普通のひとで愛し合おう16
その渦中、いよいよ連絡が取りづらくなる年末年始が来た。
那智さん自身、恐怖との戦いだっただろうし、わたしも心配でたまらない期間がはじまった。
いままでだってこの時期は連絡が取りづらかったから『恋しい』や『さみしい』は当然あったし、日頃だって毎日長い時間電話できているわけでもないのに、年末年始であるという事実だけで、那智さんにはたえられないほどの絶望だった。
本当に本当に心配だった。
那智さんのよろこびはわたしの幸せの同化願望なわたしには、那智さんが辛いことは我がこと以上に辛い。
毎日動画でご挨拶を送る約束をした。
年末、最後に会える日。
夜お酒を飲み、カラオケにいった。
とにかく、一日でも一時間でも一分でも、那智さんの心が穏やかであるように。
わたしは心から歌った。
那智さんが大好きな『糸』と、願いをこめた『時代』。
たとえ今日は果てしもなく冷たい雨が降っていても
めぐるめぐるよ時代はめぐる
別れと出会いをくり返し
今日は倒れた旅人たちも生まれ変わって歩き出すよ
どうか、那智さん、生き延びて。
どうか、わずかでも穏やかでいて。
ほんのすこしでも気持ちがよいものを見つけて、ご自分を癒して。
神様、この会えない数日を、どうか、支えてください。
何度目だろう。
こんな都合のいいときだけっていわれてしまう。
それでも、この1か月、わたしは何度も神様にお願いをした。
どうか、那智さんが辛くならないように助けてください。
神様と、那智さんへ、祈るように、同じ曲を何度も何度も歌っていた。
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