コートの下7
非日常的な日常
絶対にかっこよく歩こう。
そう決意しているわたし。
でも、反面、ほんとうにするの?とどうしても他人事の気持ちも抜けない。
まして、坂の登口に人がいるんだもの。
そこで下着姿になる、どうしても脳の危機回避センサーが他人事にしてしまう。
那智さんが坂を上がりながら振り返り、警備員の様子を見てる。
角度によっては死角ができるか試してるんだ。
でも、それが、ちょうど適度な位置に陣取っていて、無理。
それ以外に坂には人はいない。
「いっか、やっちゃう!?笑」
「那智さん。丸見えです;;。」
そんなこと言いながらちょっとずつ歩き、わたしは密かにホテルまでの距離を縮めてみる(笑)
警備員とホテルの中間あたりまで来た。
だいぶ警備員が小さく見える。
那智さんが立ち止まり、わたしのコートのボタンを外しはじめた。
那智さん、外してる様子警備員さんに見えちゃいます。
向かい合うようにボタンを外す、その姿は警備員さんには見えるはずだ。
カップルがホテルから出て来た。
急いで体を閉じる。
もう、どうしよう、怖い。
かっこよく歩くなんて決意、どこかに行ってしまった。
カップル出現の勢いで、また少し前進。
ホテルまで15mくらい。
「脱ぎな。」
「え?ほんとに?那智さん、脱ぐのですか?」
「うん。」
そういいながら、またちょっと前進。
「ほら。」
辺りを見回す、人はいない。
じりじりと前に進む。
「人がいない、いまのうちだよ。」
那智さんがわたしのバッグを持った。
ホテルまでの距離、5m。
その先のT字路にも人はいない。
もう、那智さんが声をかけているかもわからない。
その先のT字路だけ見据える。
T字路しか見えない。
人、来ないで、このまま。
コートが引っ張られる感じがした。
那智さんが脱がしてくれてるんだ。
いま、人がいない。
いましかない。
わたし、やるんだ。
でも、堂々となんてできない。
5m、歩くなんてできない。
お願い、人、来ないで。
やる、やりたい。
コートを引っ張るのはきっかけだ。
あとは自分で脱いだ(と思う)。
無我夢中。
走ってる。
その間5m、約3秒。
ホテルの門をくぐり、入り口の手前で体を丸めてしゃがみ込む。
体が震えてるのは、寒いからか怖いからか、興奮しているからか。
しゃがんでるわたしに、那智さんがコートを掛けてくれる。
そのコートが優しくて、嬉しい。
ああ、那智さん、那智さん、わたし、やっちゃいました。
コートに腕を通してジタバタするわたしを見て、那智さんが笑う。
「そんな中まで入ったら、ホテルの監視カメラにばっちり映っちゃうよ。」
「えええ?そうなのですか?」
「当たり前じゃん。ホテルの門の手前くらいで止まると思ってたのに、どんどん中に入っちゃうんだもんな。」
案の定、見上げるとカメラがあった。
ああ、あれほど誰も来ないでと祈っていたわたしが、自らカメラに映りにいくなんて。
知らなかったとはいえ、ショック。
「そんなの常識」と那智さんは言うけれど、そういう常識、わたしにはないみたいです。
街中で下着姿で歩く。
かっこよくなんて、全然できない。
何より、ほんの数秒間のこと。
夢中で走って、その間の記憶や感覚は曖昧だ。
でも、いまでも、思い出す。
感覚はないけど、その姿を想像することはできるから。
あああ、なんてことしたのだろうと頭を抱えてしまいたくなるけど、でも、その姿は自己愛を満たし、「もっと」いう恐ろしい欲望が湧いてしまう。
だから、急いで蓋をする。
ときどき取り出しては、ひっそりと舐め。
すぐまた蓋をしてしまっておく。
甘い甘い蜜のよう。
あ、でも、実際、走ってる姿とか純粋にスタイルとか考えたら、自己愛もなにもないのですけどね^^;
絶対にかっこよく歩こう。
そう決意しているわたし。
でも、反面、ほんとうにするの?とどうしても他人事の気持ちも抜けない。
まして、坂の登口に人がいるんだもの。
そこで下着姿になる、どうしても脳の危機回避センサーが他人事にしてしまう。
那智さんが坂を上がりながら振り返り、警備員の様子を見てる。
角度によっては死角ができるか試してるんだ。
でも、それが、ちょうど適度な位置に陣取っていて、無理。
それ以外に坂には人はいない。
「いっか、やっちゃう!?笑」
「那智さん。丸見えです;;。」
そんなこと言いながらちょっとずつ歩き、わたしは密かにホテルまでの距離を縮めてみる(笑)
警備員とホテルの中間あたりまで来た。
だいぶ警備員が小さく見える。
那智さんが立ち止まり、わたしのコートのボタンを外しはじめた。
那智さん、外してる様子警備員さんに見えちゃいます。
向かい合うようにボタンを外す、その姿は警備員さんには見えるはずだ。
カップルがホテルから出て来た。
急いで体を閉じる。
もう、どうしよう、怖い。
かっこよく歩くなんて決意、どこかに行ってしまった。
カップル出現の勢いで、また少し前進。
ホテルまで15mくらい。
「脱ぎな。」
「え?ほんとに?那智さん、脱ぐのですか?」
「うん。」
そういいながら、またちょっと前進。
「ほら。」
辺りを見回す、人はいない。
じりじりと前に進む。
「人がいない、いまのうちだよ。」
那智さんがわたしのバッグを持った。
ホテルまでの距離、5m。
その先のT字路にも人はいない。
もう、那智さんが声をかけているかもわからない。
その先のT字路だけ見据える。
T字路しか見えない。
人、来ないで、このまま。
コートが引っ張られる感じがした。
那智さんが脱がしてくれてるんだ。
いま、人がいない。
いましかない。
わたし、やるんだ。
でも、堂々となんてできない。
5m、歩くなんてできない。
お願い、人、来ないで。
やる、やりたい。
コートを引っ張るのはきっかけだ。
あとは自分で脱いだ(と思う)。
無我夢中。
走ってる。
その間5m、約3秒。
ホテルの門をくぐり、入り口の手前で体を丸めてしゃがみ込む。
体が震えてるのは、寒いからか怖いからか、興奮しているからか。
しゃがんでるわたしに、那智さんがコートを掛けてくれる。
そのコートが優しくて、嬉しい。
ああ、那智さん、那智さん、わたし、やっちゃいました。
コートに腕を通してジタバタするわたしを見て、那智さんが笑う。
「そんな中まで入ったら、ホテルの監視カメラにばっちり映っちゃうよ。」
「えええ?そうなのですか?」
「当たり前じゃん。ホテルの門の手前くらいで止まると思ってたのに、どんどん中に入っちゃうんだもんな。」
案の定、見上げるとカメラがあった。
ああ、あれほど誰も来ないでと祈っていたわたしが、自らカメラに映りにいくなんて。
知らなかったとはいえ、ショック。
「そんなの常識」と那智さんは言うけれど、そういう常識、わたしにはないみたいです。
街中で下着姿で歩く。
かっこよくなんて、全然できない。
何より、ほんの数秒間のこと。
夢中で走って、その間の記憶や感覚は曖昧だ。
でも、いまでも、思い出す。
感覚はないけど、その姿を想像することはできるから。
あああ、なんてことしたのだろうと頭を抱えてしまいたくなるけど、でも、その姿は自己愛を満たし、「もっと」いう恐ろしい欲望が湧いてしまう。
だから、急いで蓋をする。
ときどき取り出しては、ひっそりと舐め。
すぐまた蓋をしてしまっておく。
甘い甘い蜜のよう。
あ、でも、実際、走ってる姿とか純粋にスタイルとか考えたら、自己愛もなにもないのですけどね^^;
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