけばいいかわからなくて途方に暮れてしまう、って。
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