ささやかな焼き印
独特な幸福感
100円ショップは遊び道具の宝庫。
わたしを叩く靴べらも、乳首を潰す洗濯バサミも、果てはビューラーまで。(ビュ、ビューラー!!なにに使うのでしょうね^^;)
お道具手作り派でもないし、素材のクオリティを追求するわけでもないし、それほどアダルトグッズにも興味もないようで。
ハンズよりも大人のおもちゃ屋さんよりも、100円ショップ。
この日袋から取り出したのは、お線香だった。
暑い夏の日。
ホテルのソファで涼みながら鞄を開けて。
「今日はこれ買ってきた。」
と、お線香の箱を見せられた。
お線香…。
もしかして?
焼く?
うそ!!
いや、きっとそうだよね。
それ以外ないよね?(お盆過ぎてるし…^^;)
うう、どれくらい熱いんだろ…。
耐えられるかな…。
多分、低温ロウソクよりも熱湯よりも熱いよね。
怖いと思いつつも、なぜか黙ってじっとしているわたし。
「熱いかな?」
「熱いと思います。」
火を着ける那智さん。
細い煙が上がり、お香のいい匂いが漂う。
煙を見て、まだじっとしている。
ソファの上で膝を抱えるわたしの右手の甲にお線香を近づけてくる。
ほんとに?
騒げば絶対やる。
喜べば、やらないかもしれない。
でも、喜ぶというのは『うそ』だから、うその反応はできない。
だから、じっと静かにしている。
不思議な気持ちなんだ。
とても怖い。
でも、やめてほしいかというと、そうじゃない。
やめられたら寂しいと思うだろう。
じゃあ、やってほしいのかというと、それほど積極的な感情でもない。
非常に後ろ向きな肯定という感じ。
従わなきゃいけないという従順な気持ちでもない。
那智さんがしてくれることは、だいたい幸せになる。
だから、これもきっと幸せになるはずなんだ。
幸せになるために、ちょっと怖いのを我慢しているようだ。
幸福を感じるために『世の中には根性焼きなんていうのもあるのだからきっと大丈夫』なんて自分を励ましている。
意欲的な我慢という感じ?
どのくらい熱いだろう。
タバコの火というのは経験ないけれど、それよりは熱くないような感じがする。
怖くてしかたがないけれど、なんだか少しワクワクしてしまっている。
那智さんに手を握ってもらいながら奈落の底を覗いているみたい。
「絶対離さないでくださいね!!」とか言いながら、恐る恐る覗いては『ひゃっ』となって那智さんにしがみついているような感じだ。
濃厚な究極のじゃれ合いっこ。
わたしたちは、いつもこんなふうだ。
チクッ!!!!!
熱い!!!!!!
思ったより、ずっとずっと熱かった。
「ぎゃーーーー、那智さん、熱いです。すっごく熱い!!!!」
一瞬だったから耐えられたけど、とても鋭く熱かった。
わたしの手を取り、焼けた痕の様子を見ている。
ポツリと赤い痕。
これで終わりかと思ったら、今度はむき出しの二の腕にお線香を近づけてきた。
怖さって、痛さの度合いがわかる前とわかった後のどちらが大きく感じるのかな。
この時は、後者のほうだった。
さっきは一瞬だったから耐えられたけど、あれが長くなればもっと熱く痛くなるはずだもの。
熱さはわかっても長さがわからない分、怖さが増したように思う。
怖さとは裏腹にどんどん静かになる。
じっとして抱えた膝に顔を埋めてしまった。
静かに、那智さんに任せるだけ。
手を握ってもらってもう一段高いところから暗闇を覗く、体を投げ出すように。
触れる前から熱だけ感じた、もう肌のすぐ近くまで火が来ているんだ。
じゅっ。
『じゅっ』っていった!!
じゅって!!!!
その音に驚いて、がばっと顔を上げた。
悲壮感たっぷりな表情で。
あれ?でも、さっきより熱くない。
二の腕をちらっと見る。
「…あ、産毛の焼ける音でしたね…。」
はあ、びっくり。
あまりに集中しすぎて、産毛の焼ける音まで聞こえてしまったのだ^^;
「今度はそんなに熱くないだろ?」
ぎりぎりの加減で火を操っている那智さんには、わたしの驚き加減に驚いていた。
同じようなぎりぎりな感じで計3回。
1mm間隔に点々とお線香で肌を焼いた。
どうやら那智さんは『熱がらせたい』とも『耐えるりん子』も望んでいないらしかった。
(じゃれ合いの感覚はあったと思うけどね)
実験だったみたい。
その日から痕の残り方の経過を聞かれた。
わたしが『薬指に刺青』という記事を書いたとき。
ずいぶん前から、刺青以外の『残せる痕』を検討していたことを話してくれた。
わたしの薬指にあるホクロのような刺青は、那智さんも同じ場所にあるからよりわたしにとっては価値があると思えている。
だけど、今度何か印を残す場合は、恐らくわたしだけに入れることになると思う。(同じ場所に入れたことは『意味はあるけど、ロマンチック過ぎ』らしいから^^;)
その新しい痕は、ホクロのような無機質(?)な物では日常に埋もれてしまいそうだ。
どうせなら、ひっそりと那智さんの名前でも刻みたい。
わたしの体に痕を残す那智さんのほうが、ずっとずっと慎重に考えてくれているようで、『名前を刻みたい』なんてわたしの口からしか出ていないのだけど、多分同じように考えていろいろ模索してくれているようなのだ。
で、話してくれた。
焼き印という方法も調べたそうなのだけど。
火傷の痕というのは。
細かい痕は潰れてしまうから、小さく複雑な形にすると何を印してあるかわからなくなってしまうらしい。
大きく単純な形(ステファン卿のSとかね^^)にしないとただの火傷の痕になってしまうのだ。
そして、大きく残しても、皮膚は再生していくからきれいに保存されないそうだ。
那智さんはきれいな痕を残したいと思ってくれているので、焼き印という方法は難しいという結論で薬指の刺青以降選択肢からは外してあったのだ。
それで、お線香で焼いたらどうだろうと、実験してみたのだろう。
確かにね、一直線に並んだ3つの点々はかさぶたが剥がれ、薄茶色の小さな痕になって、それからその点がぼやけるように広がり薄い一本の線になったの。
あれから、数ヶ月。
もうほとんど周りの皮膚と見分けがつかないほどになっている。
どちらかというと『火傷』ではなくて『焦げた痕』程度だったんだよね。
焼き印。
O嬢の物語を読んで、恐怖に震えながらもうっとりとして読んだ、焼き印。
なんて甘美な恐怖でしょう。
鉄の焼きゴテは怖すぎるけど。
お線香なら耐えられた!!
それで、那智さんのイニシャルでもうっすらと刻むなんて、弱虫なロマンチストのわたしにはぴったりと思っていたのだけれど。
識別不可能になってしまっては、それは寂しい。
目立たなくてきれいに那智さんの印を残せる方法、何かないかな〜と。
ほとんどわからなくなった二の腕の痕を眺めて思うのでした。
そうそう。
肌色に近い染料で刺青っていうのはどうでしょう!?
…。
でも、それじゃ全然わからない?
う〜ん、痛いだけでわからなきゃ、ただの痛み損な感じするよね。
って、そもそも肌色の染料ってあるの?
そんなことも知らないわたし。
憧れてるとか痛み損とか言いたいこと言っていて、知らないことは知らないまんま^^;
いいだもん。
大事な大事なわたしの体に傷をつけるのだもの。
『どうぞ』以外はぜんぶ那智さんの仕事で全部那智さんに任せるのだ。
こういうふうに言うと、わがままって思われちゃうのかな?世のS男性からは^^;
だから、弱虫でロマンチストで横着なわたしは、二の腕のささやかな焼き印でとりあえず満足しているのでした(笑)
100円ショップは遊び道具の宝庫。
わたしを叩く靴べらも、乳首を潰す洗濯バサミも、果てはビューラーまで。(ビュ、ビューラー!!なにに使うのでしょうね^^;)
お道具手作り派でもないし、素材のクオリティを追求するわけでもないし、それほどアダルトグッズにも興味もないようで。
ハンズよりも大人のおもちゃ屋さんよりも、100円ショップ。
この日袋から取り出したのは、お線香だった。
暑い夏の日。
ホテルのソファで涼みながら鞄を開けて。
「今日はこれ買ってきた。」
と、お線香の箱を見せられた。
お線香…。
もしかして?
焼く?
うそ!!
いや、きっとそうだよね。
それ以外ないよね?(お盆過ぎてるし…^^;)
うう、どれくらい熱いんだろ…。
耐えられるかな…。
多分、低温ロウソクよりも熱湯よりも熱いよね。
怖いと思いつつも、なぜか黙ってじっとしているわたし。
「熱いかな?」
「熱いと思います。」
火を着ける那智さん。
細い煙が上がり、お香のいい匂いが漂う。
煙を見て、まだじっとしている。
ソファの上で膝を抱えるわたしの右手の甲にお線香を近づけてくる。
ほんとに?
騒げば絶対やる。
喜べば、やらないかもしれない。
でも、喜ぶというのは『うそ』だから、うその反応はできない。
だから、じっと静かにしている。
不思議な気持ちなんだ。
とても怖い。
でも、やめてほしいかというと、そうじゃない。
やめられたら寂しいと思うだろう。
じゃあ、やってほしいのかというと、それほど積極的な感情でもない。
非常に後ろ向きな肯定という感じ。
従わなきゃいけないという従順な気持ちでもない。
那智さんがしてくれることは、だいたい幸せになる。
だから、これもきっと幸せになるはずなんだ。
幸せになるために、ちょっと怖いのを我慢しているようだ。
幸福を感じるために『世の中には根性焼きなんていうのもあるのだからきっと大丈夫』なんて自分を励ましている。
意欲的な我慢という感じ?
どのくらい熱いだろう。
タバコの火というのは経験ないけれど、それよりは熱くないような感じがする。
怖くてしかたがないけれど、なんだか少しワクワクしてしまっている。
那智さんに手を握ってもらいながら奈落の底を覗いているみたい。
「絶対離さないでくださいね!!」とか言いながら、恐る恐る覗いては『ひゃっ』となって那智さんにしがみついているような感じだ。
濃厚な究極のじゃれ合いっこ。
わたしたちは、いつもこんなふうだ。
チクッ!!!!!
熱い!!!!!!
思ったより、ずっとずっと熱かった。
「ぎゃーーーー、那智さん、熱いです。すっごく熱い!!!!」
一瞬だったから耐えられたけど、とても鋭く熱かった。
わたしの手を取り、焼けた痕の様子を見ている。
ポツリと赤い痕。
これで終わりかと思ったら、今度はむき出しの二の腕にお線香を近づけてきた。
怖さって、痛さの度合いがわかる前とわかった後のどちらが大きく感じるのかな。
この時は、後者のほうだった。
さっきは一瞬だったから耐えられたけど、あれが長くなればもっと熱く痛くなるはずだもの。
熱さはわかっても長さがわからない分、怖さが増したように思う。
怖さとは裏腹にどんどん静かになる。
じっとして抱えた膝に顔を埋めてしまった。
静かに、那智さんに任せるだけ。
手を握ってもらってもう一段高いところから暗闇を覗く、体を投げ出すように。
触れる前から熱だけ感じた、もう肌のすぐ近くまで火が来ているんだ。
じゅっ。
『じゅっ』っていった!!
じゅって!!!!
その音に驚いて、がばっと顔を上げた。
悲壮感たっぷりな表情で。
あれ?でも、さっきより熱くない。
二の腕をちらっと見る。
「…あ、産毛の焼ける音でしたね…。」
はあ、びっくり。
あまりに集中しすぎて、産毛の焼ける音まで聞こえてしまったのだ^^;
「今度はそんなに熱くないだろ?」
ぎりぎりの加減で火を操っている那智さんには、わたしの驚き加減に驚いていた。
同じようなぎりぎりな感じで計3回。
1mm間隔に点々とお線香で肌を焼いた。
どうやら那智さんは『熱がらせたい』とも『耐えるりん子』も望んでいないらしかった。
(じゃれ合いの感覚はあったと思うけどね)
実験だったみたい。
その日から痕の残り方の経過を聞かれた。
わたしが『薬指に刺青』という記事を書いたとき。
ずいぶん前から、刺青以外の『残せる痕』を検討していたことを話してくれた。
わたしの薬指にあるホクロのような刺青は、那智さんも同じ場所にあるからよりわたしにとっては価値があると思えている。
だけど、今度何か印を残す場合は、恐らくわたしだけに入れることになると思う。(同じ場所に入れたことは『意味はあるけど、ロマンチック過ぎ』らしいから^^;)
その新しい痕は、ホクロのような無機質(?)な物では日常に埋もれてしまいそうだ。
どうせなら、ひっそりと那智さんの名前でも刻みたい。
わたしの体に痕を残す那智さんのほうが、ずっとずっと慎重に考えてくれているようで、『名前を刻みたい』なんてわたしの口からしか出ていないのだけど、多分同じように考えていろいろ模索してくれているようなのだ。
で、話してくれた。
焼き印という方法も調べたそうなのだけど。
火傷の痕というのは。
細かい痕は潰れてしまうから、小さく複雑な形にすると何を印してあるかわからなくなってしまうらしい。
大きく単純な形(ステファン卿のSとかね^^)にしないとただの火傷の痕になってしまうのだ。
そして、大きく残しても、皮膚は再生していくからきれいに保存されないそうだ。
那智さんはきれいな痕を残したいと思ってくれているので、焼き印という方法は難しいという結論で薬指の刺青以降選択肢からは外してあったのだ。
それで、お線香で焼いたらどうだろうと、実験してみたのだろう。
確かにね、一直線に並んだ3つの点々はかさぶたが剥がれ、薄茶色の小さな痕になって、それからその点がぼやけるように広がり薄い一本の線になったの。
あれから、数ヶ月。
もうほとんど周りの皮膚と見分けがつかないほどになっている。
どちらかというと『火傷』ではなくて『焦げた痕』程度だったんだよね。
焼き印。
O嬢の物語を読んで、恐怖に震えながらもうっとりとして読んだ、焼き印。
なんて甘美な恐怖でしょう。
鉄の焼きゴテは怖すぎるけど。
お線香なら耐えられた!!
それで、那智さんのイニシャルでもうっすらと刻むなんて、弱虫なロマンチストのわたしにはぴったりと思っていたのだけれど。
識別不可能になってしまっては、それは寂しい。
目立たなくてきれいに那智さんの印を残せる方法、何かないかな〜と。
ほとんどわからなくなった二の腕の痕を眺めて思うのでした。
そうそう。
肌色に近い染料で刺青っていうのはどうでしょう!?
…。
でも、それじゃ全然わからない?
う〜ん、痛いだけでわからなきゃ、ただの痛み損な感じするよね。
って、そもそも肌色の染料ってあるの?
そんなことも知らないわたし。
憧れてるとか痛み損とか言いたいこと言っていて、知らないことは知らないまんま^^;
いいだもん。
大事な大事なわたしの体に傷をつけるのだもの。
『どうぞ』以外はぜんぶ那智さんの仕事で全部那智さんに任せるのだ。
こういうふうに言うと、わがままって思われちゃうのかな?世のS男性からは^^;
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<「O嬢の物語」の1シーン>
SM関係で
”焼印”(やきいん)
と言えば、「O嬢の物語」の1シーンを思い出す方もいることだろう。
ステファン卿が、Oをアンヌ・マリーに
NO.265【素晴らしい個人的な装飾:焼印】
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