お外で四つん這い3
非日常的な日常
道行く人やコンビニのお客さんは、この光景を見てどう思っているんだろう。
歩道を背にして女性が地面にしゃがんでいる。
よく見ると、膝と手を付いている。
具合でも悪いの?
土下座をしているの?
うつむいているその女性の前に男性が立っている。
この男性が土下座させているの?
さらに見ると女性の首からリードが伸びてそれを男性が握っている。
犬?
SMのわんこプレイ?
歩きながらそこまで観察できている人は少ないでしょうから、恐らく大半の人は「?」で通り過ぎるはず。
振り返り異変に気付いた人のほとんどは、変な人たちと不快に思うだろう。
むしろ同じ嗜好で「ああ、わんこね〜」なんて思ってくれたほうが、ずっと気が楽だ。
この不快感を与えているかもしれないという事実は、後から思い出してもいたたまれない思いで「くーーー」っとなる。
それでも、その瞬間、必死に掌を広げて地面に付けているのに、もうまわりはかまわなくなってしまっていた。
周りを意識しないわけではなくて、ただ申し訳ないとかいう対外的な感情の回路が途切れた感じ。
那智さんが満足してくれるまで犬でいる、ただそれだけ。
そして、それができる自分が嬉しい。(うわ!書きながら自分で驚いてる、嬉しいですって!?)
くいっとリードが引かれた。
もういいんだ。
力なく立ち上がり、那智さんの足下の幸せな世界から、現実に戻る。
急に心臓の高鳴りを実感して体がわなわなと震え出す。
顔は上げられない、とにかく一刻も早くこの場からいなくなりたい。
那智さんにしがみついてコンビニをあとにする。
すぐそばの角を曲がればホテルに続く坂道だ。
私にはまだ本題が残されていたんだった。
目の前に立ちはだかる難題をクリアするのに精一杯で、その先の最大の難題の存在を忘れてしまっていた。
さっきのコンビニわんこの精神状態のままだったら、もしかしたら「ぶっ飛んだまま」クリアできたかもしれないけれど、私は一度二足歩行の人間に戻されて、震えてしまっている。
行ったことの重大さにおののいてしまった後の難題は恐怖が倍増する。
坂までのたった数mの道のりが、私をまた怖がりに戻してしまった。
角を曲がる。
まだずっと心臓はばくばくしたままだ。
坂道を50mほど行くとホテルの入り口がある。
角を曲がって、その先の景色を見て天を仰ぐ。
ひとつ手前のホテルが改装中のようで、その改装中のホテルの前に職人さんらしき男性が2人立ち話をしているのだ。
角を曲がってからわんこということは、その人の真横を通り抜けないといけないの!?
そいうえば、さっきコンビニで那智さん越しに見かけた男の人たちも工事関係のお洋服を着ていたような記憶がある。
のちのち工事現場で話題になっちゃうかも…。
さすがに那智さんも立ち止まり、反対側の角まで行き考えている。
「すれ違うのはかまわないけど、立ち止まってる所を行くのは避けたい。」
それとこれの差があるのか、あるとしたら何なのか、わかるようなわからないような…。
ここではじめて「する側」の心を推し量る。
那智さんはどんな気持ちで私を四つん這いにするんだろう。
怖くないのかな。
恥ずかしくないのかな。
この勇気やモチベーションはどこから生まれるんだろう。
私を犬にしてくれる勇気に敬意を表してしまうわ。
しばらく様子を見ている。
立ち去るのを待っているみたい。
しかし、その男性たちが立ち去る気配はない。
ほどなくして普通に坂を歩きはじめた。
今日は諦めたのかな。
このままホテルに入るのだろう。
安堵が全身を覆う。
でも、ほんの一握り、寂しいと思っているのもわかっている。
そんな非常識なことできるはずないのに、ファンタジーとしてはうっとりするようなことだ。
現実は無理、妄想はうっとりを行ったり来たりの私だけど、妄想になると思った瞬間、それを取り上げられると残念ってなってしまう。
で、その行ったり来たりの先の「行っちゃえ〜」っていうのが、快感なんだけどね。
いつものホテルの前に来た。
でも、那智さんは入らない。
なぜ?通り過ぎるの??
今日は違うホテルにするの?
いつものホテルを通り過ぎ、30mほど先に進んだ所で那智さんが止まった。
ここからわんこになってホテルまで戻るんだ。
状況を理解して、周りを見渡す。
歩いて来た道の先に人はいない。
先ほどの男性たちは、数十m先でまだ立ち話をしている。
でも、2本立っている電信柱が盾になって、角度によってその男性たちが見え隠れしている。
同じように私の姿も彼らから隠れてくれますように。
「靴を脱ぎな」
ああ、私はここで四つん這いになるのね。
背後はホテルが立ち並ぶ人気の少ないところだけど、数十m先には男の人が2人立っていて、その先には普通に人が歩いている一般道路が左右に伸びているんだ。
そこを首輪で引かれて犬になって歩く。
私は道の先にいる男性の姿をもう一度確認して、観念してパンプスを脱ぐ。
黒いハイソックス越しに、アスファルトの固さを感じる。
男性たちがいて那智さんが逡巡した時間が、私に覚悟を決める時間をくれたのかもしれない。
いや、もしかしたら、思いを募らせる結果になったのかもしれない。
観念とも歓喜ともとれる複雑な結果をくれた時間だった。
そのお陰で思いのほか抵抗感は少なくなっている。
パンプスは那智さんに預けて、静かに身を屈める。
粛々と進める感じだ。
膝を付く。
更に、手を付いてお尻を上げる。
さっきコンビニでは感じなかった、膝にアスファルトが押し付けられる感触。
コンビニでは、お尻を上げていなかったから体重を膝に掛ける必要がなかったんだ。
お外で四つん這いだ。
顔は恐くて上げられない。
またアスファルトと掌と那智さんの黒い靴だけの世界になった。
那智さんが歩き始める。
リードがピンと張っているみたい。
必死に付いていく。
膝がゴツゴツと当たって痛い(みたい)。
もう、周りの雑踏も人の有無も、関係ない。
ただ、那智さんの歩く速度に必死に付いていくだけ。
アスファルトを掌が捉える感触も感じているはずなんだけど、なんだか全身に膜を張ったみたいにすべてがぼんやりとしている。
ペタペタと交互に動く掌と、至近距離で見え隠れする黒い靴が、ぼんやりとした中で感じる現実だった。
途中で那智さんが立ち止まって頭を撫でたらしいのだけど、その記憶がない。
無我夢中で付いていき、夢の中の出来事のようにすべてがぼやけていつの間にか私の脳は記憶さえ曖昧にしてしまったらしい。
距離にいて30m。
たいした時間ではないだろう。
でも、その時の私には、どれくらいの距離をどれくらいの時間歩いて、どんな様子だったのか、まったくわかっていなかった。
ただ那智さんのわんこの私、それだけの自分勝手な時間と空間を生きていた。
ホテルのドアに続く階段(よくあるでしょ?壁になっててドアが隠れていて、そこに数段の階段があるの)が視界に入った。
ということは、ほんの少し先にあの男性たちがいたのか。
そこで少し現実を取り戻す。
膝が痛い。
階段の手前に人工芝風のマットが置いてあって、それが刺のように擦り剥けた膝を刺す。
その痛みで、膝が擦り剥けていたことに気付いた。
階段に手(前足!?)を掛けたところで那智さんがしゃがみ、私の頭や首筋を撫でた。
飼い主が犬にするように、少し乱暴に。
ああ、嬉しい、幸せ。
那智さんのわんこになって幸せ。
那智さんがスカートに手を伸ばして確認する。
びっくりするくらい濡れている。
満足そうに手を離し、また首を撫でる。
なんて気持ちいいのだろう。
どこが気持ちいいのかわからないくらい、全身が、感覚が、脳みそと感情が、すべてが気持ちいい。
私は気持ちいいを垂れ流し、ただはしたなく腰を振るわんこになっていた。
ホテルの入って見てみたら、膝は擦り剥けて血が出て、ハイソックスはビリビリに裂けていた。
無自覚のまま、凄いことが起こっていたみたいで、やっぱり思い返して「くーーーーー」っとなる。
そして、記憶がなくなるような精神状態になると、記事としては面白くないな〜と嬉しいような残念なようなです(笑)
道行く人やコンビニのお客さんは、この光景を見てどう思っているんだろう。
歩道を背にして女性が地面にしゃがんでいる。
よく見ると、膝と手を付いている。
具合でも悪いの?
土下座をしているの?
うつむいているその女性の前に男性が立っている。
この男性が土下座させているの?
さらに見ると女性の首からリードが伸びてそれを男性が握っている。
犬?
SMのわんこプレイ?
歩きながらそこまで観察できている人は少ないでしょうから、恐らく大半の人は「?」で通り過ぎるはず。
振り返り異変に気付いた人のほとんどは、変な人たちと不快に思うだろう。
むしろ同じ嗜好で「ああ、わんこね〜」なんて思ってくれたほうが、ずっと気が楽だ。
この不快感を与えているかもしれないという事実は、後から思い出してもいたたまれない思いで「くーーー」っとなる。
それでも、その瞬間、必死に掌を広げて地面に付けているのに、もうまわりはかまわなくなってしまっていた。
周りを意識しないわけではなくて、ただ申し訳ないとかいう対外的な感情の回路が途切れた感じ。
那智さんが満足してくれるまで犬でいる、ただそれだけ。
そして、それができる自分が嬉しい。(うわ!書きながら自分で驚いてる、嬉しいですって!?)
くいっとリードが引かれた。
もういいんだ。
力なく立ち上がり、那智さんの足下の幸せな世界から、現実に戻る。
急に心臓の高鳴りを実感して体がわなわなと震え出す。
顔は上げられない、とにかく一刻も早くこの場からいなくなりたい。
那智さんにしがみついてコンビニをあとにする。
すぐそばの角を曲がればホテルに続く坂道だ。
私にはまだ本題が残されていたんだった。
目の前に立ちはだかる難題をクリアするのに精一杯で、その先の最大の難題の存在を忘れてしまっていた。
さっきのコンビニわんこの精神状態のままだったら、もしかしたら「ぶっ飛んだまま」クリアできたかもしれないけれど、私は一度二足歩行の人間に戻されて、震えてしまっている。
行ったことの重大さにおののいてしまった後の難題は恐怖が倍増する。
坂までのたった数mの道のりが、私をまた怖がりに戻してしまった。
角を曲がる。
まだずっと心臓はばくばくしたままだ。
坂道を50mほど行くとホテルの入り口がある。
角を曲がって、その先の景色を見て天を仰ぐ。
ひとつ手前のホテルが改装中のようで、その改装中のホテルの前に職人さんらしき男性が2人立ち話をしているのだ。
角を曲がってからわんこということは、その人の真横を通り抜けないといけないの!?
そいうえば、さっきコンビニで那智さん越しに見かけた男の人たちも工事関係のお洋服を着ていたような記憶がある。
のちのち工事現場で話題になっちゃうかも…。
さすがに那智さんも立ち止まり、反対側の角まで行き考えている。
「すれ違うのはかまわないけど、立ち止まってる所を行くのは避けたい。」
それとこれの差があるのか、あるとしたら何なのか、わかるようなわからないような…。
ここではじめて「する側」の心を推し量る。
那智さんはどんな気持ちで私を四つん這いにするんだろう。
怖くないのかな。
恥ずかしくないのかな。
この勇気やモチベーションはどこから生まれるんだろう。
私を犬にしてくれる勇気に敬意を表してしまうわ。
しばらく様子を見ている。
立ち去るのを待っているみたい。
しかし、その男性たちが立ち去る気配はない。
ほどなくして普通に坂を歩きはじめた。
今日は諦めたのかな。
このままホテルに入るのだろう。
安堵が全身を覆う。
でも、ほんの一握り、寂しいと思っているのもわかっている。
そんな非常識なことできるはずないのに、ファンタジーとしてはうっとりするようなことだ。
現実は無理、妄想はうっとりを行ったり来たりの私だけど、妄想になると思った瞬間、それを取り上げられると残念ってなってしまう。
で、その行ったり来たりの先の「行っちゃえ〜」っていうのが、快感なんだけどね。
いつものホテルの前に来た。
でも、那智さんは入らない。
なぜ?通り過ぎるの??
今日は違うホテルにするの?
いつものホテルを通り過ぎ、30mほど先に進んだ所で那智さんが止まった。
ここからわんこになってホテルまで戻るんだ。
状況を理解して、周りを見渡す。
歩いて来た道の先に人はいない。
先ほどの男性たちは、数十m先でまだ立ち話をしている。
でも、2本立っている電信柱が盾になって、角度によってその男性たちが見え隠れしている。
同じように私の姿も彼らから隠れてくれますように。
「靴を脱ぎな」
ああ、私はここで四つん這いになるのね。
背後はホテルが立ち並ぶ人気の少ないところだけど、数十m先には男の人が2人立っていて、その先には普通に人が歩いている一般道路が左右に伸びているんだ。
そこを首輪で引かれて犬になって歩く。
私は道の先にいる男性の姿をもう一度確認して、観念してパンプスを脱ぐ。
黒いハイソックス越しに、アスファルトの固さを感じる。
男性たちがいて那智さんが逡巡した時間が、私に覚悟を決める時間をくれたのかもしれない。
いや、もしかしたら、思いを募らせる結果になったのかもしれない。
観念とも歓喜ともとれる複雑な結果をくれた時間だった。
そのお陰で思いのほか抵抗感は少なくなっている。
パンプスは那智さんに預けて、静かに身を屈める。
粛々と進める感じだ。
膝を付く。
更に、手を付いてお尻を上げる。
さっきコンビニでは感じなかった、膝にアスファルトが押し付けられる感触。
コンビニでは、お尻を上げていなかったから体重を膝に掛ける必要がなかったんだ。
お外で四つん這いだ。
顔は恐くて上げられない。
またアスファルトと掌と那智さんの黒い靴だけの世界になった。
那智さんが歩き始める。
リードがピンと張っているみたい。
必死に付いていく。
膝がゴツゴツと当たって痛い(みたい)。
もう、周りの雑踏も人の有無も、関係ない。
ただ、那智さんの歩く速度に必死に付いていくだけ。
アスファルトを掌が捉える感触も感じているはずなんだけど、なんだか全身に膜を張ったみたいにすべてがぼんやりとしている。
ペタペタと交互に動く掌と、至近距離で見え隠れする黒い靴が、ぼんやりとした中で感じる現実だった。
途中で那智さんが立ち止まって頭を撫でたらしいのだけど、その記憶がない。
無我夢中で付いていき、夢の中の出来事のようにすべてがぼやけていつの間にか私の脳は記憶さえ曖昧にしてしまったらしい。
距離にいて30m。
たいした時間ではないだろう。
でも、その時の私には、どれくらいの距離をどれくらいの時間歩いて、どんな様子だったのか、まったくわかっていなかった。
ただ那智さんのわんこの私、それだけの自分勝手な時間と空間を生きていた。
ホテルのドアに続く階段(よくあるでしょ?壁になっててドアが隠れていて、そこに数段の階段があるの)が視界に入った。
ということは、ほんの少し先にあの男性たちがいたのか。
そこで少し現実を取り戻す。
膝が痛い。
階段の手前に人工芝風のマットが置いてあって、それが刺のように擦り剥けた膝を刺す。
その痛みで、膝が擦り剥けていたことに気付いた。
階段に手(前足!?)を掛けたところで那智さんがしゃがみ、私の頭や首筋を撫でた。
飼い主が犬にするように、少し乱暴に。
ああ、嬉しい、幸せ。
那智さんのわんこになって幸せ。
那智さんがスカートに手を伸ばして確認する。
びっくりするくらい濡れている。
満足そうに手を離し、また首を撫でる。
なんて気持ちいいのだろう。
どこが気持ちいいのかわからないくらい、全身が、感覚が、脳みそと感情が、すべてが気持ちいい。
私は気持ちいいを垂れ流し、ただはしたなく腰を振るわんこになっていた。
ホテルの入って見てみたら、膝は擦り剥けて血が出て、ハイソックスはビリビリに裂けていた。
無自覚のまま、凄いことが起こっていたみたいで、やっぱり思い返して「くーーーーー」っとなる。
そして、記憶がなくなるような精神状態になると、記事としては面白くないな〜と嬉しいような残念なようなです(笑)