からめてほしい2
非日常的な日常
外に出た。
右に曲がって、大通りへ向かう。
なるべく歩道の端を歩いて目立たないように。
でも、あまり不自然な態度は余計に目立つから、極力普通に。
降っていた雨は止んでる。
どんよりとした曇り空。
多分、寒いのだろう。
でも、気にならない、そこまで神経が行き届かないという感じ。
コートの裾がめくれないように、でも、なるべく急いで。
大通りまでの50m。
一度振り返る。
ずいぶん後ろにスーツ姿の男性が二人。
ちょっと安心した。
この距離なら、異変に気付かないだろう。
左の角からランチの買い出しだろうか、OLが数人。
立ち止まって、道を譲る。
大通りに出た。
何人かのサラリーマンたちとすれ違う。
でも、前から来る人は、あまり怖くない。
ショウウィンドウに映る自分の姿を見る。
ああ、この下は裸だ。
怖い、でも、嬉しい。
嬉しい、早く那智さんに見せたい。
振り返る。
わっ、いつの間に、ジーンズ姿の男性が2m斜め後ろにいた。
気付いてないよね…。
怖い。
何度も見ることはできないから、ショウウィンドウ越しに様子を見る。
それと同時に、歩く速度をほんの少しだけゆっくりにする。
早く追い越して。
もちろん気付いていないから、さっさと追い越していく。
ああ、よかった。
でも、わたしにはまだ難題が残ってるんだ。
那智さんのお仕事場に向かう角まで、あと20m。
そこにあるド○ールで那智さんと食べるお食事を買わないといけないんだ。
これは命令じゃない。
「どこかでお昼を買ってきて」
「コンビニ弁当とハンバーガーはパス」
「○○の地下で何か買えば?」
那智さんからは、これだけの指示が出てただけ。
時間的に○○の地下で買い物できなかった。
そうなると、二人の好物のド○ールのサンドイッチが適してる。
でも、先に買ってしまうと冷めておいしくない。
故に、裸にコートで買いに行くことを、わたしが選択したのだ。
ランチタイムより少し前で、それほど混雑していないド○ールに入る。
それでも、席は7割方埋まってる。
カウンターに立ち、客席に背中を向ける。
わからないよね?
大丈夫だよね?
不自然のギリギリくらいの角度に体を傾けて、客席にお尻を真正面に向けないようにする。
すぐ後ろのテーブルに商談中(?)の男性二人。
その奥にスーツ姿の女性が一人。
横に数人の女性グループ。
奥の喫煙席に男性一人。
注文をする。
後ろの人の視線が気になる。
話し声が少しでも変化してないか、耳を傾ける。
もし、不自然に会話が途切れたりしたら、何か感じてしまったのかもしれないもの。
怖い。
寒さを感じていなかったはずなのに、体が震えてる。
支払いをするために取り出した財布が震える。
落ち着いて、りん子。
指の震えを抑えながら小銭を出す。
怖い、怖い、怖い。
でも、わたしは、何を恐がっているのだろう。
ちゃんとめくらない限り、お尻は見えないはずだ。
もしかしたら、ちょっと違和感のあるミニくらいにしか見られないはず。
もし、何かに気付いたとしても「変な人?」で済むだろう。
あと20mで那智さんのお仕事場だ。
何を恐がっているの?
怖がっているのは嘘じゃない、でも、怖がってるだけじゃないよね。
わかってる、嬉しいんだよね。
体は震えてる、でも、それを抑えながら背筋を伸ばす。
美しい立ち姿になるように、足の位置を整える。
怖いけど、ほんとにほんとに怖いけど、りん子、見てほしいんだよね。
視線を感じたいんだよね。
チラッと振り返る。
偶然、喫煙席にいる男性を視線が合う。
ああ、那智さん、ここにいてほしい。
那智さんが隣りにいてくれたら、安心するのに。
怖がってるわたしも、見てほしいわたしも、背筋を伸ばすわたしも、容認してもらって安心するのに。
見られたい。
これはわたしのアブノーマルな願望の大きなひとつだ。
裸体を晒す勇気はないけど、コートの下に隠した姿で「見てほしい」という願望を叶える。
でも、これもひとりじゃダメなんだ。
ガーターベルトと同じ、それをさせる存在がないと叶うと感じられない。
だから、早く早く那智さんのそばに行きたい。
いま、いないのだもの、せめてどんなにドキドキして、どんなに震えたか、聞いてほしい。
そして、それで感じてるわたしの姿を見てほしい。
体の震えは止まらないけど少し吹っ切れたようで、出来上がるまで近くの椅子にきちんと腰掛けて待つことにした。
お仕事場に到着した。
わたしは興奮した犬のように「キャンキャン」してしまってる。
でも、ちょっとイレギュラーなことが起こり那智さんは、わたしに集中できずにいる。
コートのままサンドイッチを食べ、ささっとコートの上からわたしを抱き、フェラチオでいき、「じゃあ、洋服着ておいで」…。
抱かれてわたしだって気持ちよかったのに、なんでしょう、この「ぽつん」とした感じ。
那智さんにコートの下の姿を見てほしかったし、興奮して「キャンキャン」言ってるわたしを「よしよし」ってしてほしかった。
そして、「もっと」おかしくなるように油を注いでほしかった。
不完全燃焼。
いまとなっては、ノーマルなことでの快感とアブノーマルなことでの快感の境目がわからなくなってしまってるわたし。
でも、多分、アブノーマルな快感は「ひとり」では得られないみたいだ。
どんなに望んでいた「見せたい」も、ひとりでは快感にならない。
わずかに快感を感じても、そこから大きくはならない。
それをする理由と存在、そして、「もっと」をからめてくれないと、満たされない。
不思議ですね。
同じようなことをしても、満たされかたが全然違う。
人の脳みそは、不思議。
そんなこと考えながら、那智さんのお仕事場のトイレでさっき脱いだ洋服を着る。
ああ、わたし、不完全燃焼。
変な欲求不満になってしまいそう…。
人の脳なんて難しいこと思った次に、欲求不満を危惧するわたし。
ふたつの違う思考を客観視して、苦笑しながらニットのワンピに袖を通す。
外に出た。
右に曲がって、大通りへ向かう。
なるべく歩道の端を歩いて目立たないように。
でも、あまり不自然な態度は余計に目立つから、極力普通に。
降っていた雨は止んでる。
どんよりとした曇り空。
多分、寒いのだろう。
でも、気にならない、そこまで神経が行き届かないという感じ。
コートの裾がめくれないように、でも、なるべく急いで。
大通りまでの50m。
一度振り返る。
ずいぶん後ろにスーツ姿の男性が二人。
ちょっと安心した。
この距離なら、異変に気付かないだろう。
左の角からランチの買い出しだろうか、OLが数人。
立ち止まって、道を譲る。
大通りに出た。
何人かのサラリーマンたちとすれ違う。
でも、前から来る人は、あまり怖くない。
ショウウィンドウに映る自分の姿を見る。
ああ、この下は裸だ。
怖い、でも、嬉しい。
嬉しい、早く那智さんに見せたい。
振り返る。
わっ、いつの間に、ジーンズ姿の男性が2m斜め後ろにいた。
気付いてないよね…。
怖い。
何度も見ることはできないから、ショウウィンドウ越しに様子を見る。
それと同時に、歩く速度をほんの少しだけゆっくりにする。
早く追い越して。
もちろん気付いていないから、さっさと追い越していく。
ああ、よかった。
でも、わたしにはまだ難題が残ってるんだ。
那智さんのお仕事場に向かう角まで、あと20m。
そこにあるド○ールで那智さんと食べるお食事を買わないといけないんだ。
これは命令じゃない。
「どこかでお昼を買ってきて」
「コンビニ弁当とハンバーガーはパス」
「○○の地下で何か買えば?」
那智さんからは、これだけの指示が出てただけ。
時間的に○○の地下で買い物できなかった。
そうなると、二人の好物のド○ールのサンドイッチが適してる。
でも、先に買ってしまうと冷めておいしくない。
故に、裸にコートで買いに行くことを、わたしが選択したのだ。
ランチタイムより少し前で、それほど混雑していないド○ールに入る。
それでも、席は7割方埋まってる。
カウンターに立ち、客席に背中を向ける。
わからないよね?
大丈夫だよね?
不自然のギリギリくらいの角度に体を傾けて、客席にお尻を真正面に向けないようにする。
すぐ後ろのテーブルに商談中(?)の男性二人。
その奥にスーツ姿の女性が一人。
横に数人の女性グループ。
奥の喫煙席に男性一人。
注文をする。
後ろの人の視線が気になる。
話し声が少しでも変化してないか、耳を傾ける。
もし、不自然に会話が途切れたりしたら、何か感じてしまったのかもしれないもの。
怖い。
寒さを感じていなかったはずなのに、体が震えてる。
支払いをするために取り出した財布が震える。
落ち着いて、りん子。
指の震えを抑えながら小銭を出す。
怖い、怖い、怖い。
でも、わたしは、何を恐がっているのだろう。
ちゃんとめくらない限り、お尻は見えないはずだ。
もしかしたら、ちょっと違和感のあるミニくらいにしか見られないはず。
もし、何かに気付いたとしても「変な人?」で済むだろう。
あと20mで那智さんのお仕事場だ。
何を恐がっているの?
怖がっているのは嘘じゃない、でも、怖がってるだけじゃないよね。
わかってる、嬉しいんだよね。
体は震えてる、でも、それを抑えながら背筋を伸ばす。
美しい立ち姿になるように、足の位置を整える。
怖いけど、ほんとにほんとに怖いけど、りん子、見てほしいんだよね。
視線を感じたいんだよね。
チラッと振り返る。
偶然、喫煙席にいる男性を視線が合う。
ああ、那智さん、ここにいてほしい。
那智さんが隣りにいてくれたら、安心するのに。
怖がってるわたしも、見てほしいわたしも、背筋を伸ばすわたしも、容認してもらって安心するのに。
見られたい。
これはわたしのアブノーマルな願望の大きなひとつだ。
裸体を晒す勇気はないけど、コートの下に隠した姿で「見てほしい」という願望を叶える。
でも、これもひとりじゃダメなんだ。
ガーターベルトと同じ、それをさせる存在がないと叶うと感じられない。
だから、早く早く那智さんのそばに行きたい。
いま、いないのだもの、せめてどんなにドキドキして、どんなに震えたか、聞いてほしい。
そして、それで感じてるわたしの姿を見てほしい。
体の震えは止まらないけど少し吹っ切れたようで、出来上がるまで近くの椅子にきちんと腰掛けて待つことにした。
お仕事場に到着した。
わたしは興奮した犬のように「キャンキャン」してしまってる。
でも、ちょっとイレギュラーなことが起こり那智さんは、わたしに集中できずにいる。
コートのままサンドイッチを食べ、ささっとコートの上からわたしを抱き、フェラチオでいき、「じゃあ、洋服着ておいで」…。
抱かれてわたしだって気持ちよかったのに、なんでしょう、この「ぽつん」とした感じ。
那智さんにコートの下の姿を見てほしかったし、興奮して「キャンキャン」言ってるわたしを「よしよし」ってしてほしかった。
そして、「もっと」おかしくなるように油を注いでほしかった。
不完全燃焼。
いまとなっては、ノーマルなことでの快感とアブノーマルなことでの快感の境目がわからなくなってしまってるわたし。
でも、多分、アブノーマルな快感は「ひとり」では得られないみたいだ。
どんなに望んでいた「見せたい」も、ひとりでは快感にならない。
わずかに快感を感じても、そこから大きくはならない。
それをする理由と存在、そして、「もっと」をからめてくれないと、満たされない。
不思議ですね。
同じようなことをしても、満たされかたが全然違う。
人の脳みそは、不思議。
そんなこと考えながら、那智さんのお仕事場のトイレでさっき脱いだ洋服を着る。
ああ、わたし、不完全燃焼。
変な欲求不満になってしまいそう…。
人の脳なんて難しいこと思った次に、欲求不満を危惧するわたし。
ふたつの違う思考を客観視して、苦笑しながらニットのワンピに袖を通す。