一緒にご飯1
非日常的な日常
松浦理英子さんの「犬身」を読んでいる。
犬になりたいと幼い頃から思っている女性が本当に犬になるというお話、比較的厚い本のまだ1/4くらいまでしか進んでいない。
でも、甘酸っぱく艶かしい、普通はあまり小説には書かれないだろう、でも、人間誰しも感じているような心の機微が細やかに書かれていて、思わず眉をひそめてしまうような、でも、ゾクゾクするような不思議な感じがたまらず、次々ページをめくってしまう。
ここに書かれている「犬」のあり方をわたしはうっとりと、羨望と共感を持って読んでいる。
「主人に忠誠を誓い仕える」という忠犬ハチ公のような犬ではなくて、「撫でたり、食べ物を与えたりして可愛がられるための存在」として書かれている。(ちょっと文中の言葉を借りてます)
「人は犬を可愛がり犬は人を信頼し慕う」(これも文中より)
うん、うん、いいな〜、そういうの憧れる。
これから読み進めるうちに、もっといっぱい胸を掴まれるだろうな〜と、いまからわくわくです。
ほんとに犬にはなれないし、ほんとの犬のようにもなれないけど、ほんのちょっとそれに近い気持ち。
わんこのお話です。
那智さんはいつもどれくらい計画を立てているのかしら。
割と思いつきが多いそうなんだけど、今日は「寄る?」と聞きもせず、逡巡も見せずにマ○○に入っていった。
那智さんは朝のセット、わたしはコーヒーをオーダーして階段を上る。
当然のように2階のフロアを横切り、3階に向かう。
2階席は充分空いてるのに3階に向かうというだけで、もうわたしは落ち着かない。
みんなに「何かします」と公表しているような気分になってしまう。
そわそわしちゃいけない、誰もそんなこと思っているわけないのだから、普通に堂々と歩いたほうがいいんだよね。
感情を抑えて何食わぬ顔で3階に上がる。
誰もいない。
ホッとして、でも、怖い。
一番奥の席に座る。
わたしが壁側、那智さんはフロアに背を向けて。
それほど考える素振りも見せず、バッグから「わんこのお皿」を出す。
ご飯?
ハシュドポテトを千切りケチャップを付けて3切れ。
ソーセージマフィンを歯で千切ってそのままゴロッとお皿へ、これも3切れ。
ケチャップがお皿やマフィンにも付いて、マフィンはくずれてソーセージも目玉焼きもバラバラ。
そのゴチャゴチャな感じが嬉しい。
軽く肩に触れて促される。
ほんの少しためらうけど、動作には表れないほどだ。
ゆっくりと静かに床に座る。
那智さんが体を斜めに向けてくれたから、わたしはテーブルの下、那智さんの足の間に収まることができた。
といっても、わたしは大型犬なので(笑)体半分は那智さんから出ちゃってるけど。
それでも、那智さんの足下、そして、硬い床が嬉しい。
ああ、やっとここに来られたというような、安堵感さえある。
那智さんの手がわたしの頭から首筋を撫でてくれる。
優しく、力強く。
「ガタッ」
ドアの音。
ドキッとして、体を硬直させる。
那智さんの手が「トントン」と首筋を叩く、落ち着かせるように。
3階にはスタッフルームがあるから、スタッフの出入りがあるのだ。
しばらくして、また、ドアの音。
那智さんの足とテーブルの隙間からマ○○の制服姿が見える。
頭を撫でられながら、足に頭を預けて、その制服をぼんやり見ている。
もう、怖くない。
足の間にいれば、大丈夫。
ちょっといたずらっぽいような、好奇心が勝って覗き続けてる。
きっと、その瞬間だけではわたしの姿は見えないだろう。(もし、見えていて、びっくりさせちゃったらごめんなさい)
撫でられて、その心地良さにうっとりと身を任せる。
ゴトッ。
足下にお皿が置かれた。
正座をして手を付いて、床にあるそれに何のためらいもなく顔を埋める。
マフィン、ポテト、ソーセージ、全部バラバラに口に運ぶ。
唇に付いたケチャップを舌で掬う。
手を伸ばし頭を数回撫でてくれる。
お皿の中にこもるわたしの荒い息。
ゴソゴソ、お皿が床に当たる音。
床に近いから音の反響がダイレクトな感じがする。
那智さんもお食事をはじめたようで、紙ラップがカサカサ聞こえる。
一緒にお食事だ。
嬉しい。
ふうふうという荒い息とそれに合わせるようにお皿のゴソゴソとという音。
本物の犬が餌を食べているときに聞こえてくるような音。
お腹が空いているわけじゃないから、がっついた感じにはなりたくないけど、この犬みたいな「音」を発することができて嬉しくて、飢えているように自分から生まれる「音」を貪った。
このまま誰も上がって来ないで。
上がってきたら、また正気に戻らなくちゃいけない。
犬でいる時間も終わってしまう。
もうお皿の中は空になっているのに、その「音」をずっと味わっていたくて、少し残るケチャップを何度も何度も舐めていた。
松浦理英子さんの「犬身」を読んでいる。
犬になりたいと幼い頃から思っている女性が本当に犬になるというお話、比較的厚い本のまだ1/4くらいまでしか進んでいない。
でも、甘酸っぱく艶かしい、普通はあまり小説には書かれないだろう、でも、人間誰しも感じているような心の機微が細やかに書かれていて、思わず眉をひそめてしまうような、でも、ゾクゾクするような不思議な感じがたまらず、次々ページをめくってしまう。
ここに書かれている「犬」のあり方をわたしはうっとりと、羨望と共感を持って読んでいる。
「主人に忠誠を誓い仕える」という忠犬ハチ公のような犬ではなくて、「撫でたり、食べ物を与えたりして可愛がられるための存在」として書かれている。(ちょっと文中の言葉を借りてます)
「人は犬を可愛がり犬は人を信頼し慕う」(これも文中より)
うん、うん、いいな〜、そういうの憧れる。
これから読み進めるうちに、もっといっぱい胸を掴まれるだろうな〜と、いまからわくわくです。
ほんとに犬にはなれないし、ほんとの犬のようにもなれないけど、ほんのちょっとそれに近い気持ち。
わんこのお話です。
那智さんはいつもどれくらい計画を立てているのかしら。
割と思いつきが多いそうなんだけど、今日は「寄る?」と聞きもせず、逡巡も見せずにマ○○に入っていった。
那智さんは朝のセット、わたしはコーヒーをオーダーして階段を上る。
当然のように2階のフロアを横切り、3階に向かう。
2階席は充分空いてるのに3階に向かうというだけで、もうわたしは落ち着かない。
みんなに「何かします」と公表しているような気分になってしまう。
そわそわしちゃいけない、誰もそんなこと思っているわけないのだから、普通に堂々と歩いたほうがいいんだよね。
感情を抑えて何食わぬ顔で3階に上がる。
誰もいない。
ホッとして、でも、怖い。
一番奥の席に座る。
わたしが壁側、那智さんはフロアに背を向けて。
それほど考える素振りも見せず、バッグから「わんこのお皿」を出す。
ご飯?
ハシュドポテトを千切りケチャップを付けて3切れ。
ソーセージマフィンを歯で千切ってそのままゴロッとお皿へ、これも3切れ。
ケチャップがお皿やマフィンにも付いて、マフィンはくずれてソーセージも目玉焼きもバラバラ。
そのゴチャゴチャな感じが嬉しい。
軽く肩に触れて促される。
ほんの少しためらうけど、動作には表れないほどだ。
ゆっくりと静かに床に座る。
那智さんが体を斜めに向けてくれたから、わたしはテーブルの下、那智さんの足の間に収まることができた。
といっても、わたしは大型犬なので(笑)体半分は那智さんから出ちゃってるけど。
それでも、那智さんの足下、そして、硬い床が嬉しい。
ああ、やっとここに来られたというような、安堵感さえある。
那智さんの手がわたしの頭から首筋を撫でてくれる。
優しく、力強く。
「ガタッ」
ドアの音。
ドキッとして、体を硬直させる。
那智さんの手が「トントン」と首筋を叩く、落ち着かせるように。
3階にはスタッフルームがあるから、スタッフの出入りがあるのだ。
しばらくして、また、ドアの音。
那智さんの足とテーブルの隙間からマ○○の制服姿が見える。
頭を撫でられながら、足に頭を預けて、その制服をぼんやり見ている。
もう、怖くない。
足の間にいれば、大丈夫。
ちょっといたずらっぽいような、好奇心が勝って覗き続けてる。
きっと、その瞬間だけではわたしの姿は見えないだろう。(もし、見えていて、びっくりさせちゃったらごめんなさい)
撫でられて、その心地良さにうっとりと身を任せる。
ゴトッ。
足下にお皿が置かれた。
正座をして手を付いて、床にあるそれに何のためらいもなく顔を埋める。
マフィン、ポテト、ソーセージ、全部バラバラに口に運ぶ。
唇に付いたケチャップを舌で掬う。
手を伸ばし頭を数回撫でてくれる。
お皿の中にこもるわたしの荒い息。
ゴソゴソ、お皿が床に当たる音。
床に近いから音の反響がダイレクトな感じがする。
那智さんもお食事をはじめたようで、紙ラップがカサカサ聞こえる。
一緒にお食事だ。
嬉しい。
ふうふうという荒い息とそれに合わせるようにお皿のゴソゴソとという音。
本物の犬が餌を食べているときに聞こえてくるような音。
お腹が空いているわけじゃないから、がっついた感じにはなりたくないけど、この犬みたいな「音」を発することができて嬉しくて、飢えているように自分から生まれる「音」を貪った。
このまま誰も上がって来ないで。
上がってきたら、また正気に戻らなくちゃいけない。
犬でいる時間も終わってしまう。
もうお皿の中は空になっているのに、その「音」をずっと味わっていたくて、少し残るケチャップを何度も何度も舐めていた。
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