なにと戦っている?
なんでもない日
那智さん、お昼からお休みの日。
常宿3は最近人気が出ているのか満室のときもあるので、わたしが先に一人で入っておくことにする。
先にチェックインする『ひとりラブホ』はもう何度も経験している。
はじめの頃は、とにかくすったもんだして疲労困憊になっていたけど、この頃はちょっぴり慣れてきた。
ううん、慣れてきたというより、つくろえるようになってきた、が正解。
相変わらず人目は気になるし、他のカップルと鉢合わせになったらどうしようとヒヤヒヤするけど、那智さん伝授の『こちらが堂々とすれば、あちらは恥ずかしい法則』にのっとり、表面上は『恥ずかしがってない』風を装えるようになってきたのだ。
さずがに『堂々と』まではなかなか難しいけど、『恥ずかしがってない』くらいでもできれば、案外心の負担は減るもの。
おかげさまでなんとかやり過ごして先チェックイン業務をこなしている。
で、この日も、そうすることになった。
このホテルはサイトに空室情報があり、リアルタイムで空室と準備中がわかるようになっていて便利。
便利だけど、わかるならわかるで時間や見えない他者との争いになるので、それはそれで疲れるけど(笑)
この日も電車の中でチェックすると『空室3』の表示。
うーん、あと数分でホテル到着だけど、心もとない数字だ。
気持ち急ぎ気味でホテルに向かう。
その間、3が2になり、2が3になる。
準備中が順次使えるようになっているみたいなのでタイミングさえ問題なければ大丈夫そうだ。
それでも、空室0、準備間に合わずの最悪パターンもあるわけだから、急ぐ気持ちは変わらない。
このホテル、入り口が2か所。
1階と2階。
坂道の途中に2階の入り口があり、坂を下った1階から入るとフロントがある。
空室は3のまま。
ホテル手前。
駅から向かうと最初に2階の入り口が現れる。
そこから入り、エレベーターで1階のフロントに行くか、坂を下って直接フロントのある1階の入り口から入るか。
一瞬迷った。
3部屋あるからもう埋まることはないだろう。
でも、なんだか、イヤな予感。
いままで何度となくすったもんだしてきた『ひとりラブホ』。
培った勘みたいなものが、わたしを焦らせた。
逡巡する間はない、近い2階から入る。
エレベーターで1階に降りる。
ドアが開けば目の前に部屋のパネルの側面が見える。
1階の入り口が左手にあるので、1階から入れば正面にパネルが見えるような位置関係です。
エレベーターのドアが開く。
目の前にはカップルの横向。
ちょうど1階から入ってそのままパネルと相対している。
万事休す。
一足遅かった。
どうしよう。
いや、3部屋空いていたはずだから、おそらく埋まることはないだろう。
だけど、わたし、どうしたらいい!?
エレベーターから降りないで、また2階に引き返す?
いや、それはない。
そうこうしているうちに別のカップルが来て満室になったらダメだ。
そもそも引き返して、ホテルから出るの?
それもないよね、ホテル出たり入ったり、なんの罰ゲームだ(笑)
と開いた瞬間思ったら、そのまま一歩踏み出しエレベーターを降りていた。
部屋を選ぶカップルの右手2mのエレベーター前に単身女性のわたしが立つ。
わたしがちょっと右手にスタイドすれば、従業員用ドアにつながる死角に隠れることができる。
ここは右にズレてカップルが選び終わるのをそっと待つのが得策だろう。
お互い顔合わせたくないし、何より恥ずかしい。
羞恥心のある大人の対応をすればいい。
と、思ったはずなのに。
スイッチが入ってしまった。
そう、那智さんが長年わたしに植え付けた対処方法。
『堂々とすれば恥ずかしくない』だ。
なんと、わたしはパネルの前でそわそわ選んでいるカップルの視界に入った状態でカップルの方を向いたまま堂々としはじめてしまった。
なんだ、わたし、恥ずかしい、でも、いまさら後に引けない。
いや、スイッチ入ったわたしはもう後に引く気がない!!
どうしよう、本人困惑。
それなのに空室との戦いの勢いがそのまま戦闘モードとなり、さらに『早く選びなさい』オーラまで発してしまっている!!
部屋を選ぶカップルに向かって仁王立ち、微動だにしない女。
一体、わたしは何と戦っているんだ!!
いちおうカップルを見たら失礼かと思い、カップルに向かいつつも目線だけは下に落とす。
ああ、早く選んでくれ。
相手も余裕を見せているのか、なかなか決まらない。
妙な戦闘モードのわたしと困惑するわたし。
両方のわたしで揺れるフロント。
やっと決まってフロントの奥のサービスコーナー(入浴剤とか置いている)に消えていくカップル。
サクッと選ぶわたし。
なぜか、ここでも堂々と(慣れている風)装う。
まったく、わたしは何と戦って、どう見られたかったんだ(笑)
と、このお話を後から来た那智さんに武勇伝が如く話す。
楽しく聞いてくれた那智さん
で、りん子はどう見られると思ったの?
と。
一人で入ってきたらお仕事だと思うのが普通だと思うけど、その日の服装はカジュアルだったし、年齢含めてそうは見えないと想像していて。
カップルの横で戦っていたとき、どう思っていたかというと
猛暑の折、ひとり涼を求めラブホを楽しむ大人の女性
に見えてくれ!!と思っていたのです^^;
と答えたけど、それはないだろう(笑)と一蹴されました。
そうだよねぇ、そんな想像力、普通はないよね…。
ということで、皆さんがもひとりラブホの女性を見かけたら『ひとりラブ(ホ)を楽しむ大人の女性』を想像の選択肢に加えてあげてください(笑)
はあ、那智さんから伝授された様々な価値観はわたしを生きやすくしてくれたけど、なにと戦っているかわからなくなるような戦闘モードはいらなくないですか?那智さん(笑)
「等式」「なにと戦っている?」感想です。本文も楽しいけれど「ひとりラブを楽しむ大人の女性」の誤字も面白い。ん、誤字だよね?(笑)
直しました(笑)
那智さん、お昼からお休みの日。
常宿3は最近人気が出ているのか満室のときもあるので、わたしが先に一人で入っておくことにする。
先にチェックインする『ひとりラブホ』はもう何度も経験している。
はじめの頃は、とにかくすったもんだして疲労困憊になっていたけど、この頃はちょっぴり慣れてきた。
ううん、慣れてきたというより、つくろえるようになってきた、が正解。
相変わらず人目は気になるし、他のカップルと鉢合わせになったらどうしようとヒヤヒヤするけど、那智さん伝授の『こちらが堂々とすれば、あちらは恥ずかしい法則』にのっとり、表面上は『恥ずかしがってない』風を装えるようになってきたのだ。
さずがに『堂々と』まではなかなか難しいけど、『恥ずかしがってない』くらいでもできれば、案外心の負担は減るもの。
おかげさまでなんとかやり過ごして先チェックイン業務をこなしている。
で、この日も、そうすることになった。
このホテルはサイトに空室情報があり、リアルタイムで空室と準備中がわかるようになっていて便利。
便利だけど、わかるならわかるで時間や見えない他者との争いになるので、それはそれで疲れるけど(笑)
この日も電車の中でチェックすると『空室3』の表示。
うーん、あと数分でホテル到着だけど、心もとない数字だ。
気持ち急ぎ気味でホテルに向かう。
その間、3が2になり、2が3になる。
準備中が順次使えるようになっているみたいなのでタイミングさえ問題なければ大丈夫そうだ。
それでも、空室0、準備間に合わずの最悪パターンもあるわけだから、急ぐ気持ちは変わらない。
このホテル、入り口が2か所。
1階と2階。
坂道の途中に2階の入り口があり、坂を下った1階から入るとフロントがある。
空室は3のまま。
ホテル手前。
駅から向かうと最初に2階の入り口が現れる。
そこから入り、エレベーターで1階のフロントに行くか、坂を下って直接フロントのある1階の入り口から入るか。
一瞬迷った。
3部屋あるからもう埋まることはないだろう。
でも、なんだか、イヤな予感。
いままで何度となくすったもんだしてきた『ひとりラブホ』。
培った勘みたいなものが、わたしを焦らせた。
逡巡する間はない、近い2階から入る。
エレベーターで1階に降りる。
ドアが開けば目の前に部屋のパネルの側面が見える。
1階の入り口が左手にあるので、1階から入れば正面にパネルが見えるような位置関係です。
エレベーターのドアが開く。
目の前にはカップルの横向。
ちょうど1階から入ってそのままパネルと相対している。
万事休す。
一足遅かった。
どうしよう。
いや、3部屋空いていたはずだから、おそらく埋まることはないだろう。
だけど、わたし、どうしたらいい!?
エレベーターから降りないで、また2階に引き返す?
いや、それはない。
そうこうしているうちに別のカップルが来て満室になったらダメだ。
そもそも引き返して、ホテルから出るの?
それもないよね、ホテル出たり入ったり、なんの罰ゲームだ(笑)
と開いた瞬間思ったら、そのまま一歩踏み出しエレベーターを降りていた。
部屋を選ぶカップルの右手2mのエレベーター前に単身女性のわたしが立つ。
わたしがちょっと右手にスタイドすれば、従業員用ドアにつながる死角に隠れることができる。
ここは右にズレてカップルが選び終わるのをそっと待つのが得策だろう。
お互い顔合わせたくないし、何より恥ずかしい。
羞恥心のある大人の対応をすればいい。
と、思ったはずなのに。
スイッチが入ってしまった。
そう、那智さんが長年わたしに植え付けた対処方法。
『堂々とすれば恥ずかしくない』だ。
なんと、わたしはパネルの前でそわそわ選んでいるカップルの視界に入った状態でカップルの方を向いたまま堂々としはじめてしまった。
なんだ、わたし、恥ずかしい、でも、いまさら後に引けない。
いや、スイッチ入ったわたしはもう後に引く気がない!!
どうしよう、本人困惑。
それなのに空室との戦いの勢いがそのまま戦闘モードとなり、さらに『早く選びなさい』オーラまで発してしまっている!!
部屋を選ぶカップルに向かって仁王立ち、微動だにしない女。
一体、わたしは何と戦っているんだ!!
いちおうカップルを見たら失礼かと思い、カップルに向かいつつも目線だけは下に落とす。
ああ、早く選んでくれ。
相手も余裕を見せているのか、なかなか決まらない。
妙な戦闘モードのわたしと困惑するわたし。
両方のわたしで揺れるフロント。
やっと決まってフロントの奥のサービスコーナー(入浴剤とか置いている)に消えていくカップル。
サクッと選ぶわたし。
なぜか、ここでも堂々と(慣れている風)装う。
まったく、わたしは何と戦って、どう見られたかったんだ(笑)
と、このお話を後から来た那智さんに武勇伝が如く話す。
楽しく聞いてくれた那智さん
で、りん子はどう見られると思ったの?
と。
一人で入ってきたらお仕事だと思うのが普通だと思うけど、その日の服装はカジュアルだったし、年齢含めてそうは見えないと想像していて。
カップルの横で戦っていたとき、どう思っていたかというと
猛暑の折、ひとり涼を求めラブホを楽しむ大人の女性
に見えてくれ!!と思っていたのです^^;
と答えたけど、それはないだろう(笑)と一蹴されました。
そうだよねぇ、そんな想像力、普通はないよね…。
ということで、皆さんがもひとりラブホの女性を見かけたら『ひとりラブ(ホ)を楽しむ大人の女性』を想像の選択肢に加えてあげてください(笑)
はあ、那智さんから伝授された様々な価値観はわたしを生きやすくしてくれたけど、なにと戦っているかわからなくなるような戦闘モードはいらなくないですか?那智さん(笑)
「等式」「なにと戦っている?」感想です。本文も楽しいけれど「ひとりラブを楽しむ大人の女性」の誤字も面白い。ん、誤字だよね?(笑)
直しました(笑)