ヘビーローテーション
独り言
その新郎はすこしクセのある人だった。
まず初対面のとき、こちらを警戒しているのか打ち解けようという姿勢が感じられない。
もちろん、人見知りの人だっているし全部新婦任せの人もいるもので、めずらしいことではないし、まったくかまわない。
その警戒心や見えない壁を取り払い、こちらを信頼してもらうこともわたしのやるべきことだから。
その新郎も最初はそういう印象だった。
最初の雑談から進行の打ち合わせに進む中、そのちょっとクセのある部分が感じられるようになってくる。
主に、わたしと新婦が中心となって会話を進めるのだけど、ときどき新郎が口を挟む。
たとえば、乾杯からケーキ入刀の流れを話していると「なぜ、乾杯の後にケーキ入刀をするのか」と聞いてくる。
もちろん、疑問に思ったことは聞いてもらってかまわない、わたしなりの根拠をきちんと説明すればいいだけのこと。
それで、じゃあ、ケーキ入刀の順番を変えるのかというとそういうわけではないらしく、進行の修正を投げかけてみるけどそのままでかまわないのだ。
どうやら、疑問を疑問のまま放っておけない人のよう。
異議はないのだけど、納得したい人なのだろう。
納得しないまま何かを決定すると、後々ちょっと厄介な人なのかもしれない。
その都度、新郎の意見を気にかける新婦の様子を見ていると、どうやら日頃からそんな感じなのだろうなぁと想像できる。
質問の度に、新婦は新郎の意向を汲もうと気にかけるし、打ち合わせはストップするし、なかなかクセのある人だぞと思いながら、こういう人の信頼を勝ち取るにはひとつひとつ真摯にわたしの意見を言っていくしかない。
腰を据えて、打ち合わせを続けた(その割に、新郎自身が長居したくなさそうな雰囲気出すのよ^^;)
この新郎、頭は薄くなっているし、申し訳ないけどお世辞にも美形とは言い難かった。
新婦の気遣う様子なんかを見ていると、その部分もあまりいい男とは思えないな〜と思っていた(わたし、女に気を使わせる男はいい男だと思わないので)
言っちゃあ悪いけど、新婦のほうがいい女のようにさえ感じられてしまうのだけど、その新婦が新郎の好きなところを『気配りができるところと友達思いなところ』を挙げていて、わたしはまだこの新郎の良さを掴めていなぞと、打ち合わせをしながら焦る気持ちになる。
悪い人ではないのだろうけど、これ!!という祝福の種が見つけられずに
新婦の真面目な感じと新郎に気遣っている様子を祝福の種にして当日に臨むことにした。
当日。
新郎、ちょっぴり緊張しているみたい、アテンドの男性スタッフの案内に「はい!!」と大きな声で礼儀正しく返事をしている。
『友達思い』ということがなんだかうなずけるように、学生時代からの友人や趣味のサークル仲間や海外からの祝電や、新郎の周りには友達が溢れていた。
その友達に対してさえ、アテンドのスタッフにするような礼儀正しい雰囲気が感じられていた。
余興の〆は新郎側の学生時代の数人が寸劇風に出し物、内容は新婦にはナイショ。
セーラー服に着替えてAKBの『カチューシャ』をワンフレーズ踊り、やっぱりセンターは新郎だよねと、新郎を高砂から呼んで『ヘビーローテーション』。
新郎も仕込みすみだったのだ。
新婦はびっくり大喜び。
I want you!
I need you!
I love you!
スポットライトが当たる中、新婦に向かって『I want you!』とまっすぐ腕を伸ばし、指を指す新郎。
頭の中
ガンガン鳴ってるMUSIC
ヘビーローテーション
ひとつのテレも見せずに完璧に全身全霊でAKBを躍りきる。
やばい、新郎、カッコいいじゃん。
背が低くて頭薄くて、でも、めちゃくちゃカッコいい。
新婦がこの新郎を好きになった気持ちがすこしわかったような気がする。
ちょっと面倒な男なんだとは思う。
納得しないと動かなそうだし、たぶん、打ち解けるのに時間かかるような人かもしれない。
だけど、きっと納得したことや大切だと思った人は裏切らないと思わせる真面目さがあるのだろう。
新婦はもちろん一緒に余興をやってくれた友人に対して、手を抜かず真剣に躍る人なんだろう。
大切なためにひと肌脱いでくれる。
たぶん、そこが彼の魅力なのかな。
女のためにひと肌脱ぐことを惜しまない男は、カッコいい。
新婦、うるうるしている。
タキシード姿で『ヘビーローテーション』を躍る新郎を見ながら、なんだか、わたしまで新婦の気持ちになってしまって、ちょっとうるっとしてしまった。
いま、書きながらもうるっとしているわたし^^;
人には良いところと悪いところ、普通のところだってたくさんある。
その中で人の良いところを見つけることができるわたしの仕事は、幸せだなって思うのでした^^
その新郎はすこしクセのある人だった。
まず初対面のとき、こちらを警戒しているのか打ち解けようという姿勢が感じられない。
もちろん、人見知りの人だっているし全部新婦任せの人もいるもので、めずらしいことではないし、まったくかまわない。
その警戒心や見えない壁を取り払い、こちらを信頼してもらうこともわたしのやるべきことだから。
その新郎も最初はそういう印象だった。
最初の雑談から進行の打ち合わせに進む中、そのちょっとクセのある部分が感じられるようになってくる。
主に、わたしと新婦が中心となって会話を進めるのだけど、ときどき新郎が口を挟む。
たとえば、乾杯からケーキ入刀の流れを話していると「なぜ、乾杯の後にケーキ入刀をするのか」と聞いてくる。
もちろん、疑問に思ったことは聞いてもらってかまわない、わたしなりの根拠をきちんと説明すればいいだけのこと。
それで、じゃあ、ケーキ入刀の順番を変えるのかというとそういうわけではないらしく、進行の修正を投げかけてみるけどそのままでかまわないのだ。
どうやら、疑問を疑問のまま放っておけない人のよう。
異議はないのだけど、納得したい人なのだろう。
納得しないまま何かを決定すると、後々ちょっと厄介な人なのかもしれない。
その都度、新郎の意見を気にかける新婦の様子を見ていると、どうやら日頃からそんな感じなのだろうなぁと想像できる。
質問の度に、新婦は新郎の意向を汲もうと気にかけるし、打ち合わせはストップするし、なかなかクセのある人だぞと思いながら、こういう人の信頼を勝ち取るにはひとつひとつ真摯にわたしの意見を言っていくしかない。
腰を据えて、打ち合わせを続けた(その割に、新郎自身が長居したくなさそうな雰囲気出すのよ^^;)
この新郎、頭は薄くなっているし、申し訳ないけどお世辞にも美形とは言い難かった。
新婦の気遣う様子なんかを見ていると、その部分もあまりいい男とは思えないな〜と思っていた(わたし、女に気を使わせる男はいい男だと思わないので)
言っちゃあ悪いけど、新婦のほうがいい女のようにさえ感じられてしまうのだけど、その新婦が新郎の好きなところを『気配りができるところと友達思いなところ』を挙げていて、わたしはまだこの新郎の良さを掴めていなぞと、打ち合わせをしながら焦る気持ちになる。
悪い人ではないのだろうけど、これ!!という祝福の種が見つけられずに
新婦の真面目な感じと新郎に気遣っている様子を祝福の種にして当日に臨むことにした。
当日。
新郎、ちょっぴり緊張しているみたい、アテンドの男性スタッフの案内に「はい!!」と大きな声で礼儀正しく返事をしている。
『友達思い』ということがなんだかうなずけるように、学生時代からの友人や趣味のサークル仲間や海外からの祝電や、新郎の周りには友達が溢れていた。
その友達に対してさえ、アテンドのスタッフにするような礼儀正しい雰囲気が感じられていた。
余興の〆は新郎側の学生時代の数人が寸劇風に出し物、内容は新婦にはナイショ。
セーラー服に着替えてAKBの『カチューシャ』をワンフレーズ踊り、やっぱりセンターは新郎だよねと、新郎を高砂から呼んで『ヘビーローテーション』。
新郎も仕込みすみだったのだ。
新婦はびっくり大喜び。
I want you!
I need you!
I love you!
スポットライトが当たる中、新婦に向かって『I want you!』とまっすぐ腕を伸ばし、指を指す新郎。
頭の中
ガンガン鳴ってるMUSIC
ヘビーローテーション
ひとつのテレも見せずに完璧に全身全霊でAKBを躍りきる。
やばい、新郎、カッコいいじゃん。
背が低くて頭薄くて、でも、めちゃくちゃカッコいい。
新婦がこの新郎を好きになった気持ちがすこしわかったような気がする。
ちょっと面倒な男なんだとは思う。
納得しないと動かなそうだし、たぶん、打ち解けるのに時間かかるような人かもしれない。
だけど、きっと納得したことや大切だと思った人は裏切らないと思わせる真面目さがあるのだろう。
新婦はもちろん一緒に余興をやってくれた友人に対して、手を抜かず真剣に躍る人なんだろう。
大切なためにひと肌脱いでくれる。
たぶん、そこが彼の魅力なのかな。
女のためにひと肌脱ぐことを惜しまない男は、カッコいい。
新婦、うるうるしている。
タキシード姿で『ヘビーローテーション』を躍る新郎を見ながら、なんだか、わたしまで新婦の気持ちになってしまって、ちょっとうるっとしてしまった。
いま、書きながらもうるっとしているわたし^^;
人には良いところと悪いところ、普通のところだってたくさんある。
その中で人の良いところを見つけることができるわたしの仕事は、幸せだなって思うのでした^^
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COMMENT
こんばんは。
素敵なお仕事ですね。
ひとのいいところ、
見ようと思わないと見えてこないときもありますし、
自分のコンディションで変化したように感じることもありますものね。
それでも、よーく、よーく見続けた
りん子さんが素敵だなと思います。
自分のなかから何かを探されるのはイヤっていうひともたくさんいると思いますし。
第一印象もとても大切ですが
一緒に過ごした時間のうちに、言語外に伝え合うものもたくさんあるのですね。
素敵なお式でしたね。
素敵なお仕事ですね。
ひとのいいところ、
見ようと思わないと見えてこないときもありますし、
自分のコンディションで変化したように感じることもありますものね。
それでも、よーく、よーく見続けた
りん子さんが素敵だなと思います。
自分のなかから何かを探されるのはイヤっていうひともたくさんいると思いますし。
第一印象もとても大切ですが
一緒に過ごした時間のうちに、言語外に伝え合うものもたくさんあるのですね。
素敵なお式でしたね。
はい、ステキな披露宴でした^^
お仕事なので、どのお客様にも同じように祝福の気持ちを持つことが重要なのでしょうけれど。
おっしゃる通りで、司会者にいろいろ探られることに警戒する人もいると思うんですが『いい披露宴にしたい』という共通の思いはあるので、この人はどんな披露宴を望んでいて、わたしに何を求めているかを会話や雰囲気の中から探ることは大事でして、その結果『祝福できるポイント』みたいなものに気づけることが多いように思います。
言葉以外に伝え合えるもの。
コメントをいただいて、それを見つけるのも仕事にうちのように、改めて思いました。
あ、でもプライベートでは言葉、ほしいけど(笑)
お仕事なので、どのお客様にも同じように祝福の気持ちを持つことが重要なのでしょうけれど。
おっしゃる通りで、司会者にいろいろ探られることに警戒する人もいると思うんですが『いい披露宴にしたい』という共通の思いはあるので、この人はどんな披露宴を望んでいて、わたしに何を求めているかを会話や雰囲気の中から探ることは大事でして、その結果『祝福できるポイント』みたいなものに気づけることが多いように思います。
言葉以外に伝え合えるもの。
コメントをいただいて、それを見つけるのも仕事にうちのように、改めて思いました。
あ、でもプライベートでは言葉、ほしいけど(笑)
すっかりご無沙汰してしまって、、
心温まるいいお話をありがとうございます。
自分がその新郎に似ているような・・・、
>この新郎、頭は薄くなっているし、申し訳ないけどお世辞にも美形とは言い難かった。
それでチョッと感情移入して読んでしまいました。
更に『納得したい』という気持ちもよく判るですよね、
自分と関係性の薄いお相手なら、如何でもいいのですが、
こと身近な相手となると「判らないことは判らない!」とハッキリと言いたい伝えたい気持ちが強いです。
そうしないと、、何か心にモヤモヤとしたモノが引っかかると言うか、気持ち悪いですよね、
りん子さんのお話を聞いていて、私はその新郎の人物像が思い浮かぶような気がします。
そして お話してみたい欲求が湧きあがってきました、きっといい友人になれそうな気がするからです。
心温まるいいお話をありがとうございます。
自分がその新郎に似ているような・・・、
>この新郎、頭は薄くなっているし、申し訳ないけどお世辞にも美形とは言い難かった。
それでチョッと感情移入して読んでしまいました。
更に『納得したい』という気持ちもよく判るですよね、
自分と関係性の薄いお相手なら、如何でもいいのですが、
こと身近な相手となると「判らないことは判らない!」とハッキリと言いたい伝えたい気持ちが強いです。
そうしないと、、何か心にモヤモヤとしたモノが引っかかると言うか、気持ち悪いですよね、
りん子さんのお話を聞いていて、私はその新郎の人物像が思い浮かぶような気がします。
そして お話してみたい欲求が湧きあがってきました、きっといい友人になれそうな気がするからです。
こんにちは〜^^
ご無沙汰でした〜。
相手にもよると思いますが、疑問に思ったことをそのままにしておかないほうが良い関係を築けそうですよね。
このときも、新郎の疑問のひとつひとつ丁寧に、わたしなりの根拠を示して対応して信頼してもらうしかないなと思っていました。
人生の中の数日間ですけど、大事かなと思いまして。
新郎と話が合いそうですか^^
似た者同士はすごーく合うか、逆に反発し合うか(笑)
ただ、『ハッキリ伝えたい』という部分を共有できたら、話が合いそうですね^^
ご無沙汰でした〜。
相手にもよると思いますが、疑問に思ったことをそのままにしておかないほうが良い関係を築けそうですよね。
このときも、新郎の疑問のひとつひとつ丁寧に、わたしなりの根拠を示して対応して信頼してもらうしかないなと思っていました。
人生の中の数日間ですけど、大事かなと思いまして。
新郎と話が合いそうですか^^
似た者同士はすごーく合うか、逆に反発し合うか(笑)
ただ、『ハッキリ伝えたい』という部分を共有できたら、話が合いそうですね^^